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トコトリエノール

ここでは、ビタミンEの種類の中でもっとも強い抗酸化作用をもつ「トコトリエノール」[※1]について解説。トコトリエノールの効果効能や作用機序、ほかのビタミンE(トコフェロール)との違い、副作用や相互作用などをまとめています。

トコトリエノールとはどのような成分か

トコトリエノールは、ビタミンE(脂溶性ビタミン)のひとつです。

ビタミンEの種類には「トコトリエノール」と「トコフェロール」があります。トコトリエノールは、トコフェロールよりも強い抗酸化作用や即効性があるため、別名スーパービタミンEと呼ばれています。

■トコトリエノールの種類

トコトリエノールは、さらに4つの種類[α(アルファ)β(ベータ)γ(ガンマ)δ(オメガ))に細分化されます。これらは構造が異なる化合物なので、それぞれ抗酸化作用の強さが異なります。

4種類の中でもっとも抗酸化作用が優れているのは「α-トコトリエノール」です。[※1]

トコトリエノールは、含有されている食品が少ない、加工コストが高いなどの理由から、あまり注目されていませんでした。そのため、これまで健康食品や化粧品には、加工コストが安いトコフェロールが利用されていました。

しかし最近の研究で、トコトリエノールが脳や心臓の健康維持に役立つことがわかってきました。トコフェロールにはない効果効能をもつことから、トコトリエノールに対する期待が高まっています。[※2]

トコトリエノールの効果・効能

トコトリエノールは、次のような症状・疾病・疾患への効果が期待できます。[※2][※3][※4][※5]

■老化

シミやくすみ、たるみやしわなどの原因となる活性酸素のはたらきを阻害して、肌の老化速度を抑えてくれます。

■色素沈着

シミのもととなる黒色メラニンが皮膚に沈着するのを防ぎます。

■炎症

さらに、トコトリエノールは炎症性成分の活性を抑えて、炎症反応が起こるのを防ぎます。

■がん

正常な遺伝子情報にダメージを与える活性酸素や炎症を抑えることで、がんの発症リスクを低下させます。

■血行不良

トコトリエノールは、血液の通り道を狭める要因・酸化悪玉コレステロールの発生を防ぎ、血流を改善します。

■動脈硬化

血液の通り道を狭める血栓の増加を防ぎ、動脈硬化を予防・改善します。

■動脈硬化が原因となる疾病・疾患

トコトリエノールは、動脈硬化によって起こる脳卒中や高血圧、心筋梗塞の予防にも有効です。

■メタボリックシンドローム

血中のコレステロールや中性脂肪を減らす作用によって、メタボリックシンドロームを予防・改善します。また、メタボリックシンドロームの人に起こりやすい高脂血症や心疾患の予防にもつながります。

■高血糖

血糖値の上昇を抑えるはたらきがあります。

■神経系の疾病・疾患

トコトリエノールには神経を保護する作用があるため、神経の異常が原因の疾病・疾患(遺伝性自律神経異常症やアルツハイマー)の発症リスクを抑えられます。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

トコトリエノールには、トコフェロールの40~60倍に相当する強力な抗酸化作用があります。[※2]そのため、過剰に増えた活性酸素を除去するのに有効です。

活性酸素は、普段ウイルスや細菌を攻撃して体を守っている化合物ですが、過剰生成されるとウイルスや菌のほか、健康な細胞まで攻撃してしまうため、さまざまな問題が起こります。[※7]

肌の老化や身体機能の低下、悪玉コレステロールの増加などは、すべて活性酸素の攻撃によって起こる問題です。トコトリエノールの強力な抗酸化作用は、これらの問題をまとめて解決してくれます。

