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レモンバームの効果とその作用

レモンバームはハーブの一種で、ヨーロッパからアジアまで広く分布しています。古くからヨーロッパでは、長寿のハーブとして親しまれてきました。日本名ではコウスイハッカ(香水薄荷)やセイヨウヤマハッカ(西洋山薄荷)と名がつくように、レモンに似た香りとミントのようなすっきりした風味をもつのが特徴です。
料理やハーブティーとして利用されるほか、精油として使われることもあります。近年では、認知症の予防効果があるとの研究が注目されています。

レモンバームとはどのような植物か

レモンバームはシソ科のハーブで、原産地は、地中海東岸の南ヨーロッパです。常緑の葉をもち、夏の終わりごろに白や黄色の小さな花が咲きます。多年草で、冬になると地上の葉は枯れますが、地中にある根は生きていることから、寒さに強い性質をもちます。種を周囲にこぼすので、繁殖力がとても強く、かつては人間よりも長生きするといわれていました。[※1]

天然のハーブには様々なポリフェノールが含まれており、その多くは抗酸化作用や抗炎症作用をもちます。食用だけでなくメディカルハーブとして医療用としても活用されてきました。葉にはシトラール(ゲラニアールとネラール)という成分が含まれ、これがレモンに似た香りの元になっています。[※16]

レモンバームの特徴的な成分として、ロスマリン酸があります。数十種類のポリフェノールのうち、アルツハイマーの改善に効果を発揮する研究から、認知症予防に活用できるのではないかと、近年研究が進んでいます。[※2]

レモンバームの効果・効能

ハーブは古くから病気の治療にも使われています。レモンバームは、葉がハート形の形をしていることから、心臓の病気に使われてきました。また、記憶力を高める効果があると伝えられ、サプリメントによって気分の向上や記憶力の改善などに効果がみとめられています。

■鎮静・鎮痛効果

レモンバームには古くから鎮静効果・鎮痛効果があるとして、メディカルハーブとして薬用に使われてきました。ドイツの研究では、神経性不眠症や消化器系に対して有効性が認められています。シトラール、シトロネラール、リナロールなどの香り成分がイライラを鎮めるはたらきをします。[※3]

■ストレスの緩和

イライラをしずめる成分を含むことから、ストレスによる症状を軽くするはたらきがあります。神経症の改善や、抑うつ感の軽減にも。[※15]

■花粉症の予防

シソ科のハーブに含まれるポリフェノールには、花粉症の症状を緩和するはたらきがあります。[※4]
玉川大学農学部の研究によると、とくにレモンバームに強い抗アレルギー作用があることがわかってきました。[※5]鼻づまり、喘息、気管支炎などの症状を軽くします。

■風邪の初期症状に

抗菌・抗ウイルス作用があり、頭痛、胃痛、慢性気管支炎、などの風邪の初期症状の改善や発汗作用、解熱作用、利尿作用、吐き気防止、強壮作用、など免疫力を高めるはたらきがあります。

■アルツハイマーや認知症の予防効果

脳の機能改善の研究がすすみ、脳を活性化することがわかってきました。記憶力を高めるはたらき[※6]もあるため、アルツハイマーや認知症の予防[※7][※8]に期待が高まっています。また、うつ病予防にも効果が期待されています。

■生活習慣病予防

ポリフェノールを含むため、抗酸化作用をもち、活性酸素を除去します。血圧降下作用があることがわかっており、現代人の陥りやすい生活習慣病の予防に期待が高まっています。

■放射線の防御

放射線化科のスタッフを対象とした研究で、放射能によるダメージを軽減するはたらきをもつことがわかってきました。[※9]

どのような作用があるのか

レモンバーム特有のロスマリン酸は、ポリフェノールの一種でシソ科のハーブに含まれる成分です。ローズマリーから発見されたことから、ロスマリン酸(ロズマリン酸)と名づけられました。

近年では、認知症予防や記憶力の向上など脳の機能改善や健康維持が注目されていますが、それ以前は抗炎症作用によるアレルギー症状の緩和や抗酸化作用による生活習慣病予防に活用されていました。

