「冷やしたご飯を食べるとダイエットになる」、という話を聞いたことはないでしょうか。これは、ご飯を冷やすことで、レジスタントスターチが増えるためです。
この成分には、腸内環境を整えてくれる、血糖値の上昇を抑える、脂肪の蓄積を防いでくれるというダイエット効果、美肌効果などが期待できるのです。
レジスタントスターチとは、炭水化物の一つで食物繊維を同じような働きをする成分で、耐性でんぷん・難消化性でんぷんともいわれます。
糖質であるのに、腸内で善玉菌のエサになることから、腸内環境を整えたり、内臓脂肪の増加を防いだりする働きがあります。これは、レジスタントスターチが、小腸で消化されにくく大腸まで届くという特徴を持ったでんぷんのためです。
食物繊維と同様の働きをするレジスタントスターチですが、成分の構造はそれとは異なります。食物繊維はブドウ糖がβ結合したもので、レジスタントスターチは、ブドウ糖がα結合したもの。
消化酵素で分解されるのがでんぷんで、消化酵素で分解されないのが食物繊維です。
また、レジスタントスターチには特定保健用食品として安全性や有効性が評価されているものもあります。
こちらで利用されているレジスタントスターチは高アミロース種トウモロコシから得られるデンプンを特別な加熱処理をすることで消化されにくい部分を増やし大腸まで到達しやすいように加工した成分です。「便秘ぎみの方のお通じの改善に役立ちます」といった表示がされています。
レジスタントスターチには、次のような効果・効能があると報告されています。
■血糖値の上昇を抑える効果
レジスタントスターチは食物繊維と同じように、ほとんど消化されずに腸内を移動します。そのため、緩やかに消化をすることができるため、血糖値の急激な上昇を抑えます。その結果、糖尿病の予防・改善にも役立ちます。
■脂肪の蓄積を防ぐ効果
血糖値の急激な上昇を抑えるため、インスリンの分泌が増加するのを防ぎ、脂肪の蓄積も防いでくれます。
■便秘の解消
腸内環境を整える効果があるレジスタントスターチは、便秘の解消にも効果的です。
■美肌効果
腸内環境をよくし、便秘を改善してくれることで、美肌にもいい影響を与えます。免疫力もアップし、健康な体と肌を手に入れることができるでしょう。[※1]
レジスタントスターチは炭水化物なのですが、その働きは食物繊維と同じです。小腸の消化酵素では消化されにくいため、大腸まで届き、大腸内で善玉菌のエサとなり、腸内環境を整えてくれます。
腸内では善玉菌が減ると悪玉菌が増え、免疫力が低下します。その結果、風邪をひきやすくなる、疲れやすくなる、肌が荒れる、便秘になるといった悪影響を及ぼします。脂質代謝も低下するため、肥満や高血圧など生活習慣病を発症させやすくなります。
また、腸内環境が悪くなると幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの合成量が減り、気分が落ち込んだり、ウツになりやすくなったりします。
レジスタントスターチは善玉菌を増やす餌になるので、腸内環境をよくしてくれるため、そういった症状を改善してくれるのです。
さらに、レジスタントスターチは小腸ではほとんど消化されずエネルギーにならずに大腸に移動するので、消化が緩やかです。そのため、血糖値の急激な上昇を防ぎ、糖尿病や肥満などを予防することも可能です。
腸内環境が悪く、便秘や下痢をしやすい人におすすめです。
ダイエットをしたり、野菜や果物などを食べないなど、偏った食生活をしていたりすると、食物繊維が不足してしまいます。
善玉菌が減り悪玉菌が増えることで、腸内環境が悪くなります。ダイエットで食事制限をしている人や、食生活が乱れている人、野菜をあまり食べない人などは、レジスタントスターチを摂ることで、腸内環境を改善していきましょう。
血糖値の急激な上昇を抑えるレジスタントスターチは、早食いの人や血糖値が高めの人などにも摂ってほしい成分です。
肉類が好きで太り気味の人やつい食べ過ぎてしまう人なども、レジスタントスターチを摂ることで、内臓脂肪の増加の対策になるでしょう。
便秘で肌荒れをしやすい人にもおすすめです。腸内環境をよくするとともに、血行がよくなり、肌荒れを改善することができます。
日本人の食物繊維の摂取量は年々下がっていると言われています[※2]。原因はお米や麦、芋類などの炭水化物の摂取量が減っているため。特に女性はダイエットをする際、お米や芋類などを制限する傾向にあります。
その結果、食物繊維の摂取量も減ってしまうのです。腸内環境の悪化は、体脂肪を増やすだけでなく、糖尿病や高血圧などの生活習慣病のリスクを高めます。さらに、免疫力が低下し、風邪をひきやすくなるなどの体力低下にもつながります。
多くの人が意識して食物繊維を摂るようにしなければならないと言えるでしょう。
レジスタントスターチの一日の摂取量の目安は、6~20gを推奨されています。
ご飯100gあたりには0.4g程度しか含まれていないので、食事から摂取するのは簡単ではありません。また、食物繊維の摂取基準は男性が19以上/日、女性が17g以上/日とされていますが、前述した通り、日本人の食物繊維の摂取量は下がり続けています[※2]。
そのため、レジスタントスターチや食物繊維を含む食品を意識して摂るようにしましょう。
レジスタントスターチは摂取することで、体重増加も防げると言われています。2016年の抗加齢医学会総会では、次のような報告がなされました。
高脂肪食のみを食べたマウスと、レジスタントスターチの入った高脂肪食を食べたマウスの体重を比較する研究において、高脂肪食のみを食べたマウスは体重が増加し、レジスタントスターチの入った高脂肪食を食べたマウスは、体重が減ったという結果が出ました。
