ノニは、インドネシア原産のアカネ科の植物で、古くから染料や薬に利用され、親しまれてきました。天然アミノ酸やビタミン、ミネラルなど約140種類もの有効成分が含まれていて、さまざまな健康効果が期待できるノニ。そんなノニの効果効能、作用のメカニズムや歴史、相乗効果のある成分、副作用や注意すべき相互作用などの情報をまとめています。
ノニは、アカネ科の植物で高さ5mほどに育つ常緑低木です。果実には独特の風味があり、そのままでは摂りにくいため、ジュースやサプリメント、お茶に加工して利用されます。
原産はインドネシアで、東南アジアやオーストラリアなどの熱帯・亜熱帯地域に生育しています。日本では、沖縄県や東京都の小笠原諸島などで育ちます。
ノニという名前は、ハワイでの呼び名です。このほかにも、モリンダ、ヤエヤマアオキ、インディアン・マルベリーなどいろいろな名前で呼ばれています。
古くから各地で染料や薬として使われており、インドネシアでは「医者いらずの木」と呼ばれ親しまれてきました。
ノニには、天然アミノ酸やビタミンB群、ミネラルなど有効成分が140種類ほど含まれていて、生活習慣病の予防や改善、感染症予防、美肌効果など、いろいろな効果が期待できます。[※1][※2]
ノニには、以下のような効果効能があるといわれています。[※2][※3]
■生活習慣病の予防
コレステロールを減らし、血圧を下げるはらたきがあり、糖尿病、高血圧、動脈硬化などの生活習慣病の予防に用いられます。
■感染症の予防
抗菌・殺菌作用があり、風邪などの感染症の予防に役立ちます。
■肌トラブルの予防
強い抗酸化作用と細胞の再生を促すはたらきがあり、肌荒れや日焼け、肌の老化などの肌トラブルを予防します。
■抗がん作用
がん細胞が増えるのを抑える成分が含まれているため、がんの予防や治療に期待がもたれています。
そのほかに、次のような効果効能があるといわれています。
ノニには多くの栄養素が含まれていて、そのいくつかの成分が同時にはたらくことで、さまざまな症状に効果を発揮します。
ノニに含まれているスコポラミンには、血管を拡げるはたらきがあります。血管が拡がると心臓に無理な負担をかけなくても体中に血液が行き渡るため、心疾患や高血圧の予防につながります。さらに、ノニに含まれるカリウムは、体内に溜まったナトリウムの排出を促して血圧を低下させます。[※4]
また、ノニに含まれるリノレン酸にはコレステロール値を下げるはたらきがあるため、動脈硬化や高脂血症の予防につながります。[※2]
ノニには、菌やウイルスに対抗しながら免疫力を高める成分やがん細胞の増殖を防ぐ成分が豊富に含まれています(多糖体やグリコシド、アントラキノン、モリンジン、ルシジンなど)。[※4]
そのため、ノニを摂取することによって、感染症やがんに羅患するリスクを抑えられるといわれています。
ノニには、抗酸化作用やコレステロール値を下げる効果があるので、生活習慣病や肥満を防ぎたい人におすすめです。
また、ノニの有効成分には抗酸化作用や肌細胞の代謝を活発にするはたらきもあるので、しわやたるみが気になる人は積極的に摂取してみてはいかがでしょうか。
ノニの摂取目安量や上限はとくに定められていません。
ノニエキスやノニエキスを配合したサプリメントを摂取する場合は、商品ごとに指定されている用法用量を守って服用してください。
ノニの血糖値改善効果について、香川県の小山医院院長 の小山潤三医師は次のような実験結果を発表しています。[※5]
ストレプトゾトシン(STZ)という成分を使い人工的に糖尿病にしたラット(STZ誘導糖尿病ラット)、自然発生した2型糖尿病のマウスそれぞれに、ノニの葉から摂った抽出物を与え、1週間ごとに血糖値の変化を調べました。同時に、2型糖尿病患者のヒトボランティアにもノニ抽出物を摂取させました。
STZ誘導糖尿病のラットには、1日体重1kg当たり0 mg、15 mg、30 mg、60 mg、150 mg、300mg、の6パターンのノニ抽出物を投与。2型糖尿病のマウスには1日当たり0mg、0.25mg、0.5mg、1mgをそれぞれ与えました。
