ワカメは食生活のなかで、味噌汁、スープ類、サラダ、混ぜご飯などいろいろな料理に活用できます。また、比較的安価のため食生活には取り入れやすい食材です。ワカメはミネラルが多いということが知られていますが、ほかには食物繊維も多く含まれています。ミネラルや食物繊維など、ワカメに含まれる有効成分が、どのような働きをするのかについて説明していきます。
ワカメとはコンブ目チガイソ科ワカメ属の海藻です。「海の野菜」と呼ばれる海藻の一種。食用として、食卓にあがる一般的な食材のひとつです。
ワカメ特有のヌメリ成分は、食物繊維のフコイダンやアルギン酸によるものです。フコイダンは、水溶性であり、コレステロールや中性脂肪、血糖値を下げる働きがあり生活習慣病の予防になります。アルギン酸は、血圧の上昇を抑制する働きがあり、β-カロテンは抗酸化作用があります。
また、新陳代謝を活発にし、細胞を活性化させるヨウ素が豊富に含まれているのも特徴です。
低カロリーで、食物繊維が豊富、ボリュームアップ効果も期待できることからダイエット目的や生活主観病予防にも使用されることが多い食材です。
ワカメには次のような効果があるといわれています。[※1]
■高血圧の予防効果
生活習慣病のひとつである高血圧症の患者は約1000万人といわれています。原因は、塩分の摂り過ぎ、加齢による血管の老化、ストレス、運動不足、肥満などです。ワカメに豊富に含まれるカリウムやアルギン酸(ヌメリ成分)には、体内にあるナトリウムの排出を促し、高血圧予防の効果があります。
■コレステロールの減少効果
ワカメ特有のヌメリ成分(アルギン酸)があります。ヌメリ成分が脂肪を包み込んで体外に排泄することで、コレステロールバランスの調整効果が期待できます。コレステロールバランスが改善されることで、血栓や動脈硬化の予防につながります。
■甲状腺ホルモンの生成
ワカメに豊富に含まれているヨウ素は、体に必要な栄養素であり、甲状腺ホルモンの主材料になります。新陳代謝を促し、子どもの場合は成長ホルモンとともに成長を促進します。[※2]
■老化防止効果
β-カロテンは、抗酸化作用があります。ヒトは呼吸により酸素を体内に取り込み、活動やストレス等で活性酸素が発生します。予防には、抗酸化作用の成分が含まれている食べ物を摂取することが必須とされています。ワカメを摂取することで、老化防止や免疫力向上効果が得られます。
■ガンの予防効果
フコダインの働きで、ガン細胞を死滅させ、ガンの予防効果があると考えられています。
■免疫力アップ効果
フコイダンは、体外から侵入した細菌やウイルスを撃退するNK細胞を活性化する働きもあり、免疫力をアップする効果[※3]があります。
※NK細胞…ナチュラルキラー細胞といい、リンパ球に含まれる免疫細胞のひとつ。外敵を攻撃する働きをもつ。
■骨粗鬆症の予防効果
ワカメはカルシウムを豊富に含みます。カルシウムは骨形成のほかに神経伝達にも必要な栄養素です。発汗や尿などで、体外へ排泄される量が多いので、カルシウムは意識的に摂取することが大切です。
■減量効果
ワカメは、低カロリー食材としても知られています。ワカメのエネルギー量は、カットわかめで可食部100gあたり138kcalです。実際に、味噌汁などで使用する量は1人分1~2g、エネルギー量は約2~3kcalです。摂取エネルギー量を抑え、減量に最適な食材でもあります。
■抗ガン作用
海藻成分フコイダンは、ガン細胞の細胞死(アポトーシス)の誘導や増殖・転移の抑制、および腫瘍部分での血管新生の抑制などに働くことが報告されています。フコイダンは腸から吸収されにくいため、腸内に留まりながら免疫機構を活性化させ、間接的に腫瘍に対し、効果を発揮させていると考えらえています。
フコイダンを摂取すると、自然免疫に関するマクロファージや樹状細胞が活性化することが明らかになっています。[※4]
※アポトーシス…細胞がもっている自己プログラムのこと、必要に応じた細胞死を引き起こすプログラムを指す。
■「わかめペプチド」による血圧上昇抑制作用
ワカメの成分アルギン酸以外で、理研ビタミン株式会社の開発した機能性表示食品である「わかめペプチド」の製品でも明らかな血圧降下作用[※5]があることがわかりました。
