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ギャバの効果とその作用

ギャバは私たちの体内に広く存在しているアミノ酸のひとつです。アミノ酸といえば、カラダの構成成分という印象が強いですが、このギャバは「神経伝達物質」として働いています。ギャバのさまざまな効果効能が解明され、いまでは健康食品にも利用されています。ここではギャバの効果効能・研究成果・摂取目安量などについて詳しく解説していきます。

ギャバとはどのような成分か

ギャバは植物や動物のなかに広く存在する天然のアミノ酸のひとつです。γ-アミノ酪酸(Gamma Amino Butyric Acid)の頭文字をとってギャバ(GABA)と呼ばれています。

ギャバの最初の発見は、1950年に哺乳類の脳から抽出に成功したことによります。ギャバは私たちヒトはもちろん、哺乳類の脳や脊髄、末梢神経に特に豊富に存在していることがわかっています。

ギャバの研究が進むにつれ、ギャバは私たちの神経中枢で働く「抑制系」の代表的な神経伝達物質であることが解明されました。

神経伝達物質とは、ニューロン(神経元)とニューロンの接合部であるシナプスの間で電気信号をおくる化学物質です。この神経伝達物質は100種類以上あるともいわれています。そのひとつが、ギャバなのです。

ギャバが神経伝達物質として、脳内の血流を促進し、酸素の供給を調整したり、脳細胞の働きを活発化させたりする役割を担っていることがわかってきました。

さらに研究が進み、日本では1961年にはギャバを主成分とした「脳代謝促進材」としての医薬品が承認されました。

1979年には消化管やそれ以外の体内組織でもギャバが神経伝達物質として働いていることが解明されます。

日本でギャバが一般に知られるようになってきたのは1984年ごろです。ギャバを含むお茶の開発がきっかけとなりました。このころから、ギャバはプロのアスリートなどに、ストレスの解消や緊張の緩和を目的として利用されるようになります。

ここ数年はストレスフルな現代社会に生きる私たちにもギャバが有効であることがよく知られるようになり、ギャバのサプリメントだけでなく、ギャバを添加した健康食品や一般食品が数多く市販されています。

ギャバは現在も医薬品に使用されていますが、厚生労働省が定める食薬区分で、2001年以降「食品の成分」として定められました。

現在もギャバのすぐれた効果には注目が集まり、多角的に研究が進められています。

[※1][※2]

ギャバの効果・効能

ギャバには以下のような効果・効能が期待されています。

■抗ストレス効果

ギャバは脳内で「抑制系」の神経伝達物質としてストレスを緩和し、ドーパミンなどの「興奮系」の神経伝達物質の過剰分泌を抑えるため、抗ストレスやリラックス効果があります。[※2]

■睡眠改善効果

ギャバは交感神経を抑制し、ストレスを緩和させ、深部体温を低下させることから、寝つきを改善させ、起床時にすっきり起きられるという睡眠改善効果があります。[※2]

■脳疲労解消効果

ギャバは主に脳内の血流を活発にし、酸素の供給を増やすことで、脳細胞の代謝を高める働きを持つため脳疲労を回復する効果があります。[※3]

■高めの血圧の効果作用

ギャバには血管の収縮を抑制する働きと腎機能を活性する働きがあり、この2つの作用によって血圧を降下させることが確認されています。[※3]

■学習行動や記憶力向上の効果

ギャバの摂取で学習行動や記憶力が向上することがラットの試験で報告されており、近年はアルツハイマー病に関する効果も期待されています。[※2]

近年では、ギャバが脳や脊髄(末梢神経)だけでなく、腎臓や肝臓などの内臓にも働きかけることが解明されつつあり、糖尿病をはじめとした生活習慣病への効果、二日酔いや美肌作用なども期待されています。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

神経伝達物質には「抑制系」と「興奮系」があり、いわゆる「うまみ」で知られるアミノ酸の「グルタミン酸」は「興奮系」として働きます。

一方、ギャバは「抑制系」として働き、興奮した神経を落ち着かせたり、ストレスを和らげたり、リラックスをさせる役割を担っています。

ギャバは興奮系物質である「グルタミン酸」から脳内で作られます。興奮性物質から抑制性物質が作られることで、興奮と抑制のバランスを保っているのです。

また、ギャバは特に脳内に多く存在していますが、脳はストレスを感じやすい場所で、そのストレスを緩和させるためにギャバは大量に消費されてしまいます。

そのためストレスフルな現代人にギャバは足りてない、と考えられるようになったのです。

さらに、ギャバは睡眠中に体内で合成されることもわかってきました。睡眠の問題を抱える人が増えていますが、そのような人はギャバが特に足りていないのではないか、と懸念されています。

ギャバは分子量が大きく脳には直接届かないため、その効果のメカニズムについては不明点も多くあります。

現時点では、ギャバが末梢神経の働きを抑制し、その作用で中枢神経にも働きかけるという考えと、血液中に溶け出したギャバが、腸管から脳の中枢神経につながる迷走神経系を刺激することで効果が発揮される、という考えが主流です。

[※1][※2]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ギャバを含む商品には特定保健用食品(トクホ)として許可されているものもあります。トクホ製品には「血圧が高めの方に適した食品」と明記されています。血圧が気になる方にはおすすめできる成分です。

また2015年からはじまった機能性表示食品制度により、これまでトクホでは表示できなかった「ストレス低減」「疲労感の軽減」「睡眠の改善」などが表示されていて、それらの悩みを抱える人にも摂るべき成分です。

