名前から探す

カリウムの効果とその作用

カリウムは体内に存在するミネラルの中でも、血圧調整や神経伝達など多くの機能にかかわる物質です。1日3回の食事をしっかり摂っていればカリウムが不足することはありません。しかし、過剰に摂取してしまうと脳や血管、心臓などに悪影響を及ぼします。ここではカリウムの効果・効能のほか、副作用や科学的根拠などをまとめました。

カリウムとはどのような成分か

カリウムは野菜や果物、海藻などに多く含まれているミネラルの一種です。

草木を燃やした後にできる灰に多く含まれることから、ラテン語で「草木灰」を意味する「kali」が名前の由来となっています。英名では、ポタシウムという別の名称が使われているようです。

体内では細胞内に存在し、神経伝達や筋肉の収縮、化学反応など多くの生理作用にかかわっています。体内の重要なはたらきを担っているため、不足すると痛みや脱力感などの症状を引き起こすおそれがあります。[※1][※2][※3]

カリウムは細胞外に存在するナトリウムと影響し合い、細胞を正常にはたらかせたり、血圧を調整したりする作用があります。[※4]そのため、健康な状態を保つことができるのです。

最近は適量のカリウムを摂取することで、脳卒中の予防や骨密度の増加といった効果が得られることもわかってきました。[※1]

カリウムの効果・効能

カリウムには次のような効果・効能が期待できます。[※1][※2][※3][※4][※5]

■高血圧の改善

カリウムには血圧を下げるはたらきがあるため、高血圧の改善や予防に役立ちます。

■むくみの解消

むくみの原因である余分なナトリウムと水分を排出し、むくみを解消してくれます。

■夏バテ予防

十分なカリウムを摂ることでだるさや倦怠感といった夏バテの症状を予防することが可能です。

■脳卒中の予防

一定量のカリウムを摂取することで、脳卒中の発症リスクが下がるといわれています。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

カリウムには、腎臓でナトリウムが再吸収されるのを抑え、尿として排出されるのを促進するはたらきがあります。

そのため、血中の余分なナトリウムがなくなり、血圧を下げられるのです。[※1][※2]

また、ナトリウムの排出と一緒に、むくみの原因となる水分も排出する[※2]ため、足がパンパンになってしまうむくみを解消することが可能です。

さらに、神経伝達のサポートや筋肉収縮にもかかわっており、脳や心臓、筋肉の機能を調節してくれます。[※1][※2][※3]

カリウムが不足すると筋肉や脳の機能が低下するため、疲れや倦怠感を感じやすくなります。

そのほか、一定量のカリウムを摂取すると、血管の機能が高まり、脳卒中のリスクを下げる効果が期待できます。[※1]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

カリウムは以下の症状が出ている人に効果・効能が期待できるといわれています。

  • 高血圧
  • むくみ
  • 夏バテ
  • 生活習慣病

カリウムは体内の過剰なナトリウムを排出するはたらきを持っているため、とくに高血圧の人に効果が期待できます。

高血圧になると動脈硬化や脳梗塞の発症リスクが高まるため、塩分が多い食生活をしている人はカリウムをしっかり摂る必要があります。

また、脳卒中の改善にも役立つと考えられているため、健康を保ちたい人は必要な量をきちんと補いましょう。

カリウムの摂取目安量・上限摂取量

一般的な成人の場合、1日あたり40~80mEq(1.6~3.2g)が目安とされています。上限摂取量は90mEq(約3.7g)で、それ以下の摂取であれば問題ありません。[※1][※6]

医薬品として利用するときは、摂取の目的に合わせて以下の量を摂取する必要があります。

  • 低カリウム血症の予防:20mEq(0.8g)/日
  • 低カリウム血症の治療:40~100mEq(1.6~4g)/日
  • カルシウム値の改善:1mEq/kg(1日2回)
  • 高血圧改善:48~90mEq(1.8~3.7g)/日
  • 脳卒中の予防:75mEq(約3g)/日

カリウムのエビデンス(科学的根拠)