※わかめペプチド[※6]…理研ビタミン株式会社と東北大学の共同研究により、わかめのたんぱく質を酵素で分解してできるアミノ酸の結合体。わかめ由来の血圧安定成分を「わかめペプチド」と名付けた。
■代謝促進作用
ヨウ素は胃や小腸から吸収され、ほとんどが甲状腺にとりこまれ、甲状腺ホルモンの成分になります。甲状腺ホルモンは、交感神経の感受性を高め、三大栄養素の代謝を促進することで新陳代謝を活発化させます。
ヨウ素は、新陳代謝の活発化のほかに、成長を促す働きがあります。神経細胞の発達、末梢組織の成長、たんぱく質の合成にも関与しています。
乳幼児期や成長期の子どもにも不可欠なミネラルです。ヨウ素が不足すると心身の健康な発達が阻害され、発育不全や脳の発達障害、神経障害を招くこと[※7]があります。
カリウムは、細胞内の水分量や浸透圧の調節作用、アルギン酸と同様にナトリウムの排泄を促す作用があり、高血圧の予防になります。マグネシウムは、カルシウムとリンとともに働いて丈夫な骨や歯を形成します。
アルギン酸は水溶性・不溶性食物繊維の性質をもちます。アルギン酸単体では、不溶性ですが、結合するミネラル(ナトリウムやカリウム)によって、水溶性のアルギン酸カリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウムなどになり、不溶性のアルギン酸カルシウムになります。
不溶性食物繊維は、血中のコレステロールを減らすとともに、ナトリウムを排泄する作用があることから高血圧、動脈硬化、脂質異常症の予防、中性脂肪の吸収抑制により肥満の予防効果もあります。
水溶性食物繊維も不溶性と同様の作用効果があります。腸内の善玉菌を増やし、腸内にたまった老廃物の排泄を促進することにより腸内環境を整え、便秘解消や大腸がんなどの予防になります。
フコイダンは、胃粘膜の保護をすることで胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの原因になるピロリ菌が胃壁に付着することを防ぎます。
ワカメに含まれている成分は機能性に富み、健康・美容の両方で効果の発揮が期待できる食品でしょう。
生活習慣病が気になる、血圧が高い、血糖値・コレステロールが気になる、成長期のお子さん、ストレスを感じている、ダイエットがしたい、便秘・肌荒れが気になるなどの症状が気になる方などに摂ってもらいたい食品です。
普段からの食事で海藻類の摂取が少ないと感じるかたは、サラダ・和え物・酢の物・味噌汁・スープなどに取り入れることで、生活習慣病などのリスク低下が期待できるでしょう。
ワカメのなかに含まれている「ヨウ素」には推奨量と耐容上限量が設定されています。
推奨量は成人男女で130μg/日(0.13mg/日)、耐容上限量は成人男女で3000μg/日(3.0mg/日)です。[※8]
ヨウ素は、摂取不足でも過剰摂取でも、それぞれで症状がでますが、通常の食事では心配はありません。たとえばお味噌汁にカットわかめ(乾)を1人分1gとすると、0.085mgのヨウ素が含まれています。
ヨウ素は、ほかに魚介類で、カキ、カツオ、ぶり、さんま、まあじなどに多く含まれています。
ヨウ素の過剰摂取では、甲状腺ホルモンが作られなくなり甲状腺機能低下症を引き起こす場合がありますが、この場合、ヨウ素の摂取を減らすことで改善が期待できます。
また、バセドウ病において、ヨウ素の制限が必要であるという意見がありますが、実際の量や根拠についてはまだ不明な点があります。ただし、過剰摂取は避ける必要があります。[※12]
理研ビタミン株式会社が独自の技術と東北大学との共同研究から発見したのが、血圧を安定させる働きをもつ成分「わかめペプチド」です。理研ビタミンでは、試験管レベル、動物での試験、ヒト試験などで、降圧効果を明らかにしました。
未治療の軽症高血圧症者男女36名を被検者にして試験が行われました。
わかめペプチドを500mg配合した食品摂取グループとプラセボ摂取グループに分け、1日1個8週間毎日摂取。血圧は、試験摂取前2週間、試験摂取期間中、終了後4週間まで測定しました。
