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レモングラスの効果とその作用

レモングラスは、ハーブティーや精油、タイ料理のトムヤムクンの食材など、さまざまな方法で使用されているイネ科の植物です。レモンのようなフレッシュな香りをもつレモングラスは、リフレッシュ効果のほかに、殺菌効果や消臭効果、防虫効果などがあるといわれています。
ここでは、レモングラスの効果・効能、作用のメカニズムや研究データなどを解説。レモングラスを使用したレシピや摂取する場合の副作用などもまとめています。

レモングラスとはどのような植物か

レモングラスは、イネ科の多年草でレモンに似た香りがする植物です。原産国はインドで、熱帯から亜熱帯の地域が主な産地です。エスニック料理に欠かせないハーブの代表で、タイ料理のトムヤムクンには欠かせない食材であることが知られています。[※1][※2]

レモングラスのフレッシュな香りは疲れた体や心を元気づける効果があり、アロマテラピーやハーブティー、化粧品などによく使われています。ストレスからくる胃腸の不調や感染症予防、痛み止め、防虫などにも効果があり、生活のさまざまな場面で利用されるハーブです。

レモングラスの効果・効能

レモングラスには、以下のような効果効能があるといわれています。[※1][※3][※4]

■リフレッシュ効果

レモンのようなすっきりとした香りが気分をリフレッシュさせ、疲れた心にエネルギーを与えます。集中力を高めるのにも役立ちます。

■消化促進効果

お腹にたまったガスを排出して消化を助けるので、胃腸の不調の改善に用いられます。

■鎮痛・抗炎症効果

疲れの原因となる乳酸を取り除き血行をよくするので、筋肉痛や肩こりなどの痛みのケアに用いられます。また、血流がよくなることで、冷え性やむくみの解消にも役立ちます。

■殺菌・抗真菌効果

細菌や真菌の感染に効果があり、風邪の初期症状や水虫の予防に役立ちます。

■消臭効果

デオドラント効果によって体臭や汗臭さを抑えます。

■肌の調子を整える

収れん作用や殺菌作用により、毛穴をひきしめたり皮脂の分泌バランスを整えてニキビを改善したりする効果があります。

■防虫効果

蚊やダニなどの忌避効果があり、虫よけやルームフレグランスに利用されます。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

レモングラスの香り成分の約80%を占めるのはシトラールです。このシトラールがレモンのような香りのもとになっていて、リフレッシュ効果やすぐれた抗菌・殺菌効果をもたらします。[※3]

嗅覚をとおして体内に入ったシトラールは、副交感神経に作用し神経のバランスを整えます。血糖値を上昇させるアドレナリンの分泌を促すことで、気持ちに活力を与え、集中力を高めます。[※4]

また、シトラールには胃腸の調子を整えて、腸内にたまっているガスを体外へ排出するはたらきももっています。[※5]

レモングラスは抗菌作用にもすぐれており、真菌感染や細菌感染にも作用するため、感染症(疥癬)や水虫などの予防・改善にも効果的です。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

レモングラスには気分をリフレッシュする効果がありますので、なんとなくやる気が出ないときや、集中して作業したいときに利用するとよいでしょう。車の運転をするときにも向いています。

食べ過ぎや飲みすぎでお腹が張っているときにハーブティーで飲むと、消化を助け、胃腸の調子をよくしてくれます。

筋肉痛のケアにも効果があるので、スポーツをする人はトリートメントオイルや湿布剤などで取り入れてみてもよいでしょう。

レモングラスには皮脂の分泌バランスを整える効果があるので、ニキビに悩んでいる人は、ハーブティーで飲むほか、せっけんや化粧水を利用するとよいでしょう。

レモングラスの摂取目安量・上限摂取量

レモングラスには決められた摂取量や上限は定められていませんが、作用が強力なので、使用する場合は注意が必要です。

レモングラスを精油で使用する場合は、高濃度で使用すると皮膚刺激を感じることがあるので、敏感肌の人は皮膚に異常がないか確認してから使用してください。また、必ず1%以下の濃度に薄めてから使うようにしましょう。[※1]

レモングラスのエビデンス(科学的根拠)

京都府立医科大学大学院医学研究科免疫学の木村真理氏らは、精油を使用してハンドおよびフットマッサージを行ったときにの心身への効果について実験を行いました。

対象者は22~30歳までの健康な成人女性16名です。対象者には、精油なし、精油のラベンダーとゼラニウムをブレンドしたもの、精油のペパーミントとレモングラスをブレンドしたものの3条件で、30分ハンドとフットのマッサージを受けてもらいました。

