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サポニンの効果とその作用

サポニンは、植物の根や葉、茎などに含まれている配糖体(糖と糖以外のさまざまな原子が結合したもの)の総称です。サポニンは刺激性が強いため、以前は経口摂取するのは危険だといわれていました。しかし最近ではその安全性や健康効果に関する研究が進められ、異なる見解が論じられています。サポニンの代表的な効果効能や作用機序、副作用や相互作用などについて、わかりやすく解説していきましょう。

サポニンとはどのような成分か

サポニンとは、主に植物に含まれている配糖体(糖と糖以外のさまざまな化合物が結合したもの)の総称です。

糖と結合する化合物は複数種類存在し、結合する化合物ごとに効果効能が異なります。これらの化合物の共通点は、疎水性(水と混ざりにくい、水との親和性が低い)が高く、親水性(水に溶ける性質)が低いこと。

糖と結合してサポニンになると、疎水性の化合物が両親媒性分子(親水性と疎水性を併せ持つ)という性質に変化します。

両親媒性分子であるサポニンは、石けんや洗剤と同じような「界面活性作用」があります。水に溶かして泡立てたサポニンは油を分解できるため、日本では平安時代からサポニンを含む植物の果実をすりつぶしたものが、石けん代わりに利用されていました。[※1]

サポニンが含まれるのは植物の根や葉、茎や果実などで、食べたときに感じる独特な苦みや渋みが特徴です。お茶やコーヒーの渋みや苦みは、茶葉や豆に含まれるサポニンによるものです。また、サポニンは植物のほかに、なまこやヒトデなどの棘皮(きょくひ)動物にも含まれています。

東洋医学で利用されている漢方薬・生薬にも、サポニンが含まれるものが多くあることから、健康に役立つ成分だと考えられています。[※2]

サポニンの効果・効能

複数のサポニンに共通する効果と、サポニンを含有する食品によって異なる効果があります。代表的な効果効能は以下の通りです。[※2][※3][※4]

■洗浄

サポニンはその界面活性作用によって、油汚れを分解します。

■老化および身体機能低下の予防

大豆に含まれるサポニンは、活性酸素の攻撃によって起こる老化および身体機能の低下を防いでくれます。

■肝機能障害の予防

大豆に含まれるサポニンには抗酸化作用があるため、コレステロールの酸化によって起こるさまざまな肝機能障害(脂肪肝や肝炎)のリスクを低減できます。

■動脈硬化やがんの予防

抗酸化作用をもつサポニンを摂取することは、コレステロールの酸化によって起こる動脈硬化やがんの予防にもつながると考えられています。

■肥満予防

サポニンには、コレステロールを分解するはたらきや、コレステロールの吸収・蓄積を阻害する作用があり、肥満予防に役立つといわれています。また、大豆に含まれるサポニンには、脂肪燃焼をサポートする物質の分泌を促すはたらきもあります。

■免疫力改善

高麗人参に含まれるサポニンには、免疫細胞のひとつ「ナチュラルキラー細胞」を活性化して、免疫機能を高める効果があります。

■血行不良改善

高麗人参に含まれるサポニンは、血栓がつくられるのを防ぐはたらきがあるため、血行不良の改善につながります。

■鎮咳効果

アマチャヅルに含まれるサポニンには、咳を抑える効果があると報告されています。

■痰を除去する効果

桔梗(ききょう)に含まれるサポニンには、痰を除去する効果が期待されています。

■防カビ効果

なまこに含まれるサポニンには、カビや水虫の原因となる白癬菌(はくせんきん)の増殖を防いだり、除去したりする効果があります。

また、サポニンが含まれる一部の植物には、魚を麻痺させる効果があるといわれ、古くから漁業に利用されてきましたが、サポニンには即効性の麻痺効果はないため、漁猟には適していないと最新の研究でわかっています。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

サポニンの中でも代表的なソーヤサポニン(大豆に含まれるサポニン)とジンセノサイド(高麗人参に含まれるサポニン)の作用について解説します。[※2][※3][※4]

