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グルコサミンの効果とその作用

グルコサミンの効果・効能について学ぶサイトです。変形性関節症や関節炎に効くとされるグルコサミンですが、有効性を疑問視する声もあります。肯定的・懐疑的見解双方について説明します。また、グルコサミンには3種類あることや、服用の際注意すべき点など、グルコサミンを飲む前に知っておきたい情報を掲載しています。

グルコサミンとはどのような成分か

グルコサミンは、グルコースにアミノ基が結合したアミノ糖の一種で、グリコサミノグリカン(ムコ多糖)の構成成分です。

グリコサミノグリカンはヒアルロン酸のもととなり、軟骨や爪、皮膚やじん帯などに存在し、組織を柔軟にし、水分を保つ働きがあります。

グルコサミンは人の体内でも生成されますが、中高年になるにつれて減っていきます。グルコサミンの摂取により、変形性関節症や関節炎の症状を緩和する効果があるとされています。[※1]

グルコサミンが多く含まれている食品としては、ヤマノイモのネバネバ成分、カニ・エビなどの甲殻類の外皮のキチン質などが挙げられます。[※2]

グルコサミンの種類

一般的に「グルコサミン」と呼ばれている成分は、正確には「グルコサミン塩酸塩」「グルコサミン硫酸塩」「N-アセチルグルコサミン」の3種類に分かれます。[※3]

甲殻類のキチン質に含まれるグルコサミンは、そのままでは体内に吸収されにくい性質があります。そのため、塩酸または硫酸で加水分解し、グルコサミンを抽出してサプリメントとして服用するのが一般的です。

キチン質を塩酸で分解したものを「グルコサミン塩酸塩」、硫酸で分解したものを「グルコサミン硫酸塩」といいます。このうち、グルコサミン硫酸塩は医薬品成分です。[※3]

グルコサミン硫酸塩とグルコサミン塩酸塩は、どちらも体内でグルコサミンとして働きますが、人体への作用機序が異なることが、データから示唆されています。[※4]

また、「N-アセチルグルコサミン」は、もともと人体に存在するグルコサミンの形で、牛乳などに存在しています。近年では、市販のサプリメンにN-アセチルグルコサミンが利用されています。

■どのグルコサミンが一番効果的か

国立スポーツ科学センターのサイトでは、グルコサミン硫酸のサプリメントが変形性関節症に有効であるとしています。

その上で、「グルコサミン塩酸塩やN‐アセチルグルコサミンのような別の形では、グルコサミン硫酸塩と同様の効果は認められないと考えられている」[※5]としています。

しかし、グルコサミン塩酸塩はグルコサミン硫酸塩に比べて低分子であり、体内に吸収されやすいとする見解もあります。[※6]

また、東北大学大学院農学研究科の齋藤忠夫教授によれば、N-アセチルグルコサミンは、グルコサミン塩酸塩やグルコサミン硫酸塩と比べ、約3倍も効率よく体内に吸収されるとも述べています。[※7]

明治大学科学コミュニケーション研究所の「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」によれば、グルコサミン硫酸塩とグルコサミン塩酸塩は理論上の明確な区別がないまま研究されているとされてます。[※4]

結局、さまざまな説が入り乱れている状況のようです。それぞれの種類の効果に着目した、より一層の研究が待たれます。

グルコサミンの効果・効能

グルコサミンの効果や効能に関しては、以下のものが挙げられます。

■変形性関節症・関節炎の緩和

グルコサミンの経口投与により、変形関節症や関節炎に伴う疼痛を減らし、関節の可動性を改善すると報告されています。[※1]

■がんの症状改善

グルコサミンには、がんによる食欲不振を改善する効果があり、がんによる急激な痩せや、衰弱を食い止める効果があるとされています。[※2]

