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ヒアルロン酸の効果とその作用

ヒアルロン酸は、人の目や皮膚、関節、細胞と細胞の間に多く存在しており、水分の保持やクッションのように細胞を守る役割を持っています。加齢とともに減少していくため、シワやたるみ、膝関節症などを引き起こしてしまいます。最近ではサプリメントなどでもヒアルロン酸入りの商品が販売されるようになりました。

ヒアルロン酸とはどのような成分か

優れた保水機能をもつムコ多糖類の一種で、眼科や美容外科などの外科治療でも利用される成分です。

皮膚のシワやたるみを防ぐ美容と抗加齢目的で利用されています。ヒアルロン酸の保水性は高く、その保水能力は1gあたり6000mlもの水を保持することができ、非常に高い粘性と弾性が特徴です。

そのため、皮膚では肌の乾燥の防止、関節軟骨や関節液ではクッションとしての緩衝作用、目では硝子体の緩衝などの役割を担っています。[※1]

また医師が処方する医薬品として、変形性膝関節症の軟骨保護、白内障手術の補助薬、角結膜上皮障害の治療などに用いられています。また化粧品では保湿成分として利用され、サプリメントにも美肌成分として配合されています。[※2]

ヒアルロン酸の効果・効能

■シワやたるみの予防

紫外線による酸化ストレスによりヒアルロン酸は、分解されていきます。保水性に優れたヒアルロン酸は、真皮に膨れる成分で、水分を保ちます。減少すれば、加齢に伴う変化と同様、肌の老化が進みます。[※3]

ヒアルロン酸を使用することで皮膚に水分を多く含み、肌の乾燥を防ぎ、ハリを与える役割を担っていきます。[※4]

■関節軟骨の機能維持

加齢とともに、関節の中で潤滑油としてははたらくヒアルロン酸が減少することで、膝に違和感を覚える、階段の昇降時や歩き始めるときに関節に痛みが出るなどの症状が出てきます。

ヒアルロン酸を利用することで、関節の動きを良くし、クッションのように衝撃を吸収する働きがあります。関節などの痛みなどは、早めに治療することで、関節軟骨の変性を抑えていくことができます。
ヒアルロン酸は、医薬品としての働きもあります。ヒアルロン酸を用いているものとして、関節機能改善剤があります。[※10]関節内投与(注射)に関しては、膝関節と肩関節のみ保険(診療報酬)で公的に認められています。 これは科学的データに基づき有効性が認められているものです。
しかしサプリメントなどの経口摂取に関しては、現在のところ相反したデータが出されています。ただ有効と結論づけたデータも自覚的に痛みが良くなったというものであって、例えば、X線(レントゲン)検査などで改善したというような科学的データではありません。[※5]

■眼の潤いを保つ役割

エアコンを長時間使うなど、乾燥した部屋に長時間滞在する、夜更かしや睡眠不足で生理機能が乱れる、などの生活習慣においても目が乾きやすくなります。

またパソコンを長時間使っていて、まばたきの回数が減っているときにも、目が疲れや、目が乾いた感じがします。このような症状がいくつかあるとドライアイになりやすくなります。

ドライアイの治療の基本は点眼です。 ヒアルロン酸が配合されている点眼液は、ドライアイの治療に効果的です。

ヒアルロン酸には粘りがあり、水分を維持する効果があるため、単に水分を 補うだけではなく、涙や点眼液を長く目の表面に保持します。 その上、ヒアルロン酸には目の表面の傷を修復する効果もあります。[※6]

医薬品として、ヒアルロン酸を用いている眼科補助剤は、白内障手術や全層角膜移植術などに使用されています。粘弾性があり、傷つきやすい細胞を保護する働きがあります。[※10]

どのような作用があるのか

ヒアルロン酸は、細胞と細胞の間に多く存在し、水分の保持やクッションのような役割で細胞を守っています。1gで6リットルもの水分を保ち、優れた保水性を持つ成分です。

皮膚では真皮に多く含まれ、水分を保持しています。皮膚は、外側から、表皮、真皮、皮下組織の3つの組織に大きく別れますが、真皮は、表皮の約10倍厚さがあります。この真皮にはヒアルロン酸が多く含まれ、皮膚の表面を保護するはたらきなどをしています。

