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マカの効果とその作用

古来より「幻の秘草」として尊ばれてきたマカ。ペルー原産の植物(野菜)で、見た目は蕪(かぶ)に似ており、根の部分が食用に利用されています。約3000年前より野菜として栽培され食され続けているのは、栄養価が非常に豊富だからです。近年は健康食品にも利用されているマカの効果効能・研究成果などについて解説します。

漢方薬剤師 井上 和恵先生監修

マカとはどのような植物か

マカとはペルー原産のアブラナ科の植物(大根と同じ種)で、蕪(かぶ)に似た形態をしており、主にその根の部分が食用として利用されています。別名でアンデス人参と呼ばれることもあります。

マカが育つアンデスの高地は1日の温度差が30度近くあり、自然環境が過酷なため、植物や樹木がほとんど育ちません。そのため土壌にはミネラル分が豊富に含まれたままになっています。

そんな土壌でマカは大地の栄養をたっぷり吸収して成長します。一度成長したマカを収穫すると、その土地ではその後5年はほかの植物が育たないとされるほど、マカは大地の栄養を吸収して大きくなるのです。

このマカの生育状況からわかるように、マカは大変栄養価が豊富で、現地では貴重な食料であり、ひとびとの栄養源になっています。

現地では男女問わずにマカが食されていますが、特に身体能力を向上させる食材、健康長寿食材として重宝されています。

そして元気な子供を授かるためにもマカが重要な野菜と考えられているのです。

ちなみにマカにはいろいろな種類があります。白マカ、赤マカ、黒マカ、黄マカなど、さまざまです。

そして色の違うマカごとに効果効能も異なることが報告されています。中でも黒いマカは収穫量が大変少なく「幻のマカ」とされています。

現地でも乾燥させて粉末にしたマカが利用されていますが、これはマカが保存食にも適していると考えられているからです。

また粉末にする前の乾燥マカは野菜や肉との煮込み料理として食されています。マカジュースも現地ではポピュラーな飲み物だそうです。[※1]

マカの効果・効能

マカには以下のような効果・効能が期待されています。[※2]

■性欲の改善効果

マカに含まれるアルギニンやセレンなどの成分によって、精力の回復効果が期待できると考えられています。[※3]

■美肌作用

マカにはさまざまな栄養素が豊富に含まれるために美肌作用が期待できるとされています。例えばマカに含まれるアルギニンによる血流促進作用、ビタミンEによる抗酸化作用、亜鉛の新陳代謝促進作用などが美肌に不可欠です。[※4]

■更年期障害の緩和

マカには植物性エストロゲンが含まれていて、これがイソフラボンと同様の働きをして、女性ホルモンの不足を充填するのではないかと考えられています。[※5]

■動脈硬化の予防

マカには動脈硬化を予防する働きが報告されていますが、これはマカに含まれているアルギニンによるも効果や、マカそのものの抗酸化作用によるものの複合的な働きと考えられています。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

マカの根にはリノレン酸、パルミチン酸、オレイン酸を含む脂質、必須アミノ酸、鉄、カルシウム、銅、亜鉛といった栄養素やミネラルが豊富に含まれるため、まずは食品として栄養価が高く、栄養補給になる、ということがいえるでしょう。

特にアミノ酸の中でも、アルギニン、プロリン、リジン、ギャバといった、機能性が高く報告されている成分の含有が高いこともメリットです。

これらの栄養素が一度に摂取できるというのはマカの素晴らしさであり大きな特徴です。

そして、摂取した複数の有効成分が複合的に働き合うことで、滋養強壮、疲労回復、美容効果、更年期障害の緩和などに役立つのではないかと考えられています。

マカに特徴的に含まれる機能性成分として「ベンジルグルコシノレート」があります。

マカのさまざまな効果効能はこのベンジルグルコシノレートによるものではないか、といわれるほどの強力な成分です。

ベンジルグルコシノレートには成長ホルモンの分泌を促す作用、抗肥満作用、持久力向上、抗疲労作用あると考えられており、この成分の研究にも注目が集まっています。[※6]

ちなみに同じアブラナ科の大根やブロッコイリー、からしなどにもグルコシノレートが含まれていて、こちらもファイトケミカル(抗酸化物質)として知られています。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