また、2型糖尿病患者12名に対しは、ノニの抽出物とTSエキス(糖の吸収抑える成分)を混ぜたものを0 g/包、0.2 g/包、0.75g/包、TSエキスのみの4グループに分け、1日2回摂取してもらいました。
実験の結果、STZ誘導糖尿病のラットの血糖値は、ノニの抽出物投与量が多いほど低下しました。しかし、150mg以上を投与しても、目立つ結果はあらわれませんでした。
2型糖尿病のマウスの血糖値も、投与量に比例して低下、1日1mgを摂ったマウスは、0mgのマウスに比べ約28%の低下を示しました。
ヒトボランティア試験では、ノニ抽出物が0.75mg/包を摂取したグループの空腹時血糖値は約50%低下しました。
これらの結果から、ノニの抽出物やノニの葉を使った食品には血糖値の上昇をある程度抑える作用があると示しました。
また、マレーシアのUKMメディカル分子生物学研究所のAbu N博士、マレーシアプトラ大学のZamberi NR博士らは、乳がんへの効果について、次のような実験結果を発表しています。[※6]
乳がんの細胞を移植したマウスに、ノニの茎から抽出した成分50mg/kgを28日間与え、腫瘍のサイズと免疫パラメータの変化を、ノニの抽出物を与えていないマウスと比べました。
実験の結果、ノニの抽出物はがん細胞の細胞死を誘導し、がんの進行を遅らせたことがわかりました。さらに、ノニ抽出物を与えたマウスに、慢性毒性の兆候は見られませんでした。
このことから、ノニの抽出物には抗がん作用があることを示し、さらに研究をすすめる価値があるとしました。
ノニは原産国のインドネシアで、約6000年前からジャムウというハーブでつくる治療薬の材料として使われていました。[※2]
約2000年前にはポリネシア諸島にも伝わり、痛みや炎症、下痢に効く薬にしたり、布を染める染料に使ったりして生活に役立ててきました。
1700年代に、ヨーロッパの探検家・キャプテンクックが、旅行記にノニについて書き記し、西洋諸国に伝わったとされています。さらに1950年代になって、ノニの健康効果に関する研究が進み、その栄養価に注目が集まりました。
1990年代に、ノニジュースが健康食品として販売されるようになると、一般にも広く知られるようになりました。近年、その健康効果についての研究がさらに進められています。
医学博士の西垣敏明氏が代表を務める東京ノニ研究所は、ノニの効果について、次のように紹介しています。
「多くの健康食品が出回る中、速やかな便秘の解消や引き続く皮膚を初めとする全身の健康感の回復、ダイエット効果が順に得られるノニジュースは、成人病の予防や治療だけでなく、日常生活に必携の栄養・健康食品といえます」
(東京ノニ研究所「奇跡のフルーツ『ノニ』の驚くべきパワー:美肌効果とダイエット」より引用)[※7]
ノニは、生活習慣病を防ぐ効果はもちろん、体形が気になる人も積極的に摂るとよいようです。また、皮膚への効果も次のように紹介しています。
「ノニの効果を実感された多くの方の好奇心や研究心は、ノニジュース飲用による内面療法に併せ、皮膚にぬることによる外面両方へと自然に向かっていっています。美白、美肌、保湿などの美容液として、更にアトピー、切り傷・外傷、火傷、伊保、水虫、脱毛など皮膚疾患の医薬品的効果が多く報告されるようになっています」
「ノニジュースを飲用するだけでなく、直接塗ることによって皮膚への効果の多くの報告があります。外面からの美容だけでは充分ではなく、全身の健康状態の維持や改善すなわち身体内部からの手当てが真の美肌効果につながるのです」
(東京ノニ研究所「奇跡のフルーツ『ノニ』の驚くべきパワー:美肌効果とダイエット」より引用)[※7]
飲むのはもちろん、直接肌に塗って使うことで、内外両面から美肌に導いてくれるノニ。美肌を保ちたい人や美容に関心がある人にも評価される食品といえるでしょう。
ノニは、原液エキスやサプリメントで摂るのが一般的です。原液エキスの場合、独特の風味が気になることもあります。飲みづらいときはフルーツジュースに混ぜたり、スムージーにしたりすると飲みやすくなります。また、原液エキスをケーキやクッキー、料理に加えてつくってもよいでしょう。
手軽に摂りやすいノニのエキスを使ったレシピを紹介します。
■ノニとバナナのスムージー(1人分)
