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ビタミンDの効果とその作用

ビタミンDは、昭和38年に公表された三訂日本食品標準成分表の一成分として最初に収載された栄養成分です。[※1]紫外線を浴びることによって体内で生成できる唯一のビタミンで、太陽のビタミンと呼ばれている栄養成分です。[※2]ここでは、成分の概要から、どのような効果があるのかをまとめています。

ビタミンDとはどのような成分か

ビタミンDは、脂溶性ビタミンで、天然に含む食品はごく一部しかないものの、サプリメントとして入手することができます。

人間が紫外線を浴びることで、体内でも生成することが可能な栄養成分の1つです。消化管におけるカルシウム吸収を促し、適切な血清カルシウム濃度と血清リン濃度を維持することで、骨の正常な石灰化を可能にすることができる成分です。

これまで研究ではあまり明らかにされてきませんでしたが、近年ビタミンDを充足させることで、骨を健康に保つことが期待されている成分なので、日々研究が進められています。[※3]

ビタミンDの効果・効能

ビタミンDでは、次のような効果があると研究で明らかにされています。

■代謝活性化

日光中の有効紫外線によって照射されたビタミンD3に転換したのち、ビタミンD結合たんぱく質(DBP)と結合して体内に吸収され、その結果代謝活性につながります。[※4]

また、次のような症状を改善する/予防する効果が期待できると言われています。

■骨粗鬆症

骨を脆弱化させ骨折リスクを増大させる骨粗鬆症は、カルシウム摂取不足と関連づけられることがありますが、ここ最近では、ビタミンDが不足すると、カルシウム吸収量も低下し、その結果として骨粗鬆症を発症すると言われています。[※3]

■原発性低リン血症性クル病/未熟児クル病

じん尿細管におけるリンの再吸収不全による低リン状態から、骨疾患が誘発されるこの病気は、ビタミンD剤による治療が多く行われています。[※4]

■副甲状せん機能低下症

手足のしびれや、白内障、大脳基底核の石灰化を引き起こす難病にも指定されているこの病気にも、治療に使われています。[※5]

■がん

近年では、大腸がんに、ビタミンDが防御対策になるかもしれないと言われています。

ただし、ビタミンンD不足ががんリスクを高めるのか、ビタミンDをたくさん摂取することで、がんへの予防につながるかはまだ研究段階なので、今後がん治療への期待がされています。[※3]

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

ビタミンのうち、日光曝露によって生成されていることがわかります。波長290〜320ナノメートルの紫外線(UV)B波が直接皮膚に当たると、皮膚の7—デヒドロコレステロールがプレビタミンD3に変換され、これがビタミンD3になると言われています。[※3]

このことで、ビタミンDを太陽の光から生成することは可能ですが、条件が場所によって異なるため、太陽光から必要摂取量を確保するのは難しいと言われています。[※3]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ビタミンDは天然の食品の中には限られているため、サプリメントでも摂取する必要があります。

特に、ビタミンDが不足して起きるビタミンD欠乏症を発症すると、骨軟骨化症を引き起こし、骨の脆弱性や筋力低下につながる。

以下の人は、ビタミン欠乏症のリスクにある人と言われています。

■母乳栄養児童

母乳で育てられた幼児は、ビタミンDを必要とします。その理由は、母乳にはビタミンDを含んでいないためです。

幼児にサプリメントを与えて、ビタミンD摂取のサポートをしてあげましょう。この時のサプリメントは、幼児でも安心できる量のものを選ぶようにします。[※6]

■高齢者

高齢者の皮膚は、日光からビタミンDを生成する能力が低下しています。また、生成だけではありません。活性型に変換する腎機能も低下しているので、必然的に、吸収率が落ちています。

それ以外で、ビタミンDが不足し摂取すべき人は次の通りです。

■日光曝露が限られる人

日本の地域によっては、日照時間が限られている地域があります。特に、冬季の日照時間の少ない地域に住んでいる人は、冬にビタミンDを摂取する必要があります。

また、仕事であまり外に出ない人も、体に日光を浴びていないため、ビタミンD生成が低下していることになります。[※7]

  • 肌色が濃い人
  • 炎症性腸疾患や脂肪吸収不良を起こす疾患の人
  • 肥満
  • 胃にバイパス手術を受けたことがある人 [※3]

ビタミンDの摂取目安量・上限摂取量

ビタミンDを摂取する際は、過剰摂取に気をつける必要がある。これまで過剰に摂取してしまうと、食欲不振、体重減少、多尿、心臓不整脈といった非特異的症状を引き起こしてしまう可能性があると言われてきました。

ビタミンDの許容上限摂取量は、次のとおりです。

  • 0〜6ヶ月 25mcg
  • 7〜12ヶ月 38mcg
  • 1〜3歳 63mcg
  • 4〜8歳 75mcg
  • 9〜18歳 100mcg
  • 19歳以上 100mcg [※3]

しかし、ここ最近の研究結果では、上限をはるかに超えるビタミンDを摂取しても、人体に影響が出ないという報告があるので、上限摂取量を超えてもビタミンDが有害な影響を与える可能性は低いと言われています。そのため、摂取上限が今後増える可能性もあります。[※8]