ヒアルロン酸が少なくなるとと肌のハリがなく、皮膚の表面も乾燥していきます。[※7]

皮膚のヒアルロン酸濃度は、加齢とともに減っていき、40歳後半から減少すると報告されています。[※15]

また目をかたちづくっている「硝子体」と呼ばれる部分は、ほとんどがヒアルロン酸からできています。また涙の成分にもヒアルロン酸は含まれています。

関節は軟骨・骨・関節液などで構成されていて、ヒアルロン酸は軟骨と関節液に含まれています。

ヒアルロン酸は、その粘性によって衝撃に対するクッションとなり、関節の動きをスムーズにする潤滑剤として、軟骨がすり減るのを防ぐ役割を果たします

どのような人が摂るべきか、使うべきか

加齢にともない、歩行時や階段の上り下りの時の膝の痛みがある人、肌のハリやシワなど美容が気になる人に向いています

また仕事などでパソコンやスマートフォンを長時間利用するため、目を酷使してしまう人、エアコンの風などで目が乾燥してしまうなどなんとなく目に不快感がある人はドライアイになりやすいです。

ヒアルロン酸が配合されている点眼液はドライアイの治療に効果的です。治療の場合は眼科を受診し、医師に処方してもらいましょう。[※8]

ヒアルロン酸の摂取目安量・上限摂取量

肌へ塗布するものとしては、特に決まった摂取量はありません。一般に、短期間では効果が期待できないので、継続して利用していきます。

また科学的な研究データをもとに消費者庁に届け出を行った機能性表示食品によると、高純度に精製されたヒアルロン酸Naを120㎎/日摂取すると、ヒアルロン酸Naは肌の水分保持に役立ち、乾燥を緩和する機能があることが報告されています。

JHFAマークの規格基準では、動物による安全性試験成績、ひと経口摂取試験成績を勘案し、ヒアルロン酸の1日の摂取目安量(上限)を240mgとしました。[※16]

サプリメントに関しては科学的データとして有効性が認められていないものもありますが、全く効かないというデータもないのです。あるいは個人差があるということも可能性としてはあります。[※9]

既に飲んでいるかたの場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。

ヒアルロン酸のエビデンス(科学的根拠)

膝関節症に対して、ヒアルロン酸を使って行われた治療73例を調べたところ、約40〜50%において、膝関節症の疼痛(とうつう)が改善することが明らかになりました。[※17]

0.3%濃度のヒアルロン酸を使用することで、ヒト結膜上皮細胞においての活性酸素が原因とされるDNA傷害が緩和されています。[※18]

キユーピーには肌の乾燥が気になる人を対象にした、「食べるヒアルロン酸」の、肌への保水機能に関する代表的な試験データがあります。

37歳~59歳の乾燥肌で悩んでいる39名を、ヒアルロン酸Na 120mgを摂取する群(19名)またはプラセボ群(20名)に分け、1日1回朝食後に摂取する試験を6週間行いました。

ヒアルロン酸Naを摂取した群では、プラセボ群と比べて皮膚水分値の変化量が摂取3週間後で有意な高値(p<0.05)、6週間後で高値傾向(p<0.1)となっています。

「食べるヒアルロン酸」の肌保湿メカニズムについての考察は、これまでの研究報告から、ヒアルロン酸は、摂取後、腸内細菌によって低分子化されることがわかっています。

ヒアルロン酸が低分子化されることで、腸管から吸収され、血中に移行し、皮膚に届くことが報告されています。皮膚に届いたヒアルロン酸は、皮膚の繊維芽細胞でのヒアルロン酸合成を促進し、皮膚中のヒアルロン酸量が上がると考えられています

