ケールとはアブラナ科アブラナ属の植物です。国内では主に「青汁」の原料として知られます。「緑黄色野菜の王様」「葉野菜の女王」と評価されるほど栄養価が高く、その効果効能にも注目が集まります。ここでは主に健康食品としてのケールの効果効能・研究成果・摂取目安量などについて詳しく解説します。
ケールとはアブラナ科アブラナ属の植物(野菜)です。和名をリョクヨウカンラン(緑葉甘藍)、ハゴロモカンラン(羽衣甘藍)といい、別名「葉キャベツ」という呼び方がよく知られています。また中国名では「葉牡丹」ともいいます。
原産地は地中海沿岸で、温暖な気候であれば一年中栽培が可能であるため、原産地に近い地域では収穫量も消費量も多い野菜です。
炒め物やサラダ、煮物、和えものにしてもおいしく食べられます。ヨーロッパではロールキャベツやスープ、揚げ物などの料理でもおなじみの野菜です。また家庭栽培によっても親しまれているようです。
ケールはキャベツや葉牡丹の原種といわれていますが、キャベツと違って結球しないという特徴があります。
日本ではその強い苦味と青臭さが原因で、ケールを野菜として食べることが少なく、主に「青汁」の原料として使われています。
国内で品種改良されて誕生したジューシーグリーン、スゥイートグリーンといった品種が青汁に適したケールとされており、飲みやすい青汁が増えています。
この青汁にはビタミン群、ミネラル群、酵素、葉緑素、食物繊維、各種フラボノイドなどが豊富に含まれているため、さまざまな健康効果を表示した青汁が販売されています。
ケールに含まれるアミノ酸の一種であるGABAに高めの血圧を下げる機能があることが認められ、機能性表示食品として認められている青汁製品もあります。
青汁の原料となるケールには豊富な栄養素が含まれることから、「緑黄色野菜の王様」「葉野菜の女王」「スーパーフード」と評価されるほどです。[※1]
近年はケールを含むアブラナ科の野菜に「グルコシノレート」という機能性成分が含まれていることが解明されています。この成分には解毒や抗酸化作用があることが報告され、近年注目を集めています。ただケールだけに含まれる機能性成分はまだ見つかっていません。[※2]
ケールの専門メーカーである(株)増田採取場などを中心に、生でも食べられるように苦さや青臭ささを抑えたソフトケール(サラダケール、ベビーケール)を開発している企業や農園が増えており、国産ケールも人気が高くなっています。
有名レストランで「サラダ」や「サンドイッチ」「バーガー」などに採用されているだけでなく、最近人気の「コールドプレスジュース」にも使用されていることがあります。
健康意識の高い層から「青汁としてのケール」ではなく「生の野菜としてのケール」にも注目が集まっているのです。[※3] [※4]
ケールには以下のような効果・効能が期待されています。
ケールがどのようなメカニズムでさまざまな効果効能を発揮するかについて、解明されていない部分がほとんどです。ただ、ケールとしての研究成果のレビューは多数公開されています。
おそらくは、豊富に含まれた多種類の栄養素が相互的に働き合うことで、複数の作用があるのではないかと考えられています。ただ、さまざまな効果効能が得られる理由としては、ケールの特徴的な3つの働きによるものが大きいのでは、という見方があります。[※8]
ケールには、ビタミンA、C、Eやクロロフィル、酵素、各種フラボノイド、ポリフェノールなど老化や病気の原因となる過剰な活性酸素を抑制する抗酸化成分が多く含まれています。そのため抗酸化、抗炎症作用によって、さまざまな健康効果が発揮されると考えられます。
ケールには豊富なミネラル類も含まれます。特に、亜鉛、鉄、セレン、カルシウム、マグネシうむなどは、体内に溜まると疲労や体調不良の原因となる有害金属の排出を促します。つまりケールに含まれる良質なミネラルによるデトックス効果によって、さまざまな健康効果が発揮されるとも考えられます。[※9]
ケールに含まれるGABAが末梢神経に働きかけ、血管の筋収縮をコントロールすることで血管を拡張する作用を発揮することから、血圧を降下させる効果があるのではないかと考えられています。[※17]
豊富な食物繊維によって腸内環境が整えられることで、免疫力や自律神経が整えられ、さまざまな健康効果が発揮されるとも考えられます。
