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プラズマローゲンの効果とその作用

プラズマローゲンは生体内に含まれるリン脂質で、抗酸化作用を持つ成分です。脳や心筋などさまざまな部位に含まれており、近年ではアルツハイマー型認知症の改善に有効だとして、研究が進められています。ここではプラズマローゲンの効果・効能、作用などをまとめました。

プラズマローゲンとはどのような成分か

プラズマローゲンは体を構成するリン脂質の一つで、哺乳動物のすべての組織に存在する成分です。人間の体にあるリン脂質のうち18%がプラズマローゲンで、脳神経や心筋のほかリンパ球・マクロファージといった免疫細胞に多く含まれています。[※1][※2]

ただし脳内のプラズマローゲン量は歳を重ねるごとに減少するとされており、特に高齢者ではいちばん多いと期と比べ、6割ほどの量しか脳内プラズマローゲン量が維持されないことがわかっています。

プラズマローゲンには抗酸化作用があるほか、体内で多くの生理機能をサポートするはたらきが報告されています。これまでの研究では認知機能の改善や神経炎症の抑制などが発見されました。[※3][※4][※5]

現在も研究が進んでおり、プラズマローゲンの効果を期待して、機能性食品や健康食品に配合されることが増えているようです。

■プラズマローゲンの種類

プラズマローゲンの種類は主に鶏むね肉に多い「コリン型」と、ホタテやホヤなど海産物由来の「エタノールアミン型」の2つです。

この2種類には各種脂肪酸が含まれており、健康維持に役立つと考えられています。

このうち鶏由来のコリン型プラズマローゲンは小腸から吸収されやすく、体内で言葉や位置情報などを記憶する認知機能を維持してくれるのが特徴。

エタノールアミン型プラズマローゲンは小腸で吸収されにくく、約9割はそのまま排出されてしまうといわれています。

ただしエタノールアミン型プラズマローゲンはコリン型プラズマローゲンよりもDHAやEPAなどの必須脂肪酸を多く含有。

DHAやEPAは血液サラサラ効果が期待できる成分です。そのため、血液による疾患の予防や脳の発達に大きく影響する可能性があります。[※2]

プラズマローゲンの効果・効能

プラズマローゲンには以下のような効果が期待できます。[※3][※6][※7][※8][※9]

■学習・記憶機能の向上

プラズマローゲンを摂取すると脳の活性化や情報伝達が進み、学習・記憶などの認知機能が高まることがわかっています。

■アルツハイマーの予防・改善

研究では、アルツハイマーで起こる認知機能の低下が、プラズマローゲンによって改善されるという報告があります。

■認知症の予防

プラズマローゲンの摂取は脳神経細胞へのダメージを防いでくれます。そのため、神経機能が維持され認知症の予防につながるのです。

■脳の疲れを改善する

プラズマローゲンを摂ることで、活性酸素が引き起こす酸化ストレスや神経細胞に毒性を持つアミロイドβによる神経炎症を予防し、脳の疲労状態を改善してくれます。

■炎症を抑える

プラズマローゲンは抗炎症作用を持っているため、皮膚や臓器での炎症を抑えてくれます。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

プラズマローゲンはもともと生体内に存在しており、脳や心筋などではたらいています。そのはたらきは幅広く、さまざまな生理機能のサポートに役立つことがわかっています。

プラズマローゲンの作用としてよく知られているのは、神経細胞の維持です。

人間は何かを考えたり活動したりすると脳神経細胞が酸化され、ストレスがかかります。すると脳内で神経細胞を攻撃するアミロイドβたんぱく質が集まるようになってしまいます。

これが原因で脳神経細胞が炎症を起こして傷つき、体にいろいろな不調をもたらします。この状態が「脳疲労」です。

プラズマローゲンを摂ることで脳神経細胞の酸化を防ぎ、アミロイドβたんぱく質の生産を抑制できます。そのため、脳疲労が起こることなく健康状態を維持することが可能です。

また、プラズマローゲンによって認知機能を高め、アルツハイマーを予防できます。

プラズマローゲンを摂取すると脳が活性化。すると認知機能をつかさどる海馬や前頭葉のはたらきが良くなり、学習能力や記憶力などが向上することがわかっています。

アルツハイマー患者がプラズマローゲンを摂取したところ、症状が改善したという報告もありました。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

プラズマローゲンは認知機能を改善する効果があることから、物忘れが多い人やアルツハイマーを患っている人に適した成分です。神経細胞の保護作用があり、疲労状態にある脳を正常な状態に戻してくれます。

そのほか抗炎症作用や抗酸化作用を持つので、皮膚のかぶれや胃炎などの炎症を起こしやすい人にもおすすめとされています。

プラズマローゲンの摂取目安量・上限摂取量

プラズマローゲンは体内でも合成できるため、食品からどのくらい摂取するとよいのかは詳しくわかっていません。ただし効果を期待して過剰に摂取するとほかの成分によって副作用が起こるおそれもあります。

プラズマローゲンを使用した製品では、ほとんどが1日の摂取目安量は2粒(0.5mg)となっているため、これを目安に摂取するのが望ましいでしょう。

プラズマローゲンのエビデンス(科学的根拠)

プラズマローゲンの効果を示す科学的根拠として、学会発表や論文が報告されています。

BOOCSホリスティッククリニック東京の市丸みどりらは、プラズマローゲンが中等度アルツハイマーに及ぼす影響を報告しています。

試験では中等度以上のアルツハイマーを患っている対象者68名にホタテ由来精製プラズマローゲン0.5mgを3か月与え、試験後に認知症の診断テストおよび介護者評価、プラズマローゲンの血中濃度を調べました。

