オリゴ乳酸の効果とその作用
トウモロコシやテンサイなどの野菜に含まれる天然糖類を原料にした、多機能成分「オリゴ乳酸」についてご紹介しています。これまで乳酸は「疲労の原因」といわれてきましたが、近年の研究で疲労回復に必要なエネルギー源だということが明らかになりました。ここでは、オリゴ乳酸がエネルギーとなる仕組みや腸内環境を改善して体内の善玉菌を増やす作用などについて、わかりやすく解説しています。オリゴ乳酸の効果効能や安全性に関する情報もまとめています。
- 株式会社グレイン
代表取締役
松澤一博氏氏
オリゴ乳酸は「善玉菌が住みやすい腸内環境に整える」役割を果たし、細胞を元気にしてエイジングケアに貢献する有効成分として、医学博士などの専門家からも注目されている成分です。ここではそのオリゴ乳酸の開発にも携わった、株式会社グレインの代表取締役・松澤一博氏にインタビュー。オリゴ乳酸の秘められた可能性について探っていきます。
オリゴ乳酸とは、トウモロコシやテンサイ(サトウダイコン)などの野菜に含まれる天然の糖類を乳酸菌で発酵させて抽出したL型発酵乳酸を原料にして、特殊な技術で縮合させ、粉末化した成分です。
抗がん剤の研究をする過程で偶然発見された成分で、30年以上も前から特定の疾患がある患者に対して提供されてきた経緯があります。
乳酸と聞くと、「疲労の原因となる物質」というイメージが強いと思いますが、近年の研究では疲労を回復するエネルギー源のひとつであることがわかってきています。[※1]
【乳酸に関する昔の研究情報】
【近年の研究で明らかになった情報】
オリゴ乳酸は、その名前からオリゴ糖や乳酸、乳酸菌と混同されがちです。それぞれの違いもわかりやすく説明していきます。
(1)オリゴ糖とオリゴ乳酸の違い
「オリゴ」とは、複数個の分子が結合している状態を意味します。
オリゴ糖は複数の糖が結合したもの(分子量は300~3000程度)ですが、オリゴ乳酸のオリゴは「オリゴマー」の略で、比較的少ない数の分子(3~22程度)が結合した成分、という違いがあります。
(2)乳酸とオリゴ乳酸の違い
つまりオリゴ乳酸は、乳酸同士がつながることにより(注1)、通常の乳酸にはないはたらきをします。ただし、乳酸分子の数が多すぎると分解しづらく、体に吸収されにくい傾向があります。
(注1)乳酸同士をつなげる(縮合する)製法の製造特許は株式会社グラートが取得。
そのため、健康食品には、最も体に吸収されやすい構造のオリゴ乳酸(3~22個の乳酸分子を直鎖状に結合したもの)が使用されています。体に吸収された分だけ体内で利用され、余分なものはスムーズに体外へ排出されます。
(3)乳酸菌とオリゴ乳酸の違い
乳酸菌 | オリゴ乳酸 |
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オリゴ乳酸は乳酸菌よりも腸に届きやすいのが特徴です。腸に届いたオリゴ乳酸は善玉菌の住みやすい環境を作り、乳酸菌(善玉菌の一種)を増やす役割も担っています。
腸内環境を整える効果が高く、健康維持に役立ちます。
オリゴ乳酸は、次のような症状・疾患を改善する効果が期待できます。[※2]
オリゴ乳酸はミトコンドリアの機能を高めて、肥満を防ぐ効果があります。臨床試験において血中の脂質量が有意に下がり、かつ、酸化ストレスも有意に抑制されることが確認されています。
オリゴ乳酸を摂取すると血糖値の上昇が抑えられるため、高血糖や2型糖尿病の予防に有効です。
オリゴ乳酸の免疫調整機能によって、アレルギー反応を引き起こす物質が分解されやすくなります。その作用により、花粉症や発疹などのアレルギー症状を抑える効果が期待されています。
腸の環境を改善させることにより免疫力機能が調整されることがわかっています。この作用により人が本来持っている病気や有毒な菌に対する抵抗力が向上、病にかかりにくいカラダを作り上げることに役立つと考えられています。
オリゴ乳酸には、善玉菌を増やして腸内環境を整えるはたらきがあるため、次のような作用が連鎖して起こります。