ロスマリン酸を含むハーブには、レモンバームのほか、ローズマリー、スペアミント、ミント、タイム、スイートバジル、セージ、シソなどがあります。ローズマリー、レモンバーム、スペアミントの抽出物からサプリメントが開発されており、より身近な存在となりました。[※13]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ストレスに多い現代人にとって、ストレス症状の緩和作用をもつレモンバームはぜひ取り入れたい成分です。

不安やストレスの強いときには、ハーブティーやアロマテラピーなど、香りを楽しむだけでもイライラ予防に効果を発揮します。

強いストレス、不眠症、不安症状などが気になる方はサプリメントとして摂取すると、改善効果があることが認められています。[※10]

レモンバームの摂取目安量・上限摂取量

厚生労働省の定める食事摂取基準では、レモンバームの摂取目安量や上限摂取量は定められていません。

食品として摂取するなら過剰摂取の心配はありませんが、サプリメントや精油など濃縮させたものを利用する場合には注意が必要です。また、妊娠中・授乳中の安全性について、十分な情報がないため、摂取は避けた方がよいでしょう。

レモンバームのエビデンス(科学的根拠)

ストレスの緩和や鎮静作用についての研究では、記憶能力の改善とともに落ち着きが増すということがわかっています。[※3]

認知症やアルツハイマーに関して、以下のような研究が進んでいます。認知症予防への期待が高まっています。

アルツハイマー型のマウスにロスマリン酸を混ぜたえさを与えたところ、アルツハイマー型認知症の予防効果が示唆されました。[※7]

また、レモンバーム抽出物の摂取によって、アルツハイマー患者の興奮度が改善したという研究もあります。[※8]

研究のきっかけ(歴史・背景)

レモンバームの別名は「メリッサ」といい、ギリシア語ではちみつという意味をもちます。ミツバチがよく集まることからその名がつきました。

はちみつを加えて毎日お茶を飲み続けたら100歳以上まで長生きしたという言い伝えから長寿のハーブとされてきました。

ギリシア神話では、メリッセウス(はちみつ男)の娘メリッサがはちみつを与えてゼウスを育て、その後アラブ人によって、強胃、強心、強壮作用のもった薬草であることを伝えられたとあります。薬物誌には、サソリや毒グモの解毒剤として有効などと書かれています。

専門家の見解(監修者のコメント)

レモンバームに多く含まれるロスマリン酸について
第1回ロスマリン酸研究会が2018年2月26日に開催されました。その講演の中で、岡山大学大学院 医師薬学総合研究科の阿部康二教授が

「認知症患者が国内外で増えてきていますが、もしロスマリン酸が認知症に対して効くのであれば、薬を飲み始めるより前から摂ることで、認知症の予防に繋がり、社会的にも非常に意味のある重要なことになります」

と脳神経内科学の立場から発言。

鳥取大学大学院 工学研究科の河田康志教授は

「ロスマリン酸は認知症を予防できる可能性をもつ素材として、次はヒト臨床試験においても良い結果が 期待できる素材です」

と基礎研究の立場からコメントしています。また神戸大学大学院保健学研究科、古和久朋教授によれば

「本日の話題の中心であるロスマリン酸もポリフェノールの一種です。実際にヒトに摂取してもらい注意力の改善が示されたデータがあります。アルツハイマー病のモデル動物を用いた実験では、ロスマリン酸を摂取することで、マウス脳中のシミが減ることがわかっています。以上のことから、長期に摂取した際の安全性に問題がなければ、ヒトでも老人斑を減少させ認知症の進展予防へつながる健康食品となりうるのではないかと期待しているところです」

とそれぞれの専門分野から語り、ロスマリン酸を含むハーブへの期待を大きく盛り上げました。[※14]

レモンバームの摂り方

料理として
生葉はハーブティーにしたり、料理やデザートに添えたりして使います。爽やかな香りや風味がアクセントとなります。肉や魚料理に使うと、香りづけや臭みけしにもなります。

乾燥させたものは、ハーブティーとして使います。[※17]

ハーブティーの作り方[※4]参考
① レモンバームの葉をお好みで3枚ほどポットに入れ、熱湯を注いで2~3分抽出します。
② レモン果汁1/2個分をカップに注ぎ、抽出したレモンバームティーを注ぎ入れます。
③ お好みで、ミントやはちみつを加えてもおすすめです。

