ハナビラタケはフリルをクシュッとまとめたような外見をした白っぽい色をしたキノコです。マツやモミの木など、針葉樹の根元や切り株に生えます。
食用として利用されてきましたが、キノコの抗がん作用に注目が集まる中、例にもれずハナビラタケにも抗がん作用があるのではないかと考えられ、さまざまな研究がすすめられています。
そんなハナビラタケの効果効能や副作用、摂取方法などをまとめました。
ハナビラタケはハナビラタケ科のキノコです。直径は約10㎝から30㎝ほどまでに育ちます。天然のものはとても希少性が高く珍重されますが、人工栽培も可能です。
含有成分の代表はβ-グルカン。特に免疫力を上げる作用が高いといわれている「β-1,3グルカン」が豊富に含まれています。そのほかにも、ビタミンDやカルシウム、たんぱく質といった栄養素を含んでいます。
シイタケやマイタケ・アガリクスといったほかのキノコ類に比べて高いβ‐グルカン含有量を誇り、人工栽培が可能になったことで研究が加速しました。今現在も、さまざまなデータが蓄積されていっています。
ヒトに対する研究もすすめられていますが、信頼できるほどの臨床データはまだそろっていない状態です。ラットやマウス・ヒト細胞を使った実験では、抗がん作用や免疫力がアップしたという結果が報告されているため、今後の研究に期待がされています。[※1]
ハナビラタケは味のクセがあまりなく、花びらのような部分はキクラゲのようなコリコリとした食感をしています。茎にあたる部分はイカに似たしっかりとした歯ごたえがあり、料理が華やかになることから、飾りつけに使われることもあります。
ハナビラタケには以下のような効果・効能があるといわれています。また、ハナビラタケに含まれているβ‐グルカン(β‐1,3グルカン)の効果も見ていきましょう。[※2][※3]
■美肌効果
ハナビラタケには女性ホルモンのエストロゲンを活性化させるはたらきがあるとされ、美肌効果や女性らしい体を作る効果が期待できます。
■免疫力向上
β‐グルカンの作用により、免疫力がアップします。そのため、ガンや白血病といった免疫系の疾患に対して効果的な食材とされています。
■ガンの予防や抑制
β‐グルカンのはたらきにより、細胞ががん化しにくくなったり症状が緩和したりするといわれています。
■コレステロール値の改善
β‐グルカンの作用により、血中のコレステロール値が下がります。
■腸内環境を整える
β‐グルカンは食物繊維です。そのため、腸内の異物や不要なものを吸着し便として排泄してくれます。
ハナビラタケの美容効果には、コラーゲン生成促進や美白効果があります。[※4]
ハナビラタケから抽出したエキスは、肌の真皮層にある繊維芽細胞というコラーゲンを作り出す細胞にはたらきかけ、コラーゲン生成を促進させました。また、シミの原因になるメラノーマ細胞にハナビラタケから抽出したエキスを添加したところ、黒かった細胞が白色化しました。
こうした結果から、ハナビラタケや抽出したエキスには美容効果があるとされています。
ハナビラタケの効果は、β‐グルカンの作用によるところが大きいといえるでしょう。ハナビラタケは健康キノコとして知られるアガリクス茸の約4倍ものβ‐グルカンを含んでいるとされています。
β‐グルカンは、糖類が鎖状につながっている食物繊維のひとつ。糖のつながり方によっていくつかの種類に分けられます。ハナビラタケのβ‐グルカンは「β-1,3グルカン」と呼ばれるもの。[※5]この形のものは、免疫力アップの効果が高いといわれています。
本来の糖は、鎖状につながっている部分が唾液や胃液によってバラバラにされて小さくなり体内へ吸収されるのですが、β‐グルカンは分解されることなく腸までとどきます。
その際に、コレステロールや腸内の不要な物質を吸着し体外へ排泄させたり、腸内で免疫細胞にはたらきかけたりしてくれるのです。
このような作用があるため、β‐グルカンを含んでいるハナビラタケには、コレステロール値を下げたり免疫力を高めてくれたりする効果があるとされています。
ハナビラタケには美容効果や免疫アップ効果があるため、以下のような人におすすめです。
ハナビラタケの摂取目安量や上限量などは定められていません。サプリメントとして摂取する場合は、製品に設けてある摂取量を守りましょう。
徳島文理大学薬学部の吉川和子薬学博士らと、株式会社ユニチカの山本恭助氏らによる実験があります。
ハナビラタケから抽出したβ‐グルカンを人工的に腫瘍にした動物に経口摂取させるなどして投与しました。そして、腫瘍の増大や転移を防げるかどうかを観察。
その結果、ハナビラタケ由来のβ‐グルカンは、そのどちらも抑制しました。[※6]このことから、ハナビラタケには抗腫瘍作用が示唆されています。
同様に株式会社ユニチカでは以下のようなハナビラタケの実験があります。[※7]
がんにしたマウスに食用のハナビラタケ粉末を経口投与したところ、腫瘍のサイズが小さくなりました。痛みやかゆみを抑制したという結果も出ています。
また健康な人にハナビラタケ粉末を摂取してもらったところ、免疫細胞であるナチュラルキラー細胞が活性化しました。さらに、細菌やウイルスに反応するTh1細胞とアレルゲンに反応するTh2細胞がはたらくバランスを整えてくれることもわかりました。