カリウムの効果を裏付けるエビデンスとして、いくつかの研究内容をご紹介します。

ジョン・ホプキンス大学衛生・公衆衛生学校 ウェルチセンターのWhelton PKらは、血圧に対するカリウムのはたらきを分析しています。

33のランダムな比較試験を、期間、試験内容、参加者、カリウム量、治療結果の5条件で分析して結果をまとめました。

結果を分析したところ、ほとんどの試験で血圧の最低値と最高値がどちらも下がったことが明らかになっています。このことから、カリウム摂取が高血圧の改善に役立つと考えられています。[※7]

ほかにも、シャヒード・ベヘシュティー大学のRastmanesh Rらは、カリウムと関節リウマチの関係性を調べる研究を行いました。

前提条件として、関節リウマチを患っている人は健康な人よりも血中カリウム濃度が低いことがわかっています。Rastmanesh Rらは関節リウマチかつ低カリウム血症の症状が出ている32名を対象に試験を実施しました。

対象者らは、プラセボ(偽薬)を与えるグループと塩化カリウム6000mgを与えるグループに分けられ、28日間プラセボまたは塩化カリウムの混ざったブドウ果汁を摂取。

試験の結果、塩化カリウムを与えた患者の半数近くで、プラセボを与えたグループに比べて痛みが軽減されたことがわかっています。

この結果により、カリウムサプリメントは低カリウム血症を発症している関節リウマチ患者の治療への効果が示唆されました。[※8]

研究のきっかけ(歴史・背景)

カリウムは1807年にイギリスの化学者ハンフリー・デービーが分離した物質です。当時はまだカリウムやナトリウムといったアルカリ金属の元素が発見されていなかったため、デービーの発見は研究の進歩に大きく貢献したといわれています。

研究が進むにつれて、カリウムにはさまざまな生理作用があることが明らかになり、今や生命活動に欠かせない物質として知られるようになりました。

日本では、2005年に「日本人が摂るべき栄養摂取基準」が改訂され、これまで以上に摂るべき栄養素として新しくカリウムが追加されました。

これは、日本に高血圧や脳卒中が多く、食生活やナトリウムの過剰摂取を改善する必要があったため追加されたのだと考えられています。

専門家の見解(監修者のコメント)

カリウムは生体内でさまざまなはたらきをする物質です。ナトリウムとうまくバランスを調節して、生理機能を維持しています。

女子栄養大学栄養生理学研究室の上西一弘教授は、カリウムの効果について説明しています。

「カリウムには、ナトリウムが腎臓で再吸収されるのを防いで排泄を促し、血圧を安定させる作用があります」

(日経グッデイ「カリウム:減塩できない人は、カリウムを多くとろう:知ってトクする栄養学」より引用)[※9]

カリウムの最も有名な効果は、過剰なナトリウムを排出して高血圧を改善する効果です。血中のナトリウムが減ると、血圧の上昇を抑えられます。

ただし、カリウムが不足したりナトリウムを過剰摂取したりするとバランスが崩れ、細胞の機能を保てなくなります。そのため、十分な量のカリウムを補う必要があるのです。

カリウムを多く含む食べ物

カリウムは海産物や乾燥食品などに多く含まれています。

食品(100g) 含有量(mg)
干しずいき 10,000
刻み昆布 8,200
板わかめ 7,400
乾燥パセリ 3,600
インスタントコーヒー 3,600
切干大根 3,500
干しわらび 3,200

カリウムは調理すると水や煮汁に溶けだしてしまうため、含有量の30%ほどは失われます。カリウムを摂りたいなら、生で食べられる果物を活用すると良いでしょう。

バナナやあんずには、100gあたり1,100mgほどのカリウムを含まれているため、一日に必要な2~4gのカリウムを十分補えます。

相乗効果を発揮する成分

カリウムと一緒に摂取することで相乗効果を発揮するのはアルギン酸です。カリウムとアルギン酸は、どちらもナトリウムの排出を促す作用をもっているため、一緒に摂ると作用が強まり、高血圧を予防できる可能性が高まります。

カリウムの副作用

カリウムの過剰摂取で起こる副作用として、腹痛や嘔吐、下痢などが挙げられます。

副作用が出ている状態でさらにカリウムを摂取した場合、痛みや脱力感、麻痺、めまい、錯乱などさまざまな症状が引き起こされる可能性が高く、最悪の場合死にいたるケースもあるので注意が必要です。[※1]