わかめペプチドを摂取したグループは、摂取期間中は明らかに血圧降下作用が認められましたが、摂取をやめると徐々に血圧が元の数値に近くなることもわかりました。[※6]
これらの結果から「わかめペプチド」が血圧に影響があると考えられます。今後の研究に期待ができます。
ワカメに含まれている「フコイダン」が、ここ数年で急速に研究が進められています。
フコイダンは、1913年、スウェーデンのウプサラ大学の教授がコンブやヒバマタから硫酸基のついた粘質物を分離したことにより発見しました。
フコイダンが発見されてから、100年以上経過し、現代ではさまざまな機能が発見されています。ただ研究が始まったばかりの頃は、特に大きな発見はありませんでした。
当時は、特定成分の抽出や分析が難しく、フコイダンが研究対象にはならなかったというのが理由のひとつです。
また、フコイダンを構成している「単糖L-フコース、D-フコース」についての注目が高く、フコイダンというくくりで研究される機会が少なかったことも挙げられます。
1970年代から徐々に研究報告が増え、抗ガン作用の効果が示唆されるようになりました。[※9]
1996年、JFKメディカルセンター、デーリック・デシルバ博士が「海藻のネバネバ成分のフコイダンがガン細胞のアポトーシスを起こせる」という研究を発表しました。
「細胞は分裂・分化を繰り返す過程で、あらかじめ自滅することが遺伝子に組み込まれています。例えば、オタマジャクシがカエルになる時に尻尾が取れるなど、すべての細胞は自分の役目を終えると、遺伝子に組み込まれた自滅プログラムにしたがって死滅します。
ガン細胞は、このアポトーシス機能がうまく働かなくなっています。自滅プログラムがオフになってしまい、ガン細胞は、際限なく分裂・分化を繰り返し、どんどん増殖することによって正常な細胞の居場所を侵食してしまうのです。」(『わかさの秘密/成分情報/フコイダン』より引用)[※3]
ガン予防・治療には、いろいろな研究がされていますが、フコイダンはそのなかのひとつです。作用に対してのエビデンスが、より多くなれば、普段の食生活の中で簡単に取り入れることができる食べ物のひとつになると考えられます。
ワカメに含まれるβ-カロテンやヨウ素は脂溶性の栄養素です。油と摂取することで吸収率がアップします。サラダで摂るときには、オリーブオイルやサラダオイルなど油の入ったドレッシングをかけるといいでしょう。
ワカメに含まれる食物繊維は酢と和えることで、やわらかくなりフコイダンが分解されやすく摂取しやすくなります。
ワカメと一緒に有機酸を含む梅やトマト、利尿作用のあるセロリやリンゴと一緒に摂取すると、利尿作用が促進されます。尿とともに毒素である尿酸を排泄することができ、痛風の予防や改善が期待できます。
ほかには豆腐との組み合わもおすすめです。大豆から作られた豆腐は、植物性たんぱく質、ミネラルなどを豊富に含んだ食品です。
豆腐に含まれる栄養素でサポニン(コレステロール値低下作用)がありますが、摂取しすぎるとヨウ素を体外へ排泄してしまいます。ワカメはサポニンの摂り過ぎの弊害を防ぐ作用があります。[※10]
ワカメ自体には副作用があるという報告は見当たりません。ヨウ素については欠乏症と過剰症があります。
摂取不足になると甲状腺肥大と甲状腺腫、過剰摂取であれば甲状腺肥大、甲状腺腫、成長障害、神経障害を発症する可能性があります。
日本人が1日に摂取する量は、1.5mgと考えられているので、摂取不足になることはまずないでしょう。
過剰摂取した場合は、甲状腺肥大、甲状腺腫、甲状腺機能亢進症などになる可能性があります。
甲状腺機能亢進症は、日本では起こることはほとんどありません。過剰に摂取した場合、甲状腺に異常がある人は、甲状腺機能低下症になる可能性があります。[※11]
いろいろな効果や作用を期待するあまりに、過剰に摂取して、サプリメントも併用してしまう場合などは注意が必要です。通常の食事で摂っている場合には問題ないといえます。
甲状腺関連の疾病や放射性ヨウ素治療や、手術をされているかたは、医師に確認の上、指示に従いましょう。