プロポリスとはミツバチが採取した樹液や色素などに、ミツバチの分泌液が混ざった巣の素材で、主に高い抗菌作用が注目されています。プロポリスと一言でいっても、産地、採取される時期、起源植物、抽出方法などによって構成する成分は異なります。ここではプロポリスの摂取目安量や効果効能・研究成果などについて詳しく解説します。
プロポリスとは一言でいえば、ミツバチが作り出す天然の化合物のことです。
ミツバチの唾液などの分泌物と樹皮・新芽・蕾などから採取した物質が混ざり、樹脂状になった独特の香りを持つ成分です。
ミツバチは巣のなかにプロポリスを塗ることで、蜂の巣を強化しているだけでなく、巣の中を殺菌消毒していることが知られています。
プロポリスの高い抗菌作用によって、蜂の巣の中にほかの虫が侵入するのを防ぎ、雑菌が繁殖しないようになっています。
プロポリスのおかげで、そこに暮らすミツバチたちの環境が清潔に保たれているのです。
このことは、ミツバチの巣がアマゾンのような高温多湿の場所にあってもカビが生えたりしないことによって証明されています。
プロポリスのおかげでミツバチは4200万年もの間ほとんど生態系を変えずに生き延びている、とさえいわれます。
私たち人にとっては、風邪の初期症状や喉の違和感にプロポリスが良いと聞いたことがある人が多いのではないでしょうか。
実際プロポリスの入ったのど飴はとても人気です。
■プロポリスに含まれる成分
プロポリスには300種類以上の化合物が含まれており栄養素が豊富であることが解明されています。
アミノ酸、ビタミン、ミネラルの他に20〜30種類のフラボノイドも含まれていることがわかってきていますが、まだまだ配合成分の研究は進むでしょう。
さらにプロポリスには、カフェイン酸フェネチルエステル、アルテピリンCなどの生理活性成分も含まれており、これらの豊富な栄養素が複合的に作用することで、プロポリスのさまざまな効用が発揮されると考えられています。
これだけ豊富な栄養素を含んでいるプロポリスですから、研究されている効果も多く、抗がん・抗酸化・抗炎症・抗菌・鎮痛などの作用を持つといわれます。
しかしながら、プロポリスにはまだ未知の部分が多くあり、これから新しい成分や効果が見つかる可能性も期待されています。[※1][※2]
プロポリスには以下のような効果・効能が期待されています。
■抗酸化作用
ブラジル産プロポリスには、ヒトの酸化ストレスを緩和させる抗酸化作用があることが報告されています。[※3]
■スギ花粉の症状緩和作用
1日300mgのプロポリスを、花粉が飛散する12週前から摂取することで、症状が軽減することが報告されています。 [※4]
■風邪の症状の緩和作用
プロポリスを摂取している人の方が、風邪が治るまでの時間が短くなることが「プラセボ対照二重盲検試験」によって報告されています。[※5]
■抗菌作用
プロポリスをうがいの際に使用することで、口腔内の痛みや炎症を軽減するのに有効である可能性が示唆されています。[※6]
■初期の糖尿病を予防する働き
2型糖尿病が発症する前段階として、インスリンが効きにくい状態「インスリン抵抗性」になりますが、プロポリスにはインスリン抵抗性を予防する働きがあることが報告されています。[※7]
■口臭や虫歯、歯周病を予防する働き
プロポリスをうがいや歯磨きに用いると口腔内の細菌増殖を抑えるため、歯磨き粉などにも用いられています。[※8]
プロポリスにはさまざまな機能が報告されています。
しかしプロポリスは生産地や採取時期などによって含有成分や構成成分が異なるため、すべてのプロポリスに同じ効果効能が期待できるわけではありません。
天然成分で構成が異なるため、プロポリスのどの成分が体に働きかけて効果が得られるのか、解明されていない部分が多いのです。
しかしプロポリスに含まれるある有効成分には特に注目が集まっています。それが「アルテピリンC」というフラボノイドです。
これはブラジル固有のアレクリン系を起源とする植物にだけ含まれている成分で、アレクリンという低木由来のプロポリスにしか含まれない成分です。
1999年に日本癌学会で、このアルテピリンCは「桂皮酸誘導体」であり、これがヒスタミン(アレルギー反応に関与)やサイトカイン(白血球などの細胞から分泌されるタンパク質)の分泌を抑制する、ということが報告されました。[※9]