マカは、妊活や男性機能のサポートなどを目的に摂取するものと思っている人が多いようですが、実は中高年以降の男女に有効な成分です。

仕事が忙しく、食事からの栄養摂取が不十分でバランスが悪い人、疲労感が強い人、若々しさを保ちたい人、病気の後の体力回復に、産後の体力回復に、更年期の不調を緩和させたい人などに特におすすめです。

むしろ、妊娠を促したり性機能を改善したりするための「薬」ではありませんし、即効性もありません。

しっかりとした食生活や運動といった健康維持を行った上で、体質改善、体力向上のためにマカを併用するのであれば、妊活などにも有効かもしれません。

現地のペルーでもあくまで老若男女の健康維持のための日々の食事の中で利用されているものです。

マカの摂取目安量・上限摂取量

マカは一般の食品と野菜と同じ位置づけですから、摂取量の決まりはありません。

しかしサプリメントで摂取する場合には、信頼できる製品を選び定められた用途・用量を厳守する必要があります。

また医薬品のような即効性もないので、過度に効果を期待し、大量摂取や過剰摂取をしないように注意しましょう。

安全性については、1日3gまで12週間の継続摂取での安全性が確認されています。

マカのエビデンス(科学的根拠)

マカの効果効能については多数のエビデンスが報告されています。

■女性のホルモンバランスの調整作用
■更年期症状改善作用
■美肌作用

上記の3点については、マカの原料メーカーのひとつであるTOWA CORPORATION「MACAXS®マカ・エキスパウダー」を用いて、TOWAコーポレーションが、帝塚山学院大学人間科学部・近畿大学医学部・大阪府立大学大学院獣医学専攻等の研究者と共同研究を行い、ヒト試験により有効性を報告しています。

また同じ「MACAXS®マカ・エキスパウダー」を用いたラットの試験では、成長ホルモンの適度な増加、学習能力の向上、コレステロール代謝の改善なども報告しています。[※5]

■女性の妊娠への効果(ラット)
上記についてはマカのサプリメントメーカーである株式会社ヤマノが中村学園大学 薬膳科学研究所の内山教授と共同研究を行っています。

これによると一定のストレスを与えたメスのラット2つのグループに分け、ひとつのグループには餌にマカを、もうひとつのグループには通常の餌のみを与え、卵巣を刺激する卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体刺激ホルモン(LH)について変化の測定を行っています。

すると、マカ入りの餌を食べていたメスのラットチームはFSH、LHともに優位に上昇し、マカがストレスを緩和させ、ホルモンバランスを正常にしたことを示唆する、と報告しています。

またこのメスのラットは妊娠しやすい状態であることも確認され、これらについてイギリスの学術誌で論文発表されています。[※6]

これら2つの研究からも、マカに含まれるベンジルグルコシノレートだけが効果的というより、マカそのものに大きな健康パワーが秘められていることが示唆されます。

■持久力向上・抗疲労作用・抗肥満作用
日本農芸化学会の発表によれば(2005年)、マカの抽出物を餌に加えたマウスは遊水運動の結果に向上がみられたため、持久力向上・抗疲労作用が示唆されています。[※7]

研究のきっかけ(歴史・背景)

2000年以上も前にインカの原住民によってマカの栽培が開始されたことや、200年以上前の現地の記録には家畜の繁殖能力を高める目的でマカが利用されていたという記録が残されています。

マカは1980年頃に生産地のペルーで絶滅の危険に直面したそうです。しかし、ペルーの政府の指導によって「健康増進植物」と位置づけられ、栽培強化が推進されたため、1994年頃には生産耕地が40ヘクタールまでに改善したそうです。

さらに1994年頃にはアメリカに滋養強壮、体力向上などの健康機能がある食品として紹介されたことで各国から注目を集めることとなり、1999年には1200ヘクタールの敷地で栽培されるようになったといいます。

日本には1998年にペルーの特産品として、当時のフジモリ大統領によって紹介され、健康ブームとの相乗効果もあり注目を集めるようになりました。

当初は強壮の効果ばかりが注目されていましたが、現在に至るまで幅広い研究が行われるようになり、マカのすぐれた栄養価や多岐にわたる機能性に再び注目が集まっています。

現在では、アメリカや日本だけでなく、欧州でも需要が伸びています。

ペルーとしては国の重要な作物としてマカを守るために、マカの原料の輸出は禁止しています。

そのため国産などのマカは存在せず、現地で乾燥・加工といった処理が行われたものが日本やその他の国へ輸出されています。

つまり、マカを野菜として食べてみたくても、このような事情から日本ではサプリメントやパウダーで摂取するしか方法がないのです。[※1]

