烏龍茶には脂肪の吸収を抑える働きがあります。烏龍茶ポリフェノールと呼ばれる成分が有効成分で、トクホ飲料などで知られています。烏龍茶ポリフェノールとは、複数のカテキンが結びついたポリフェノール(重合ポリフェノール)のことです。
烏龍茶ポリフェノールには、脂質(糖質)の吸収を抑える効果の他に抗酸化作用、虫歯や口臭の予防に効果があることがわかっています。
烏龍茶に含まれる成分で注目すべきは、先ほども説明したように「烏龍茶ポリフェノール」です。緑茶特有のポリフェノールの一種であるカテキンが複数結びついた、烏龍茶独自の成分です。烏龍茶ポリフェノールは茶葉(緑茶)が発酵する過程で、カテキンが重合(化合物が複数結合すること)して出来上がります。
ちなみにこのカテキンは昔から「タンニン」といわれてきた成分で、お茶独特の苦味の元となっています。カテキンはタンニンというグループに属する成分、ということになります。葉の種類や発酵の度合いなどによって、含まれるカテキンの種類は多岐にわたります。
烏龍茶には、烏龍茶ポリフェノール以外にも、カフェインやカロテン、カリウム、サポニンなどが含まれ、抗酸化力に優れます。中国では紀元前より薬として使われていたことが文書にも残っています。
烏龍茶には以下のような効果・効能があると言われています。
■抗酸化作用
烏龍茶ポリフェノールには抗酸化作用があります。[※1]烏龍茶ポリフェノールには、体内に発生した過剰な活性酸素を除去する「SOD活性(活性酸素消去能力)」あります。
さらに活性酸素を除去してくれるSODや代謝酵素の一種であるカタラーゼの働きを助ける作用があることもわかっています。[※2]活性酸素の除去により内臓のストレス軽減はもちろんのこと、さまざまな老化防止効果や美肌効果なども期待できます。
■脂肪の吸収を抑える作用
「脂肪の吸収を抑え、食後の中性脂肪の上昇を抑える」という表示がトクホ(特定保健用食品)として認められています。食事で得た脂肪の吸収を抑え、体の外への排出量を増やしてくれるため、食後の血中中性脂肪の上昇を抑制し、体脂肪がつきにくくなるという特徴があります。[※3]
■生活習慣病の予防・改善
烏龍茶に含まれているカテキンという成分には、肝臓で生成される胆汁酸の排泄を促す作用があり、血中のコレストロールが増えるのを抑える効果があります。コレステロールが過剰に増加してしまうと、高脂血症や動脈硬化の原因になり、生活習慣病を招いてしまいます。烏龍茶はそんなコレステロールの増加を防ぎ、生活習慣病を予防する効果があるとされているのです。[※4]
■口臭の予防や歯垢の沈着を抑制
烏龍茶ポリフェノールのカテキンには殺菌作用があるため、口臭が抑えられます。また、烏龍茶ポリフェノールには虫歯の原因である歯垢(プラーク)の沈着を抑制する効果があることも報告されています。
就寝前に水を飲むグループと烏龍茶を飲むグループとに分けて行われた実験では、烏龍茶を飲用したグループの歯垢付着率の方が低いと言う結果でした。試験期間中は口腔ケアを行わずに効果が表れているので、信頼できる情報といえそうです。[※5]
烏龍茶に含まれる成分で最も特徴的なのが烏龍茶重合ポリフェノールです。[※4]茶葉を半発酵させる製造方法によりカテキンが重合してできる烏龍茶重合ポリフェノールには、脂肪の吸収を抑制する作用があります。
実際に烏龍茶重合ポリフェノールは、消化管での脂肪の分解に関わっている膵リパーゼの活性化を阻害。その結果、余分な脂肪が体内に吸収されずに体外へ排泄されることが実証されています。また、脂肪の吸収を抑えるだけでなく、継続して烏龍茶重合ポリフェノールを摂取することにより、体脂肪が低減することもわかっています。[※6]
そのほかにも、烏龍茶重合ポリフェノールには血中のコレステロール増加を抑える作用が報告されています。オリーブ油を経口投与したマウスに、一緒に烏龍茶重合ポリフェノールの成分を投与。
その結果、オリーブ油を投与した4時間後をピークに血中のコレステロールが上昇したが、烏龍茶重合ポリフェノールの投与によってコレステロールの上昇が抑制されたという研究結果が出ています。[※7]
これらの実験結果によって、烏龍茶には脂肪の吸収を抑える作用のほか、血中のコレステロール増加を抑制する効果が期待できることがわかったのです。
脂肪の吸収を抑える働きや血中のコレステロールの増加を抑制する作用があることから、体型が気になる人やメタボなどの生活習慣病を予防したい人におすすめです。