■腸内環境が改善することで期待できる作用と効果
とくに注目すべきは免疫力の調整作用です。体内にある免疫細胞のうち、6割から7割は腸内に存在することがわかっています。したがって腸内環境が整えば、6~7割の免疫細胞が元気になります。元気になった免疫細胞は細菌やウイルス、悪性のがん細胞と闘い、感染症やがんの羅患リスクを下げてくれます。
また、オリゴ乳酸を摂取すると、細胞内小器官・ミトコンドリアの機能が高まることが推測されています。ミトコンドリアには酸素を取り込んでエネルギーをつくるはたらきがあるので、体温調節や脂肪燃焼などに役立ちます。結果、生活習慣病の改善につながるのです。[※3][※4][※5][※6]
オリゴ乳酸は、腸内環境を整えたい人や免疫力を高めたい人におすすめです。とくに年齢を重ねると悪玉菌の割合が増えやすい傾向があり、体調不良や病気を発症するリスクが高まります。加齢により抵抗力や免疫力が弱まっていると実感している人は、定期的にオリゴ乳酸を摂取して腸内環境を整えておきましょう。
オリゴ乳酸には国が定める目安量や上限摂取量はありません。サプリメントや健康食品としてオリゴ乳酸を摂取する場合は、製品の用量用法を守って利用するのが良いでしょう。
医薬品および健康食品素材の研究開発を行っている株式会社GLART は、オリゴ乳酸の効果を証明する臨床試験を実施しています。[※5]
■血流改善効果
オリゴ乳酸の血流改善効果について、偽薬(プラセボ)との二重盲検試験を実施しています。比較試験の期間は3週間、20~64歳の健康な男女15名のうち8名にオリゴ乳酸、残りの7名には別の成分を摂取させて、末梢血管の血流量を測定しました。
オリゴ乳酸を1日300㎎を摂取させ、手足の指先の血流が増加しているかどうかをレーザー血流画像化装置を用いて測定したところ、血流量が有意に増加していたことがわかりました。とくに足の指先では1.5倍ほどに増加していた被験者もいました。この試験結果から、オリゴ乳酸には末梢血流の改善効果があると考えられています。
■便秘改善効果
オリゴ乳酸を使った便秘解消(便通改善)効果の比較試験です。20代の女性33名を対象に、低用量のオリゴ乳酸(1日300mg)、中用量のオリゴ乳酸(1日900mg)、偽薬(プラセボ)を摂取する3つのグループに分けて2週間経過を観察しました。
その結果、オリゴ乳酸を摂取していたグループの平均排便回数は、試験前に比べて増加。偽薬のグループは摂取前後で平均排便回数の改善がみられなかったことから、オリゴ乳酸を摂取すると便通が改善することが示されました。
また、オリゴ乳酸を300mg摂取したグループと900mg摂取したグループで排便回数に大きな差がみられなかったことから、オリゴ乳酸は300mg程度の摂取量で効果があると考えられます。
■抗肥満効果(ミトコンドリア機能亢進)
オリゴ乳酸のミトコンドリア機能向上作用による肥満予防効果を調べる試験です。ミトコンドリアは細胞内にあり、エネルギー生産を行っています。ミトコンドリアの機能が向上することは、体内の脂肪酸や糖が溜まらず、エネルギーに変わりやすくなるということです。
試験ではメタボ予備軍と診断された壮年期(55歳〜64歳)の日本人男性40名を対象に、オリゴ乳酸を摂取するグループと偽薬(プラセボ)を摂取するグループにランダムに分けて3か月連続摂取(1日300mg)する比較検査を行いました。
その結果、オリゴ乳酸を摂取したグループは偽薬を摂取していたグループに比べて酸化ストレスが減少し、メタボによっても引き起こされる動脈硬化指数が低下。さらに、善玉コレステロールの増加がみられ、血中コレステロール値が改善しました。
このことから、オリゴ乳酸にはミトコンドリアの機能を高めてメタボリック症候群を改善するはたらきが期待できるとしています。
抗がん剤の研究過程でがん細胞を培養していた際、がん細胞を死滅させる因子が見つかり、その正体がL型乳酸を縮合した化合物であることが判明しました。