ビタミンDのエビデンス(科学的根拠)

Bischoff-Ferrariらの研究によると、ビタミンDを付加(12〜19μg/1日)した人は、椎体骨折以外の骨折を20%程度予防することができると結論づけました。[※9]

これによって、骨粗鬆症を改善するだけでなく、ビタミンDが転倒時の骨折を予防することにつながると期待されています。[※9]

桒原 晶子の研究によると、

「介護施設に入っている高齢者を対象に、ビタミンDを適用量(5μg/日)与え、血液濃度を測定。基準値を満たしているのにも関わらず、ビタミンDを摂取することによって、骨を健康的に保つために必要な血液状態に達していなかった人がいた。

そこで、海外の研究で解明されてきた20μg/日を与えると、4ヶ月後に十分なビタミンD量で満たされた。

これは、あまり太陽光に当たっていない人は、ビタミンDを意図的に摂取することで改善することを証明している。」[※10]

研究のきっかけ(歴史・背景)

19世紀後半20世紀初頭にかけ北ヨーロッパや北アメリカで流行した「くる病」を研究していたエドワード・メランビーによって発見されました。

当時はビタミン学の発生期であり、ビタミンAが発見されたばかりだった。Aと誤解しないよう新たな栄養素であるということで、ビタミンDと命名された。[※11]

専門家の見解(監修者のコメント)

東京大学医学部附属病院医師の伊藤明子氏によると、

「日本人のVD不足についてはいままで、施設ベースや地域ベースの研究しかなかったが、現在ポピュレーションデータを使った解析を進めている。

昨年の日本内分泌学会で発表した通り、0 歳から15歳までのVD欠乏性くる病はここ10年(2005年~2014年)で約10倍増加している。16歳から74歳の骨軟化症も解析中であるが、VDは全体的に足りていない状況だ(近く解析結果を発表予定)。

ポピュレーションデータの解析では病院のレセプトデータを利用している。つまり確定診断を受けた人の数だけでもそれだけの増加があり、VDが不足している人は実際にはもっと多いはずだ。」[※12]

このように、日本人の多くがビタミンD不足であることを主張しています。

また海外では、ロンドン大学クイーン・メアリーにて呼吸器感染症、免疫の教授を務めるエイドリアン・マルティーノ博士によると、

「我々の発見したところによれば、体内のビタミンDレベルが低い人ほどサプリメントの恩恵を受けています」

ビタミンDのサプリメントを摂取している人は、健康的に過ごすことも実験結果で明らかになってきています。[※13]

日本人は、ビタミンDの摂取に対する意識が低く、今後海外のように、サプリメントで多く摂取する必要があるかもしれません。

ビタミンDを多く含む食べ物

ビタミンDを多く含む食べ物として、魚類が多く挙げられている。

  • イワシ丸干し(30g)…15.0μg
  • サンマ 1尾…14.9μg
  • シラス干し 大さじ2/10g…6.1μg
  • ブリ 1切れ(80g)…6.4g

魚以外だと、きのこ類にも含まれています。

  • 干ししいたけ(2個 6g)…0.8μg
  • きくらげ(2枚/2g)…1.7μg

しいたけは、紫外線に当てるとビタミンDが増えるので、食べる前は日光に当てるようにしましょう。

また、冬の季節は紫外線が弱くなり、ビタミンDが不足がちになるので、積極的な摂取が必要です。[※14]

相乗効果を発揮する成分

ビタミンDを摂取する上では、カルシウムと一緒に摂ることでより効果的にカルシウムの吸収率を高めます。また、尿中へのカルシウム排泄を抑える効果もあるので、効率的に摂取が期待出来ます。

ビタミンDが不足していると、カルシウムが十分吸収されないので、結果として健康的な骨の形成の妨げとなってしまいます。[※14]

ビタミンDの副作用

ビタミンD自体の副作用は、次のものが考えられます。

吐き気、嘔吐、食欲不振、便秘、脱力感、体重減少などがあげられます。これは、血中のビタミンDの量が多くなると引き起こされます。

過剰にビタミンDを摂取しすぎると、錯乱、見当識障害、心拍リズムの異常が見られることもあるので、気をつけましょう。[※3]

次の医薬品と相互作用をする可能性があります。
そのため、専門家とビタミンD摂取について相談をする必要があります。

注意すべき相互作用

■ステロイド剤

炎症抑制で処方される副腎皮質ステロイドは、ビタミンDの代謝を阻害する可能性があります。

そのため、ステロイドを長期使用していると、骨量減少や、骨粗鬆症の原因となります。

■海外製の薬品

肥満薬オリスタット、コレスチラミンは脂溶性ビタミンの吸収を低下させると言われています。

また、それ以外にも、てんかん発作予防と抑制に使用されるフェノバルビタールとフェニトインは、肝臓におけるビタミンD代謝を亢進させるため、不活性化をさせます。

どちらの医薬品も、結果として骨粗鬆症の原因になりかねないので、十分注意をする必要があります。[※3]