抗酸化作用による美肌効果も期待できるため、毎日の生活習慣として烏龍茶を取り入れれば、美肌効果を実感できる可能性もあります。[※4]
また虫歯予防の効果もあるため、口腔ケアにもひと役買う可能性があります。歯周病になりやすいタイプの方や、歯の矯正中で口腔ケアをしにくい方は、甘い飲料をやめて烏龍茶に切り替えるとよいでしょう。
烏龍茶の成分には100mlあたり約20mgのカフェインが含まれています。[※8][※9]カフェインを過剰に摂取した場合、中枢神経の刺激によってめまいや震え、心拍数の増加、下痢などの症状を引き起こす可能性があるとされています。
そのため、カフェインの過剰摂取に関して、国際機関などにおいて注意喚起がされるほど。海外のいくつかの国では1日あたりの最大摂取量を提示しています。
カナダ保健省(HC)では、健康な成人の場合最大400mg/日、カフェインの影響を受けやすい妊娠中・授乳中の女性の場合は最大300mg/日と設定されています。コップ1杯の目安量が200mlとすると、1回で約40mgのカフェインを摂取することになるのです。
日本では明確な摂取目安量は設定されていないものの、エナジードリンクや栄養ドリンクなどでカフェインを多量に摂取するリスクなどもあるため、厚労省のサイトでも「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~」と呼びかけています。
実際にカフェイン最大摂取量分の烏龍茶を飲むとなると、成人の場合1日コップ10杯程度。コップ10杯と聞くと多いように感じますが、これはあくまで目安の量です。人によってカフェインの影響をどの程度受けるか個人差があるので、1日コップ3杯~4杯程度に抑え、烏龍茶を過剰に飲むのは控えましょう。
サントリー(株)健康科学研究所とサントリー生有研、鹿児島大農学部が合同で、烏龍茶ポリフェノールの研究を行いました。その結果、烏龍茶ポリフェノールは、食事の脂肪分だけでなくデンプン由来の糖分の吸収を抑制する可能性があると発表しています。[※10]お米やパスタ類、パンといった主食にはでんぷんが含まれていますが、食事の際に烏龍茶を一緒に飲むことで揚げ物などの脂質だけでなく、糖質もカットしてくれるということです。
また、サントリー(株)健康科学研究所は、烏龍茶に含まれる烏龍茶ポリフェノールのリパーゼ阻害作用について研究結果を発表。リパーゼとは脂肪を分解してくれる体内酵素で、リパーゼによって分解された脂肪は体内へ吸収され、エネルギーとして使われます。
烏龍茶ポリフェノールによるリパーゼ阻害作用によって、脂肪の分解を抑制して体内への吸収を抑えることがわかりました。[※7]この作用により分解されなかった脂肪は便としてそのまま排出されるため、太りにくくなるということです。
他にも、サントリー食品インターナショナル株式会社が、「烏龍茶のデンタルプラーク沈着抑制効果」についての研究結果を発表しています。
大阪大学大学院歯学研究科、岡山大学大学院医歯薬総合研究科と共同研究を行った結果、烏龍茶を日常的に飲むことで、デンタルプラーク(歯垢)の沈着が抑制されました。これは、虫歯予防のための有用な手段になり得ると報告しています。[※11]
烏龍茶は、16世紀に中国の南部にある福建省武夷山で誕生しました。福建省武夷山は、昼夜での気温差や霧のかかりやすい天候、ミネラルを多く含む土壌など、お茶づくりに最適な環境が整っています。
宋の時代から銘茶の産地として有名になりました。その後、清の時代に烏龍茶の製法が確立。その製法が福建省南部の安渓や広東省の潮州、台湾に伝わり、現在の四大中国茶とされる「武夷岩茶(ぶいがんちゃ)」「安渓鉄観音(あんけいてっかんのん)」「鳳凰単叢(ほうおうたんそう)」「台湾茶(たいわんちゃ)」が誕生し、広まっていきました。[※4]
日本では、サントリーが1990年代に入ってから烏龍茶ポリフェノールの研究を開始。サントリーでは、1981年の時点ですでに烏龍茶が販売されていましたが、1990年代からの本格的な研究により、烏龍茶に含まれているポリフェノールには虫歯を防止する効果があることを発見します。
その後も烏龍茶ポリフェノールの研究を続けていく中で、ウーロン茶重合ポリフェノール(OTPP)が注目され、特徴的な構造を持つことがわかりました。
2002年にはウーロン茶重合ポリフェノールが脂肪の吸収を抑制し、食品に含まれる余分な脂肪が吸収されないまま体外へと排出されるメカニズムを発見。長年にわたって調査・研究を行った成果をもとに、2006年に「黒烏龍茶」がトクホとして販売されました。