オリゴ乳酸の研究が本格的に始まったのは1992年頃。オリゴ乳酸には腸内環境を整える力があり、腸内環境が整えられると免疫機能の向上、血流改善などの効果が得られることがわかりました。そのためメタボリックシンドロームやアレルギー疾患の症状改善などに利用できる可能性が示唆されています。[※7]
また最新の研究では、腸内環境を整え免疫機能を調整する効果のほかに、細胞内でエネルギー生産を行うミトコンドリアのはたらきを向上させる効果も確認されています。[※5]ミトコンドリアの亢進作用については開発企業が特許も取得しているため、メタボ対策やアンチエイジングの分野で今後さらに注目される成分となるはずです。
東京薬科大学で薬学博士号と医学博士号を取得したのち、未病(病気を発症する前の状態)にアプローチする医療の研究を続けている田口茂博士は、腸内環境を整えるオリゴ乳酸について次のように解説しています。
「最も興味を惹かれたのは、『腸内の乳酸菌を増やす』ということです」
「最近、『腸内フローラ』という言葉をよく耳にするようになりました。これは腸に棲んでいる善玉菌、悪玉菌、日和見菌のバランスをお花に見立てたものです」
「この3つの菌群がバランス良く分布しているかどうかが問題であり、理想的な割合は善玉菌2割、悪玉菌1割、日和見菌7割となります」
(『HEALTY&BEAUTY vol.2』より引用)[※8]
田口博士のお話の中にある、善玉菌、悪玉菌、日和見菌とは以下の腸内細菌のことです。
善玉菌は年齢とともに減少するため、体外から摂取して腸内のバランスを保ち続けましょう。オリゴ乳酸菌を摂取して善玉菌を増やせば、日和見菌を味方につけられ、腸内環境を良好に保てます。
さらに田口博士は、腸内環境を整えることの重要性やミトコンドリアを活性化するオリゴ乳酸のはたらきについても解説しています。
「腸には免疫細胞の約6割が集中しているといわれています。腸内環境が整っていれば、こうした免疫機能も正常に働き、外敵であるウイルスが侵入してきても悪さをさせないというわけです」
「細胞内のミトコンドリア機能を活性化することで、脂質代謝以外にも、血糖値にかかわる糖質代謝、血圧ほかを改善し、メタボリックシンドロームの改善あるいは肥満予防にもオリゴ乳酸が活躍するということになります。その結果、腸内環境さらには腸管免疫が元気になり、病気になりにくいということです」
(『HEALTY&BEAUTY vol.2』より引用)[※8]
免疫細胞が集中している腸内環境を良好に保ち、免疫機能を正常にはたらかせることで、感染症や病気の発症リスクを抑えられます。
また、オリゴ乳酸がミトコンドリアを活性化するとエネルギーがつくられて脂質や糖質の代謝が促進されます。オリゴ乳酸のはたらきを上手に利用して、病気になりにくい体をつくっていきましょう。
オリゴ乳酸は主にサプリメントに配合されています。本来の乳酸は液体なのですが、それを粉状にする技術が開発され、健康食品への添加が容易になりました。
サプリメントは錠剤や粉、カプセルなどさまざまな形状があります。飲みやすい・続けやすいものを選んで購入するとよいでしょう。
相乗効果が期待できる成分は食物繊維です。便通改善を目的として販売されているサプリメントには、オリゴ乳酸に加えて食物繊維が一緒に配合されています。食物繊維は便の通りをよくするだけでなく、腸内細菌のエサにもなる成分。オリゴ乳酸のもつ腸内環境を整えるはたらきをサポートしてくれるでしょう。
オリゴ乳酸を摂取することによる副作用は確認されていません。サプリメントの用法・用量の守れば副作用の心配はないと考えられますが、体質に合わない人もまれにいるようですので、不調を感じたらすぐに摂取をやめましょう。
また乳幼児や妊娠中のかた、授乳をしているかたは念のため摂取を避けるようにしてください。
東京薬科大学大学院修了後、自身が手掛ける研究を続けるために留学。帰国後1981年に東京薬科大学にて博士号を取得したのち、2002年に東京医科大学にて医学博士を取得。乳酸研究のほか、さまざまな機能性成分の研究を続けています。