ソーヤサポニンには、活性酸素が細胞やコレステロールを酸化するのを抑えるはたらきがあります。細胞の酸化を防ぐことで、肌のしわやたるみ、身体機能の低下などを予防することが可能。

また、コレステロールの酸化を阻害して、悪玉コレステロールの増殖を抑えるため、肝炎や脂肪肝、動脈硬化や高コレステロール血症などの予防にもつながります。

ジンセノサイドは、細菌やウイルスを攻撃する免疫細胞「ナチュラルキラー細胞」を活性化するサポニンです。ナチュラルキラー細胞はがん細胞も攻撃するため、高麗人参に含まれるサポニンを摂取することでがん予防の効果も期待できます。

また、ジンセノサイドには、血管拡張作用や血栓ができるのを防ぐ作用があるため、血行不良を改善する効果が期待できます。

そのほか、血管の弾力性を高めて、動脈硬化になるリスクを抑えてくれます。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

若々しさや健康を維持したい人は大豆に含まれるソーヤサポニンを摂取するのがおすすめです。生活習慣病を予防したい人は、高麗人参に含まれるジンセノサイドを積極的に摂取すると良いでしょう。

サポニンの摂取目安量・上限摂取量

サポニンの摂取目安量や上限量はとくに定められていません。

サポニンを食品から摂取する場合は、その食品の主成分の摂取目安量や上限量を目安に摂取すると良いでしょう。

健康食品から摂取する場合は、パッケージに記載されている摂取目安量を守ってください。

生薬として摂取する場合には、漢方を処方した医師・薬剤師の定める用法・用量を守りましょう。

サポニンのエビデンス(科学的根拠)

漢方の生薬・桔梗に含まれるサポニンのエビデンスを2つご紹介します。研究を行ったのは東邦大学薬学部の佐伯剛先生と二階堂保博士です。[※5]

■喉の痛みや痰を除去する作用について

対象
エバンスブルー(ダメージを受けている部位を青く染める色素)を静脈に注射した実験用モルモット
研究方法
エバンスブルーが抗体(血しょうたんぱく質)と結合して気管に分泌される量を以下(1)(2)の条件でそれぞれ測定しました。気管に分泌される色素が多ければ多いほど、痛みや痰が除去されていることを示しています。
  1. モルモットに高麗人参から抽出したサポニンを経口投与
  2. モルモットの胃に高麗人参から抽出したサポニンを直接注入
実験結果
(1)では通常時よりも色素分泌量が増えましたが、(2)の色素分泌量は増えませんでした。この実験結果から、桔梗に含まれるサポニンが呼吸器官の痛みや痰を除去する作用は、口径摂取した場合のみ得られると考えられています。

■咳を鎮める作用について

対象
実験用モルモット
研究方法
痰によって起こる咳ではなく、気管を刺激することで起こる咳を抑える効果があるのかを調べています。実験ではサポニンを与えたモルモットの気管にピアノ線を入れて、咳が抑制されるかどうかを検証しました。
研究結果
サポニンの投与によって、気管を刺激した場合に起こる咳も抑制されることがわかりました。このことから、高麗人参に含まれるサポニンの鎮咳作用は、喉の痛みや痰を除去することで副次的に起こるものではなく、局所刺激を抑制する作用によるものだと報告されています。

研究のきっかけ(歴史・背景)

サポニンを含むマメ科の植物「サイカチ」は、古くから洗剤代わりに使用されていきた歴史があります。これは古事記(712年)や万葉集(759年)にも記されています。

サイカチに含まれるサポニン以外の研究が進められるようになったのは1900年以降。この頃は、お茶の種子に含まれるサポニンの研究が盛んに行われ、主に界面活性剤として利用されていました。

1971年には、お茶の葉に含まれるサポニンと種子に含まれるサポニンの構造が異なることが判明。1995年には、緑茶の葉に含まれるサポニンに、種子のサポニンにはない「抗炎症作用」が認められました。[※6]

その後は、特有の効果をもつサポニンが次々と発見され、健康食品に利用されるようになっています。

専門家の見解(監修者のコメント)