これらの作用は、悪玉コレステロールの増加が原因となる症状・疾病・疾患(血行不良や動脈硬化など)の予防にもつながります。

また、炎症性成分(悪性エイコサノイド)のはたらきや炎症反応を引き起こす信号の伝達を抑制するはたらきもあります。この作用は、炎症性のアレルギー反応にも有効です。

抗酸化作用と抗炎症作用の相乗効果で、細胞の損傷・炎症が要因となる悪性がん細胞の発生リスクを低下させられます。

そのほか、トコトリエノールには血糖値の上昇を抑える作用、血清コレステロール値を下げる作用、神経を保護する作用などがあります。これは、トコフェロールにはないトコトリエノール特有の作用です。

また、トコトリエノールは血糖値の上昇を抑える作用によって高血糖を予防。血清コレステロール値を下げる作用によって、メタボリックシンドロームや高脂血症、心疾患の発症リスクを下げられます。

神経保護作用は、自律神経や脳組織の損傷を防ぐ作用です。このはたらきによって、遺伝性の自律神経異常症やアルツハイマーの発症リスクが下げられます。[※2]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

トコトリエノールは、次の条件に該当する人におすすめです。

  • 激しい運動をしている
  • 紫外線を浴びる機会が多い
  • 肌の衰えを感じている
  • 喫煙者
  • ストレスの多い環境にいる
  • 自炊をしない
  • 揚げ物が好き
  • 生活習慣病が気になる

トコトリエノールの摂取目安量・上限摂取量

トコトリエノールは、含有されている食品が少なく、加工して健康食品に配合するにもコストがかかることから、摂取目安量と上限摂取量は定められていません。

目安として、「日本人の食事摂取基準(2015年度板)」で定義されているトコフェロールの摂取目安量・上限摂取量を参考にするとよいでしょう。

【トコフェロールの摂取目安量と耐容上限量】

目安量 上限量
男性(18歳以上) 6.5mg 750~900mg
女性(18歳以上) 6.0mg 650~700mg
妊婦 6.5mg -
授乳婦 8.0mg -

出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」[※8]

ただし、トコトリエノールとトコフェロールの吸収率の違いはまだ明らかになっていません。トコトリエノールの作用はトコフェロールよりも強いため、摂り過ぎないように注意してください。

トコトリエノールのエビデンス(科学的根拠)

アメリカのSHAWN TALBOTT博士は、トコフェロールにはない、トコトリエノールならではの「コレステロール値低下作用」を明らかにしました。ここではそのエビデンスをご紹介します。[※2]

■動物実験

実験用の動物を2グループにわけ、片方にはトコトリエノールを投与、もう片方のグループにはトコフェロールを投与しました。それぞれ実験前と実験後にコレステロール値を測定・比較して、コレステロール値低下作用が強いのはどちらのグループかを調査しました。

実験の結果、トコトリエノールを摂取したグループのみ、実験前よりも総コレステロール値と悪玉コレステロール値が低下したと報告されています。また、悪玉コレステロールと善玉コレステロールの比率の改善も認められました。

■ヒトを対象とした実験

対象者らに75~100mgのトコトリエノールを毎日摂取させ、コレステロール値の変動を2か月観察しました。

実験の結果、対象者らの総コレステロール値は14~22%低下、悪玉コレステロール値は9~20%低下したと報告されています。

研究のきっかけ(歴史・背景)

H.M. Evans らは、1922年に不妊症を改善する因子をレタスや牧草から発見し、ビタミンEと名付けました。[※9]

1936年には、O.H.Emersonらが小麦胚芽油からビタミンEだけを取り出すことに成功。ギリシャ語で子どもを産むという意味の「tocos」、力を与えるという意味の「phero」、アルコールを意味する「ol」を組み合わせて、トコフェロールと命名されました。[※10]

トコフェロールの発見をきっかけにビタミンEの研究が盛んになり、もう1種類のビタミンE「トコトリエノール」が発見されました。

しかし、トコトリエノールを含有する食品は限られるため、発見された当時はあまり研究が進められませんでした。[※2]