健康に良いお茶としてすでに広まっていた烏龍茶ですが、こうした研究を受けて、科学的根拠を持つトクホとしても認知されるお茶になったのです。[※12]
サントリー健康科学研究所部長の柴田氏によると、
「ウーロン茶重合ポリフェノールの入った飲料を摂取すると、糞便中の脂肪排泄量が増加することも実験で証明されています。まさしく、ウーロン茶重合ポリフェノールが脂肪を流すということですね。」(ウーロン茶重合ポリフェノールが脂肪を流す!/メタボ予防にも効果アリ!お茶の秘密 より引用)[※13]
と、インタビューに答えています。
サントリー健康科学研究所は、烏龍茶を継続的に飲用した際の、便中への脂肪排泄量に対する影響を研究。その結果、烏龍茶ポリフェノールの食後中性脂肪上昇抑制作用は、体内の脂肪吸収を抑える作用が関わっていると示唆されました。[※13]
サントリーが発表した「肥満研究」の論文にも、烏龍茶ポリフェノールが消化酵素リパーゼの働きを阻害する研究結果[※7]が示されています。
日常的に飲む烏龍茶はペットボトルや缶などの容器に入っており冷やされているものが多いですが、烏龍茶の香りや味を楽しむなら茶葉で抽出して飲むのが良いとされています。ここでは、烏龍茶をおいしくいただく方法をご紹介します。
■烏龍茶を煎じるコツ
一言で烏龍茶と言っても、茶葉には発酵度が15%と緑茶に近いものから発酵度70%の紅茶に近いものまであります。お好きな茶葉を選び、お湯150mlに対し茶葉3~5gを目安に調整しましょう。この時、茶器がない場合はティーポットを使用してもかまいません。
注ぐお湯は90度以上の温度にするのを基本としていますが、さらに香りと味わいを楽しみたいなら100度にするのがコツ。1煎目はお湯を入れたら30秒~1分ほど蒸らしましょう。1回の茶葉で5~6煎まで楽しめますが、2煎目以降は抽出する時間を30秒ずつ足していくと、よりおいしく烏龍茶をいただけます。
■温かい烏龍茶にアレンジを加える
茶葉だけでも味わいや香りが楽しめる烏龍茶ですが、別の要素を加えるだけで、まったく違う味わいや効果を得ることが可能です。
例えば烏龍茶に唐辛子をプラス。すると、唐辛子に含まれるカプサイシンという成分の働きによって体の温度を上げてくれるので、冷え性改善に役立ちます。また、腸を刺激してくれるため、便秘の改善にも効果が期待されています。
ほかにも、ドライフルーツを刻んで入れたりハーブを追加したりしてアレンジすることで、烏龍茶の成分だけでなくプラスアルファの成分を摂取でき、体にもプラスの効果をもたらしてくれます。[※14]
烏龍茶には、ポリフェノールと呼ばれる成分が豊富に含まれています。ポリフェノールには、活性酸素の除去や抗酸化作用、殺菌作用、血圧値や血糖値を正常化する働きがあります。そんなポリフェノールと一緒に摂りたいのがビタミンC。一緒に摂取することでビタミンCが酸化したポリフェノールを修復してくれます。[※15]
またポリフェノールはセサミンと一緒に摂取することで相乗効果が得られるとも言われています。セサミンは肝臓での脂質代謝を向上させる作用があり、コレステロールや中性脂肪を抑制する効果が期待できる成分。
ポリフェノールと同様に高い抗酸化作用も持っており、一緒に摂ることで体内の活性酸素を除去する力[※16]が高まり、老化防止につながるのです。
さらに新陳代謝の向上やデトックス効果、細胞のターンオーバーを促進させる効果があるという報告もあります。
脂肪の吸収を抑えてくれる上に高い抗酸化力もあるからといって、過度の摂取にはリスクもあります。飲み過ぎてしまうと下痢や便秘、胃痛、脱水症状、手足や顔のむくみなどの副作用を引き起こす可能性があります。
烏龍茶に含まれるカフェインは自律神経を刺激し、覚醒・興奮させる作用を持っています。成人の場合1日の摂取量上限が約400mg。それ以上の過剰摂取を行うと、自律神経系の興奮による睡眠障害や心拍数の増加を招く恐れもあるので注意が必要です。
また、利尿作用による頻尿・多尿、末梢神経の興奮による手のふるえなどの副作用が生じることもあります。
さらに烏龍茶を含む茶系飲料に含まれているタンニンには、鉄の吸収を阻害する作用があります。タンニンが大量に増えると血液中の鉄分が体内に留まらず排出されてしまうため、貧血を起こしやすい方はなるべく飲むのは避けたほうが良いでしょう。
鉄分不足の人が飲みたい場合は、食後2時間以上時間を空けてから飲むようにしてください。食中や食後すぐに飲んでしまうと、食べ物から吸収できる鉄分量が減ってしまうからです。[※17]