「おなかにやさしい」「おなかの調子を整える」といった表示でオリゴ糖は特定保険用食品に含まれる成分としても人気の高い成分の1つです。現在では多くの人に「健康的な甘味」として日本ではなく世界でも知られています。そもそもオリゴ糖とはブドウ糖や果糖など単糖が数個結合したものです。便秘解消、肥満予防、老化予防、動脈硬化予防などにも有用とされ、世界で注目されるようになっています。意外に間違っていることも多いオリゴ糖の基礎知識についてじっくり解説します。
「おなかの調子を整える」「おなかにやさしい」といった紹介とともにさまざまな食品や健康食品、サプリメントに配合され、スーパーやドラッグストアなどで目にすることの多いオリゴ糖です(※)。
実はオリゴ糖の明確な定義はなく、ブドウ糖や果糖などの単糖が数個結合したものを「オリゴ糖」いうため、砂糖もオリゴ糖に含まれるといえますが、いわゆる砂糖とは機能が異なるものが一般的な「オリゴ糖」です。ちなみに「オリゴ糖」の語源はギリシア語の「少ない」を意味する「oligos」に由来することから「少糖類」と呼ばれることもあります。
オリゴ糖の歴史は意外と浅く、母乳で育った赤ちゃんが下痢などの病気にかかりにくいことから研究がスタートし、腸内のビフィズス菌を増やす成分として発見されました。1958年にはじめてヒトの母乳から分離精製された報告があり、現在も研究が続けられています。
その発見や研究には日本人研究者の活躍があったことでも知られている成分です。
(※)参考サイト ㈱明治フードマテリア サイト
オリゴ糖の定義は決まっていませんが、代表的なものに下記の種類があります。
低カロリーで虫歯になりにくいとされる「フラクトオリゴ糖」、母乳に多く含まれ腸内環境を整える「ガラクトオリゴ糖」、発酵食品などに多く含まれ、ビフィズス菌の増殖作用のほか防腐作用もある「イソマルトオリゴ糖」。ほかにも「大豆オリゴ糖」、「キシロオリゴ糖」などがあり、作り方や原料にそれぞれ特徴や違いがあります。
オリゴ糖は「天然甘味料」とも分類されますが、天然甘味料には食品に含まれる甘み成分を抽出して、それぞれの処理を行った添加物のことと、はちみつなどの処理を行わない糖分の2つの種類があります。
オリゴ糖は「単糖」がいくつか結合したものと定義されていますが、砂糖も「グルコース(ブドウ糖)」と「フルクトース(果糖)」が結合したものであるため、オリゴ糖の定義に当てはまり、オリゴ糖の一種といえるとされています。しかし、オリゴ糖と砂糖にはいくつもの違いがあります。
・カロリーが違う
まず砂糖のカロリーは1g=4kcalですが、オリゴ糖は種類によって異なりますが、概ね1g=2kcalで、オリゴ糖の方が体内で分解されにくいためカロリーが低いことがわかっています。
・甘みが違う
砂糖とオリゴ糖では甘みが違います。同じ量で比較すると砂糖の方がオリゴ糖の約2倍甘いことから、オリゴ糖で砂糖と同じ甘みを得ようとすると逆にカロリーオーバーになることがあるのです。
・腸内細菌への働きかけ
砂糖は消化菅の上部に存在している腸内細菌に利用されるのに対し、オリゴ糖は消化管の下部に存在している腸内細菌に利用されることがわかっています。特にオリゴ糖はビフィズス菌に利用されるため、腸内環境に直接的に影響を与えると考えられているのです。
また、砂糖の方が虫歯菌は活性しやすく、オリゴ糖には虫歯が発生しにくい口腔内環境(酸性状態)に整える働きがあることが報告されています。
オリゴ糖は腸まで届き、人間の健康を維持するために欠かせない腸内細菌の一つである「ビフィズス菌」の栄養源(餌)となり、その増殖を促します(※)。ビフィズス菌は有用菌で、それが他の多く他の腸内細菌とバランスが取れている方が私たちの健康状態も良くなることがわかっています。そのため便秘の改善、ニキビなどの肌荒れ、シミやシワなどの肌トラブルにも効果的です。さらにオリゴ糖によって腸内の善玉菌が増えると、血中の善玉コレステロールが増えることも報告されており、動脈効果の予防効果も期待されています。