野菜としてのケールはどんな人にもおすすめできます。苦味の少ない品種も増えているので、小さいお子様でも食べられるものが増えてきました。
青汁、またはサプリメントとしてのケールは野菜不足になりがちな人、生活習慣病を予防したい人、いつまでも若々しくありたい人、骨の健康維持をしたい人、血糖値やコレステロール、高血圧などの生活習慣病の要因が気になりはじめた人に特におすすめといえます。
食品としてのケールについて、摂取目安量は定められていません。厚生労働省は1日に350g以上の野菜を食べることを推奨していますが[※10]、どの世代もその量には達していないとされています。
したがって野菜のバリエーションのひとつとして、生野菜としてのケールやケールの青汁を取り入れるのもよいでしょう。
ただし、サプリメントや青汁が野菜の代わりになるわけではありません。生野菜と加工食品(サプリメントや飲料)には作用機序に違いがあります。
青汁製品やサプリメントごとに記載された摂取目安量を守って利用するようにしましょう。
(株)ファンケルやキューサイ(株)では、ケールの青汁で複数の臨床研究によるエビデンスを報告しています。
■骨粗鬆症予防のエビデンス(株)ファンケル
閉経後の女性が、ケールを3か月以上連続摂取することで骨代謝マーカーであるNTXの数値が有意に減少し、骨量減少の抑制効果があることを示唆しています。[※11]
■アンチエイジングに関するエビデンス(株)ファンケル
同志社大学との共同研究で、以下のような検証をしています。
ミネラル農法で栽培した国産ケール生葉 120g分を 1 杯分とした青汁を、1 年以上毎日継続摂取している 50 〜69 歳女性 110 名(以下、ケール群)に、アンチエイシジング(老化度判定)ドックを受診してもらいました。
さらに、比較対照としてすでに全国で蓄積されているアンチエイジング(老化度判定)ドックのデータから、ケール群と同年齢条件でケール青汁を継続摂取していない女性(以下、コントロール群)のデータを比較。その結果、ケール摂取群では筋年齢と神経年齢が、コントロール群に比べて若いという結果を報告しています。[※12]
■子どもの発達に関するエビデンス(株)ファンケル
ハノイ市内の小学校に通う健康な小学校2年生~4年生の男女602人を対象に以下のような調査報告があがっています。
ミネラル農法で栽培した日本国産ケール生葉120g分を1杯分としたジュースを毎日飲むグループ(以下、ケール群)と、ケールジュースを飲まないグループ(以下、コントロール群)に分け、ケール群には約8か月間ジュースを飲み続けてもらい、その後コントロール群と比較しました。
身長と体重、握力、視力、上気道感染症(=風邪症候群 以下、風邪と表記)の発症状況について比較したところ、ケール群はコントロール群と比較して、身長が伸び、体重や握力も増加していることがわかりました。
また裸眼視力が1.0未満の子どもの割合は、コントロール群よりケール群が少ない、さらに、調査期間中に風邪を発症した子どもの割合も少ないことが報告されています。 [※13]
■血糖値上昇抑制のエビデンス キューサイ(株)
21~64歳の男女で血糖値が高めの人42名を対象に、ケール青汁またはプラセボと高炭水化物食を一緒に摂取する無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験を行いました。
摂取後30分~120分の血糖値を測定したところ、ケール摂取群は食後血糖値の上昇は、プラセボを摂取した方と比較して、摂取60分後において血糖値が有意に抑制されたことを報告しています。[※14]
日本には江戸時代に伝わったとされるケールですが、日本人の嗜好に受け入れられず、品種改良で誕生した「葉牡丹」の方が観賞用として脚光を浴びました。
一方「青汁」は、医学博士の遠藤仁郎氏によって1943年に開発されたのが最初とされ、命名は博士の夫人によるものだったとされます。
さらに1945年、戦後の食糧難に栄養補給をする方法を考えた結果、当時倉敷中央病院に赴任した遠藤博士が、病院給食に青汁を採用しました。
さらに1954年にはケールの青汁が誕生、「遠藤青汁」として小学校の給食などにも採用され「ケールの青汁」が国内で定着していくようになります。
遠藤博士は
