ティーツリー(ティートゥリー)は、樹木系のウッディーでどこか薬品のような香りが特徴です。お茶として飲まれていたという逸話から「ティー」という名前が付いています。オーストラリアの先住民・アボリジニが傷薬に利用していたと言われる、高い抗菌作用が特徴です。そんなティーツリーの効果や作用、副作用などについてまとめています。
ティーツリーはフトモモ科コバノブラシノキ属の常緑植物です。オーストラリアの東海岸やニュージーランド、インドネシアなどに分布しています。日本ではメラルーカという別名で呼ばれることもあります。
ティーツリーはオイルが流通しており、アロマセラピーや自然療法に用いられています。
高い抗菌・抗ウイルス作用があるとされ、第二次世界大戦時にはティーツリーから抽出したオイルが常に救急箱に入れられていたそうです。傷を受けた兵士の治療や殺菌に使われていたのでしょう。現代では、水虫に対して有効であるという研究結果が多く報告されています。
その他、ニキビやカンジダ症・花粉症・インフルエンザ・HIVなどさまざまな症状や疾病に対しての効果が検証されています。
精油はティーツリーの葉から水蒸気蒸留によって抽出されます。テルピネン-4-オール、α-テルピネン、γ-テルピネン、1,8シネオール、リナロール、α-テルピネオールなどが含まれています。[※1]テルピネン-4-オールや1,8シネオールには殺菌作用があることがわかっています。
経口摂取は危険とされているので、ハーブティーなどにして服用はできません。外用する場合も、原液のままだと刺激が強いため薄めて使用したり、局部のみに使用したりするのが一般的です。
ティーツリーには、下記の効果があるとされています。[※2]
■殺菌効果
水虫や爪白癬(つめはくせん)などの症状を改善してくれます。
科学的なデータは不十分ですが、以下のような効果もあるとされています。
■インフルエンザの予防
高い抗菌・抗ウイルス効果を持っているため、インフルエンザなど細菌や真菌・ウイルスが原因の疾病を予防します。
■ニキビ予防・改善
抗菌作用があるため、菌によって症状が悪化しているニキビに有効とされています。
ティーツリーには、真菌(カビ類の総称)や細菌の増殖を抑える働きがあります。
ティーツリーのアロマオイルを噴霧すると、粒子がカビ胞子や細菌に吸着。すると、菌は身動きが取れない状態になり、増殖することができなくなります。[※3]
この作用が水虫やニキビの予防・改善、風邪やインフルエンザ予防に役立つとされています。
さまざまな菌に対して有効といわれており、水虫やニキビ以外にも、ヘルペスやHIV、カンジダ症や膣感染症などにも効果が期待されています。
こういった作用は外用とした場合です。ティーツリーオイルは刺激が強いといわれているため、服用すると副作用が生じるおそれがあるため、注意しましょう。
ティーツリーは、以下のような人におすすめです。
ティーツリーオイルやオイル配合のクリームを患部へ塗布して使用します。使い方によって使用量の目安があります。[※2]
希釈して使用することがほとんどですが、100%の濃度のものを使用する場合もあります。専門家の指示のうえで使用するようにしましょう。
・水虫
25%~50%のオイル溶液を1日2回塗布します。濃度10%のクリームを使用する場合もあります。使用期間の目安は1カ月です。
・爪甲真菌症
100%のティーツリーオイル液を1日2回、半年ほど患部へ投与します。肌に異常が現れた場合は使用を中止してください。
・ニキビ
濃度5%のゲルを毎日使用します。
・口腔カンジダ症
ティーツリーオイル溶液で口をすすぎます。1回15ml、1日4回、2~4週の使用が目安です。
アメリカのロチェスター大学とハイランド病院の共同試験があります。Buck DS、Nidorf DM、Addino JGらは117名の爪真菌症の患者を2グループに分け、真菌感染症治療薬とティーツリーオイルを使って治療を実施。すると、ティーツリーオイルは治療薬と同等の効果を発揮しました。[※4]
同様に真菌に対して行われた実験を見てみましょう。
オーストラリアのロイヤル・プリンス・アルフレッド病院のSatchell ACらによる実験では、プラセボ(偽薬)とティーツリーオイルを4週間患部へ塗布し、自覚症状や保菌状態をチェック。ティーツリーオイルを使用したグループの症状の改善が見られました。[※5]
この2つの実験から、ティーツリーは真菌に対して効果があることがわかります。ちなみに真菌とはカビの仲間の総称です。
ウイルスに対する実験もあります。
中国の孫文大学の李らによる実験では、ティーツリーの抽出物がインフルエンザウイルスの増殖を抑制したという結果が出ました。[※6]
抗菌作用に加え、抗ウイルス作用もあることが示唆されています。
ティーツリーは、何世紀もの長い間オーストラリアの先住民であるアボリジニたちが、薬として使用してきた歴史があります。
アボリジニたちは、ティーツリーの葉をすり潰して傷口に塗り治療してきました。
第二次世界大戦では、ティーツリーのオイルが救急箱に常備されていたそうですが、合成薬品の登場によりティーツリーオイルは徐々に使われなくなりました。
