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霊芝の効果とその作用

霊芝は、古くから不老長寿の薬として使われてきたマンネンタケ科のキノコです。中国では、長期間飲んでも副作用がなく、健康になれる薬として使われ、日本でも民間薬として広まりました。近年では、がんや生活習慣病の予防効果が期待され、注目されています。そんな霊芝の効果効能や作用、歴史、研究データや副作用についてまとめました。

霊芝(レイシ)とは

霊芝は、別名万年茸(マンネンタケ)や霊芝草(レイシソウ)、ロッカクレイシと呼ばれる薬用キノコです。苦味があるため、食用ではなく煎じ薬や薬用酒として飲まれ、健康管理に役立てられてきた長い歴史を持っています。

中国では2,000年以上前から生薬として飲まれてきました。中国の薬物に関する古書「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」や「本草綱目(ほんぞうこうもく)」に記載されている霊芝は、赤芝・青芝・白芝・黄芝・黒芝・紫芝の6種類がありますが、現在では赤芝か紫芝が使われることが多いようです。

毎日飲み続けることで健康になり、不老長寿の効果があるとして古くから用いられてきた霊芝。現在では、霊芝に含まれる多糖類の一種であるβ-グルカンに、免疫を活性化する作用や抗がん作用があることがわかってきており、さらに霊芝の効能に関するさまざまな研究が進められています。

霊芝の効果・効能

霊芝には、以下のような効果効能があるとされています。

■免疫力を高める

霊芝に含まれるβ-グルカンという成分が、免疫機能を高めると考えられています。

■がんの予防

免疫力が高まることで、がん予防やがん細胞の増殖を抑制する効果が期待できます。

■生活習慣病の予防

血液をサラサラしたり、コレステロールを下げたりする効果によって、生活習慣病の予防や改善が期待できます。

■高血圧・低血圧の改善

血圧を安定させ、最高血圧(心臓が収縮した時の血圧)と最低血圧(心臓が拡張した時の血圧)の両方を改善するはたらきがあります。

■神経のはたらきを整える

神経のはたらきを正常にし、不眠や疲労感、イライラ、めまいなどの症状を改善する効果が期待できます。

■鎮痛効果

霊芝の成分が神経の興奮を抑えることで、神経痛を和らげます。

■アレルギー症状の緩和

アレルギー反応のもととなるヒスタミンのはたらきを抑える作用があり、アレルギー症状(気管支ぜんそくやアレルギー皮膚炎など)を緩和するのに役立ちます。

■便秘の解消

腸内細菌のバランスを整えることで腸のはたらきを良くし、便秘の解消に役立ちます。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

霊芝に含まれる多糖類の一種β-グルカンには、免疫力を高める効果が示唆されています。また、β-グルカンは食物繊維と同じはたらきを持つともいわれています。

β-グルカンが体内に入ると、小腸内で吸収されます。吸収されたβ-グルカンは免疫細胞に直接はたらきかけ、免疫機能を高めるサポートをします。

また、霊芝には含まれるトリテルペンという成分には、細菌やウィルスの感染を防ぎ、腸内の悪玉菌を減らし、善玉菌を増やすはたらきがあります。

これらの成分の相乗効果によって、がんや生活習慣病の予防、アレルギー症状の改善などさまざまな効果が期待できるのです。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

霊芝は、次のような人におすすめです。

  • 生活習慣病が気になる人
  • アレルギー症状を和らげたい人
  • 便通を整えたい人
  • 質の良い睡眠をとりたい人
  • 風邪をひきやすい人

霊芝の摂取目安量・上限摂取量

霊芝は、種類や栽培地、栽培方法によって含有成分に違いがあるため、明確な摂取目安量や上限量は定められていません。

サプリメントやパウダー、お茶、生薬、第三類医薬品などさまざまな形で販売されているので、その製品に記載されている用量・用法を守って利用してください。

霊芝のエビデンス(科学的根拠)

中国にある済南大学のQu Lらは、霊芝が前立腺がん細胞のアポトーシス(細胞死)に効果を発揮するかを調べました。実験ではヒト前立腺がんのがん細胞を培養し、濃度の違う霊芝エキス(0.1mg・0.5mg・1mg・2mg・5mgの5種類)で処理しています。

その結果、0.5mg以上の濃度の霊芝エキスで処理した前立腺がんの培養液で、がん細胞のはたらきが抑制されたことが確認されています。この霊芝エキスはトリテルペン(炭化水素)という物質をメインに抽出したものだったため、霊芝の抗がん作用はトリテルペンによるものと結論付けられました。[※1]

このことから、トリテルペンを含む0.5mg濃度以上の霊芝エキスには、がん細胞のはたらきを抑制する効果が示唆されています。
また、中国にあるウェールズ王子病院のChu TTらは、血圧または血中コレステロール値が高めの26名(成人)を対象に、霊芝抽出物を投与するグループとそうでないグループに分けて比較試験を行いました。

