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ミネラルの効果とその作用

ミネラルは無機物ですが、炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミンと並び、5大栄養素のひとつでもある重要な成分です。有機物は全体の96%を占めるため、ビタミン・ミネラルは4%しか存在しませんが、なくてはならない重要なはたらきをもっています。[※1]

ミネラルとはどのような成分か

必須ミネラルには、ナトリウム、マグネシウム、リン、硫黄、塩素、カリウム、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、セレン、モリブデン、ヨウ素の16種類があり、そのうち硫黄、塩素、コバルトを除く13種類については食事摂取基準によって摂取量の目安が定められています。

不足すると欠乏症のほか、逆にサプリメントや健康食品による過剰摂取の影響も懸念されており、過不足なく摂取することが健康維持のためには不可欠とされています。

ミネラルの効果・効能

ミネラルは、生体組織を構成する成分で、生理機能の維持・調整に必要です。体液量、酸・アルカリの調整、筋肉や神経のはたらきの調整などをおこないます。エネルギーや糖質、脂質の代謝にも欠かせません。

生命維持にとって欠かせない重要なはたらきを多くもっていますが、ミネラルは体内生成できないため、食事から摂取する必要があります。[※2]

ミネラルには次のようなものがあります。主なはたらきをまとめました。[※2][※3][※4][※5]

■主要元素

1日に100㎎以上必要な元素です。

ナトリウム(Na)
成人の体内に約100g含まれます。細胞の外側に存在し、細胞内外のミネラルバランスを保ちます。浸透圧の維持、pHの調整をします。食塩相当量は、ナトリウムに2.54を乗じて算出します。

マグネシウム(Mg)
体内では、リン酸塩や炭酸塩として骨に存在するものが約50~60%、残りの40%は筋肉、脳、神経に存在しています。心臓や血管の機能を正常に保ちます。カルシウムとともにはたらき、骨や歯の元となり形成を助けます。体液を平衡に保ちます。酵素の補酵素として活用されます。

リン(P)
体内で約800g存在し、約80%は骨や歯、核酸の構成成分となります。14%は筋肉や細胞膜に存在し筋肉の収縮に関与しています。加工食品や食品添加物に含まれているため、過剰摂取による影響が問題となっています。

カルシウム(Ca)
体内には、体重の1~2%存在しています。骨や歯の材料として使われるほか、心臓や筋肉の収縮を調整する働き、神経の過敏性を鎮める働きがあります。体液をアルカリ性に維持します。

カリウム(K)
体内に約200g含まれており、その多くは細胞内に存在します。細胞外液のナトリウムとともに細胞の浸透圧や水分保持の調整をおこないます。そのほか、神経や筋肉の機能を正常に保つ働き、細胞のミネラルバランスを維持に関与しています。ナトリウムやカルシウムとバランスを保ちながらはたらきます。

硫黄(S)
アミノ酸の成分となります。

塩素(Cl)
浸透圧を維持、pHの調整をします。胃酸の成分となります。

■微量元素

1日に100㎎未満が必要量となる元素のことです。

クロム(Cr)
インスリンのはたらきを高め、糖質代謝に関与します。

マンガン(Mn)
糖質・脂質・たんぱく質の代謝に関与します。過酸化脂質の生成をおさえます。酵素の元になります。

鉄(Fe)
赤血球中のヘモグロビンの材料となり、酸素を全身に運びます。筋肉などでエネルギー代謝に関与します。

コバルト(Co)
補酵素やビタミンB12の材料となります。

銅(Cu)
過酸化脂質の生成をおさえる酵素の材料となります。鉄の吸収を促します。赤血球の形成を助けます。

亜鉛(Zn)
たんぱく質や核酸の材料となります。味覚を正常に保ちます。酵素の元となります。代謝調節をおこないます。

セレン(Se)
過酸化脂質を分解する酵素の材料となります。

モリブデン(Mo)
尿酸の生成に関する酵素の材料となります。

ヨウ素(I)
甲状腺ホルモンの材料となります。

どのような作用があるのか

ミネラルは、それぞれが大きな役割をもっていますが、主に次の3つの機能をもちます。

1.細胞の材料
カルシウム、リン、マグネシウムが骨や歯の構成成分となります。

2.機能調節・維持
カルシウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、リン、カリウムなどは体内でイオンとして存在し、浸透圧の調整、水分平衡の維持、神経の伝達など、生命維持を保ちます。