実験前に心拍計をつけて、施術前に10分間安静にしてもらったのちに、30分間施術。その後10分間安静にして、副交感神経(HF)の値、交感神経と副交感神経のバランス比(LF/HF比)を算出しました。

それに加えて、施術前と中、後で唾液を採取して、ストレスホルモンの濃度を測定。施術前後には質問への回答も行ってもらいました。

調査の結果、ペパーミントとレモングラスをブレンドしたものを使用した際、施術中に副交感神経の低下や交感神経と副交感神経のバランス比が上昇したのが確認されました。これにより自律神経が整い、疲労度が低下したと考えられています。

また、施術を受けて10分後にはストレスホルモン濃度が低下して、やる気が出る、目覚めるなどといった肯定的感情が高くなることがわかりました。[※6]

マンチェスター・メトロポリタン大学のDoran AL氏らは、精油における細菌への効果について実験を行いました。

実験では、密封されたボックス内とオフィス内の2環境で殺菌・抗菌作用のあるレモングラスとゼラニウムをブレンドしたものを蒸気で拡散しました。

調査の結果、密封されたボックス内では20時間後に空中細菌が38%減少、オフィス内環境では、15時間で89%減少させることがわかりました。

このことから、レモングラスなどの精油の蒸気は空気消毒の手段のひとつとして利用できることが示唆されました。[※7]

研究のきっかけ(歴史・背景)

レモングラスは、インドの伝統医学・アーユルヴェーダで、数千年にわたって熱病対策や感染症などに使用されてきた歴史があります。インドでは、茎の根元が赤いことから「チューマナ・プールー(赤い茎)」という名前で親しまれています。[※4]

またブータンでは、竜神がくわえている神聖な植物と言い伝えられており、中国においては、葉から根の先まで利用しており、頭痛や下痢、はしか、のどの痛みなどの治療薬として使用しています。中国ではレモングラスは「香茅(コウボウ)」と呼ばれています。

日本では、1914年に大谷光瑞(明治生まれの宗教家・探検家)によって温室栽培されたのが日本初だといわれています。[※1]

専門家の見解(監修者のコメント)

日本アロマセラピー学会認定医で八千代歯科クリニックの院長を務める千葉栄一氏は、レモングラスの効果について自身の著書で以下のように記しています。

「殺菌力に富み、消化機能を高めることが知られています。ハーブティーとして飲んだ事のある方も多いでしょう。食前や食後に飲めば、消化を助けてくれますし、健胃作用とともに疲労回復にも効果が期待できます」

「レモングラス精油の主成分シトラールの抗菌活性は、他の精油に比べると知名度が低いですが、真菌類には効果が強く、中でもCandida albicansの増殖を抑制する作用が報告されています」

(千葉栄一『歯と香り : 歯科診療をとりまく香り』より引用)[※8]

レモングラスにはリフレッシュ効果や集中力を高める効果、消化促進作用などがあります。そのため、アロマオイルで体外から利用するほか、ハーブティーとして摂取して体の内側から効果を実感することもできます。

また、レモングラスの主成分であるシトラールはすぐれた抗菌作用ももっており、ヒゼンダニによる感染症(疥癬)や水虫などに効果があります。入浴やスキンケアなどの方法で利用もできるので、状況に応じて上手に使用しましょう。

レモングラスを使ったレシピ

レモングラスはハーブティーや精油のほかにも、料理のスパイスや風味づけ、虫よけなど、さまざまなシーンで利用されています。ここでは、レモングラスを使用したレシピを2つご紹介します。

■レモングラスティー

【用意するもの】

  • レモングラス…適宜
  • 熱湯…適量

【つくり方】

  1. レモングラスの葉を適当な大きさに切り、ティーポットに入れます
  2. 沸騰させたお湯を、レモングラスの葉がひたるまで注ぎます
  3. ふたをして約5分蒸らすと飲み頃です

葉の量はお好みで調節してください。アイスティーとして飲む場合は、葉の量を多めにして濃くし、氷を入れて飲むとよいでしょう。

■白身魚のレモングラス蒸し(2人分)

