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オルニチンの効果とその作用

オルニチンとは、たんぱく質を構成しない遊離アミノ酸の一種で、単独のアミノ酸分子のままで血液中をめぐる「遊離アミノ酸」のひとつです。
摂取すると腸で吸収され肝臓や腎臓、筋肉などでさまざまな働きをします。特に肝臓での働きが重要です。ここではオルニチンの効果効能・研究成果などについて詳しく解説します。

オルニチンとはどのような成分か

オルニチンはアミノ酸の一種で私たちの体内にもともと備わっている成分です。

しかし他のアミノ酸のようにたんぱく質を構成する成分ではなく、そのままの状態で血液中をめぐる「遊離アミノ酸」のひとつとして存在しています。

オルニチンは体内では特に肝臓に多く存在しており、私たちの体の中で常に行われている「代謝」の際に生じるアンモニアの解毒を助ける働きをしています。

さらに成長ホルモンの分泌にも関与していることがわかっています。

オルニチンは体内でも合成されますが化学的に合成することもできる成分です。

ドイツでは肝機能障害を持つ人への医薬品として25年以上も利用されており、日本でももともとは医薬品の区分に入っていました。

2002年の食薬区分の改定によって食品として使用されるようになりました。

オルニチンの効果・効能

オルニチンには次のような効果・効能が報告されています。[※1]

■肝機能改善

肝臓には主に3つの重要な代謝回路があります。1つ目が体内の毒素であるアンモニアを解毒する回路。2つ目がエネルギーであるATPの産生に関わる回路。3つ目がブドウ糖を新たに合成する回路です。

オルニチンはアンモニアを分解する「オルニチンサイクル」を活性することに関与し、アンモニアがエネルギーの産生を阻害することを防ぐことに役立っています。またこの働きにより、肝機能が正常に働くのをサポートしてくれるのです。
さまざまな研究によって肝臓疾患に対するオルニチンの有効性やエビデンスが存在していますが、まだ結論付けはできないという評価もあります。

■疲労回復効果

オルニチンによってオルニチン回路を活性させることは肝臓の健康維持につながり、ひいては全身疲労にも役立つと考えられているのです。

■成長ホルモン分泌や新陳代謝の促進

オルニチンには成長ホルモン分泌促進の作用があるのではないかと注目されています。

成長ホルモンは筋肉の合成を促すだけでなく、脂肪の分解やアンチエイジングにも役立ちますし、皮膚の代謝などにも関与しています。
そのためエイジングケア成分としてもオルニチンが注目されているのです。
[※2]

■美肌作用

疲れや肌の調子が悪いと感じている成人女性に対する試験で、オルニチン摂取により肌の弾力が有意に改善されたことが報告されています。[※3]

■睡眠・目覚めの改善

オルニチンを就寝前に摂取することで、眠りの質が良くなったと体感する人が多いことが報告されています。

睡眠の問題を抱えている人が多いため今後のさらなる研究に期待が寄せられています。[※4]

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

オルニチンがさまざまな効果効能を発揮する理由とそのメカニズムは、オルニチンサイクルという有害なアンモニアを肝臓で解毒することに関与しているから、と考えられています。

これによって肝臓そのものの機能が活性し、肝臓が保護されたり、安蔵でたんぱく質が合成されやすくなったりすることが考えられています。

オルニチンサイクルは尿素回路とも呼ばれ、余計なアンモニアを分解して無毒化することで、細胞内のミトコンドリアの働きを助け、私たちのエネルギー産生に役立つのです。 [※1]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

オルニチンはどんな人にも有効な成分です。なんとなく「お酒を飲む人=オルニチン」というイメージがあるかもしれません。

もちろんお酒を飲む方にとって肝機能保護や肝機能サポートの成分は大切です。ただし、1回で効果が感じられるようなものではないため、オルニチンを長期的に摂取しながら、アルコールも適量を守らなければ意味がありません。

またアルコールの影響がなくても肝臓はストレスや薬などによって疲労しやすい臓器です。体の内側から疲労を改善させたい方にも摂っていただきたい成分です。

近年は高齢者の健康維持や筋肉維持にも利用されているのがオルニチンです。

フランスで高齢者185名に対して行われた試験では、オルニチンを2か月間摂取してもらったところ栄養状態の改善、食欲指数やQOLの改善などが認められました。[※5]高齢者にとっても注目の成分になっています。

オルニチンの摂取目安量・上限摂取量

オルニチンの摂取量の目安や上限摂取量は特に定められていませんが、1日に400mg~1g程度が適切だといわれています。またオルニチン研究会[※1]によれば、成人の摂取目安量を1日400〜800mgとしています。

比較的安全性の高い成分のため、もう少し多めに摂取する人もいるようですが、過剰摂取には注意が必要です。

1日に10gのオルニチンを摂取した際に、胃痛、下痢など胃腸にトラブルが起こったという報告が存在します。

ただしこれは、オルニチンに限らずほかのアミノ酸を過剰に摂取したときにも起こりうる反応です。

オルニチンのエビデンス(科学的根拠)

オルニチンの効果効能については多数のエビデンスが報告されています。

■肝機能改善に関するエビデンス

健康診断などで肝臓の健康状態を評価する指標としてALTが用いられます。この数値が高いと肝臓に何らかの問題がある、特に脂肪肝の可能性が高いとされています。

ALT(30以下であれば基準範囲、31〜50が要注意)が高い成人男性(42〜100)で、脂肪肝の所見が見られた11名に1日1.6gのオルニチンを3週間摂取してもらったところ、プラセボ群と比較してALT数値の改善傾向が見られた被験者が多いことを報告しています。[※6]

