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パプリカの効果とその作用

煮込み料理だけでなくサラダなど生食にも合うパプリカは、β―カロテンやビタミンCが多く、油と一緒に料理すると脂溶性ビタミンであるβ―カロテンの吸収率もアップします。
使い勝手が良いパプリカですが、美容はもちろん、活性酸素からの攻撃から細胞膜を守ってくれるキサントフィルが含まれています。ここでは成分や効果について説明していきます。

パプリカとはどのような成分か

中南米原産のパプリカは、ピーマンやしし唐辛子、唐辛子などと同じナス科トウガラシ属の野菜で、とうがらしの甘味種です。

大型で肉厚、果皮は少し固いですが、糖度が高く甘みがあり、苦みや青臭さがほとんどありません。

赤や黄色、オレンジをはじめ、紫や黒、茶、白といった珍しい色もあります。

緑黄色野菜に含まれるカロテノイドは、体に良いと知られていましたが、750種ものカロテノイドをさらに分類すると50種のカロテンと700種のキサントフィルの2つに分類され、最近ではキサントフィルの高い抗酸化力が注目されています。[※1]

またパプリカは果肉が厚いため、加熱してもビタミンCが壊れにくいという特徴をもっています。

パプリカの効果・効能

■抗酸化作用

老化などの現象は、細胞が酸化することによって起こると考えられています。その酸化の原因となっているのが「活性酸素」ですが、体内の活性酸素は、運動をしたり、紫外線を浴びたり、呼吸をするだけでも発生します。

その活性酸素によって、生じる細胞への損傷を抑えてくれるのが「キサントフィル」です。キサントフィルの特徴は、細胞膜への親和性が高いこと、また細胞膜に分布することによって、活性酸素の攻撃から守ってくれます。[※1]さらに抗酸化物質で知られているβ-カロテンよりも高い抗酸化作用があると言われています。

■健康な皮膚を保つ

シミの原因は肌の老化と紫外線などによる刺激、シワの原因は紫外線の刺激のほか、真皮層にある「コラーゲン」や「弾力繊維(エラスチン)」が加齢により、量が減少し、変性することにより、肌の弾力が失われていきます。コラーゲンの合成にはビタミンCが大切で、健康な皮膚の保持のために体内にビタミンCを取り入れていきます。

そのためには黄やオレンジのパプリカのようにビタミンCが豊富なものをとり入れ、シミやソバカスを防ぎ、美白へと導いていきます。またピーマンと比較すると、赤パプリカは約2倍、オレンジパプリカは約3倍のビタミンCが含まれています。[※2]

■動脈硬化予防

動脈硬化は血管の内側にLDL(悪玉)コレステロールが溜まり、狭くなることによって血流が滞り、血液の塊である血栓が詰まるなど、様々な病気を引き起こします。赤パプリカに含まれるカプサンチンはHDL(善玉)コレステロールを上昇させることが明らかになっています。

HDL(善玉)コレステロールは体内に溜まった余分なコレステロールを肝臓に運んだり、血管の壁に溜まったコレステロールを引き出したりして回収してくれます。これにより動脈硬化などの生活習慣病予防の効果も期待できます。[※3]

■骨粗鬆症予防

骨粗鬆症は骨の吸収と生成の代謝が正常に行われないため、骨の中がスカスカになり、骨折しやすい状態になることです。カルシウムの吸収を促し、骨を丈夫にするのを助ける栄養素はビタミンD、マグネシウム、ビタミンCなどがありますが、近年の研究ではβ-クリプトキサンチンの摂取が健康な骨の維持・形成に大きく貢献することがわかってきました。

また血中β-クリプトキサンチン濃度が低い人に比べて、高い人では、骨粗しょう症を発症するリスクが92%も低くなる結果が示されています。β-クリプトキサンチンの摂取は、骨粗しょう症の予防につながることが期待できます。[※4]

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

パプリカに含まれるカロテノイドのひとつであるカプサンチンは、強い抗酸化作用を持つ赤色の色素です。その抗酸化力はリコピン同等、あるいはそれ以上と言われています。

強い抗酸化作用をもち、免疫力を高めて、がん予防などの生活習慣病の予防効果に期待されます。またカプサンチンとβ―カロテンとの抗酸化作用の相乗効果で、メラニン代謝や脂肪代謝を促進させ、美肌効果やアンチエイジングにも期待されています。

そのほか、ビタミンCは、体内におけるさまざまな代謝過程で作用し、骨や皮膚などの結合組織の構成成分として使われたり、細胞の成長と修復に重要でたんぱく質の一種であるコラーゲンの合成を促したりします。

さらに抗ストレスホルモンである副腎皮質ホルモンの合成にも必要な成分であり、ストレスが多いと消費されます。喫煙によっても、ビタミンCは多く消費されてしまいます。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

健康な皮膚を保つ効果や抗酸化力が高いことから、肌荒れやシワといった肌の老化を防ぎたい人やストレスが多い人、生活習慣病が気になる人にも摂取してもらいたい野菜です。

またマラソンや水泳などの持久系運動において、より速く長く競技を行うことができると示唆されているので、運動のパフォーマンスを上げたい方にも向いています。

ただし即効性はありませんので、毎日の食事に取り入れていきましょう。

パプリカの摂取目安量・上限摂取量

パプリカのみの摂取目安量、上限摂取量は設定されていませんが、厚生労働省が推進する健康作り運動「健康日本21」では、健康増進の観点から「野菜の摂取目標値を1日350g以上、そのうち緑黄色野菜を120g以上」としています。[※5]

