フルーツの皮などに含まれているペクチンは、糖分としての栄養があるほか、さまざまな役割を持っています。
具体的には、コレステロールや糖分の吸収を抑える効果や整腸作用などです。体にとってどんなよい効果や作用があるのか、どれくらい摂取するべきなのかなど、ペクチンに関する情報をまとめました。
ペクチンは、主にフルーツの皮などに含まれる多糖類であり、食物繊維のことです。水溶性のものと不溶性のものがあり、不要性のものはフルーツが熟成することによって水溶性に変化をします。
植物の細胞壁を作る成分として知られており、ふだんは植物の細胞をつなぎあわせるものとして活躍しています。
ペクチンと聞いてわかりやすいのは、フルーツを使ったジャムでしょう。ペクチンは煮詰めることで、水に溶けだし、ゼリー状になります。糖と煮詰めてジャムがどろっとするのは、ペクチンのおかげでもあるのです。
そのほか、栄養補助食品や医療品などでペクチンは利用されています。[※1]
ペクチンは水溶性の食物繊維であるため、胃腸の調子を整える効果が期待できます。体の老廃物を外に出すサポートや、便秘や下痢といった、腸内の不調を改善してくれることがあります。
また、乳酸菌などの善玉菌を増やしてくれる働きがあることから、発がん性物質の発生を抑える効能もあると言われています。このような効果・効能があることから、ペクチンは胃腸薬などにも使われることが多いです。[※2]
そのほか、疲労回復に効果的であることも、留意しておきたい点です。腸内環境を整えることは、効率のよい栄養摂取にもつながります。体が栄養をきちんと摂ることで、疲れをやわらげ、体力づくりにもよい効果をもたらすと言われています。
ペクチンは血液に含まれるコレステロール値を下げてくれることがあります。特に悪玉菌の一種であるLDLを下げてくれることがあり、これが動脈硬化や心筋梗塞など、さまざまな病気の予防に役立つと言われています。
ペクチンはコレステロール値を下げてくれるだけでなく、胃腸内に善玉菌増やしてくれる作用があることも欠かせません。乳酸菌などの善玉菌が増えることで悪玉菌を減らし、腸内環境を整え、健康な腸内を作る手助けをしてくれます。
ほかにも、体内の消化器官にくっつき、胃の消化のスピードを緩めてくれる作用があります。九州のスピードが遅くなることで、糖の吸収を抑えてくれることがあるのです。このことから、糖尿病の予防にも役立つのではないかと言われています。[※3]
ペクチンは整腸作用が期待できるため、便秘や下痢など、胃腸の調子が悪い方におすすめです。
今後の健康維持にも役立つことがあるため、心筋梗塞や動脈硬化、糖尿病などが心配な方も摂取するとよいでしょう。これは、糖や脂質の吸収を抑えてくれることは、これらの病気を予防、改善することにもつながるためです。
また、ダイエットをしたい、太りにくい体作りをしたいと考えている方もよい効果が期待できます。糖や脂質の吸収を抑えてくれたり、便秘を解消してくれたりすることがあり、これらはダイエットに十分役立ってくれます。
ペクチンはこのように、ダイエットをしたいと考えている方や、健康面に不安を抱えている方の強い味方と言えます。身近な食べ物から摂取できるというメリットもあるため、上記のような不安や悩みを抱えている方が摂取するのが望ましいでしょう。
ペクチンの上限摂取量ははっきりとあるわけではありませんが、ペクチンは食物繊維の一種であるため、適度に摂取することが重要です。一般的に、成人の理想の食物繊維の摂取量は、一日24g以上、できれば1,000kcalで14gほど摂取するのが望ましいと言われています。[※4]
さらに、注意しておきたいのがペクチンを摂取するときのフルーツや野菜の量です。
たとえば、ペクチンはみかんやりんごに豊富に含まれています。しかし、みかんやりんごをたくさん食べることで、健康を害してしまう恐れもあります。みかんやりんごには糖分がたっぷりと含まれています。
糖分をたくさん摂ることは、太りやすい体になることや、糖尿病のリスクを高める原因です。そのため、摂取量に気をつける必要があります。
多くの研究において、ペクチンの持つ作用が次々と認められています。
まずは、ペクチンにコレステロール値を下げる働きが実証された研究を紹介します。
高コテスレロール血症、かつ冠動脈心疾患のリスクが高い米国人男性27名を対象に、グレープフルーツから抽出したペクチンを1日15g、16週間摂取させた結果、血漿コレステロール7.6%、LDL-コレステロール濃度 10.8%、LDL-コレステロール/HDLコレステロール9.8%の低下が認められました。
このことから、ペクチンにはコテステロール値を下げる働きがあるほか、高脂血症予防効果が期待できることがわかっています。[※5]
また、他の研究においても9人の被験者にペクチンを1日12g、3週間摂取させたところ、血中コレステロール濃度が13%減少したという結果が明らかになっています。[※6]
次に、ペクチンと腸内環境改善の関連性について行われた研究です。健康な男女14名にリンゴ高メトキシルペクチンを1日平均8.4g摂取させた結果、摂取開始前に比べてビフィズス菌が増えたことがわかりました。
