ビャクダン科の植物・サンダルウッド。今ではお香やエッセンシャルオイルなどで身近に楽しむことができますが、サンダルウッドにはリラックス効果や催眠鎮静作用が期待できることから、アジア圏の宗教や文化において古くから親しまれてきました。実は、サンダルウッドはリラックス効果や催眠鎮静作用が期待できるだけではなく、美容や生活習慣病対策、老化予防にも役立つことがわかっています。ここでは、サンダルウッドがどんな植物なのか、またどんな効果が期待できるのか、サンダルウッドの楽しみ方や注意点について科学的根拠を交えてご紹介します。
サンダルウッドとは、インドを原産地とするビャクダン科の熱帯性常緑木です。日本では白檀(ビャクダン)、インドではチャンダンとも呼ばれ、香気素材として寺院の彫刻や家具、お香、扇子や線香の香り付けなどに使用されています。熱を持たなくても芳香を放つ性質を持っており、その香りはほんのりと甘さを感じるウッディな香りと表現されています。また、サンダルウッドの香り成分・サンタロールには、催眠鎮静作用[※1]や鎮静・リラクゼーション効果を持つ可能性がある[※2]と言われており、瞑想やエッセンシャルオイルなどにも活用されています。
サンダルウッドには次のような効果・効能があると報告されています。
■催眠鎮静作用
サンダルウッドの香り成分・サンタロールには眠気を誘う働きがあり、催眠鎮静作用があると言われています。[※1][※3]
■リラクゼーション効果
サンダルウッドには交感神経を抑制する働きがあり、リラクゼーション効果が期待できます。[※2]
■がん予防
中国医薬によると、サンダルウッドにはがんを防ぐ効果があるとされています。[※4]
■抗菌作用
中国伝統医薬において、サンダルウッドには抗菌作用があるとされています。特に、泌尿器(膀胱など)の感染症を防ぐのに役立ちます。[※4]
■美肌効果
サンダルウッドは抗酸化性が良いとされ、活性酸素を抑えることでシミ・シワ・たるみ・くすみなどの肌老化を防ぐ効果が期待できます。[※5]
サンダルウッドの香りをかぐと、交感神経の働きが抑制されリラックス効果が期待できます。人間には交感神経と副交感神経の2つの自律神経が存在しており、緊張・興奮状態になると交感神経の働きが優位に、そしてリラックスした状態になると副交感神経の働きが優位になります。交感神経の働きが優位になりすぎている時は、脳の緊張状態が続いているため、血行不良やイライラの原因になるのです。脳をリラックスさせ、副交感神経を優位にするにはいろいろな方法がありますが、サンダルウッドの香りをかいだり精油でマッサージすることも一つの方法です。サンダルウッドの芳香成分であるα-サンタロール、β-サンタロールなどが脳や神経に働きかけるからだと考えられています。
また、サンダルウッドの香りには眠りを誘う効果があると言われています。これも、交感神経の働き抑える作用が関係しています。就寝前にサンダルウッドの香りを活用することで、寝不足やストレスの解消、肉体疲労の改善に役立ちます。
サンダルウッドの持つ香り成分・サンタロールには殺菌、消炎、抗アレルギー作用があるとされています。[※6]さらに、血液の循環を良くする働きもあり、冷え性の解消や動脈硬化などの生活習慣予防にも役立ちます。健康面においては、抗酸化作用による老化予防や健康増進が期待できます。
そして、サンダルウッドの葉には抗菌作用があることがわかっており、膀胱炎や尿道炎など泌尿器系の病気において炎症を抑える働きや、利尿作用、浄化作用が期待できます。膀胱の感染症の予防に役立つのです。
サンタルウッドの持つ抗酸化作用は美容面においても嬉しい効果が期待できます。紫外線やストレス、加齢など目に見えないところで体内に発生する活性酸素は、体内の細胞を錆びつかせて新陳代謝を阻害します。すると、メラニン物質や古い角質が排出しにくくなり、くすみやシミにつながります。また、活性酸素の害は真皮の線維芽細胞にも及び、コラーゲンやエラスチンが生成できなくなることでたるみやシワにも。サンダルウッドの抗酸化作用を利用すれば、新陳代謝を阻害する活性酸素を除去することができるのでエイジングケアにつながるのです。
サンダルウッドには心を落ち着かせる効果が期待できるため、ストレスを抱えている人や気分を落ち着かせたい人におすすめです。また、交感神経の働きを抑えて催眠を促す効果が期待できるため、睡眠不足に悩む人や質の良い睡眠を求める人にもぴったりです。膀胱の感染症予防や老化予防、動脈硬化など生活習慣病対策にも役立ちます。さらに、抗酸化作用による美肌効果が期待できるため、シミやシワ、たるみやくすみなどのエイジングサインに悩んでいる人にもおすすめできる成分です。