「青汁はケールを材料とするのが最適。青汁は本来自分でつくって飲むもの。できない場合は、信頼のおける市販青汁(生青汁、乾燥青汁)を利用。材料は安全な農薬・化学肥料未使用のもの。青汁は薬でもサプリメントでもない、野菜そのもの。野菜を大量に食べるための一方便として考えられたもの。
青汁は豊富に含まれているビタミンやミネラル、微量元素、植物繊維などにより、栄養のバランスを改善して、ヒトが本来持っている自然の力(健康増進・病気治癒)を引き出し、健康な人は益々健康に、病気の人は治りを早くしようというもの。
飲む量は、健康な人から病気の人まで、それぞれの状態に合わせて2合~6合それ以上、多ければ多いほどよい。青汁をより有効にするには、食生活全般の改善(危険な食品をとらない、肉・魚・砂糖・精製米を減らし野菜多く)が必要。さらに、完全にするにはイモ・マメ・ナッパ・青汁食がおすすめ。
青汁は宣伝してはいけない。体験した人から自然に広がる地道な活動だけが好ましい」
(青汁 遠藤仁郎博士 青汁の創始者より引用・抜粋)[※15]
とケール青汁開発者として、その理念を明確にしています。
戦後の食糧難や人々の栄養不良を改善するために誕生したケール青汁は、野菜不足や生活習慣病に悩まされる現代人の健康にも役立ち、今でも多くの人々から支持されているのです。
各メディアでも大活躍している恵泉女学園大学人間環境学科の藤田智教授によれば
「ケールはキャベツのように結球せず、葉の根元まで太陽の光が当たる。このため、光合成でより多くの栄養分を合成する。また、紫外線を浴びる量が増えるため、“自らの身を守る”ための抗酸化成分も多くなった」
(旬の食材ヘルシーレシピ 日経グッデイ 2016年10月7日より引用・抜粋)[※1]
とケールが栄養満点な理由について解説していいます。葉の部分全体に日光が当たるケールの独特の形こそがケールの豊富な栄養の秘密ということです。
また、健康食品・化粧品メーカーとして青汁製品も手がける(株)ファンケルの総合研究所で研究を続ける森田麻子氏は
「研究ではケールのカルシウム吸収率は牛乳の約1.3倍と高かった。また、食後の血糖上昇を抑制したり、花粉症の症状を緩和する効果も確認されている」
(旬の食材ヘルシーレシピ 日経グッデイ 2016年10月7日より引用・抜粋) [※1]
と、ケールの機能性の魅力について解説しています。
「食べやすく、飲みやすい」野菜に改良されたケールがいくつも開発され、ケールを販売するスーパーや企業も増えています。ケールの持つパワーと魅力にこれからますます注目が集まりそうです。
ケールにはたんぱく質、脂質、炭水化物、カルシウム、りん、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、ビタミンK、食物繊維、GABAなどが豊富に含まれます。なかでも多く含まれているのが、抗酸化物質、カルシウム、食物繊維です。
他にも以下のような成分が含まれます。
青汁として飲むケールで、ケールの苦味や青臭さがそのまま残っているタイプのものはりんごジュースや豆乳と割ると飲みやすくなります。青汁、バナナ、豆乳のスムージーなどもおいしく飲むことができるでしょう。
パウダータイプの青汁は飲みやすくなっているものがほとんどです。機能性表示食品として許可されている青汁には、商品ごとに目的に応じて、青汁(ケールとは限らない)に難消化性デデキストリンなどの機能性成分を添加しているものもあります。
例えば
などが人気のようです。機能性関与成分の効果だけでなく、ケールとの相乗効果も期待できそうです。
食品として摂取するケールについてはおそらく安全とされています。ケールの青汁も食経験が長く、大きな健康被害は報告されていません。
サプリメントなどの場合はデータが不足しているため、必ず製品ごとに明記されている摂取目安量を守って利用するようにしましょう。健康被害については、青汁の摂取で便秘や軟便などの体調不良が起こった、という報告もあります。
ケールの青汁(摂取量不明)と秋ウコンを1か月継続し、肝機能障害を起こした事例も報告されています。
また解熱剤や感冒薬で使用されているアセトアミノフェンや抗不安薬として用いられるオキサゼパムとの相互作用が指摘されています。
ただし医薬品との相互作用については、まだその作用機序が解明されていないものがほとんどです。[※2]