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

■変形性関節症・関節炎の緩和

関節軟骨は、運動や歩行をすることにより、生理的・物理的なストレスに常にさらされています。

ストレスにより、関節軟骨の主成分であるⅡ型コラーゲンが分解すると、関節軟骨が損傷し、痛みや腫れが起こります。これが変形性関節症と呼ばれる病気です。

関節軟骨を維持するためには、Ⅱ型コラーゲンの分解を抑制し、軟骨代謝を維持することと、関節を滑らかに動かすための成分であるヒアルロン酸の産生促進が大切です。

ファイン(株)の研究によれば、グルコサミンは、経口投与後、速やかに消化管から吸収され、肝臓や腎臓へ分布する傾向が、ラット、イヌ、ヒトいずれの実験においても認められています。[※8]

グルコサミンの大腿骨軟骨への分布は投与後24 時間持続すると考えられています。

この研究は単回での投与実験でしたが、反復・継続的に投与することによって、グルコサミンは軟骨にも移行すると考えられます。

グルコサミンはヒアルロン酸の原料となり、Ⅱ型コラーゲンの分解を抑制します。

■がんの症状改善

がん細胞からは、トキソホルモンというがん毒素が排出されます。この毒素により食欲不振となり、がん患者は急激に痩せていきます。

グルコサミンには、トキソホルモンの働きを阻害し、がんによる急激な痩せや衰弱を阻止する効果があると報告されています。[※2]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

中高年以上の方で関節の痛みや変形が気になる人、関節を柔軟に保ちたい人に適しています。

また、スポーツで関節を動かす機会が多く、軟骨の消耗が激しい人にも向いています。

がんによる急激に痩せや、食欲不振を感じられている方にも効果が期待できます。しかし、服用の際は事前に医師や薬剤師に相談してください。[※1]

グルコサミンの摂取目安量・上限摂取量

(株)医学と看護社「ヘルシーエイジングに役立つサプリメント・健康食品―科学的根拠に基づいた適正使用のための情報」によれば、グルコサミンの用法・用量は1日あたり1,000mgから1,500mg程度とされています。[※1]

臨床試験での投与期間は4週間から3年間となっています。

グルコサミンのエビデンス(科学的根拠)

ファイン(株)は、膝軟骨を損傷したウサギにグルコサミン塩酸塩を1日1g、 3 週間経口投与する実験を行いました。その結果、対照のプラセボ投与群に比べ、軟骨の損傷部が顕著に回復することが、肉眼的、病理組織学的に確認されました。[※8]

また、人間についても、臨床試験において、変形性膝関節症などの関節障害を持つ患者に対し、グルコサミン硫酸塩またはグルコサミン塩酸塩の服用により、症状の改善効果が報告されてきました。

先程紹介した「ヘルシーエイジングに役立つサプリメント・健康食品―科学的根拠に基づいた適正使用のための情報」においても、20報のランダム化比較試験を対象にしたコクラン・レビューにおいて、合計2,570名の被験者について、グルコサミンの効果が示唆されたとしています。[※1]

しかし、一方でコクラン・レビューのサイトによれば、グルコサミンは変形関節症の痛みの改善や、身体機能を改善することがあると認める一方で、懐疑的な見解も示されています。[※9]

同サイトによれば、質の高い研究による、グルコサミンを服用した場合の6ヶ月後の評価として、痛みや関節機能の改善は、偽薬と同程度であったとされています。

もっとも、このサイトにおいても、特定の会社のサプリメントでは、偽薬よりも改善効果が見られたとの見解や、別の尺度では改善効果が見られたとする見解も掲載されています。

グルコサミンの有効性については、さらなる研究が待たれます。

研究のきっかけ(歴史・背景)

グルコサミンは、1876年にGeorg Ledderhoseによって、初めて調製されました。グルコサミンの研究がヨーロッパで盛んになったのは1960年ごろで、欧米で広く効果が認められてきました。