【用意するもの】
【つくり方】
すべての材料をミキサーに入れ、なめらかになるまで混ぜる
■ノニパンケーキ(5枚分)
【用意するもの】
【つくり方】
ノニは、インドネシアに生育する植物「ブアメラ」と一緒に摂るのがおすすめです。ブアメラには、ノニとは異なる抗酸化成分(カロテノイド)が含まれているため、抗酸化作用の高まりが期待されています。また、ブアメラを摂ることで、ノニに不足している脂溶性ビタミンを補うことができるため、より優れた機能性食品になるとされています。[※8]
ノニとブアメラの併用が肺がん治療に用いられた事例が2つあるので、ご紹介します。
■ブアメラとノニを併用した肺がん治療事例[※8]
72歳男性 | 67歳男性 | |
---|---|---|
がん腫瘍の位置 | 左肺の分岐部付近 | 肺とリンパ節 |
がん腫瘍の大きさ | 約6cm | 不明 |
摂取内容 | ノニ100%搾汁約50mlを1日2回摂取。またはノニカプセルを6~10粒とブアメラカプセル3~6gを毎日摂取。 | ノニジュースとブアメラカプセルを一時的に摂取(※継続摂取はしていなかった) |
経過 | 2005年8月より摂取を開始して、2006年までがん腫瘍の増殖はなし | ノニジュースとブアメラカプセルの摂取を継続できなかったため、化学療法と放射線療法に切り替え。副作用で体力が消耗したため翌年には治療を受けられなくなり、死亡 |
現在確認できるノニとブアメラの相乗効果の事例は、この2例のみのためはっきりとした判断はできませんが、ノニとブアメラを併用することで肺がん予防に役立つ可能性が示されています。
まだ研究段階ではありますが、今後研究が進むことが期待されています。[※8]
ノニの副作用は、研究結果からはほとんど報告されておらず、不明です。しかし、次のような人が摂取する際には、注意が必要です。
このような人は、ノニを摂る前に必ず医師か薬剤師に必ず相談してください。[※1][※3]
ノニと医薬品との相互作用は、はっきりとしていません。しかし、次のような医薬品を飲んでいる人は、薬の効き目が強くなったり弱くなったりする可能性があるので、医師に相談して摂りましょう。
ノニと併用することで相互作用が起こりうる医薬品は以下のものです。[※1][※3]
■肝臓を害する可能性がある医薬品
ノニは肝毒性をあらわすことがあり、肝機能障害を起こしたという報告があります。
■ワルファリン
ノニにはビタミンKが多く含まれています。血液を固まりにくくする効果のあるワルファリンと一緒に摂ると、ワルファリンの効き目が弱くなるとされています。
■高血圧治療薬
ノニにはカリウムが多く含まれているので、高カリウム血症を発症する可能性があると推測されています。このため、ACE阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬などの高血圧治療薬との併用には注意が必要だといわれています。
■利尿薬
カリウムの排出を抑える作用のある利尿薬を飲んでいる場合、高カリウム血症になる可能性があると推測されています。
日本医師会の情報によると、ノニ摂取によって肝障害が起こった被害事例が報告されています。[※1]
ノニを摂った62歳の男性が、急性肝炎(めまい、意識混濁)を起こしました。この男性は、ローコール(高コレステロール血症の治療薬)、レニベース(高血圧の治療薬)、チラーヂン(甲状腺ホルモン剤)を服用していました。ノニとの医学的な関連性ははっきりしていませんが、これらの医薬品を服用している患者の使用に対して、日本医師会は注意喚起をしています。
また、70歳の女性がノニを摂取して肝機能障害を起こした事例があります。この女性が服用していた薬はとくにありませんが、ノニが肝毒性をあらわした疑いがあるとされました。この事例は、要監視とされています。
これらの事例では、ノニを摂ってから2週間~4か月で発症しています。その後、ノニの摂取をやめてから2日で肝機能検査値がよくなり、1か月ほどで正常になっています。
ノニが肝障害に関係していると推測されていますが、確かな研究結果はまだありません。今後さらに研究を進めることが課題とされています。