1999年から2000年にかけ、ザクロが大流行し、メディアや雑誌などで特集されるなど、一気にブームとなりました。その注目された理由に「ザクロには女性ホルモン(エストロゲン)に似た作用がある」などいわれ流行しました。その後、ザクロの商品が次々と新発売されました。しかし国民生活センターに本当に効果があるのか?」などの相談や苦情なども寄せられています。今回はそんなザクロの成分や、作用などについて説明します。
ザクロは、ザクロ科(ミソハギ科)ザクロ属の果物で、原産地は中近東(インドやイラン)です。
現在の主な栽培地は、中近東を中心にヨーロッパやアメリカなどです。日本での栽培は少なく、また、国産のザクロは、熟すと裂けるのが特徴で全国に出回りにくいのが特徴です。輸入のザクロは割れにくいという特徴があることから、現在日本で流通しているザクロはそのほとんどが輸入品。カリフォルニア産やイラン産のものが出回っています。
収穫時期は9月~11月ごろで、品種は大粒のワンダフル系統が多くみられます。初夏に真っ赤な花が咲き、結実すると赤い外皮が肥大し、熟します。果汁が多い種子の外側を食用部分とします。
ザクロを買うときは、皮がきれいな赤色で傷などないものを選びましょう。保存方法は、熟すまで常温でおき、完熟したら冷蔵庫で保存しましょう。[※1][※2]
ザクロの主な栄養成分は、カリウム・ナイアシン・パントテン酸、ビタミンC[※3]など、その他ポリフェノールの一種、タンニンやアントシアニンなどを含みます。
ザクロには次のような効果があるといわれています。
■美肌・美白作用
女性の「永遠のテーマ」ともいわれる美肌や美白。肌荒れや・シミなどの原因となるのはストレス、食生活の乱れや偏食、紫外線など、さまざまな原因があります。特に、太陽光に含まれる紫外線には、日焼けはシミ・そばかすの原因となります。ザクロに含まれるエラグ酸には、メラニン色素を抑制する作用がある[※4][※5]と考えられています。
■老化防止効果
ザクロの果汁には、強い活性を示し、活性酸素が原因となる生活習慣病に対して、予防効果があると考えられます。[※6]
老化は、遺伝子的要因や体成分の酸化が原因といわれ、体内の活性酸素による影響が大きいと考えられます。原因は紫外線、食生活の乱れ、ストレス、たばこなど活性酸素が増える要因となります。
体内の活性酸素を減らすには、抗酸化作用のある食品を摂取することです。
■高血圧予防
ザクロジュースの摂取で収縮期血圧を低下させる[※7]。との報告があります。
血圧とは、心臓から送られる血液によって血管の壁にかかる圧力のことです。血圧が高い状態が続くと血管がもろくなり、動脈硬化などを発症しやすくなります。
血圧の上昇を抑えるには、ナトリウムの排泄をする働きがあるカリウムや食物繊維などが含まれる食品を摂取が良いとされますが、ザクロには、カリウムが100g中250g[※3]も含まれます。
太陽にあたると、表皮にある色素細胞メラノサイトの働きが活性化され、メラニン色素をつくります。これが全体にいきわたり肌が黒くなり、日焼けにより代謝リズムが乱れシミ原因となります。
メラノサイトに存在しているエラグ酸が、メラニン色素沈着を抑制が期待できるため、ザクロに含まれるエラグ酸がシミ予防に効果が期待できる[※4][※5]と考えられています。
ザクロのポリフェノールはアントシアニンやタンニンが含まれていることがわかりました。ポリフェノールの抗酸化物質は老化の原因になる活性酸素を減少する作用があります。ザクロの抗酸化作用は、アントシアニン類(デルフィニジン、シアニジンなど)やタンニン類(エラグ酸、プニカラギンなど)による効果である[※8]と考えられています。
ただし、ポリフェノール類は水溶性のため、たくさん摂取しても体内にはほとんど貯蔵されず、排泄してしまう特徴があります。[※6]
健康に過ごしたい人、美肌・美容がきになる人は摂取してみるとよいでしょう。
上限はありませんが、水溶性ビタミンや水溶性のポリフェノールを含むため、一気に大量摂取しても吸収されず、排泄されてしまいます。そのため一度にたくさん食べるのではなく、複数回に分けて摂取するとよいでしょう。
日本でエラグ酸が、肌の保護改善などを検証するための試験が実施されました。
20~40代の女性13名を対象に右腕内側に(UV)照射後、エラグ酸(高用量200㎎/日・低用量100㎎/日・エラグ酸0㎎/日の3グループに分け)を摂取前、摂取後の1週間おきにメラニンなどの測定を行いました。
その結果、エラグ酸を高用量群および低用量群からUV照射させたメラニンや皮膚や紅斑が飲用前より低下し色素沈着などを抑制する結果が出ています。「ザクロに含まれるエラグ酸が、経口摂取すると、紫外線照射によるヒトの皮膚のわずかな色素沈着を抑制する効果がある」ことが示唆されています。[※4]
被験者が13名でデータとしては信頼性が低いですが、色素沈着抑制の働きを期待できると考えられます。エラグ酸は2003年に厚生労働省により食品添加物として認可され、エラグ酸の効果などの研究が進んでいます。[※9]
カゴメ株式会社総合研究所では、9種のフルーツの抗酸化作用(活性酸素を消去する作用)の比較を行い、ザクロが強い活性を有することを日本果汁協会主催の平成15年度果汁技術研究発表会にて発表しています。[※6]