Th1細胞とTh2細胞のバランスが崩れるとアレルギー症状が出てしまうとされているため、ハナビラタケ由来のβ‐グルカンには免疫のバランスを整えてアレルギー症状を抑えるはたらききがあるとされています。
ハナビラタケは幻のキノコと呼ばれています。それは、標高1,000m以上の高山でのみ自生していたためです。日の光があたらず湿度の高い環境を好み、あまりキノコが生えないマツやモミなどの木に寄生するという特徴も、幻と呼ばれる所以でした。
マツやモミなどの針葉樹には、キノコに対する毒があり、普通のキノコは寄生できません。しかし、ハナビラタケはこの毒をゆっくりと分解しながら、約3か月の時間をかけて育っていきます。毒を分解する過程で樹木に入り込み、やがて枯らしてしまう力を持っています。こうして樹木を枯らしてしまうキノコを「木材腐朽菌」といいます。
1990年代後半に入ると、人工栽培されたハナビラタケに豊富なβ‐グルカンが含まれていることがわかりました。それが、学会で発表されハナビラタケは注目を集めます。
それから、ハナビラタケを含むたくさんのβ‐グルカンについての研究がすすめられ、免疫力向上やコレステロール排泄、抗がん作用といったさまざまな作用が報告されています。
ハナビラタケの有用性は、医師も認めるところがあるようです。医学博士で表参道吉田病院の総院長である吉田憲史医師は、自著の中で以下のように記しています。
「実験的有効性をそのまま人間に当てはめるわけにはいきません。ヒトにおける有効性や安全性については、今後さらに詳細なデータの蓄積が必要となるでしょう。しかし、こうした結果を見る限りにおいて、ハナビラタケが治療を阻害するのではなさそうだ----ということも見えてきました」
(吉田憲史 『新しいがん治療への挑戦:ある民間病院の略』より引用][※8]
吉田病院では、実際にハナビラタケのサプリメントを患者に摂取してもらい病状の経過を観察したとあります。患者により免疫力が異なるため、すべての人にハナビラタケが有効とはいえませんが、相性が良ければ効果が出るとしています。
ハナビラタケは手に入りにくいキノコですが、通信販売や専門店などから入手できます。癖のない味とコリコリとした食感が特徴で、幅広い料理に使用できます。
さっと茹でてサラダや和え物にしたり、炒め物にしたり、パスタやお鍋の具としてもピッタリです。見た目が華やかなので、料理の飾りつけに添えるのもいいでしょう。
ハナビラタケの有効成分を効率的に摂取したいのであれば、サプリメントを活用すると良いと思います。パウダータイプやカプセルタイプが主流です。
β‐グルカンは舞茸などほかのきのこ類にも含まれますし、パンの酵母や大麦などにも含まれます。ハナビラタケから抽出したβ‐グルカンが摂取したい人は、ハナビラタケ由来のβグルカンかどうか、確認するようにしましょう。
ハナビラタケと一緒に摂取すると良い食材は醤油やみそです。[※9]
キッコーマン株式会社が東京薬科大学や株式会社ミナヘルスと一緒に、体内に吸収されやすい高吸収型の大豆イソフラボンとハナビラタケの併用による免疫アップ作用を実証しました。
実験はマウスを使って行われたものですが、ヒトに対しても有効ではないかとして健康食品の開発が検討されています。
高吸収型の大豆イソフラボンは、醤油やみそに含まれているため、これらの食品とハナビラタケを組み合わせて食べるようにすると良いでしょう。
ハナビラタケは風味が強くないため、どのような調味料と合わせてもおいしくいただけます。
ハナビラタケに関する副作用については、臨床データが不十分な状態です。食べたあとに体調不良や異常を感じた場合は、摂取を中止して医療機関を受診しましょう。
また、キノコアレルギーがある人は、摂取を控えてください。[※10]
β‐グルカンは、食品から摂取する場合もサプリメントの場合も、容量を守っている限り安全な食品です。ただし妊娠中は、胎児への影響などの安全性が確立していないため、サプリメントの摂取は控えたほうが無難でしょう。[※10]
ハナビラタケにかんする相互作用は確認されていません。ただし薬やサプリメントと併用して体に異常が出た場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
ハナビラタケに含まれているβ‐グルカンに関する相互作用には、以下のようなものがあります。[※10]
β‐グルカンには免疫力を高める効果があるため、免疫抑制剤の効果を低減させる恐れがあります。免疫抑制薬には、アザチオプリンやシクロスポリン・副腎皮質ステロイドなどがあります。
β‐グルカンは血圧を低下させる効果があるため、降圧薬と併用すると血圧が下がりすぎてしまうおそれがあります。降圧薬には、カプトプリルやエナラプリルマレイン塩酸・ヒドロクロロチアジドなどがあります。
同様に、血圧を低下させるハーブやサプリメントとの併用も注意が必要です。
β‐グルカンとインドメタシンを併用すると、重篤な副作用が起こるおそれがあります。詳しいメカニズムがまだわかっていないため、併用する際は注意が必要です。