日本では1990年代後半ごろから広まり、最近では食品メーカーにとどまらず、製薬会社もグルコサミンのサプリメントを販売しています。売上は、2013年の調査で497億円にも達しています。[※10]

専門家の見解(監修者のコメント)

N-アセチルグルコサミンの効果について、東北大学大学院農学研究科の齋藤忠夫教授は、以下のように述べています。

「N-アセチルグルコサミンはアミノ糖の一種で、自然界のいろいろな所に分布しています。人間の体の中にも存在する重要な糖質成分であり、関節部分の関節液や軟骨、そして皮膚、目、脳などに多く含まれており、細胞と細胞をつなぐ成分にもなっています。

N-アセチルグルコサミンにはさまざまな生理機能がありますが、とくに注目されているのが「変形性ひざ関節症」の痛みを和らげる作用です。

N-アセチルグルコサミンは関節液のヒアルロン酸の成分でもあり、軟骨の摩耗を防ぎ、円滑に関節を動かす重要な成分です。

通常は年を取ると軟骨や関節液を作り出す能力が低下し、生合成のスピードが分解に追いつかなくなってしまうのです。

それをカバーするには食品などからN-アセチルグルコサミンを積極的に摂取することが望ましいですね。

身近な食品でN-アセチルグルコサミンを含んでいるのは牛乳ですが、100ml当たりわずか11mgと微量であり、一日に摂取目安である500mgを牛乳だけで摂取するには無理があります。ですから補助食品(サプリメント)という形で摂るのが一番の近道です。」[※7]

グルコサミンを摂取するには、サプリメントの服用が最も効果的であることがわかります。

グルコサミンを多く含む食べ物

グルコサミンは、先述のように甲殻類や牛乳などに含まれていますが、身体の中に吸収できる量が少ないため、サプリメントで摂るのがもっとも効果的です。

注意点としては、サプリメントの多くがカニやエビなどの甲殻類を原料としています。甲殻類アレルギーの人の場合は、グルコサミンが含まれているヤマノイモを積極的に食べるとよいでしょう。[※2]

相乗効果を発揮する成分

変形性関節症に対しては、グルコサミンとコンドロイチンを併用することで効果が高まるとされています。そのため、多くのサプリメントではこの二つの成分がともに含まれているようです。

その他には、筋骨草と呼ばれるシソ科の多年草のエキスと、コンドロイチンを併用することで、相乗効果があることが期待されています。

アサヒフードアンドヘルスケア(株)による、ウサギ12匹を用いた実験では、グルコサミンと筋骨草エキスが相補的に軟骨の損傷の修復を促進し、また、土台となる軟骨下骨を修復することが示唆されました。[※11]

グルコサミンに副作用はあるのか

グルコサミンの適正使用における許容性は高いとされています。

サントリーウエルネス(株)は、グルコサミン塩酸塩、コンドロイチン硫酸、ケルセチン配糖体を配合したサプリメントを健常成人に対して14年以上販売しています。

この商品の累計出荷数量は約2,470万本に及びますが、当該商品に起因する重大な健康被害は確認されていないとしています。[※12]

先述しましたが、甲殻類アレルギーの方は、甲殻類由来のサプリメントの飲用を避けたほうがよいでしょう。

注意すべき相互作用

■ワルファリン

グルコサミンには、血栓塞栓症の治療・予防に用いられる医薬品「ワルファリン」との相互作用に関して症例が報告されています。[※12]

そのメカニズムと用量は不明で、リスクは低いと考えられています。しかし、ワルファリンを処方されている方は、必ず事前に医師・薬剤師に相談して下さい。

■その他の医薬品

それ以外に医薬品との相互作用の報告はありません。しかし、グルコサミンの働きから推測して、理論的に「糖尿病治療薬」「抗がん剤」との併用は慎重に行うべきと言われています。[※1]

これらの医薬品を投与されている方は、必ず前もって医師や薬剤師に、飲み合わせについてご相談下さい。