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ハイドロキノンの効果とその作用

ハイドロキノンは美白成分として美容業界などで注目を集めている成分です。日本での認知度はまだそれほど高くありませんが、海外では昔から身近な美白化粧品として浸透してきました。「お肌の漂白剤」とも呼ばれ、強力な美白効果が知られる反面、副作用に対する懸念もあります。使用する際には十分注意し、正しく使うことが必要です。

飯田 耕平

薬剤師 飯田 耕平

2007年 日本薬科大学医療薬学科卒業。アロマアーチスト。 東京都北区を中心に、より良い地域医療を目指して日々奔走しております。 医薬品や漢方、栄養相談は勿論のこと、メディカルアロマを通じて、皆様の疾病予防、健康増進、セルフメディケーションのお手伝いが出来たらと思っています。

ハイドロキノンとはどのような成分か

ハイドロキノン(ヒドロキノン)は麦芽やいちごなどに含まれる天然に存在する成分です。美白成分として有名なアルブチンは、ハイドロキノンに糖が結合したもので、糖がついていない分、肌を白くする力(還元力)が強い[※1]と言われています。 アメリカでは美白化粧品に配合される成分として広く浸透しています。日本では2001年に行われた化粧品成分の規制緩和で、化粧品への配合が認められました。日本での知名度はまだそれほどありませんが、高い美白効果のある成分として美容業界で注目されています。 ハイドロキノンは「お肌の漂白剤」とも呼ばれ、強力な美白効果とともに、刺激感や副作用が指摘されているという側面もあります。そのため使用する際には十分に注意し、高濃度のハイドロキノンを使いたい場合などは病院で医師の指導を受けることが望ましいでしょう。

ハイドロキノンの効果・効能

ハイドロキノンはシミの予防と、できてしまったシミを薄くする効果が期待されています。シミのほかにも、ソバカス、肝斑などの皮膚の色素沈着の予防や症状の緩和にも使用されます。 美白成分としてほかにビタミンCやプラセンタなどが有名ですが、「今あるシミを消す」効果においてはハイドロキノンが優れています。その美白成分はビタミンCの10~100倍の効果とも言われ[※2]、美容通の間でも注目を集めています。 病院でレーザー治療と併用されることも多く、シミをできにくくし、さらにできてしまったシミを薄くする治療薬として利用されています。

どのような作用があるのか

ハイドロキノンはメラニンを合成する酵素であるチロジナーゼの働きを阻害し、さらにメラニン色素をつくるメラノサイトに対して細胞毒性があります。
多くのシミは、表皮の一番深い層(基底層)周辺にメラニンと呼ばれる色素が沈着しています。この層にはメラノサイトと呼ばれるメラニンを作る細胞があります。このメラノサイトの活性を抑制し、メラニンの産生を抑制するのがハイドロキノンの働きです。また、メラノサイトの中でチロシナーゼという物質からメラニンがつくられる過程をブロックすることで、メラニン自体を減少させる働きがあります。[※3]そのため結果としてすでにあるシミを薄くしたり、シミをできにくくしたりするのです。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ハイドロキノンはシミやソバカス、肝斑など、肌の色素沈着にお悩みの方の助けになる成分です。現在シミが気になる人はもちろん、これまで紫外線を多く浴びたり不規則な生活を送ったりしてきたという方も、加齢などが原因で新陳代謝が衰え、シミが現れてくることがあります。UVカメラなどでまだ表面化していない隠れたシミを映した様子を、雑誌やテレビなどで目にしたことがある方も多いと思います。蓄積されたダメージによる肌トラブルにも、ハイドロキノンは役立ってくれます。
ハイドロキノンは2001年の化粧品成分の規制緩和により、日本でも市販の美容液などに配合されるようになりました。そのため「シミが気になるけど皮膚科や美容クリニックに通うのはハードルが高くて…」などと感じていた方でも、気軽に手に取れる化粧品で効果を試すことができます。 ただ、市販されているハイドロキノンは病院で処方されるものよりも濃度が低いため、より確かな効果を実感されたい方は、皮膚科や美容クリニックなどを受診するのがよいでしょう。

ハイドロキノンの摂取目安量・上限摂取量

ハイドロキノンは非常に強い美白作用があるとされ、使用する場合はその濃度について注意する必要があります。 日本の厚生労働省では、ハイドロキノンを2%以上化粧品に配合することは禁止しています。そのため市販の化粧品で使用できるのは濃度が2%以下のもので、刺激性は少ないですがその分効果や即効性は緩やかになります。美容クリニックや皮膚科などで処方されるハイドロキノンは4~5%と高濃度のため、効果が高くなる一方で、刺激が強いので使用する前には必ずパッチテストを行います。
医薬品の使用期間については3ヶ月が目安ですが、症状によっても異なります。また、5~6ヶ月以上の連続した使用は肌に耐久性ができて効果が薄れてしまう[※4]恐れがあります。そのため使用は期間を限定して、専門家の指導に従いましょう。
市販の商品の場合は濃度が低いので、半年以上の使用で緩やかに効果があらわれることもあります。パッケージや商品に記載されている用法や注意事項を必ず確認してください。
薬でもコスメでも、ハイドロキノンの使用時は、必ず日焼け止めを塗って、極力紫外線は避けてください。ハイドロキノンはメラニンの産生をおさえますが、メラニンは紫外線が肌細胞にあたえるダメージから守ってくれる人間の防御機能でもあるので、その状態で日焼けをすると、シミやシワなどの肌の老化を招いてしまいます。
また、ハイドロキノンは酸化しやすい成分です。開封後は冷暗所に保管し、なるべく早めに使いきる必要があります。