結果、霊芝抽出物を摂取しなかったグループと比べて、善玉コレステロールが増え、中性脂肪値が減少しました。[※2]このことから、霊芝には血流の改善や血圧の低下といった効果があり、生活習慣病の予防につながるとしています。

線維筋痛症は強い痛みや硬直、不眠といった症状をともなう原因不明の疾患です。霊芝には線維筋痛症の症状を和らげる効果が期待できるとしています。 

スペインにあるエストレマドゥーラ大学スポーツ学部のCollado Mateo Dらは線維筋痛症を患っている女性患者64名を霊芝またはキャロブ(マメ科植物)を与えるグループに分け、6週間、6g/日の投与を行いました。

投与後に運動機能のテストを行い、効果を比較。結果、キャロブ摂取グループは変化がみられなかったのに対し、霊芝を摂取していたグループは、運動機能に改善がみられました。[※3]

研究のきっかけ(歴史・背景)

霊芝は古くから、薬として利用されてきました。後漢のころに書かれた中国最古の薬書「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」には6種類の霊芝についての解説が掲載されています。

神農本草経には365種類の薬が、上品・中品・下品の3つのランクに分けて掲載されています。6種類の霊芝はすべて上品にカテゴライズされていることから、古くから効果のあるキノコとして知られていたことがうかがえます。

霊芝は日本でも古くから民間療法に利用されていました。奈良時代に書かれた歴史書の「日本書紀」にも霊芝についての記述が残っています。

しかし、栽培が難しく希少価値が高かったことから、一部の権力者や上流階級の者しか霊芝を手にすることはできませんでした。

これを覆したのが日本人でした。1970年代に霊芝の栽培法を確立することに成功し、そこから霊芝は広く普及していきます。

近年の研究では、霊芝に含まれるβ-グルカンの健康効果に注目があつまっています。β-グルカンは免疫機能を高めるといわれており、がんやアレルギー症状を抑えてくれる効果が期待されているのです。

充分な実験や臨床データがまだそろっていないため、確実とは言い切れませんが、今後の研究に期待が持たれています。

専門家の見解(監修者のコメント)

静岡理工大学物質科学科の水野卓教授は、霊芝に含まれるβ-グルカンの免疫増強、抗炎症作用について、キノコの薬効成分を研究した論文の中で次のように解説しています。

「キノコから得られた抗腫瘍活性を示すβ-D-グルカンには、広く非特異免疫増強活性が知られている。霊芝から単離されたヘテロガラクタン蛋白体などにも抗炎症作用、抗アレルギー作用が認められている」

(水野卓 「キノコの薬効成分」より引用)[※4]

非特異免疫増強活性とは、免疫力全体を高めることをいいます。つまり、β-グルカンには免疫を総合的に向上させるはたらきがあるといえます。

また、水野教授は血圧を下げる作用について、以下のように述べています。

「霊芝のエキスには、降圧と昇圧の両作用を調節して血圧を正常にする成分が含まれると言われている。これは、テルペノイド成分のガノテリン酸B,D,F,H,K,S,Yのほか、ガノデラールA,ガノデロールA,Bなどがアンジオテンシン-I変換酵素の阻害剤としてはたらくためである。

また、血圧降下作用を示すペプチドグルカン、フコフルクトグルカンなどの高分子成分が報告されている」

(水野卓 「キノコの薬効成分」より引用)[※4]

アンジオテンシン-Iは血圧を上昇させるAT-1という物質を変換させる酵素です。アンジオテンシン-Iのはたらきが阻害されると、血圧が上昇しにくくなることにつながります。

このほかにも、β-グルカンには血栓を防ぐ作用や抗腫瘍作用などがあると解説しています。今後も研究が進み、霊芝の健康効果が証明されることに期待がもたれています。

霊芝を手軽に摂取するには

霊芝を日常的に取り入れるなら、サプリメントや第三類医薬品(ドラッグストアで購入できる医薬品)がいいでしょう。第三類医薬品は霊芝を煎じたものを錠剤やパウダー、カプセルなどに成形してあるため、必要量を水かぬるま湯で飲むだけで済みます。

苦味があるため、コーヒーに加工した食品も販売されています。普段からコーヒーを飲む習慣がある人は置き換えるのもいいかもしれません。

相乗効果を発揮する成分

霊芝が含んでいるβ-グルカンは多糖類(食物繊維)です。そのため、脂質の吸収を抑えてコレステロールを排出するはたらきがあり、ダイエットに良いといわれています。

余分な脂質を抑えながら、体に不足しがちなビタミンやミネラルを一緒に摂るようにするとより効果的にダイエットできるでしょう。

霊芝の副作用

霊芝には以下のような副作用が確認されています。[※5]