(※)健康な成人を対象に、ガラクトオリゴ糖もしくは偽薬(プラセボ)4 gを含むジュースを1日2回、3週間にわたって摂取させたところ便中のビフィズス菌量が増加したことが確認されている。詳しくはこちら。
トクホ商品に含まれるオリゴ糖にも幾つかの種類がありますが、表示されている保健用途はいずれも「ビフィズス菌を増やして腸内の環境を良好に保つので、おなかの調子を整えます」というものです。また注意事項としては「摂り過ぎあるいは体質・体調によりおなかがゆるくなることがあります。」と記されています。 摂取目安量はオリゴ糖の種類によって異なり、以下のようになっています。
大豆オリゴ糖 | 2g~6g |
フラクトオリゴ糖 | 3g~8g |
乳果オリゴ糖 | 2g~8g |
ガラクトオリゴ糖 | 2g~5g |
キシロオリゴ糖 | 1g~3g |
イソマルトオリゴ糖 | 10g |
オリゴ糖は化学的に合成することもできますが、自然の食品にも含まれています。
オリゴ糖の種類によって原料が異なりますが、その原料となる食材にはオリゴ糖が含まれていると言い換えられます。例えば、フラクトオリゴ糖が抽出される「玉ねぎ、アスパラガス、ごぼう、ニンニク、はちみつ、バナナ」は代表的なオリゴ糖を含む食材です。
他にも、とうもろこし、大豆、コーヒー豆などにも含まれています。食品100g中に含まれるオリゴ糖量を比較した場合は、ヤーコン、きな粉、甜菜の順に多く含まれることがわかっています。
ただし食品に含まれるオリゴ糖の量はごくわずかで、健康効果やオリゴ糖の有用性が期待できる量ではありません。オリゴ糖の健康効果を感じたければ、やはり健康食品などを上手に利用し、目安量を摂取する方が良いでしょう。
赤ちゃんの便秘解消に「オリゴ糖シロップを飲ませる」という方法が知られていますが、実際のところは安全で有効なのでしょうか?
母乳で育てた方が赤ちゃんは便秘になりにくい、という話を聞いたことがあるかもしれませんが、これは母乳にしか含まれないオリゴ糖(ヒトミルクオリゴ糖)と関係しているのではないかと考えられています。
母乳に含まれるオリゴ糖は人工的に再現するこが難しいとされ、それほど複雑な構造をしているのでなかなか消化されずに腸まで届き、腸内で善玉菌を増やし便秘を予防すると考えられているのです。
もちろん粉ミルクにも母乳に含まれるオリゴ糖により近い構造のオリゴ糖が添加されているものが殆どです(※)。
しかし商品やメーカーによって配合されるオリゴ糖や含有量は異なるため、赤ちゃんによってそのオリゴ糖が合う・合わないといったことはよくあるようです。そのため赤ちゃんの便秘があった場合に粉ミルクを変えてみることで、便秘が解消されるということや、その逆もよくあることが報告されています。
市販されているオリゴ糖を水や白湯で薄めて飲ませるという方法もよく知られていますが、最初は微量から始めなければいけないことや、より純度の高いオリゴ糖選びを慎重に行う必要もあるので、安易にネット情報だけで試してみることはやめて、小児科の先生に相談した方が安心です。
(※)健康な乳児を対象に、ガラクトオリゴ糖とフラクトオリゴ糖を9:1の割合で含む乳児用ミルクを摂取させた結果、26週間後、善玉菌が多く悪玉菌の割合が少なかったという報告がされています。詳しくはこちら。
特定保険用商品の場合はオリゴ糖の種類によって摂取目安量が明記されていますので、その商品ごとに記された表示を確認して、適量を摂取するようにしましょう。
基本的には母乳や一般食品にも天然で含まれるような成分ですので安全性が高く、重篤な健康被害の事例は報告されていません。適切に摂取すれば安全性の問題はないと考えられていますが、幾つかの異なる種類のオリゴ糖を複数摂取したり、食物繊維・乳酸菌を豊富に含む製品と多く摂取したりするとお腹がゆるくことがあると報告されています。