ハイドロキノンのエビデンス(科学的根拠)

ハイドロキノンは皮膚科医によって50年以上処方されている成分であり、医師による治療効果については多くの臨床例が報告されています。[※5]
国内の製薬メーカーの臨床試験では、30~50代の女性を対象にハイドロキノン製品を12週間使用したところ、肝斑では34%、色素沈着では54%に明らかな改善効果が認められたとの結果が出ました。[※6]このデータは日本美容皮膚科学会でも公表されています。

研究のきっかけ(歴史・背景)

ハイドロキノンは、昔から写真の現像の還元剤などとして使われていましたが、現像していた人の肌が白くなったことから美白成分が研究されたと言われています。 アメリカではシミ治療や美容化粧品に配合される成分として古くから使用されていきましたが、日本では化粧品に使用することは禁止され、医師の管理下でのみ使用が許可されてきました。 この背景には「ハイドロキノンベンジルエーテル」という成分による、白斑(肌の一部が真っ白になる肌トラブル)の多発があります。そこで厚生労働省がハイドロキノンベンジルエーテルを化粧品へ配合することを規制し、同時に構造が似ているということでハイドロキノンにも規制がかけられていたのです。しかし、ハイドロキノンとハイドロキノンベンジルエーテルは全く別の成分であり、ハイドロキノンの作用は穏やかです。[※2] 2001年の薬事法の規制緩和で化粧品への使用が許可され、以来少しずつハイドロキノンの日本での認知度も高まっています。

専門家の見解(監修者のコメント)

肝斑や色素沈着の治療における多くの文献でも、ハイドロキノンが有効であるという実証がされており、

「副作用はあるものの、上手な使い方を習得すれば、他の治療では得られない非常に有用な治療手段となる。炎症に伴う色素沈着の多い東洋人における有用性は高い」(東京大学形成外科 吉村浩太郎 「ハイドロキノン・トレチノイン治療の現状 」から引用)[※7]
という見解が、現在の日本の医療業界では一般的です。 ただし上記は病院での治療におけるハイドロキノンの使用についてであり、レーザー治療やトレチノインといった他の医薬品を併用しているケースが多くあります。 市販されているハイドロキノンクリームなどの化粧品に関しては、個々の製品によってその効果や効能は異なります。

ハイドロキノンを多く含む食べ物

ハイドロキノン自体は天然の成分で、コーヒーや紅茶、イチゴ類や麦芽などの食品に含まれていますが、普通に食品から摂取するハイドロキノンでの効果については、参考になるような検証結果はありません。ハイドロキノンは薬や化粧品などで外用することが有効です。 食品から美肌効果を期待する場合は、ハイドロキノンよりもビタミンCやビタミンEなどの抗酸化作用に優れた成分が含まれる食品を意識して摂取するのが望ましいでしょう。

相乗効果を発揮する成分

ハイドロキノンとよく併用される成分に、「トレチノイン」があります。トレチノインは、非常に強力なターンオーバーを促す成分です。トレチノインですでにあるメラニンの排出を促進し、ハイドロキノンで新たなメラニンの産生を抑制することが、基本的な考え方です。この二つを用いた臨床例はすでにあり、多くの病院で取り入れられています。[※5]ただしトレチノインは日本国内での販売が認められていないので、医師による処方が必要になります。 トレチノインを併用するときには、同時に外用します。 “白斑”を避けるためにも乳液のように顔全体に塗ることは避けましょう。症状により塗り方は異なりますが、綿棒にごく少量をとり、シミの気になる部分にピンポイント使用するのが一般的です。洗顔直後は角質層が水分を多く含んでいるため薬剤の浸透性がよくなり、効き過ぎることがあります。そのため、洗顔後20分程度待ってから塗ることが推奨されています。[※3]

ハイドロキノンに副作用はあるのか

ハイドロキノンは現在ヨーロッパの多くの国で、人への使用が禁止されていますが、その理由は発がん性に対する懸念からです。
ハイドロキノンの発がん性リスクについては、世界保健機関(WHO)の外部機関である国際がん研究機関(IARC)が、『グループ3(ヒトに対する発がん性が分類できない)』に分類しています。[※8]
ハイドロキノンが分類されているグループ3は、発がん性において2番目に安全なグループです。このグループにはお茶やコーヒーなども含まれています。お茶やコーヒーと同等と考えると、現時点において、ハイドロキノンは比較的安全な成分と評価されていると言えそうです。 一方、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、動物実験によって発がん性リスクが懸念されたとして、アメリカ国内での市販薬への配合を禁止し、専門医薬としての使用を提案[※9]た。現在は日本と同様に、市販される化粧品への配合濃度は2%以下、4%以上は処方箋が必要とされています。 環境省のホームページでは、摂取した場合の「ヒトに対する発がん性の有無については判断できない」」[※10]と記載があり、 ハイドロキノンの発がん性の有無については、十分な研究結果が得られていないようです。ただし「1.5 mg/kg/day が信頼性のある最も低用量の知見であると判断」[※10]ていて、これは体重1kgあたり一日1.5mg、つまり体重50kgの人であれば一日に75mgのハイドロキノンを口から摂取しても発がんの心配はないということです。通常肌につける量でそこまで体内に摂取されるのは考えにくいことですので、適切に使用すれば、今のところ発がん性をそこまで恐れる必要はなさそうです。
ほかに一般的な副作用としてあげられるのは、赤みやかぶれといった症状です。赤みや刺激が強い場合は使用を中止し、医師に相談してください。