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サジーの効果とその作用

サジーは200種類以上の栄養素が含まれ、美容や健康に役立つ効果が注目されるスーパーフルーツです。抗酸化作用によるアンチエイジングや美肌効果、排尿障害やメタボリックシンドロームの予防など、その効果は多岐にわたります。サジーに含まれる豊富な栄養素が、互いに相乗効果を生み出すことが期待されています。

サジーとはどのような果実か

サジーはグミ科ヒッポファエ属の植物です。原産はユーラシア大陸で、中国、モンゴルの昼夜の温度差の激しい乾燥地帯や砂漠など厳しい環境の中でも育ちます。

高さは2~10mほどに成長しますが、中には30m近くまで成長して、幹も太い巨木になることもあります。秋にかけて直径0.5~1cm大の黄色、オレンジ、赤色などの丸い果実が実ります。

このサジーの果実には、じつに200種類以上の栄養素が含まれていて、美容や健康に役立つスーパーフルーツとして、高い期待が寄せられているのです。

学名を「ヒッポファエ・ラムノイデス」といいますが、地域によって「サジー(沙棘)」「シーバックソーン」「シーベリー」「チャチャルガン」などさまざまな名前で呼ばれています。[※1]

サジーの種はゴマより少し大きめで黒茶色をしており、抽出した油はサジーオイルになります。日本ではあまり見かけませんが、外国ではサジーオイルの健康効果も研究されています。[※1]

サジーの根には小さなコブがありますが、これは放線菌(ほうせんきん)の一種であるフランキアがサジーに共生しているものです。

この菌は空気の中の窒素を植物に取り込む強い力を持ち、アンモニアなどに換えることで、土中に窒素の養分が少ない過酷な環境でもサジーが育つようにしています。根は地中の40㎝ぐらいの深さを水平に伸びる性質を持ち、しっかりと根を張ることからもサジーの強い生命力がうかがえます。

サジーの効果・効能

サジーには以下のような幅広い効果・効能が期待されています。

■アンチエイジング効果

サジーにはビタミンCをはじめとした抗酸化成分が多く含まれ、アンチエイジング効果が期待されています。

シミやシワ、たるみといった肌の老化を防止してくれることから、美肌効果も期待できます。

■体調を整える効果

外部から侵入する風邪などのウイルスから、からだを守ってくれる効果が期待できます。

すぐれた抗酸化作用で、疲れにくく病気になりにくい、丈夫なからだ作りをサポートしてくれます。

■前立腺肥大症の予防効果

サジーには、前立腺肥大を抑制する効果が期待されています。

また、最近の研究では、肥満、高血圧、高血糖や脂質異常症と、前立腺肥大との関連が示唆されています。[※2]

そのためサジーの摂取によって生活習慣病の予防効果にもつながる可能性があります。

■過活動膀胱の予防効果

サジーには、過活動膀胱の予防効果が報告されています。[※2]

過活動膀胱の症状は、突然我慢できないような強い尿意が起こる「尿意切迫感」、尿意がトイレまで我慢できない「切迫性尿失禁」、起きているあいだ8回以上、または寝ているときに1回以上トイレに行く「頻尿」などです。

過活動膀胱になると、膀胱平滑筋の過収縮により、排尿障害が引き起こされます。サジーは膀胱平滑筋に働きかけ、膀胱の収縮を抑える作用が認められています。

■大気汚染による刺激を抑制する効果

サジーには、排気ガスやタバコの煙、花粉や黄砂などの大気汚染物質から肌を守る効果が期待されています。

これらの大気汚染物質は肌に刺激を与えて炎症を引き起こすことが分かっていますが、サジーのエキスを摂取することで皮膚刺激が緩和するといわれています。[※2]

■乾燥を緩和する効果

サジーの果実には、肌や喉の乾燥を緩和する効果や、保湿作用が期待されています。[※2]