プロポリスに効果がある理由の代表的有効成分の一つがアルテピリンCである可能性が高いということです。
アルテピリンCには他にも抗がん作用、抗炎症作用、抗酸化作用などさまざまな生理活性が報告されています。
ブラジル産のプロポロスの人気が高い理由は、この成分が含まれているプロポリスを求める人が多いからです。
プロポロリスはキャンデイータイプなどであれば小さいお子様からご年配の方まで楽しめます。
風邪やインフルエンザが流行している時期などは、キャンディータイプを手軽に利用すると良いでしょう。
液体タイプやサプリメントの場合、なんとなく免疫力が低下している、と感じる人や、自然治癒力を高めたい、という中高年の人が健康維持のために摂取しているようです。
またスプレータイプのプロポリスもあり、こちらは喉の痛みがきになりはじめたときや、口腔内の状態を整えたい人に人気があります。
使う理由や目的に応じて選べるのがプロポリスの特徴です。
プロポリスは食品と考えられているため、1日の摂取目安量は定められていません。
しかし公益財団法人 日本健康・栄養食品協会によって認められているプロポリス製品に含まれるプロポリス製品の1日の摂取目安量は、プロポリス含有食品プロポリスとして150〜800mg、プロポロスエキス加工食品、プロポリスエキス含有食品プロポリスとして100〜500mgとなっています。[※9]
プロポリス、プロポリスエキス含有商品を選ぶ際の目安にすると良いでしょう。
プロポリスの効果効能については多数のエビデンスが報告されています。
抗酸化作用を確認
ブラジル産プロポリスの抗酸化作用研究については岐阜大学で行われたものが有名です。
11名の成人男子による二重盲検試験法によってプロポリス摂取群は、プラセボ摂取群と比較して酸化アルブミンの量が少ない(=酸化ストレスが抑えられている)ことが報告されています。[※3]
感染症予防作用
日本で健康な成人59名を対象に行われた二重盲検プラセボ比較試験で、1〜4月のうち2か月間にプロポリスを1日75mg摂取した群と、プラセボ群で比較したところ、アンケートでは風邪の罹患期間の短縮や自覚が報告されています。
ただしNK細胞の活性や罹患回数などの変化などは認められていません。[※6]
花粉症に関する研究
スギ花粉罹患者25名に対し日本で行われた二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、プロポリエキスを1日300mg間の飛散前から12週間錠剤で摂取してもらった試験が行われました。
この試験によれば、症状発症時に医薬品を必要とする量が減少したことが報告されています。
しかしスギ抗原特異的IgE抗体の数値などに変化は認められておらず、今後の研究が期待されるところです。[※10]
プロポリスは多数の有効性を報告するエビデンスや食経験の豊富さによって、健康成分としての期待が高く利用者も多いです。
ただし国立栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報によれば、「抗菌作用がある」「炎症を抑える」といった情報についても、有効性が十分といえるデータはない、としています。
これは産地や収集時期、起源植物、抽出方法によって構成成分が異なることも関係しているのでしょう。
プロポリスの歴史は非常に古く、4000年以上前から民間薬として利用されてきたことが知られています。
古代エジプト、メソポタミア時代にもミイラの防腐剤にプロポリスを使用していたという記録も残されています。
古代ギリシヤの歴史家ヘロドトスも『歴史』の中でプロポリスに言及しているほか、同じく古代ギリシヤのアリストテレスも『動物誌』の中で皮膚の疾患や感染症の治療薬にプロポリスを用いることを記しており、紀元前からプロポリスが人々に利用されてきたことはわかっています。
ところが西洋医学の発展とともに、抗生物質が開発され、プロポリスは表舞台から姿を消していったとされます。
しかし生産地であるブラジルなどでは、現代の今でもどこの薬局でも手に入る民間薬として人気があり、欧米諸国でも抜群の認知度と人気があります。
そして人工的な医薬品よりも副作用や耐性菌のリスクの少ないプロポリスに再び注目が集まっているのです。