ビフィズス菌の増殖は善玉菌を増やし、腸内環境改善に働きます。
また、ペクチンの血糖値上昇抑制作用に関する研究も行われています。これは20〜40代の健康な男女を対象に、ペクチンを含む5種類の食物繊維、また食物繊維12g相当のコレスチラミンを加えた食事を与え、血糖値と血清インスリンレベルを計測。
その結果、ペクチンを含むいずれの食物繊維にもインスリンの上昇をコントロールする効果が認められました。[※7]
ペクチンが発見されたのは、1825年で、発見したのはフランス人の研究者であると言われています。ペクチンの名前の由来としては「固い」を意味する「pektos」からです。
ペクチンは食物繊維としての活躍のほかに、ゲル化することが注目されるきっかけとなりました。食品の増粘安定剤、ゲル化剤としての役割を期待されていたためです。
しかし、近年では持っている成分の働きから、医療分野や栄養補助食品としても親しまれるようになってきています。
ペクチンの研究は数多く行われており、さまざまな専門家たちが注目しています。注目しているのは、栄養士や食文化、栄養を研究している専門学の博士だけではありません。医療にも役立つ可能性があるため、医師からも注目を集めているのです。
医学博士の田澤賢次氏はペクチンの中でも特にりんごに含まれているアップルオリゴペクチンについて以下のように述べています。
「腸内環境をきれいにすることは、健康維持の基本です。水溶性食物繊維である「低分子アップルオリゴペクチン」は、吸収性が高く、からだ全体に行き渡り元気にしてくれることが私たちの研究で明らかになりました。(富山大学医学部名誉教授 田澤賢次 「専門家の声」から引用)[※8]
アップルペクチンに関しては管理栄養士である宇佐美敦子氏も注目しています。下記のように、アップルペクチンの効果を述べています。
「アップルペクチンには、健康に好影響を与える効果もたくさんあります。昔からリンゴは、「1日1個食べると医者を遠ざける」といわれているほど、健康によい食品だとされていますが、それはアップルペクチンの効果も大きな要因のひとつと言えるでしょう。
たとえば、アップルペクチンの効果としては、便秘解消、コレステロール値の低下、血糖値の上昇の抑制などがあります。さらに近年では、放射性セシウムの除去効果があるとしてより注目を集めています。」
このように、多くの専門家たちがペクチンに注目し、その効果や効能、作用について信頼していることが明らかになっています。
ペクチンは主に、フルーツに含まれています。たとえば、りんごやいちご、みかん、オレンジなど、スーパーなどで簡単に手に入るもので摂取できます。オクラなどの野菜にも含まれているため、積極的に摂取するとよいでしょう。
ペクチンが多く含まれているものとして代表的なのが、りんごです。りんごにはアップルペクチンとよばれる水溶性のペクチンが含まれており、りんごそのものに「一日一個食せば医者を遠ざけることができる」と言われるほど、健康面や美容面の効果で注目されています。
りんごやみかんは豊富にペクチンが含まれているフルーツとして知られていますが、そのときに注目しておきたいのが食べ方です。
みかんは内皮が付いた状態で食べるようにしましょう。これは、皮の部分に豊富にペクチンが含まれているからです。そのため、缶詰などの実だけになっているものでは、あまりペクチンの効果を期待することはできません。
また、りんごも同様に皮にたくさん含まれていますので皮ごと食べた方がよいでしょう。
皮ごと食べるのが難しいという場合は、皮ごとすりおろして食べるのもおすすめです。また、加熱しても食べることもできます。ペクチンは加熱しても失われないため、さまざまな調理法で食べやすいものを見つけて無理なく摂取することがおすすめです。
コレステロール値を下げてくれる働きは、ペクチン以外の成分にもあります。たとえば、ペクチンをたっぷり含むりんごには、カリウムが含まれています。
カリウムは体内の余分なナトリウムを外に排出してくれるため、血圧を下げてくれる働きがある成分です。そのため、ペクチンと一緒に摂取することで、コレステロール値と血圧を下げることができるようになり、健康維持にもつながるでしょう。
また、ペクチンを含むものはフルーツや野菜などが多く、ビタミンやミネラルを豊富に含んでいる場合があります。ペクチンを意識的に取り入れることで、バランスが取れた食生活に改善することもあるでしょう。
またペクチンは腸内細菌の活性にも役立つので乳酸菌との相性も良いと言えます。
ペクチンの副作用は、今のところ明らかになっていません。ただし、ペクチン自体を多く取ることに問題はなくても、ペクチンを含む食べ物を過剰に摂取してしまうことで問題が起こることもあります。
たとえば、フルーツを取りすぎることは糖分の過剰摂取につながりやすいです。肥満や糖尿病、生活習慣病のきっかけになる可能性もあります。ペクチンを摂る際には、栄養バランスを考えることが大切です。