また、サジー種子から抽出されたオイルには、αリノレン酸が含まれていることから、アトピー性皮膚炎の症状を緩和する効果なども研究されています。[※3]

■メタボリックシンドロームの予防効果

サジーにはメタボリックシンドロームの予防効果が期待される、パルミトレイン酸(ω-7)が含まれています。

サジーに含まれるω-7には、高血糖やII型糖尿病の予防、血中中性脂質の低下や、悪玉コレステロール値を減らして善玉コレステロール値を増やす作用、体重抑制効果なども報告されています。[※2]

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

サジーの果実にはアミノ酸、ビタミン、ミネラル、ポリフェノール、カロテノイド、有機酸、脂肪酸、植物ステロール、糖鎖、食物繊維など、200種類以上の栄養素が含まれています。[※4]

とくにビタミンCはレモンの約9倍、有機酸のリンゴ酸はりんごの約8.3倍、アミノ酸は米酢の約5.9倍という高い数値の分析結果も出ています。[※5]

ビタミンCやビタミンEなどの抗酸化成分は、体内で増えすぎた活性酸素を除去して、がんや生活習慣病の予防効果が期待できます。

皮膚や粘膜を丈夫にするビタミンAやコラーゲンの生成を促すビタミンC、細胞膜の酸化を予防するビタミンEなどは、アンチエイジングや美肌効果をもたらします。

また、サジーには18種類のアミノ酸が含まれます。疲労の回復や、運動や勉強などで集中力を発揮するためには、バリン、ロイシン、イソロイシンの3つの必須アミノ酸(BCAA)を摂る必要がありますが、サジーにはすべての必須アミノ酸が含まれています。

さらに、疲労回復効果が知られるアミノ酸のアスパラギン酸や、クエン酸回路(注)を促進させるリンゴ酸の働きも見逃せません。

これらの栄養素は単品で摂取するよりも、複数組み合わせて摂取することでお互いの作用を高め合います。

そのため豊富な栄養素を含むサジーには、美容や健康を大きくサポートする効果が期待されているのです。

(注)クエン酸回路とは、疲労物質とされる乳酸をエネルギーに変換する代謝サイクルのこと

どのような人が摂るべきか、使うべきか

サジーは以下のような人におすすめできます。

  • 美肌を目指したい人
  • 日頃から疲れやすいと感じている人
  • 食事の栄養バランスが偏りがちな人

サジーのカロリーはそれほど高くなく[※4]、ダイエット中の健康サポートにもおすすめです。

ただし、サジージュースやエキスの酸味を和らげるため砂糖を入れすぎては糖質過多になってしまうので、気をつけましょう。

サジーの摂取目安量・上限摂取量

サジーは食品ですので、明確な摂取基準量などは定められていません。

サプリメントや健康食品を摂取する場合は、各商品に記載されている摂取目安量を守り、過剰摂取にならないように注意しましょう。

サジーのエビデンス(科学的根拠)

前立腺肥大症を抑制する効果が、ヒト試験の結果から得られています。

前立腺肥大は男性だけにある臓器です。加齢にともない肥大すると、前立腺肥大症を発症します。とくに50代以降からその割合が増加し、80代では90%が前立腺肥大であるとされています。[※6]

前立腺肥大は排尿困難を引き起こし、頻尿や痛み、残尿感などの症状が現れます。

頻尿などの排尿困難から、外出に消極的になる、睡眠の質が落ちるなどといった、QOL(注)の質の低下も問題とされています。

オリザ油化(株)の研究では、国際前立腺肥大症状スコア(IPSS)の高い男性各10人に、サジーエキス、またはサジーの果実油を4週間摂取させました。

すると、IPSSのスコアが減少し、QOLスコアも改善したということです。[※2]

サジーは鉄分を含むことから、一部では貧血の予防効果も期待されています。とくに女性では貧血で悩む人が多く、サジーを検索すると「貧血」というワードが出てくることからも、その期待値の高さがうかがわれます。