結果、中等度アルツハイマー患者では診断テストの結果と介護者評価、プラズマローゲンの血中濃度がすべて改善されています。

このことから、ホタテ由来の精製プラズマローゲンは軽度だけでなく中等度のアルツハイマーでも認知機能を改善する効果が示唆されました。[※11]

研究のきっかけ(歴史・背景)

プラズマローゲンは1924年、生体の維持に欠かせない物質としてFeulgen R博士らに発表されました。研究で細胞質(プラズマ)に存在することがわかり、プラズマローゲン(Plasma logen)と命名されています。

その後、さまざまな研究が行われ、アルツハイマーや神経細胞とのかかわりが明らかになりました。特にアルツハイマーとのかかわりは深く、プラズマローゲンがアルツハイマーによる認知機能低下の改善に役立つという報告もあがっています。

近年ではプラズマローゲンが機能性成分として認定され、数多くの製品が流通しています。認知機能の向上以外にも多様な生理機能を持つため、今後の研究に期待が高まっている成分です。

専門家の見解(監修者のコメント)

長年プラズマローゲンの研究に携わっている、九州大学名誉教授の藤野武彦氏は、プラズマローゲンについて以下のように述べています。

「プラズマローゲンに関しては、20世紀末にアメリカで、アルツハイマー患者の解剖された脳で減少していることが明らかになり、その後カナダや我々のチームが、生存中の患者血液で減少している事を見つけました。私は長年の脳疲労の研究から、プラズマローゲンが脳疲労、認知症のカギになると考えるようになりました」

(九州医事新報社「『プラズマローゲン』で認知症改善。世界が変わる、やっと変わる。」より引用)[※12]

藤野教授は国のプロジェクト研究の一環として、プラズマローゲンの抽出・精製を始め、同じ研究チームのスタッフと協力し、動物試験・臨床試験を可能にしました。その研究の中で、脳機能へのはたらきについて可能性を見出したようです。

その後、アルツハイマーマウスを使った実験でプラズマローゲンが認知機能を改善することを発見しました。2013年には新たな試験を開始し、人間に対しての効果も調べています。

「2013年に、福岡大学医学部( 坪井義夫教授、合馬慎二助教) と共同でアルツハイマー型認知症40人を対象に単盲検臨床試験を実施。プラズマローゲン1㎎投与群では、プラセボ群に比べ統計的有意に認知レベルの向上が見られました。その後、レビー小体型認知症や意味性認知症でも改善例が見られています」

(九州医事新報社「『プラズマローゲン』で認知症改善。世界が変わる、やっと変わる。」より引用)[※12]

この時行った実験では、プラズマローゲンを摂取したアルツハイマー患者のグループはプラセボ(偽薬)を与えたグループよりも認知レベルが上がったことがわかっています。
このことから、プラズマローゲンはマウスだけでなく人間でも認知機能を改善できることが明らかになったのです。

アルツハイマーだけでなく幻視や錯視などの症状が見られる認知症でも改善が報告されたことから、認知症全体の治療として利用できるのではないかと考えられています。

プラズマローゲンを上手に摂取するには

プラズマローゲンは一般的にサプリメントで摂取します。

ただし、プラズマローゲンを摂取する際は、目的に合わせて摂取する種類を変えるのが大切です。たとえばより多くのプラズマローゲンを補いたい場合、体内に吸収されやすい鶏由来のコリン型プラズマローゲンが適しています。

また、プラズマローゲンだけでなくほかの成分も摂りたいのであれば、ホタテ・ホヤ由来のものがおすすめです。ホタテ・ホヤにはエタノールアミン型プラズマローゲンだけでなく、DHAとEPAが含まれており脳の健康維持に役立ちます。

自分に合った方法で、プラズマローゲンを使い分けてみてください。

相乗効果を発揮する成分

プラズマローゲンには認知機能を改善するはたらきがあり、脳の健康を保つとされるDHA・EPAとの相乗効果が期待できます。体内で足りなくなったプラズマローゲンを補うだけでなく、DHA・EPAを合わせて摂取することで、脳の疲労状態を改善できるといわれています。

脳のはたらきを改善したい人は、プラズマローゲンだけでなくDHA・EPAも含んでいる食品を積極的に食べるのが良いでしょう。

プラズマローゲンの副作用

プラズマローゲンはもともと体内にある成分なので、副作用の心配はないといえるでしょう。

ただし人によっては、プラズマローゲンが含まれる食べ物でアレルギーを起こす場合があります。プラズマローゲンは多様な食品に含まれていて、特に鶏やホタテ、ホヤに多く入っています。

これらの食品アレルギーを持つ人は、サプリメントを摂取する場合でも原料を確認してください。

アルツハイマーとの関係

プラズマローゲンは認知機能に深くかかわっていることから、アルツハイマーの改善に役立つと考えられている成分です。

プラズマローゲンは神経細胞を攻撃するアミロイドβたんぱく質の過剰生成を抑えるため、脳の機能を維持できると考えられています。

アミロイドβたんぱく質は本来、神経の成長と修復に関わる物質です。しかし、壊れて構造が変化すると脳の海馬や前頭葉で神経炎症を起こし、脳にダメージを与えるように。

学習・記憶に関与する海馬や前頭葉がダメージを受け続けると、認知機能が衰えてアルツハイマーを引き起こす原因になります。

また、アルツハイマーでは正常な人と比べて脳内のプラズマローゲン量が低下していることがわかっています。そのため、プラズマローゲンを補うことで症状を改善できると考えられているのです。

マウスを使った実験ではアルツハイマーマウスの海馬にプラズマローゲンを投与したところ、認知機能に改善が見られたことから、臨床試験でも同じ効果があるといえるでしょう。

現在、プラズマローゲンを補うことで脳内の情報伝達をスムーズに行い、脳疲労をやわらげることができるかどうかを調べるため、研究を進めています。