【用意するもの】

  • 白身魚の切り身…2切れ
  • 乾燥したレモングラス…ひとつかみ分
  • 塩…少々
  • しょうゆ…少々
  • お酒…大さじ1
  • レモン…1片

【つくり方】

  1. クッキングシートに乾燥したレモングラスを広げて、その上に白身魚を並べます
  2. 塩とお酒をふりかけ、クッキングシートでくるんで電子レンジで加熱します
  3. 加熱して蒸しあがったら、白身魚にしょうゆを少々かけてレモンを添えたら完成です

クッキングシートをひらくとレモングラスのさわやかな香りが広がります。お魚もさっぱりいただけます。

相性のよい精油

ラベンダーとブレンドすることで、消臭効果や虫刺されのかゆみをやわらげる効果が期待できます。また、ジンジャーやブラックペッパーなどの精油と合わせることで、血流を改善し、血行をよくしてくれます。

ほかにも、レモングラスはハーブ系の精油と相性がよく、ブレンドして使用するならマジョラムやローズマリーなどの精油がおすすめです。[※3]

レモングラスの副作用

レモングラスは、食品に含まれている量を摂取するぶんには特に問題はありません。また、医療目的で短期間使用する場合も、安全といえそうです。

ただし、レモングラスには子宮収縮作用や生理を促す通経作用があるため、妊娠中の人は使用を避けてください。授乳中の人に関しても安全性のデータが不十分なため、使用は控えましょう。[※9]

レモングラスを選ぶときの注意点・保存方法

レモングラスの葉や根元は、スパイスや臭い消し、風味づけとしてさまざまな料理に使用されます。ここでは料理で使用する際のレモングラスの選び方と保存方法についてご紹介します。

■選び方

レモングラスは、主に葉はティー、根元部分は料理に利用されます。

レモングラスの葉を選ぶときは、みずみずしくて色が青々としているのが新鮮といえます。乾燥した葉でもおいしくいただけ ますが、生の葉でつくったハーブティーはよりフレッシュな香りを楽しむことができます。

根元部分を選ぶときは切り口を確認しましょう。切り口が茶色い場合は鮮度が落ちている証拠。白いものを選ぶとよいでしょう。切り口の上部部分が鮮やかな青みであるものも新鮮だといえるので、切り口と合わせて確認してみてください。

■保存方法

レモングラスは生だと日もちしないため、購入したら冷蔵庫で保管してすぐに使いきるようにしましょう。

葉の部分を乾燥させて使用する場合は、サッと水洗いを行って水気をとったら室内で乾燥させます。長いままで乾燥させてもよいですが、ハーブティーとして利用するなら適度にカットして乾燥させると、より早く乾燥させることができます。乾燥したら瓶や密閉袋などに乾燥材と一緒に入れて、涼しい場所に保存しましょう。

参照・引用サイトおよび文献

  1. ジャパンハーブソサエティー著『ハーブのすべてがわかる事典』(株式会社ナツメ社 2018年4月発行 p214,p252)
  2. 重松浩子監修『わかりやすい!覚えやすい!アロマテラピーの基本講座』(共同印刷株式会社 2012年11月 発行 p70)
  3. 梅原亜也子著『これ1冊できちんとわかるアロマテラピー』(株式会社マイナビ出版 2016年2月発行 p215)
  4. わかさの秘密「レモングラス」
  5. 榊田千佳子、渡辺肇子監修『いちばんわかりやすいハーブティー大事典』(株式会社ナツメ社 2011年5月発行 p109)
  6. 【PDF】木村真理 ほか「鎮静・覚醒作用のある精油を用いたハンド・フットマッサージの健常成人女性の心身に及ぼす効果」(女性心身医学 J Jp Soc Psychosom Obstet Gynecol Vol.16,No.3,pp.268-282,(平成24,3月))
  7. Doran AL, Morden WE, Dunn K, Edwards-Jones V.「Vapour-phase activities of essential oils against antibiotic sensitive and resistant bacteria including MRSA.」Lett Appl Microbiol. 2009 Apr;48(4):387-92. doi: 10.1111/j.1472-765X.2009.02552.x.PubMed PMID:19292822 DOI:10.1111/j.1472-765X.2009.02552.x
  8. 千葉栄一『歯と香り : 歯科診療をとりまく香り』(フレグランスジャーナル社 2008年12月発行 p89)
  9. 田中平三ほか『健康食品・サプリメント[成分]のすべて 2017 ナチュラルメディシン・データベース』(株式会社同文書院 2017年1月発行)