さらに、肝臓、白色脂肪組織、腸間膜脂肪組織(内臓脂肪組織)の臓器重量を比較すると、レジスタントスターチ入りの高脂肪食を摂取したマウスは、脂肪重量の増加を防ぐことができ、脂肪肝や糖尿病の改善もみられました。[※1]
特定保健用食品で認められている難消化性デンプンの有効性については、便秘傾向の女性を対象に2週間摂取させる無作為化比較試験を実施し、排便の回数が優位に増加したことが報告されています。[※7]
このような研究結果からも、レジスタントスターチは内臓脂肪の増加を防ぐことができると言えます。
難消化性である食物繊維は、栄養はないものと考えられ、栄養面ではあまり重要視されていなかった、ということは広く知られていることでしょう。
しかし、研究が進むにつれて、食物繊維が人間の体の健康に大きな役割を担っていることが分かり、食物繊維の研究が進みました。その中で、小腸で消化されないでんぷんがあるということが分かったのです。
それまで、でんぷんは小腸で消化され、100%ブドウ糖として吸収されるもの、と考えられていましたが、1980年代に大量のでんぷんが人間の大腸から発見されたことで、レジスタントスターチの研究が始まったとされています。
現在では食物繊維と同様の栄養・生理機能があるレジスタントスターチは、生活習慣病の予防をはじめとしたさまざまな健康・美容食品で開発・研究が進められています[※3]。
中には、レジスタントスターチを約70%も含む生パスタも。腸内細菌のエサになりやすい食品ということで、注目を集めています。[※1]
レジスタントスターチは炭水化物を冷やすことで、増える成分であることも分かっています。内分泌代謝内科医の会田梓医師は、次のようにコメントしています。
「最近は、冷そばの方が効果的という意見が多いです。なぜなら冷そばには、炭水化物を冷やすことで増える「レジスタントスターチ」という成分により、糖質を吸収しにくくする作用があるからです。
レジスタントスターチは、小腸で消化されないまま大腸に届くでんぷん・でんぷん分解産物です。摂取カロリーを抑えるほか、整腸作用、血糖値の急激な上昇も抑えるため、糖尿病にも効果的、満腹感を得やすいメリットがあります。
一方で温そばには、体が温まることによる代謝UPが期待できます。また、冷そばに比べて食べるのに時間がかかるため、食後の血糖値の上昇も緩やかにすることができます。」(ウーマンエキサイト「【医師監修】そばダイエットの方法と効果まとめ」)[※4]
腸内環境を整え、満腹感も得られるレジスタントスターチは、糖尿病などの疾患の予防にもなります。レジスタントスターチを摂取する際には、冷やして食べるとより高い効果が期待できるでしょう。
レジスタントスターチを含む食品には、コーンフレーク(100gあたり2.8g)、ご飯(0.4g)、煮豆(5.3g)、スパゲッティ(1.4g)、蒸したじゃがいも(3.8g)[※2]、などがあります。さらに、インゲン豆やトウモロコシ、大麦、全粒小麦などにも含まれています。また、タイ米やササニシキなどに多いという考えもあります[※5]。
レジスタントスターチは加熱すると大きく減少し、冷めると再度増えるという性質があります。つまり、冷たい状態で食べた方が、腸内細菌のエサが多くなり、効果が得られやすくなるということです。
また、トウモロコシのレジスタントスターチは、他の難消化性でんぷんに比べると、腸内細菌のエサになりやすいと言われています。[※1]
そのほか、お寿司や冷やし茶づけ、冷製パスタ、ポテトサラダ、冷やし麺、おにぎりなどに多く含まれているとされています。
しかし、お寿司や冷製パスタを食べて痩せる、お通じが良くなる、といった話は聞いたことがないと思います。つまり炭水化物の中にはそういった成分が含まれている、調理方法によってはそういった成分に変わる、一般の炭水化物より消化吸収されにくい、というだけであり、イコール「痩せる」ではないのです。
レジスタントスターチと小麦ブランを組み合わせることで、短鎖脂肪酸濃度が上昇し、p-クレゾール濃度が低下する[※6]という研究結果があります。短鎖脂肪酸とは、人間の大腸内で腸内細菌によって生成される有機酸の一つです。
短鎖脂肪酸は、悪玉菌を殺菌する作用や、増殖を抑える作用があり、また、腸粘膜を健康にして、腸のバリア機能を高め、病原菌や感染症などから守ってくれる働きを高めてくれるのです。
さらに、ペクチンやオリゴ糖、ビタミンCなど腸内環境を整える作用がある栄養素と一緒に摂ることで、より効果が高まります。また、トリプトファンなどのアミノ酸と一緒に摂ることで、精神安定や脳の活性化につながります。
レジスタントスターチの副作用としては、ほとんど報告がありません。特定保健用食品の安全性試験でも、関与成分を1日10g1ヶ月毎日摂取した試験においても、重篤な有害事例は報告されていません。
ただし、商品の注意表示には「食べ過ぎ、あるいは体質・体調により、お腹がゆるくなることがあります」とは表記されています。[※7]
また、レジスタントスターチを含む食品であるご飯やパンを食べ過ぎると、摂取カロリーも増えます。そのため、ダイエット目的の場合は、食べる量に注意が必要です。
食材を冷やすことで増えると言われるレジスタントスターチですが、冷えた食品ばかり食べていると、血行が悪くなってしまうこともあります。温かいお味噌汁と一緒に食べる、冷たいものを食べたら、温かいお茶を飲む、などの体を温める工夫も必要です。
また、冷えたご飯が苦手な方もいるでしょう。現在では、レジスタントスターチを多く含むパスタやご飯、パウダーやサプリメントなども数多く出ています。そういった商品を取り入れるのもおすすめです。