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ビタミンB12の効果とその作用

私たちの体にとって、大切な栄養素の一つであるビタミンB12。貧血を治す効果がよく知られていますが、最近の研究では動脈硬化を防ぐ働きがあることも判明しています。ヘモグロビンの生成を助け、神経系統の指令伝達を助けるビタミンB12。その効能や作用、効果的な摂取方法や相乗効果を発揮させる食べ物などを解説します。

ビタミンB12とはどのような成分か

ビタミンB12は水溶性ビタミンであるビタミンB群の1つで、神経や血液の細胞を健康に保ち、DNAの生成を助けてくれる栄養素です。魚介やレバーなどの動物性たんぱく質に多く含まれ、貧血や体力低下の予防に役立ちます。 [※1]

ビタミンB6とともに動脈硬化の危険因子とされるホモシステインの血中濃度を正常に保つ働きがあります。[※2]

ビタミンB12が不足すると、赤血球の減少や赤血球の巨大化などを招く、巨赤芽球性貧血という悪性の貧血になる可能性があります。特に女性や動物性食品を摂取しないベジタリアンなどに不足することが多いので、意識して摂取することが大切です。[※4]

ビタミンB12の効果・効能

ビタミンB12はコバルトを含んだビタミンの総称のことで、ヒドロキソコバラミン、アデノシルコバラミン、メチルコバラミン、シアノコバラミン、スルフィトコバラミンなどで形成されています。体内に取り込まれたビタミンB12は赤血球の生成を助けたり、神経の機能を正常に保ったりという働きがあります。

不足すると、赤血球の減少や巨大化による悪性の貧血「巨赤芽球性貧血」を引き起こし、疲労や体力の低下を招きます。生物以外では合成されないため、植物性の食品にはほとんど含まれていません。

そのため、ベジタリアンやヴィーガンの人はビタミンB12不足になることが多いのです。[※5]

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

食品に含まれるビタミンB12は、たんぱく質と結合した状態です。ビタミンB12を含む食品を摂取すると、胃の中で胃酸やペプシンの作用により、たんぱく質と分離されます。

分離されたビタミンB12は、胃壁細胞から分泌されるたんぱく質(内因子)と結合して、腸で吸収され、血中に入ります。血中に入ったビタミンB12は、輸送たんぱく質(トランスコバラミン)と結合して肝臓や抹消組織に送られ、葉酸と共に血中のヘモグロビン生成を助けたり、脳から指令を送るのを助けたりします。[※1] [※5]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ビタミンB12は体にとって重要な栄養素です。そのため、万人が摂取すべきものですが、特に貧血ぎみの人や、野菜中心の生活をしているベジタリアン・ヴィーガンの人は、積極的に補給した方がいいでしょう。

また、高齢者の大半は食品中のビタミンB12を吸収するための胃酸が十分に分泌されないことがあります。食品からの摂取が難しい人は、治療薬やサプリメントで摂取することにより、貧血などを防ぐことができます。[※1]

ビタミンB12の摂取目安量・上限摂取量

ビタミンB12の成人1日あたりの推奨量は2.4µg。これは、豚レバーでいうと約10g、あさりなら約1個に含まれます。成人1日あたりに許容される最大摂取量は約1500µgです。[※2]

水溶性のビタミンであるビタミンB12は過剰にとっても必要以上に吸収されず対外に排出されるので、取りすぎになる心配はありません。[※3]

ただし、巨赤芽球性貧血の人は致死的な低カリウム血症や凝血を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。[※1]

ビタミンB12のエビデンス(科学的根拠)

ビタミンB12欠乏症は、悪性貧血や神経学的合併症を引き起こすことがあります。Kuzminskiらは、コバラミン(ビタミンB12)欠乏症患者に1日2mgのシアノコバラミン(ビタミンB12の一種)を4か月にわたって経口投与しました。

すると、ビタミンB12の数値が向上。悪性貧血の改善が見られるという結果が得られました。

この実験は、悪性貧血治療において、ビタミンB12の摂取は有効である可能性が高いことを示唆しています。[※8]

研究のきっかけ(歴史・背景)

古来より人を悩ませてきた貧血。古代ギリシャ時代より貧血の治療に、鉄剤が用いられていました。しかし、中には鉄分摂取だけでは改善されない貧血もあり、長年治療法が研究されてきました。

1948年、アメリカのフォルカースらは、牛乳に含まれる成分の中に、悪性貧血を改善する効果がある物質を発見したのです。これが、ビタミンB12です。この研究により鉄分を摂取しても改善されない悪性貧血の原因がビタミンB12不足にあることが判明し、今日の治療へとつながっているのです。[※7]

専門家の見解(監修者のコメント)

東京大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科教授の黒川峰夫先生は、ビタミンB12欠乏と貧血の関係について、次のように述べています。

「ビタミンB12(以下B12)欠乏による貧血は、比較的最近の調査から、日本では一般人口10万人当たり約2人と推測されています。B12欠乏では、貧血に加えて消化器症状や様々な神経症状をきたすことがあり、適切な治療や予防が大変重要となります。食事で摂取したB12は胃粘膜から分泌された内因子と結合し、回腸末端で吸収されます。自己免疫的機序などにより萎縮性胃炎を起こすと内因子の分泌が低下し、B12の吸収が不良となり貧血をきたします。これが悪性貧血と呼ばれるもので、B12欠乏による貧血の約3分の2を占めます。」[※9]

ビタミンB12を多く含む食べ物

ビタミンB12は、主に魚介やレバーなどの動物性たんぱく質に多く含まれています。代表的な食品は以下の通り。

【貝類】
はまぐり、しじみ、あさり
【魚・海藻類】
鰹、鮭、鱒、鮪、海苔
【肉類】
牛・豚・鶏のレバー、内臓など
【その他】
卵、牛乳、チーズ

中でも圧倒的に多いのは、はまぐりなどの貝類。積極的に摂取することで、貧血の防止にもつながります。

ビタミンB12は水に溶けやすいので、生で食べたり、汁ごと食べるスープや煮物・炒め物などにしたりすると、効率よく摂取することができます。[※1]

相乗効果を発揮する成分

ビタミンB12は葉酸と共に摂取することで、ヘモグロビンの生成を助けます。ヘモグロビンの減少は鉄欠乏性貧血を引き起こします。貧血が起こると、頭痛や疲労、動悸や息切れなど、様々な少々が起こります。[※6]

これらの改善にも、ビタミンB12と葉酸の摂取が大切になります。

葉酸はほうれん草やアスパラガス、枝豆や春菊などに多く含まれています。また、ビタミンB12はビタミンB6と共に摂取すると、動脈効果の原因のひとつとされているホモシステインの血中濃度を低下させる効果があります。

ビタミンB12に副作用はあるのか

ビタミンB12自体は、何の害も及ぼさないことが証明されています。水溶性ビタミンのため、多量に摂取した時も体外に排出されるため、過剰摂取になることはありません。

ただし、服用している薬によっては相互作用を引き起こす場合があります。

例えば、感染症治療に使用される抗生物質であるクロラムフェニコール、消化性潰瘍疾患治療などに用いられる一部のプロトンポンプ阻害薬やヒスタミンH2受容体拮抗剤、糖尿病治療に使われるメトホルミンなどと併用すると、体内吸収や体内での使用を妨げる可能性があります。[※1]

医薬品やサプリメントを服用している際は、担当の医師や薬剤師などに相談しましょう。