しかし近年、日本では不可能とされていた国産のマカ栽培に成功した企業もあります。

ペルー政府が禁止する前に輸出したマカの種を20年以上の歳月をかけて国産マカとして誕生させたそうです。

そのため国産マカも入手できるようになっていますが、現地のマカと栄養価などに違いがあるようです。[※8]

専門家の見解(監修者のコメント)

鈴鹿医療科学大学大学院保健衛生学研究科の研究において、更年期障害やストレスからくる若年性更年期障害に対し行われるホルモン補充療法のひとつとして、マカの効果が十分期待できるものと考えられると発表(「医学と生物学」第145巻・第2号・2002年8月10日)。

ただ、マカに対する効能について、日本ではエビデンスが希薄であると考えている専門家が多いようです。

ただ株式会社アイロム医学顧問の田部井徹氏は、医学専門誌『産婦人科治療 2』に掲載された論文の最後に

「日本では、更年期障害などの更年医学を扱う医療従事者が機能性食品あるいは医用食品(Medical Food)による補完代替医療に関する知識が希薄であり、マカの更年期障害に対する臨床効果を熟知していないと推測される」

「日本の更年期女性における科学的な臨床データがない点は遺憾であるが、今後、Maca-GOによる臨床的な有効性/安全性が、科学的な視野から検討されることを期待する」

と述べています。日本ではまだ専門家の認識にもばらつきがありますが、今後更なる研究が進み、科学的根拠が示されることを期待します。

マカを多く含む食べ物

マカは天然の野菜であり、わずかに国産があるとはいえ、マカを野菜として食べることは一般的には難しいでしょう。

マカの栄養を取り入れたい場合は、サプリメントやマカパウダーといった加工されたものを摂取するしかありません。

しかしながらマカの商品には多数あり、どれを選んだらいいかわからない、という問題に直面します。しかも摂取量も決まっていませんから、選ぶポイントが定めにくいでしょう。

マカの選び方のポイントとしては、含まれる有効成分を明確にしていることと、できればそれぞれの含有量まで記載していることを一つの基準とすることが望ましいといえます。

マカの商品を提供する主要メーカーはマカの生産地、商品化までのプロセス、現地での収穫や加工の様子など、メーカーごとにホームページで紹介しています。

成分含有量についても各社が実施し提供したものに頼るしかありませんが、報告している企業がほとんどです。当然このような情報がないよりはあった方が信頼できるでしょう。

逆に、妊活の効果や性機能改善だけを強調するような表示をしたり、即効性を謳ったりしているものは不誠実な商品の可能性が考えられますので、よく調べるようにしてみてください。

1か月程度継続してみて、何も体感するものがなければ、違うメーカーのものに変えるか、他の成分を探すのもひとつです。

相乗効果を発揮する成分

マカと他の健康成分の相乗効果に関する研究はほとんどありません。

マカを他の成分と摂ることで、相乗効果がある場合もあるいは相殺されてしまうこともあるかもしれませんし、何より、摂取したサプリメントでの体感がわかりにくくなるので、まずはマカを摂取する場合は単独で試した方が良いでしょう。

ただし、大手メーカーなどから、マカに亜鉛やコエンザイムQ10を配合した商品も多数登場しています。

それぞれの商品のコンセプトを理解し、何を目的にしているのかを理解した上で、自分に必要なものであれば試してみるのもひとつです。

マカに副作用はあるのか

基本的にマカは野菜=食品ですから安心して摂取できます。

しかしサプリメントや健康食品として精製されたマカエキスの場合、含有量や原材料にこだわって商品を選ぶ必要があります。

またマカ以外に入っている成分についても確認する必要があります。

一番注意すべき商品は、あたかも医薬品のように仕立てている商品です。

副作用の恐れも考えられますから注意が必要です。

また妊娠中の方と授乳中の方の摂取は、どのような影響があるかわからないので、避けた方が良いでしょう。

医薬品との相互作用については、関節リウマチなどで処方されるロキソプロフェンを服用中の73歳の男性が、マカを4日連続摂取し(摂取量は不明)息切れを感じ、医療機関を受診したところマカ加工食品が原因の薬剤性肺炎と診断されたケースがあります。[※2]

医薬品を摂取している人は主治医にも必ず相談しましょう。