サポニンの「界面活性作用」には、細胞膜を破壊する性質があります。少量の摂取ならコレステロールを分解したり、細菌やウイルスの細胞膜を破壊したりするのに役立ちますが、過剰摂取すると体内の細胞膜を破壊するおそれがあります。

健康運動指導士兼、栄養管理士として活躍している白鳥早奈英氏は、自身の著書内でサポニンの害について次のように解説しています。

「以前サポニンは血液破壊作用があり、人体に有害とされていました」

(書籍『いつも元気な人は何を食べているのか(KKロングセラーズ)』より引用)[※7]

血液破壊作用とは、サポニンが赤血球の膜を破壊してしまうことです。赤血球の破壊は貧血の原因となるほか、血液検査の結果に影響がおよびます。血液破壊作用はサポニンの過剰摂取によって起こる問題なので、摂り過ぎないように注意しましょう。

また、白鳥氏は大豆サポニンの健康効果について次のように解説しています。

「大阪大学北川勲教授の研究をきっかけに、人体にとって有効であるとする説が次々と出されるようになりました。大豆サポニンには血液中の悪玉コレステロールを低下させる働きや、老化の原因の一つとされている活酸化脂質の害を防ぐ働き、脂肪の吸収抑制と分解促進の働きがあるというものです」

(書籍『いつも元気な人は何を食べているのか(KKロングセラーズ)』より引用)[※7]

サポニンを多く含む食べ物

サポニンが豊富に含まれている食べ物は、豆類(大豆・黒豆・小豆など)や根菜(人参・ゴボウなど)です。豆腐や納豆、油揚げや豆乳などの加工食品にも含まれています。[※2]

サポニンは、大豆や根菜を茹でるとあらわれる「灰汁(アク)」に含まれています。サポニンを効率よく摂取したい人は、灰汁を取らずにスープにして摂取すると良いでしょう。[※8]

ただし、サポニンの摂り過ぎは禁物です。摂取目安量や上限量が定められていないため、摂り過ぎという判断基準が難しいですが、体に異変を感じたらすぐに摂取を控えてください。

相乗効果を発揮する成分

サポニンと一緒に摂ることで相乗効果を発揮する成分はビタミンB2です。

サポニンは抗酸化作用で悪玉コレステロールの増殖を防ぎ、肝機能障害のリスクを減らします。ビタミンB2は強肝作用で肝臓機能を高めるため、2つの成分を一緒に摂ることで、肝臓にかかる負担の軽減や肝機能の向上が期待できます。

大豆サポニンとビタミンB2を効率よく摂取するには、両方の成分が含まれている納豆がおすすめです。[※7]

サポニンの副作用

サポニンを過剰摂取すると界面活性作用が強まり、細胞膜を破壊するおそれがあります。[※1]

細胞膜が壊れると老化が進み、身体機能や免疫力が低下します。

注意すべき相互作用

抗血液凝固薬とサポニンを併用摂取すると、血液の凝固を抑制する作用が強くなり、出血リスクが高まります。[※9]

参照・引用サイトおよび文献

  1. 公益社団法人日本薬学会「サポニン」
  2. 公益財団法人 長寿科学振興財団「サポニンと効果と摂取量」
  3. 南雲吉則『明るく前向きになれる 乳がんのお話100』(主婦の友社 2016年9月発行)
  4. 『食材健康大辞典』(時事通信出版局 2005年発行)
  5. 【PDF】佐伯剛ほか「生薬・キキョウのサポニン成分のHPLCによる品質評価」(YAKUGAKU ZASSHI 123(6) 431―441 (2003) The Pharmaceutical Society of Japan 431)
  6. 公益財団法人 世界緑茶協会「サポニン」
  7. 白鳥早奈英『いつも元気な人は何を食べているのか(KKロングセラーズ)』(PHP研究所 2016年4月発行)
  8. 公益財団法人日本豆類協会「豆の主な機能性成分」
  9. 一般社団法人 愛知県薬剤師会「健康食品の有効成分と注意事項」