ただし、原料によって鉄の含有量はことなり、サジーの摂取で貧血を改善するといった明確なエビデンスは示されていません。

貧血は放置すると心臓に負担がかかり、将来の病気のリスクが高くなります。健康診断で鉄欠乏性貧血と診断された場合、必ず病院を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。

(注)QOLは「Quality Of Life」の略。病気の患者が充実感や満足感をもって前向きに生活を過ごしているかを考える基準となる概念

研究のきっかけ(歴史・背景)

サジーの歴史は古く、7,000万年以上前から生育していたといわれています。学名のヒッポファエ・ラムノイデスは「馬の毛を輝かせる実」という意味で、ギリシャ神話に登場するペガサスの好物だったという言い伝えからその名がつけられました。

モンゴル帝国を築いたチンギス・ハーンも、兵士や馬の栄養源としていたといわれ、古い医学書にもその名前が記載されています。

サジーの豊富な栄養素は旧ソ連でも早くから注目され、研究されてきました。宇宙飛行士の健康を維持するために、宇宙船にもサジージュースが持ち込まれたといわれています。[※7]

専門家の見解(監修者のコメント)

中国黄河文化経済発展研究会の趙十一は論文のなかで、サジーについて次のように紹介しています。

「沙棘は強い生命力をもつ、乾燥した寒い山間部に生え、生態環境の改善に極めて力を発揮する植物です。沙棘植物は豊富な生物活性成分を含み、薬用植物としての保健価値が非常に高く、この特徴によってもたらされる経済価値はとても高いものです。」

「190種類ほどの生物活性成分を含む沙棘の存在こそは自然界の一つの奇跡と言わざるをえないでしょう。これは沙棘が厳しい環境から生まれた強い生命力の精華にほかなりません」

(MACRO REVIEW/13 巻 (2000) 1号「沙棘― 大自然の奇跡」より引用)[※8]

と、サジーの魅力はその驚くべき栄養価の高さにあることを説明しています。

サジーを上手に摂取するには

サジーの一般的な摂取方法は、果実を利用したサジージュースです。

サジージュースは酸味が強いため、原液では飲みにくい場合があります。胃が荒れてしまう恐れもあるため、水や白湯で薄めて飲むと安心です。

炭酸水や野菜ジュース、牛乳などと組み合わせてさまざまな味わいを楽しむのもおすすめです。スムージーやヨーグルトなどに加えてもよいでしょう。

はちみつやオリゴ糖などで甘さを足すと、よりマイルドになって飲みやすくなります。

サジーはあくまで食品であり、医薬品のような即効性のある効果は期待できません。また、効果には個人差もありますので、過度な期待から過剰に摂取することはやめましょう。

水溶性のビタミンCなどは、体外へ排出されやすい特徴があるため、こまめに摂取するとより効果的です。

継続できる無理のない量を取り入れて、健康や美容に役立てましょう。

相乗効果を発揮する成分

サジーには、排尿障害を予防する効果があるとされていますが、おなじく効果が期待されるノコギリヤシエキスやペポカボチャ種子エキスと一緒に摂取することで、相乗効果が期待できます。[※2]

サジーは平滑筋収縮を抑制することで排尿障害を予防しますが、ノコギリヤシエキスやペポカボチャ種子エキスは、ホルモンバランスを整えることで排尿障害を予防します。

これらは異なるメカニズムを持つため、多方面から排尿障害の改善に働きかけ、効果が高まると考えられているのです。

サジーに副作用はあるのか

サジーに副作用の報告はありません。[※9]

ただし、サジーは酸味が強いため、胃腸の弱い人が空腹時に摂取すると、胃痛などを起こす可能性があります。

注意すべき相互作用

サジーには血液が固まるのを抑制する働きがあると考えられ、血液凝固抑制薬と併用することで出血のリスクを高める可能性があります。

薬を服用中の人は、医師や薬剤師に相談のうえ摂取することをおすすめします。