ミントを加えると、花粉症予防の効果もアップしますのでおすすめです。

精油として
レモンバームの花や葉を水蒸気蒸留法で抽出したものを精油といいます。また、葉や茎から熱水抽出したものをエッセンシャルオイルといいます。レモンバームそのものは、繁殖力が強く、どこでも育つので安価です。しかし、採油率が低いので、精油としては高価なものとなります。

純粋なレモンバームのみの精油を「メリッサ・トゥルー」、レモングラス、レモンバーベナ、レモンなどの精油をブレンドし、価格を抑えたものを「メリッサ・ブレンド」として区別しています。

しかし、明確な規制などがないため、純粋なものとブレンンドの区別がつきにくいこともあります。アロマテラピーなどで利用する場合は注意が必要です。精油の研究はほとんどなく、科学的に証明された効能はほとんどないといわれています。

その他
レモンバームを乾燥させると、香りが失われてしまいます。ほかのハーブとブレンドされて、入浴剤やポプリとして活用されています。入浴剤には、肌をなめらかにするはたらきがあります。

相乗効果を発揮する成分

ビタミンC
レモンバームには、レモンに似た香りがあることから、ビタミンCとの相性がよいといわれています。

レモンバームに副作用はあるのか

通常の食品として摂取する場合、過剰摂取の心配はないとされています。ですが、大量に摂取する場合やサプリメントなどで摂取する場合は気を付けましょう。副作用として、嘔吐、腹痛、めまい、悪心などの症状が報告されています。[※8]

また、ハーブについては、妊娠中の摂取に対して注意喚起がなされています。自己判断で摂取しないようにしましょう。[※11]

鎮静作用のあるハーブ、サプリメント、医薬品と併用すると、その効果や副作用を強めてしまうことがあるので、服薬をしている方は注意が必要です。
[※12]

参照・引用サイトおよび文献

  1. みんなの趣味の園芸 レモンバームの基本情報
  2. レモンバーム抽出物を用いた認知症予防効果の検証
  3. PubMedヒトCNSニコチン性およびムスカリン受容体結合特性を有するメリッサ抽出物(レモンバーム)の単回急性投与後の気分および認知能力の調節
    Modulation of mood and cognitive performance following acute administration of single doses of Melissa officinalis (Lemon balm) with human CNS nicotinic and muscarinic receptor-binding properties.
  4. オールアバウト「花粉症にレモンバームティー」(執筆者:南 恵子)
  5. レモンバーム加工食品(レモンバームエキス+プロポリス)による花粉症の予防効果
    小野寺 敏, 八並 一寿,福田 栄一
    国際食品機能学会2004研究発表要旨集 8 2004年5月
  6. Memory-improving activity of Melissa officinalis extract in naïve and scopolamine-treated rats.
    ラットにおけるメリッサオフィシナリス抽出物の記憶改善活性
  7. Phenolic compounds prevent Alzheimer's pathology through different effects on the amyloid-beta aggregation pathway
    フェノール化合物は、アミロイド-β凝集経路に対する異なる効果によってアルツハイマー病を予防する
  8. Melissa officinalis extract in the treatment of patients with mild to moderate Alzheimer's disease: a double blind, randomised, placebo controlled trial.
    軽度から中等度のアルツハイマー病患者の治療におけるメリッサ抽出物の二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験について
  9. Effects of Melissa officinalis L. on oxidative status and DNA damage in subjects exposed to long-term low-dose ionizing radiation.
    長期低線量電離放射線に曝露された被験者におけるメリッサオフィシナリスL.の酸化状態およびDNA損傷に対する影響。
  10. 【PDF】兼松ウェルネス株式会社プレスリリース
  11. 「健康食品」の安全性・有効性情報「妊娠中のハーブ製品の自己判断による摂取に注意してください」
  12. レモンバーム投与後の気分及び認知機能の調節について
    Modulation of mood and cognitive performance following acute administration of Melissa officinalis (lemon balm).
  13. わかさの秘密 ロスマリン酸
  14. ロスマリン酸研究会
  15. わかさの秘密 レモンバーム
  16. わかさの秘密 レモンバーム
  17. レモンバーム葉のラジカル消去活性に及ぼす乾燥温度の影響