■成長ホルモンの分泌促進に関するエビデンス

睡眠習慣が安定した健常な成人(女性25〜40歳まで)19名を2グループに分け(オルニチン摂取群は800mg/日、プラセボ群)、オルニチンまたは偽薬を就寝前に継続摂取してもらいました。

試験開始後3日目に睡眠中の成長ホルモンの量を測定したところ(尿中から測定)、オルニチン群のほうがプラセボ群より成長ホルモンの数値に増加が見られたことが報告されています。[※7]

■美肌作用に関するエビデンス

肌が疲れていると感じている成人女性(25〜60歳)39名を2グループに分け(オルニチン摂取群は400mg/日、プラセボ群)、8週間継続摂取してもらった後、肌質に関するアンケートを行いました。

その結果、「ハリ・ツヤ」に関する指標と「乾燥」に関する指標で、有意に改善されたと回答する人が増えたことを報告しています。[※8]

いずれも小規模な試験であり、必ずしも効果効能を断定できるものではありませんし、今後のさらなる研究が待たれるところですが、オルニチンには現代人が抱える悩みの多くを多角的にサポートしてくれる可能性が期待されています。

研究のきっかけ(歴史・背景)

1806年ごろから1930年代にかけていろいろなアミノ酸が発見されましたが、オルニチンサイクルが発見されたのは1932年のことでした。

さらに1937年にはTCAサイクルが発見され、これらの研究によりアンモニアが疲労や肝機能と関係していることも明らかにされる研究が進みました。

さらに1950年には「肝性脳症」のメカニズムスが日本人の猪瀬博士の研究によって報告され、アンモニアと精神症状も関係していることが明らかとされました。

このあたりからオルニチン研究はますます盛んになり、1973年頃にはオルニチンに肝臓保護作用があることが解明されました。現在でもオルニチンとストレス、肌、睡眠など様々な研究が行われています。[※9]

オルニチンの研究が行われる前から、日本では「しじみ汁」をよく食べる食習慣がありますが、これはきっと、先人たちの知恵だったのでしょう。

専門家の見解(監修者のコメント)

管理栄養士の村田裕子氏はヨミドクターのレシピページで「しじみと白菜のスープ」について次のように述べています。

「注目成分はオルニチンです。オルニチンは、疲労の元となると考えられているアンモニアの分解・解毒を促進。ミトコンドリアの働きも助けて、肝臓本来の機能を保つとされます。

また、シジミに多く含まれるメチオニンやロイシン、タウリンも肝機能を高める働きが知られています。

アサリは身を食べ、シジミは汁を飲む、と言われますが、前述した健康によい成分の多くは身に含まれるもの。ビタミンやミネラル類もたっぷり含んでいるので、身もしっかり食べましょう。」[※9](ヨミドクターより引用・抜粋)

と述べています。しじみの中身は食べない、という人も少なくないと思いますが、しじみは丸ごと食べることでオルニチンとそれ以外の栄養素の相乗効果も期待できそうということです。

また井藤漢方製薬(大阪府東大阪市)が、20〜60代の医師や薬剤師、栄養士など医療関係者300人に実施した飲酒実態調査によると、医師たちが認識する飲酒対策に良いと考える食品や成分はウコンが49,7%でトップ。

次いでしじみ、タウリン、牛乳、オルニチンの順だった、と日刊工業新聞が報じています[※10](2017年7月30日ヘルスケア面より引用・抜粋)。

オルニチンは医師や栄養士からも評価が高い成分のひとつといえそうです。

オルニチンを多く含む食べ物

オルニチンはしじみに多く含まれますが、ほかにもヒラメ、キハダマグロなどの魚類にも含まれています。

これまではしじみに含まれるオルニチンの量が突出していて、しじみ以外の食品にはほんのわずかしか含まれないとされてきました。

しかしここ数年で、なんと「きのこ」にしじみの5〜7倍のオルニチンが含まれることがわかってきました。[※11]

それでもアミノ酸やビタミン、ミネラルも合わせて摂取しようと考えた場合は「しじみ」に軍配が挙がるといっていいと思います。

またしじみは冷凍することでうまみ成分やオルニチン、そしてイノシン酸が増えるという報告もあります。

実際にオルニチンが増えているかどうか測定することはできませんが、うまみが増えるだけでもうれしいので、冷凍しじみを利用してみるのもありでしょう。

相乗効果を発揮する成分

オルニチンとともにオルニチンサイクルを活性化する成分であるアルギニンは、オルニチンとの相乗効果を発揮する成分です。

そのほかにもシトルリンやアミノ酸全般、亜鉛、ビタミンB2などが相乗効果を発揮する成分として知られています。

オルニチンに副作用はあるのか

オルニチンは天然成分であり、体内でも合成されるアミノ酸の一種ですから安全性は高い成分といえます。

サプリメントや健康食品の場合、オルニチンだけでなく、そのほかの成分が組み合わされていることがほとんどです。

オルニチン以外にどのような成分が含有されているのかを確認し、過剰摂取にならないように注意する必要があります。

またサプリメントでオルニチンを一度に10g以上摂取した場合に胃腸に不調が起こったという報告もありますので、摂取目安量を守ることが大切です。