トコトリエノールが注目されるようになったのは2000年頃。当時の研究で、トコフェロールよりも強い抗酸化作用やトコフェロールにはない生理作用が明らかになり、今後の研究に期待が寄せられています。

専門家の見解(監修者のコメント)

トコトリエノールの研究を行ったSHAWN TALBOTT 博士は、トコトリエノールの摂取方法について次のようにコメントしています。

「私は科学者として、マレーシア産のパーム油に由来するトコトリエノールをお勧めします。その理由は、トコトリエノール研究の大多数がこのパーム油を用いて行われてきたためです」

(株式会社光洋商会「話題のトコトリエノール」より引用)[※2]

パーム油とは、アブラヤシの果肉から抽出した油のことです。パーム油由来のトコトリエノールは、これまで数多くの研究で効果が確認されているため、高い効果が期待できます。

しかし、パーム油にはトコトリエノール以外の成分も含まれるため、やみくもに摂取するのは危険です。

植物油研究科の林裕之と知食料理研究家の林葉子が共同執筆で連載しているコラム「少油生活のススメ」では、パーム油過剰摂取の危険性について解説されています。

「パーム油には血糖値を下げるインスリンの働きを阻害する作用も確認されており、糖尿病の発症にも深く結びついています」

(BusinessJournal「林裕之&林葉子『少油生活のススメ』」より引用)[※11]

「マウスにパーム油を与えた別の実験では、キャノーラ油、ラードを与えたマウスより異常に生存率が低かったとの報告もあります」

(BusinessJournal「林裕之&林葉子『少油生活のススメ』」より引用)[※11]

あまり知られていませんが、パーム油は日本で2番目に使用されている油です(※1位はキャノーラ油)。[※11]

ファストフードや惣菜、お菓子やインスタント食品など、さまざまな食品に使われているため、自分では気づかないうちに過剰摂取している可能性があります。

パーム油の健康被害を避けつつトコトリエノールを摂取するには、パーム油由来の健康食品や化粧品を利用すると良いでしょう。

トコトリエノールを多く含む食べ物

トコトリエノールは、以下の食品から摂取できます。[※4][※5]

  • パーム油
  • 小麦胚芽
  • 米ぬか
  • 米油

■トコトリエノールを効率的に摂取する方法

トコトリエノールを効率的に摂取したい人は、トコトリエノールが配合されている健康食品や化粧品を利用しましょう。

トコトリエノールは脂溶性ビタミンなので、油と一緒に経口摂取すると体内に吸収されやすくなります。

トコトリエノール配合の化粧品は、脂質とたんぱく質でつくられている細胞膜に良く馴染むため、手軽にトコトリエノールを補えます。[※1]

相乗効果を発揮する成分

トコトリエノールと一緒に摂ることで相乗効果を発揮するのはビタミンCです。ビタミンEとビタミンCは、それぞれ抗酸化作用をもっているため、はたらきが強くなると考えられています。

また、ビタミンCは、活性酸素と闘って疲労したビタミンEを回復させるため、単体摂取するよりもビタミンEの効果が持続します。[※1]

トコトリエノールの副作用

トコトリエノールの毒性試験では、実験用のラットに対して、トコトリエノール(体重1 kgあたり2,500 mg)を毎日与えた結果、有害な副作用は認められなかったと報告されています。また、トコトリエノールをヒトに投与する実験においても、副作用の報告はみつかりませんでした。[※12]

ただし、安全性試験のデータはまだ少ないのが現状です。体に異変を感じた際には摂取を中断し、医師に相談してください。

注意すべき相互作用

トコトリエノールは血糖値を下げるはたらきをもつため、同じ作用をもつ糖尿病治療薬を併用すると血糖値が過剰に低下するおそれがあります。

また、血糖値を下げる作用があるハーブ(デビルズクロー、フェヌグリーク、グアーガム、朝鮮人参、エゾウコギなど)でも、糖尿病治療薬と同様の相互作用が起こる可能性があります。[※13]