3.たんぱく質と結合
酵素やビタミン、ホルモンなどと結合し、たんぱく質の有機化合物として体内で使用されています。

ミネラルは、ひとつの成分だけで効果を発揮するものではなく、互いに影響しあってはたらきます。どれか1種類だけを大量に摂ったり、極端に不足したりしているものがあると、身体の不調をきたすことがあります。毎日の食事から、なるべくバランスよくミネラルを摂るようにしたいものです。[※6]

ミネラルの最も重要なはたらきが、代謝の補酵素としての役割です。[※7]

体内に取り入れられた栄養素は分解され、吸収されたのちに、体内で必要な形に再合成されます。その変化の過程のことを代謝といい、代謝に必要となる成分を酵素といいます。

酵素はさらに消化酵素と代謝酵素に分類され、消化や代謝などそれぞれの過程で必要に応じて分泌されますが、1日に体内で生産される酵素の量は決まっているといわれています。酵素の働きを助け、分解や合成を助けるのが補酵素で、その元となるのがミネラルやビタミンなのです。

ミネラルやビタミンは、体内で生成されないため、食事から取り入れる必要があります。不足すると、補酵素としてのはたらきが弱まり、消化・吸収などの代謝が十分に行われず、不調の原因となることがあります。毎日の食事から必ず補給する必要があるのです。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ミネラルは動物が生きていく上で欠かせないものなので、すべての人にとって必要な栄養素です。体内では生成されないため、食事から摂取する必要があります。ごく微量の栄養素でも、不足すると欠乏症が生じることもあるため、積極的に摂るようにしたいものです。

とくに、カルシウム、鉄、亜鉛、マグネシウムは日本人に不足しがちといわれています。日頃からそれらのミネラルを含む食品を摂るようにしましょう。

ミネラルの摂取目安量・上限摂取量

厚生労働省による食事摂取基準によって、13種類のミネラルについて、推定平均必要量、推奨量、目安量、耐容上限量が定められています。
(18~29歳)[※8]

マグネシウム
男性 推奨量 340㎎ 
女性 推奨量 270㎎

カルシウム
男性 推奨量 800㎎
    耐容上限量 2,300㎎
女性 推奨量 650㎎
    耐容上限量 2,300㎎

リン
男性 目安量 1,000㎎
    耐容上限量 3,000㎎
女性 目安量 900㎎
    耐容上限量 3,000㎎

クロム
男性 推奨量 40μg
女性 推奨量 30μg

モリブデン
男性 推奨量 25μg
    耐容上限量 550μg
女性 推奨量 20μg
    耐容上限量 450μg

マンガン
男性 目安量 4.0㎎
    耐容上限量 11㎎
女性 目安量 3.5㎎
    耐容上限量 11㎎


男性 推奨量 7.0㎎
    耐容上限量 50㎎
女性 推奨量 6.0㎎(月経あり10.5㎎)
    耐容上限量 40㎎


男性 推奨量 0.9㎎
    耐容上限量 10㎎
女性 推奨量 0.7㎎
    耐容上限量 10㎎

亜鉛
男性 推奨量 12㎎
    耐容上限量 40㎎
女性 推奨量 9㎎
    耐容上限量 35㎎

セレン
男性 推奨量 30μg
    耐容上限量 280μg
女性 推奨量 25μg
    耐容上限量 220μg

ヨウ素
男性 推奨量 130μg
    耐容上限量 2,200μg
女性 推奨量 130μg
    耐容上限量 2,200μg

ナトリウム(食塩相当量)
男性 推奨量 9.0g未満
女性 推奨量 7.0g未満

カリウム
男性 目標量 2,800㎎
女性 目標量 2,700㎎

ミネラルのエビデンス(科学的根拠)

それぞれのミネラルのエビデンスは多くありますが、ここでは、マルチビタミン・ミネラル(MVM)のサプリメントに関する研究を紹介します。

アメリカでは、1940年代以降、MVMサプリメントは人気を維持しています。ビタミンやミネラルの不足は健康への影響があると考えられていますが、実際にMVMサプリメントの摂取はいかなる慢性疾患のリスクも減少しないということがわかってきました。[※12]

日本でも、健康意識の高い人ほどサプリメントを用いる傾向がありますが、サプリメントによって健康効果が得られているかどうかのエビデンスは証明しがたいと考えられます。

研究のきっかけ(歴史・背景)