また、消化管運動機能障害(消化機能が低下する障害)をもつ人は、カリウムを体外に排出しにくい傾向があり、[※1]血中のカリウム濃度が高まるため、カリウムサプリメントを摂取しないでください。

アレルギーをもつ人がカリウムを摂取すると過剰反応が起こりやすくなります。カリウムを含むサプリメントや製剤(アスピリンやタートラジンなど)の使用は避けましょう。

注意すべき相互作用

カリウムは特定の医薬品やサプリメント、食品と併用摂取すると相互作用がおこるため、服用する際には注意が必要です。[※1]

■医薬品との相互作用
降圧薬(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬など)
併用すると血中カリウム濃度が急激に上昇し、高カリウム血症を引き起こす可能性があります。
カリウム保持性利尿薬
スピロノラクトンやトリアムテレンなどの利尿薬とカリウムを一緒に服用すると、体内のカリウム量が過剰になるおそれがあります。
■ほかの成分との相互作用
ビタミンB12
一時的に血中カリウム濃度を低下させる可能性があります。ビタミンB12を使った巨赤芽球性貧血の治療をしている人は、カリウムが不足しないように注意しましょう。
■健康食品との相互作用
カリウムを含む健康食品
カリウムを含む健康食品を複数摂取すると、体内のカリウム濃度が上がり、副作用を引き起こしやすくなります。

カリウムの不足・過剰で起こる症状

カリウムが不足すると、血中のカリウム濃度が低下する「低カリウム血症」を引き起こす可能性があります。[※5]

筋肉のけいれんや疼痛、脱力感、心臓血管系の異常などの症状があらわれるほか、最悪の場合は死にいたることもあります。ナトリウムの摂り過ぎるとカリウム不足が起こりやすくなるので、気をつけましょう。

カリウムは、3食しっかり食べていれば不足することはほとんどないといわれています。[※5]しかし、日本人は塩分を摂り過ぎる傾向が強いので、カリウムが不足しがちです。意識してカリウムを摂取しなくてはいけません。

また、カリウムを過剰摂取した場合には、脳や神経系、心臓血管系に悪影響をもたらす「高カリウム血症」になるおそれがあります。[※5]

主な原因はカリウムを含む食品の摂り過ぎですが、まれに腎機能の低下が原因となる場合もあるようです。腎臓がカリウムを排泄できなくなるとナトリウムとのバランスが崩れ、重大な副作用を起こす可能性があります。

参照・引用サイトおよび文献

  1. 田中平三ほか『健康食品・サプリメント[成分]のすべて 2017 ナチュラルメディシン・データベース』(株式会社同文書院 2017年1月発行 p246-247)
  2. 則岡孝子監修『新版 栄養成分の事典』(新星出版社 2008年12月発行 p82-85)
  3. 川島由起子監修『カラー図解 栄養学の基本がわかる事典』(西東社 2013年5月発行 p154-155)
  4. 中村丁次監修『栄養素図鑑と食べ方テク』(朝日新聞出版 2017年8月 p178-181)
  5. 大塚製薬「第2回 カリウム | 栄養素から見た腎臓~腎由来のさまざまな血症 | 腎よもやま話 | ADPKD.JP ~多発性嚢胞腎についてよくわかるサイト~」
  6. 【PDF】厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015 年版)総論 ミネラル(多量ミネラル)」
  7. Effects of oral potassium on blood pressure. Meta-analysis of randomized controlled clinical trials. PubMed- JAMA. 1997 May 28;277(20):1624-32.
  8. A pilot study of potassium supplementation in the treatment of hypokalemic patients with rheumatoid arthritis: a randomized,double-blinded, placebo-controlled trial. PubMed- J Pain. 2008 Aug;9(8):722-31. doi: 10.1016/j.jpain.2008.03.006. Epub 2008 May 12.
  9. 日経グッデイ「カリウム:減塩できない人は、カリウムを多くとろう:知ってトクする栄養学」
  10. 新啓一郎監修『すぐわかる高血圧の治し方』(主婦の友社 2016年2月発行 p76)