古くから医薬や瞑想に使われていたサンダルウッドは、お香やエッセンシャルオイルなど数多く製品化されています。
しかし、お香に含まれる煙に細胞やDNAを傷つける作用を持つことが中国の華南理工大学の研究チームによって明らかになっています。[※9]これはハムスターを使って行われた研究で、サンダルウッドを含む4つのお香を焚き、細胞への影響を調べたものです。お香に含まれる化学物質には、タバコよりも強い毒性がある種類も存在します。
一方、この研究はお香を対象に行われたものであり、お香の原料には化学物質だけではなく漢方薬や天然の香辛料などが使われている場合もあるので、一概に害があるとは言い切れません。とはいえ、お香でサンダルウッドの香りを楽しみたいなら焚きすぎに注意が必要と言えるでしょう。尚、エッセンシャルオイルとしてのサンダルウッドの使用であればそのような問題はありません。
サンダルウッドに含まれるサンタロールの催眠鎮静作用について、健常男女12例による実験が小林製薬株式会社によって行われています。この試験レポートによれば、就寝1時間前の午後10時から9時間室内にサンタロール(純度98%)とラベンダー精油、水を蒸散させ、睡眠時と覚醒時の1分間の行動量を計測。その結果、入眠期・主睡眠期における行動量はサンタロールの場合が最も少なく、健常男女に対して催眠鎮静作用があることが示されました。また、入眠時から覚醒直前までサンタロールを提示し続けたところ、薬理的作用が日中まで続いていたことも明らかになっています。[※1]
サンダルウッドのリラクゼーション効果に関しても、健康女性8名を対象に研究・実験が行われています。サンダルウッドの香りを吸入した際、香りの吸入中から交感神経活動の抑制作用が見られ、鎮静・リラクゼーション効果を持つことが明らかになっています。また、研究によるとその効果は少なくとも10分程度継続する可能性が示唆されています[※2]。
また、中国医薬においてサンダルウッドにがんを防ぐ効果があるとされています。サンダルウッド、そしてフランキンセンスエッセンシャルオイルが膀胱がん細胞にアプローチするか検証が行われたところ、膀胱がん細胞に対して抗炎症作用を示し、膀胱がん細胞の増殖を抑えました。このことで、サンダルウッドにはがんを防ぐだけではなく抗炎症作用があることもわかったのです。[※4]
今やサンダルウッドは全世界で香水や化粧品の原料として使用されていますが、古くからサンダルウッドの鎮静効果は深い瞑想に役立つとされ、薫香として高い需要を誇っていました。また、サンダルウッドはアジア諸国の文化や宗教に長い関わりを持っており、弔いのハーブとしてサンダルウッドを遺体に塗布し、腐敗を防ぐことにも使われました。[※7]
インドの伝統医学アーユルヴェーダにおいては、サンダルウッドの消炎作用や解熱作用、抗感染作用が重視されており、古くから万能薬として使われています。[※8]また、サンダルウッドは古くから貴重な交易品として乱獲されたため、現在インドでは絶滅危惧種として保護されています。"
サンダルウッドは、お香や線香、香水やエッセンシャルオイルなどさまざまな楽しみ方があります。お香の場合はチャンダン名義で販売されていることも多く、男性を中心に人気を集めています。 しかし、お香や線香に使用されているアルコールなどの化学物質や不純物に不安を感じる人は、サンダルウッドの香木そのものを炊くのがおすすめです。サンダルウッドの香木は専門店で取り扱いがあり、実店舗はもちろん通信販売でも手に入れることができます。香木を粉末状にしたものだと安価で手に入れることが可能です。 また、サンダルウッドのエッセンシャルオイルもおすすめです。エッセンシャルオイルは芳香浴や沐浴などの活用方法もさまざまですし、オリエンタル系や樹脂系の香りと相性が良いためブレンドして香りをさらに楽しむこともできます。
サンダルウッドには緊張や不安を和らげる働きがあります。リラックス効果を期待したいなら、サンダルウッドとの相性が良いラベンダーをブレンドすると良いでしょう。ラベンダーにも、サンダルウッドと同様リラックス効果が期待できると言われています。
サンダルウッドには通経作用(生理を促す作用)があると言われており、妊娠中の人は特に注意が必要です。一方で、サンダルウッド製品のメーカーによっては妊娠期間中でも安全に使用できるという見方もあるため、まずは医師や専門家に相談することをおすすめします。また、鬱を患っている人がサンダルウッドを利用すると、サンダルウッドの持つ鎮静作用によりさらに気持ちが滅入ることも報告されています。妊娠中の人やうつ状態の人は、サンダルウッドを利用しないようにしましょう。