プロポリスに再び注目が集まるようになってからは、さまざまなプロポリス研究が各国で行われ、プロポリスに含まれるフラボノイドなどに機能性があるのではないか、といったことも解明されるようになってきています。
日本では1985年、国際養蜂会議でプロポリスの症例報告が発表されたことをきっかけに、人気が集まりました。
さらに1991年には「第50回日本癌学会総研」でブラジル産プロポリスの中に抗がん効果のある化合物を発見した、という発表があり、プロポリス研究をさらに押しし進め、また一般の人にも再び人気の成分になりました。
予防医学が重要とされる現代において、プロポリスへの期待と注目はこれからも高まると考えられています。[※10]
九州大学では世界で初めてプロポリスの高齢者に対する認知機能の向上効果を報告しています。
現在、認知症の60〜70%を占めるアルツハイマー病には根本治療方が見つかっていません。
九州大学大学院の武 洲教授らのグループはチベット高原に住む60名の参加者(平均年齢72.8歳)に二重盲検プラセボ比較試験で全身炎症の悪化と、認知機能の低下について2年間にわたる臨床研究を行いました。
その結果、プロポリス摂取群(12か月以上)には明らかな全身炎症の低下と認知機能の低下が認められたことを報告しています。
研究者である武 洲教授は
「継続が力になり、天然物質であるプロポリスを用いた細胞レベルの7年の研究成果が、ヒト試験でも実証されました。持続的なプロポリスの摂取は認知症の予防に期待できそうです」と述べています。[※11]
(九州大学プレスリリース、2018年4月18日公開より引用・抜粋)
認知症の問題は、日本のみならず、高齢化社会を迎えたすべての先進国に共通の課題です。プロポリスの有用性や作用機序が、より明確になることが期待されます。
プロポリスを摂取したい場合は、プロポリスの加工食品(サプリメントなど)かプロポリスエキスの加工品(キャンディーなど)から摂取することになります。
プロポリスの産地や生産方法、抽出方法などによってその中身(構成成分)は異なります。
生産地としては、ブラジルが有名ですが、ニュージーランド、オーストラリア、中国、アルゼンチンまた国産のものもあります。
どの産地のものが優れている・劣っている、ということは一概にいえませんが、天然成分である以上、構成成分が異なるのは仕方のないことです。購入する側が信頼できる商品を選ぶことが第一になります。
ちなみに商品を選ぶ時に「○○に効く」「○○が治る」と表記されたものは薬機法に違反する商品で、信頼できるメーカーであればそのような表示はしないはずです。表示をよく確認し、過度な期待をせずに商品を選びましょう。
ミツバチが作ってくれるものには、プロポリスだけでなく、はちみつやミツロウなどもあります。そしてプロポリスとよく混同されるのがローヤルゼリーです。
あるいは、プロポリスとローヤルゼリーを一緒に摂取することで相乗効果が期待できる、という情報もあります。
ローヤルゼリーはひとつのミツバチの巣の中にたった1匹しかいない女王蜂にだけ与えられる特別な食事で、他の働き蜂が女王蜂のために収集して食べた餌を消化して分泌した特殊な物質です。
プロポリスは蜂の巣と働き蜂を守るもの、ローヤルゼリーは女王蜂の食事、というのが大きな違いです。
またプロポリスには殺菌作用や抗菌作用があるのに対し、ローヤルゼリーはビタミンやミネラル、アミノ酸、またローヤルゼリーにしか含まれないデセン酸というものから成り立つパーフェクトフードとされています。
つまり2つの成分はまったく異なるものであり、古代からローヤルゼリーはより食品的に、プロポリスはより民間薬的に使用されています。
両方の成分が含まれた商品もありますが、明確な相乗効果を示す根拠となる研究や論文は見当たりません。
プロポリスの副作用として皮膚が弱い人、アレルギーがある人には接触性皮膚炎の報告があります。
喘息の人も悪化する可能性が指摘されています。妊娠中、授乳中の人も安全性が十分といえるデータがないため控えるべきとされています。
アレルギーは蜂製品のアレルギー、ポプラ、毬果植物などにアレルギーがある人が特に注意が必要です。
他の医薬品やハーブ、サプリメントの相互作用についても明らかにはなっていません。