LPS誘発肺炎マウスに、水溶性ザクロ可否抽出液を投与したところ、肺炎を抑え、ザクロに抗炎症作用が示唆されています。[※10]
ザクロの主要なポリフェノールは、抗インフルエンザウイルスがあるとされ、インフルエンザに対して予防効果が示唆されています。[※11]
ヒトでの経口摂取によるメラニン色素沈着抑制効果が、示唆されています。20〜40代女性を対象に行った実験において、プラセボ群(n-12)に比較して、ザクロ果皮エキス摂取群で、明度が1.35%抑制されました。100mg/日でのザクロエラグ酸経口摂取が、紫外線照射によるメラニン色素沈着を抑制することが明らかになっています。[※12]
紀元前4~5世紀ごろの古代ギリシャの医学者の記述があるなど、昔から食用されていたと考えられます。漢字では、「石榴」中国での呼び名で平安時代ごろ日本に入ってきたといわれますが、その時代では観賞用とされていました。
ギリシャ時代のから効果が期待されてきたザクロですが、昔は皮部分を薬として使用され、種子が多いことから「子孫繁栄」などと言われ食用・鑑賞用にも親しまれてきました。[※13][※14]
現代では、ビタミンやカリウム、ポリフェノールなどが含まれ、さまざまな効果が期待されています。動物実験では女性ホルモンに効果が期待されていますが、信頼のおけるデータは、まだありません。
1999年~2000年にかけ、日本ではザクロが大流行しました。「ザクロに女性ホルモン作用が含まれる」などマスコミや雑誌でも多くとりあげられ、全国的にザクロブームとなりました。
ザクロに含まれるエストロゲンが、「女性ホルモン作用する」、「更年期障害が緩和する」などとされ、ザクロ入り商品が多く販売されましたが、効果が疑問視され、国民生活センター相談が殺到しています。
当時、国民生活センターによると「エストロゲンが含有されているあるいは効能効果を期待させる表示が多くみられ、表示で誤解を与えている」とし、調査を開始[※9]しました。
その結果、商品からはエストロゲンは検出されず、「女性ホルモン作用は期待できない」と発表されました。
さらに果物のザクロ中に含まれるエストロゲンを調べたところ、「エストロゲンの有無を調べたが、果汁部分、種子部分どちらからもエストロゲンは確認できなかった」とされています。種子部分に植物性エストロゲンが含まれるが、微量のため効果には疑問視されています。
「女性ホルモン作用、更年期症状を改善」などを期待させる表現がみられたものが多くあり、「消費者に誤解を与える可能性がある」[※15]。として消費者へあくまでもエストロゲンの効果を期待するものではないと注意が呼びかけられています。
生活習慣病などが原因である糖尿病(2型)は発症要因のなかでも、肥満によりインスリンの働きや効きめが悪化し、インスリンの分泌が減り糖尿病を発症します。
インスリン抵抗性を防ぐ因子として「アディポネクチン」があります。肥満により脂肪細胞では「アディポネクチン」の分泌が減り、「レジスチン」や「TNFα」などの悪玉分子が分泌されインスリン抵抗性がおこります。
近畿大学農学部グループにより「ザクロに含まれるエラグ酸が、レジスチンの分泌を抑える働きがある」とし、動物試験により検証されました。
ザクロの果汁成分エラグにレジスチン分泌抑制作用 、糖尿病予防に役立つ可能性など研究がすすめられています。
近畿大学農学部グループの発表したニュースリリースによれば、
【「糖尿病の予防に役立つサプリメントや機能性食品の素材として活用することで、広く国民の健康と福祉に貢献できる可能性がある」と考えられる。この研究は、文部科学省による私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「環境調和を志向した革新的植物アグリバイオ技術の統合型研究拠点の形成」(S1101035)の一部として行われ、米国の生化学専門誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」 の2012年1月13日号に発表】
(近畿大学HP ニュースリリース 引用)[※16]
とあります。
ザクロは熟した頃が、食べごろです。生食やデザートなど、加工品ではジュースや果実酒などで幅広く親しまれています。
食べ方は、先端を切り落とし、十字に切り込みを入れ、切り込みを開きながら割ります。水の入ったボールに入れ、ほぐしながら皮などを取り除き、実の周りの部分を食用とします。
抗酸化ビタミン(ビタミンC、β₋カロテン、ビタミンE)を一緒に摂取することで、抗酸化作用がさらに高まり、老化防止などに効果を発揮すると考えられます。
ざくろの種子や果皮にはアレルギー反応も報告されてます。果物アレルギーがある人、植物アレルギーがある人は、避ける又は医師によるアレルギー検査のもと摂取するとよいでしょう。[※17]
海外では薬との服用で副作用があったとの報告があり、薬と高濃度のザクロエキスや、ザクロの大量摂取について詳細なデータがないため、注意が必要です。[※18]
果物として、種子や果皮の適度摂取は安全とされますが、安全性のある文献が見当たらず、信頼できるデータが見当たりません。
樹皮と根は、駆虫薬として用いられていたこともあるアルカロイドが含まれており、食用には不適です。[※12]