  • 口やのど、鼻の中の渇き
  • 胃のむかつき
  • 鼻血
  • 血便

また、霊芝の胞子を吸い込むことで、人によっては霊芝に対してアレルギーが生じる可能性があります。

注意すべき相互作用

霊芝と医薬品やサプリメント・ハーブなどの相互作用は以下のものがあります。[※5]

  • 降圧薬
  • 血圧を低下させるサプリメント・ハーブ

霊芝には血圧を低下させるはたらきがあるため、降圧薬と併用すると血圧が下がりすぎるおそれがあります。

  • 血流を良くする薬
  • 血流を良くするサプリメント・ハーブ

抗血栓薬や抗凝固薬、抗血小板薬などの血流改善薬と霊芝を併用すると、血が止まりにくくなり出血や紫斑を生じるおそれがあります。

霊芝の健康被害事例

霊芝の効果効能や安全性はまだまだデータが不足しており、絶対に安全とは言い切れません。健康被害の事例を見てみましょう。

71歳女性 霊芝含有の健康食品による薬剤性肺炎

10年間、霊芝や鉄が含まれる健康食品を摂取していた女性が、8年後にシェーグレン症候群(自己免疫疾患)と診断されました。

それから2年後、咳や発熱をともなう肺炎と肝障害を発症。飲み続けていた健康食品の摂取を中止したところ、症状が回復しました。検査の結果から、霊芝含有の健康食品によるものと判明しました。[※6]

胃がん、大腸がん患者の腫瘍マーカー上昇

中国で、胃がんまたは大腸がんの患者5名(男女56歳~77歳)が霊芝含有のサプリメントを服用したところ、がんの悪化を示す腫瘍マーカー値が急上昇しました。

サプリメントの服用を中止したところ、数値は改善したそうです。5名のうち、3名は1日1.8g、2名は摂取量不明となっています。[※7]

霊芝の煮出し汁の被害例

韓国の健康な夫婦が山で採った霊芝を煮出し、水の代わりに1日1~2Lを10日間飲んだところ、女性は6日目よりのどの痛み(咽頭炎)と発熱を訴え、男性は発熱の症状が出たため医療機関を受診。

診断の結果、汎血球減少症を発症していました。汎血球減少症は血液細胞が減る病気です。治療に加え、霊芝の摂取を中止したところ、11日後には回復しました。[※8]

参照・引用サイトおよび文献

  1. Qu L, Li S, Zhuo Y, Chen J, Qin X, Guo G. Anticancer effect of triterpenes from Ganoderma lucidum in human prostate cancer cells. Oncol Lett. 2017 Dec;14(6):7467-7472. doi: 10.3892/ol.2017.7153. Epub 2017 Oct 9. PubMed PMID:29344190; PubMed Central PMCID: PMC5755215.
  2. Chu TT, Benzie IF, Lam CW, Fok BS, Lee KK, Tomlinson B. Study of potential cardioprotective effects of Ganoderma lucidum (Lingzhi): results of a controlled human intervention trial. Br J Nutr. 2012 Apr;107(7):1017-27. doi:10.1017/S0007114511003795. Epub 2011 Aug 1. PubMed PMID: 21801467.
  3. Collado Mateo D, Pazzi F, Domínguez Muñoz FJ, Martín Martínez JP, Olivares PR, Gusi N, Adsuar JC. GANODERMA LUCIDUM IMPROVES PHYSICAL FITNESS IN WOMEN WITH FIBROMYALGIA. Nutr Hosp. 2015 Nov 1;32(5):2126-35. doi:10.3305/nh.2015.32.5.9601. PubMed PMID: 26545669.
  4. 【PDF】水野卓「キノコの薬効成分」(きのこの科学 1994年Vol.1 No.2 p53-56)
  5. 田中平三ほか『健康食品・サプリメント[成分]のすべて 2017 ナチュラルメディシン・データベース』(株式会社同文書院 2017年1月発行)
  6. 健康情報ニュース.com 「霊芝含有の健康食品で肺炎に」
  7. Yan B, Meng X, Shi J, Qin Z, Wei P, Lao L. Ganoderma lucidum spore induced CA72-4 elevation in gastrointestinal cancer: a five-case report. Integr Cancer Ther. 2014 Mar;13(2):161-6. doi:10.1177/1534735413510022. Epub 2013 Nov 25. PubMed PMID: 24282100.
  8. Yoon YH, Choi SH, Cho HJ, Moon SW, Kim JY, Lee S. Reversible pancytopenia following the consumption of decoction of Ganoderma neojaponicum Imazeki. Clin Toxicol (Phila). 2011 Feb;49(2):115-7. doi: 10.3109/15563650.2011.553834. PubMed PMID: 21370949.