ミネラルの歴史をさかのぼると、宇宙の成り立ちから始まります。

紀元前6世紀頃の古代ギリシャで物質の素になるものとしての元素という概念が生まれました。元素の概念を研究し始めたのは、18世紀のフランスにて、ラボアジェが発見したとされています。[※9]

元素の中で、いちばん早く発見されたのは1669年のリンだということがわかっています。現在では、118の元素[※11]が存在することがわかっており、ミネラルは90種類を超えることが発見されています。

専門家の見解(監修者のコメント)

ミネラル不足は、身体への影響だけでなく、心の問題も引き起こすことがわかってきました。

東京医科歯科大学の藤田紘一郎名誉教授は

「現在、ミネラル不足で、バランスを崩し、うつ病などの心の病気に苦しむ人が増えています。心のバランスを崩しやすい人が増えている背景には、ミネラル不足が大きく関与していることでしょう。カルシウムやマグネシウムには、心をリラックスさせる作用があります。そのため、ミネラルが不足しバランスがくずれると、心は不安定になってしまうのです」

「ミネラルは体内にわずか数%しか存在していません。しかし、絶対に欠かせない栄養素です。欠乏すれば、生命を維持できなくなります。ミネラルは、人間にとってそれほど重大な栄養素なのです」[※10]

という見解を示しています。

不足だけでなく、サプリメントなどで、あるミネラルだけを過剰摂取することによってミネラルバランスを崩すこともあるようですので、ミネラルもバランスよく補うことが大切です。

ミネラルを多く含む食べ物

ミネラルを多く含む食品には以下のようなものがあります。

●ナトリウム(Na)
食塩、みそ、しょうゆ

●マグネシウム(Mg)
緑黄色野菜、海藻類

●リン(P)
動物性食品、食品添加物など

●硫黄(S)
たんぱく質を含む食品

●塩素(Cl)
食塩、みそ、しょうゆ

●カリウム(K)
野菜類、イモ類、果実類

●カルシウム(Ca)
牛乳・乳製品、小魚、海藻類、大豆製品、野菜

●クロム(Cr)
野菜、穀物、肉、魚など食品全般

●マンガン(Mn)
穀物、野菜類、果実類

●鉄(Fe)
レバー、貝類、卵黄、緑黄色野菜

●コバルト(Co)
葉野菜、肉類

●銅(Cu)
野菜、穀物、種実類、肉類

●亜鉛(Zn)
牡蠣、肉類

●セレン(Se)
魚肉、小麦、大豆

●モリブデン(Mo)
乳製品、穀物、豆類、レバー

●ヨウ素(I)
海藻類、貝類

相乗効果を発揮する成分

ミネラルは、一つの成分だけでははたらきません。
炭水化物、脂質、たんぱく質の代謝に関わるため、バランスよい食事を日頃から心がけましょう。

またミネラルの中には、以下のように相互バランスが影響しているものがあります。

・カルシウムとリン
リンの過剰摂取によって、カルシウムの排泄が促されます。カルシウムとリンが1:1~1:2が理想のバランスです。

・ナトリウムとカリウム
浸透圧の調整に関与します。ナトリウムの過剰摂取による血圧上昇には、カリウムを多く摂ることが推奨されています。理想のバランスはナトリウムとカリウムが1:1です。

ミネラルに副作用はあるのか

ミネラルは、過剰症も欠乏症もあり、どちらも注意が必要です。

女性の場合、生理、妊娠、更年期障害など、ミネラル不足を引き起こしやすい現象もあることから、特に欠乏症への注意が必要です。

無理なダイエット、極端な食事制限によって、もともと微量成分のミネラルの摂取がさらに不足することにもなってしまいます。

欠乏症でとくに不足しているものがカルシウムです。[※1]カルシウムが不足すると、骨粗しょう症の原因となります。骨粗しょう症を防ぐためには、カルシウムの積極的な摂取と、運動による骨への刺激が大切です。

近年では、マグネシウムの不足も注目されています。[※6]マグネシウムが不足すると、体内で300種類もの酵素のはたらきを助けていることから、不調の原因となることがわかってきました。

摂取量の不足だけでなく、加工食品に含まれるリン酸の過剰摂取、多量の飲酒、ストレスによるアドレナリンの過剰分泌など、マグネシウムを体外に排出させやすい要因が現代人には多いことも、マグネシウム不足の原因となっています。日頃から十分に摂取したいミネラルです。

ほかにも、鉄、亜鉛、銅、も不足しがちなミネラルです。食の欧米化により、穀物や海産物などの摂取が減少したことによるものと考えられています。