しかし、伝統的な医学に対する関心が高まるとティーツリーの持つ抗菌や殺菌の作用に注目が集まり、ティーツリーの効果が改めて認められることとなったのです。
その反面、高濃度のオイルが精製されるようになったこと、ティーツリーと似た成分のオイルや化学合成した香料を混ぜた純度の低いオイルの流通により使用者が拡大したことで、副作用も報告されるようになりました。
ティーツリーは現在、抗菌作用を活かして石鹸や洗浄剤・シャンプーなどに添加されたり、水虫をはじめとする真菌感染の代替治療品や民間療法の1つとして用いられたりしています。
専門家の指導のもと、きちんと使用すれば副作用も少ないとされています。
薬剤師でありアロマ・ハーブ・サプリメントコンサルタントの長谷川記子さんは、ティーツリーについて、下記のように述べています。
「ティートリーは、患者さんにとても役立つ精油です。主成分のテルピネン-4-オールは、抗ウイルス、抗菌、抗真菌作用があるため、治療で免疫力が低下している人が自分でできる、薬以外の補助的な予防法として効果を発揮します。
オーストラリアの先住民が伝統的に、化膿止めや炎症、虫刺されに用いた〝天然の抗生物質〟といわれてきました。近年、日本に紹介されてからは、〝メラルーカ〟の名で親しまれています。
がん患者さんが免疫力の低下で水虫等になったときや、うつ状態やストレスで内向的なとき、フットケアのアロマテラピーにとても役立ちます。」[がんサポート 「アロマセラピスト・長谷川記子の心を癒すアロマ教室 8 ティートリー」より引用][※7]
ティーツリーオイルはがん治療の現場でも使用されているようです。薬ではないため、あくまで補助的な使い方になりますが、アロマの持つ効果効能と香りの力はいろいろな立場の人にも癒しをもたらす存在になっているといえるでしょう。
普段の生活にティーツリーを取り入れる場合、オイルを使用するのが一般的です。
オイルは小さな小瓶で販売されています。初めは少ない量を購入し、自分の使用頻度を掴みましょう。開封後、約半年で使いきれる量が目安です。
ティーツリーオイルは光によって劣化するため、色付きのビンに入っているモノを選ぶか、購入して入れ替えるようにしましょう。入れ替えるときに激しく振ってしまうと、酸化が進んで品質が劣化してしまうため、ゆっくりと移し替えるようにしてください。
保管するのは風通しがよく、子どもの手が届かない場所を選びましょう。
市販されているアロマオイルの小瓶には、オイルを1滴ずつ使えるようにドロッパーと呼ばれるプラスチックの部品が付いていたりします。
ティーツリーオイルの場合、プラスチックを溶かしてしまうケースがあるため、外すかドロッパーが付いていないものを購入するようにしましょう。オイルを使用するときは、スポイトで取り出します。
ティーツリーオイルは収穫時期や産地により、含まれる成分に若干の違いがあります。
ティーツリーオイルの主な原産国はオーストラリアです。オーストラリアの規格では「テルピネン-4-オール30%以上、1-8-シネオール15%以下」のもののみがティーツリーの精油として認められています。
テルピネン-4-オールは殺菌効果の元となる成分です。この濃度が低いと、効果を得にくくなります。
1-8-シネオールにも同様の効果が期待できますが、濃度が高いと刺激が強すぎて副作用をまねくおそれがあるため、15%以下の含有量かどうか確認が必要です。
また、ティーツリーの正式な名前(学名)は「メラレウカ アルテルニフォリア (Melaleuca Alternifolia)」です。原産国や有効成分の配合量と合わせて、使用されているティーツリーの種類もチェックしましょう。
ティーツリーオイルを使った目的別のレシピを紹介します。ブレンドすることで、より効果が高まるでしょう。[※8]
・水虫
ティーツリー2滴、ゼラニウム・ラベンダー・レモングラス各1滴を植物オイル10mlと混ぜ、患部に直接塗りこみます。ティーツリーやゼラニウムの殺菌作用により菌の繁殖を防ぎます。
・ニキビ
ティーツリー2滴、ゼラニウム1滴をラベンダーウォーター40mlと無水エタノール・グリセリン3mlと混ぜ合わせます。混ぜたものをコットンに染み込ませ、ニキビの上を軽くたたくようにします。抗菌作用により、ニキビの原因であるアクネ菌の繁殖を防ぎます。
・口臭予防
ティーツリー・ペパーミント・レモンの精油1滴ずつを、ハチミツ5mlと混ぜます。コップ1杯の水にそれを溶かしてうがいをすることで、殺菌効果が得られます。
・花粉症
ティーツリーとカモミールローマンを1滴ずつ、ティッシュに染み込ませて、マスクにセットしたり、湯を張った洗面器に垂らして吸入したりします。抗菌・抗炎症作用が働き鼻通りが良くなるでしょう。
ティーツリーは経口摂取したり、高濃度の精油をそのまま皮膚につけてしまったりすると副作用が現れる可能性があります。
経口摂取した場合、発疹や手足のしびれ、運動機能の失調、意識の喪失といった軽度から重篤な症状まで起こる可能性があります。
皮膚へ濃い濃度のオイルが付いた場合は、乾燥やかゆみ、痛みなどが生じる場合があります。アレルギー性皮膚炎の症状が出る人もいるため、使用する前には必ずパッチテストを行ってください。[※2]
医薬品やサプリメントなどとの相互作用については、現在まだ明らかになっていません。