緑黄色野菜とはカロテンを可食部100g中に600マイクログラム(600μg)以上含む野菜の総称でパプリカも緑黄色野菜の1つです。

またビタミンCは比較的短時間で体外に排出されるため、効果を維持するためには食事ごとなどに、1日に何度か分けて摂取することが望ましいとされています。

パプリカのエビデンス(科学的根拠)

生体内では常に活性酸素が発生しており、それらによる細胞膜の酸化・損傷が老化や疾病の一因になることが知られています。

細胞を損傷から守るためには、活性酸素を消去できる物質を体内へ取り入れることが有効です。そこでパプリカキサントフィルについて、ヒドロキシラジカル、一重項酸素に対する抗酸化力を評価しました。

実験方法はESRスピントラップ法を用い、各成分のヒドロキシラジカル・一重項酸素に対する消去活性を測定・比較。

またLC/MSを用いて反応産物を詳細に分析し、抗酸化力を発揮する際の化学的消去メカニズムを解明しました。

結果、パプリカキサントフィルに含まれるカプサチン・ククルビタキサンチン・カプソルビンは一重項酸素に対してアスタキサンチンを超える抗酸化力を示しました。

そのほか、パプリカキサントフィル摂取で、運動中の酸素摂取量と心拍数が低下、運動時の、酸素運搬効率が改善も発表しています。

試験方法は福島大学陸上部7名が、パプリカキサントフィル(総キサントフィル12.5mg/1日)を4週間摂取し、摂取前、摂取2週間、摂取4週間時点で、30分間のトレッドミル運動を実施し、その時の酸素摂取量と心拍数を測定しました。

試験結果によると、パプリカキサントフィル摂取後では、「より少ない酸素摂取量・より少ない心拍数」で同じ運動が行えることを示唆。酸素摂取量を減らして呼吸持久力を高めることは、マラソンや水泳などの持久系運動において、より速く長く競技を行うことができると示しています。[※1]

研究のきっかけ(歴史・背景)

江崎グリコ(株)は、抗酸化効果の高い素材商品を開発するにあたり、様々な緑黄色野菜のキサントフィルを研究、最終的にスペイン産の「赤いパプリカ」を選択しています。

赤いパプリカは緑黄色野菜の中でも、キサントフィルの含有量がトップクラス、ニンジンの約50倍、トマトの約100倍ものキサントフィルを含んでいます。

さらに赤いパプリカのキサントフィルは、抗酸化力でもトップクラスであると確認されています。

そこでグリコは緑黄色野菜の様々な健康機能が、パプリカキサントフィルで提供できるものと考え、これまでに明らかとなった、パプリカキサントフィルの特徴と生理機能を検証し、実験レポートにまとめました。[※1]

専門家の見解(監修者のコメント)

グリコの研究によれば、キサントフィルには700もの種類がありますが、その中でもとりわけ高い機能性を持つ優秀なキサントフィルはカプサチン、カプソルビン、カプサンチンエポキシド、クリプトカプシン、β―クリプトキサンチン、ククルビタキサンチンA,ゼアキサンチンです。

体内で効果を発揮するには「体内に吸収されること」が必要で、キサントフィルはわずかな構造の違いによって、体内への吸収性が大きく異なります。

吸収性試験の結果、血漿ではキサントフィル濃度が177%に上昇しましたが、キサントフィルが局在する赤血球ではさらにその効果は顕著で、キサントフィル濃度が225%に上昇し、効率よく体内へ吸収されることがわかりました。[※1]
(引用 赤パプリカの健康素材 江崎グリコ株式会社)

パプリカを使ったレシピ

■パプリカのマリネ

  • 材料(2人分)
  • 赤パプリカ 150g
  • 黄パプリカ 150g
  • オリーブオイル 大さじ2
  • 酢 大さじ1
  • 砂糖 小さじ1
  • 塩 少々

■作り方

      1.パプリカは、種を取り、大きめの乱切りにする。
      2.フライパンにオリーブオイルをひき、パプリカをさっと炒める。
      3.ボールに酢、砂糖、塩を入れ、混ぜ合わせ、2のパプリカを入れ、冷蔵庫で冷やす。

相乗効果を発揮する成分

β―カロテンは脂溶性ビタミンのため、油脂と一緒に摂取することで、吸収力が高まります。油を使った調理方法がおすすめです。[※2]

また、カプサチンとβ―カロテンの抗酸化作用の相乗効果で、メラニン代謝や脂肪代謝を促進、美肌効果やアンチエイジング効果があるのではないかと期待されています。[※2]

パプリカに副作用はあるのか

パプリカは通常食品として扱われているため副作用などはありません。

参照・引用サイトおよび文献

  1. グリコ健康科学研究所
  2. 『病気にならない魔法の7色野菜』監修 神奈川県立保健福祉大学教授 中村丁次 発行所 株式会社法研
  3. KAGOMEニュースリリース赤ピーマンのHDL-コレステロール上昇作用に関係する 有効成分とメカニズムを確認
  4. 理研ビタミン健康ラボ
  5. 厚生労働省
  6. e-ヘルスネット