そのほか、変形性膝関節症患者を対象にした試験も実施しています。

ヒアルロン酸の摂取による変形性膝関節症患者の症状の軽減について、キユーピーは変形性膝関節症患者を対象にした試験で、ヒアルロン酸の摂取により症状が軽減することを示唆する結果を得ています。

試験の概要は、変形性膝関節症の米国人25名を13名のヒアルロン酸摂取群と12名の対照群に分け、二重盲検試験を行ました。ヒアルロン酸摂取群は、ヒアルロン酸(キユーピー(株)製「ヒアベスト®(J)」)を1日200mg、対照群はコーンスターチを8週間にわたり摂取しました。

摂取開始前、開始後4週間、開始後8週間の3回、WOMAC法による評価を行い、両群の評価結果を比較しました。

その結果、摂取開始後8週間で、ヒアルロン酸群と対照群との間に有意な差が認められました。血トンとしては、ヒアルロン酸200mg/日を8週間にわたって摂取することにより、変形性膝関節症による痛みが軽減することが示唆されました。[※7]

研究のきっかけ(歴史・背景)

ヒアルロン酸の名前の由来は1934年に米国コロンビア大学教授のカールマイヤー博士らによって、牛の目の硝子体から初めて、発見されました。

ギリシャ語で硝子体を意味するHyaloid(ヒアロイド)、さらに、この物質がUronic acid(ウロン酸)という物質を多く含むことから、「Hyaluronic acid(ヒアルロン酸)」と命名されました。

その後、1986年には多糖体の国際命名法により「Hyaluronan(ヒアルロナン)」という言葉も導入されています。[※10]

1942年には、犬の関節の治癒、1958年には、網膜剥離術後の硝子体置換手術に対して、有効であるという報告があります。[※15]

ヒアルロン酸が関節注射剤として開発されたきっかけには、競走馬が関係しています。

関節炎を患い、廃馬寸前だった競走馬の関節にヒアルロン酸を注射したところ、馬はレースに出場でき、勝利を収めました。人への応用のきっかけになったとされています。 [※10]

専門家の見解(監修者のコメント)

ヒアルロン酸研究所 代表取締役社長・浅利 晃氏によると、これまでの30年にわたるヒアルロン酸の研究により、ヒアルロン酸の多彩な特性が、様々な疾患に対し、を発揮することがわかってきました。

「最先端の手法を用い、老化に伴う疾患や卵子老化による不妊の治療、活力ある毎日に役立つ健康関連製品の研究開発等々、明るい健康長寿社会に広く貢献して参ります」(引用 株式会社ヒアルロン酸研究所)[※11]

と述べています。これからの私たちの健康維持、増進や美容などにも期待ができます。

ヒアルロン酸を多く含む食べ物

ムコ多糖類 、鶏の登坂、豚足、サメの軟骨、イカ墨、うなぎ、どじょう、すっぽん、魚のにこごり、やまいも、納豆、おくらなどネバネバした野菜に含まれています。[※15]

本来は食べ物から摂取することが良いですが、食べ物に含まれているヒアルロン酸は分子が大きいため、体内に取り入れてもなかなか吸収されにくいという欠点があります。[※12]

相乗効果を発揮する成分

ヒアルロン酸が入っている化粧品では、レチノール(ビタミンA)、ビタミンCを合わせることで、肌の代謝を助け、色調や肌質を整え、抗酸化作用、メラニン形成を最小限に留める効果が期待できます。

またコラーゲンやセラミドと組み合わせることで、保湿作用、高い保湿作用、など相乗効果があります。[※13]

ヒアルロン酸に副作用はあるのか

体内で作られる物質のため、安全性の高い成分とされ、問題となる健康被害や副作用は知られていません。ほかのサプリメントや医薬品との相互作用は報告されておらず、併用は問題ないと考えられています。

食品添加物ヒアルロン酸については、厚生労働省生活衛生局食品化学課監修の「既存天然添加物の安全性評価に関する調査研究―平成8年度厚生科学研究報告書―」において安全性試験成績の概要が記載されています。[※14]