ギャバはストレスや睡眠不足で大量に消費されてしまい、現代人は体内での合成だけでは足りないとされています。ストレス社会に生きる現代人には必須成分と考えられるようになってきているのです。[※4]

ギャバの摂取目安量・上限摂取量

ギャバの摂取目安量・上限摂取量については定められておらず、ギャバを含む製品を見ると1日数mg〜200mg程度を配合したものまで幅があります。さまざまな研究を総括すると1日の摂取目安量は50mg程度がよいのではないか、と考えられています。

特定保健用食品では複数のギャバ配合商品について1日の摂取目安量を10〜80mgとし、この値の摂取量であれば、安全性の問題はないと判断しています。

またギャバの効果について、1回28mg以上の摂取で、自律神経のバランスが整い、血圧が下がる、眠りに入りやすくなる、ストレスを解消するといった効果が現れるとされています。[※5]これは発芽玄米のご飯を2杯食べること(お茶碗一杯150mgで)に相当します。

機能性表示食品では、関与成分として含有量を明記する必要がありますが、商品ごとに含まれているギャバの含有量は異なっています。

現在、ギャバを機能性関与成分とする機能性表示食品は150商品を超えていますが、含有量(1日の摂取目安量)は20mg〜100mgまで幅広くなっています。[※6]

ギャバのエビデンス(科学的根拠)

ギャバの効果効能については多数のエビデンスが報告されています。

■血圧低下作用

国内の試験では、病気ではない高血圧者88名を対象に二重盲検無作為プラセボ試験を行っています。ギャバを1日80mg、12週間の摂取で、ギャバ摂取群は血圧の低下が認められています。[※7]

■脳を癒す効果

ギャバを70mg摂取すると、プラセボとして水を摂取したグループと比較して、α波が多く現れることが報告されています。α波はリラックスしている時にだけ現れる脳波です。[※8]

■免疫力低下の抑制作用

ラットの試験で、餌にギャバを混ぜたラットとプラセボのラットを比較すると、プラセボ群はストレスをかけた場合に免疫(免疫グロブリンIg濃度)が低下したのに対し、ギャバ摂取群はあまり下がらなかったことが報告されています。[※9]

■腎機能活性作用

大妻女子大学の報告では、ラットにギャバを富化した米胚芽の餌を与えたところ、尿素窒素の値が低下し、ギャバには腎機能が活性する働きがあることが示唆されています。[※10]

■抗肥満作用

同じく大妻女子大学の報告で、ギャバを富化した米胚芽で飼育したラットは、体重増加が著しく抑制されることが報告されています。ギャバには抗肥満作用があることが示唆されています。[※10]

研究のきっかけ(歴史・背景)

ギャバは、1950年に哺乳類動物の脳から抽出が成功したことをきっかけにその存在が明らかとなり、さまざまな研究が行われるようになりました。

日本では昭和59 年ごろに、当時の農水省茶業試験場(現在の独立行政法人野菜茶業研究所)に在籍していた研究者がカテキンやカフェインの変動をさせることなくグルタミン酸のすべてがギャバに変わるというお茶の製造に成功し、これが話題となりました。

さらに平成6年に、農水省が米ぬかからギャバの生成に取り組み、小麦胚芽油来のギャバの富化素材が開発され、ギャバを添加した食品の開発や、健康食品への応用が加速しました。[※11]

現在もギャバの機能性や生理活性作用の研究は盛んに行われ、新しい効果も次々に発見されています。

専門家の見解(監修者のコメント)

静岡県農業技術研究所の豊泉友康さんは、温室メロンとギャバの関係について「女性自身」のインタビューで次のように話しています。

「あまり知られていませんが、メロンにはGABA(γ-アミノ酪酸)という天然アミノ酸がかなり多く含まれていることがわかっています。GABAは植物や動物、人間の体内に存在し、興奮を静めてリラクゼーション効果をもたらしたり、血圧の上昇を抑える効果があるのです」(女性自身 GABA含有最多フルーツ「メロンの健康効果」がすごい!より引用・抜粋)[※12]

ギャバを多く含む食品としてよく取り上げられるのが、発芽玄米やトマトですが、実は生鮮食品の中ではメロンに含まれるギャバの含有量が最も多いといいます。

生鮮食品ではありませんが、発芽玄米100gにはギャバが13mg含有されているのに対し、メロンは72mg(多少の変動あり)も含まれるそうで、メロンを約1/4食べれば十分なギャバが摂取できるそうです。

ギャバを多く含む食べ物

ギャバを多く含む食べ物の代表として発芽玄米がよく取り上げられます。100gの中に10mg〜13mgのギャバが含まれ、これは白米の10倍とされます。

野菜全般に多く含まれ、トマト・アスパラガス・かぼちゃ・きゅうり、そして果物ではメロン・みかんなどに豊富に含まれます。

また近年はキノコ類や、漬物、キムチなどの発酵食品にもギャバが多く含まれていることが解明されています。

相乗効果を発揮する成分

ギャバを体内で効率的に利用するためにはビタミンB6が重要であることもわかっています。ちなみにビタミンB6を多く含む食品としては果物、漬物、マグロやカツオなどが挙げられます。

睡眠の問題をサポートすることを目的としたギャバ商品には、テアニンが含有されていることが多くあります。テアニンもリラックスや睡眠改善効果が報告される成分で、相乗効果が期待できるとされるからです。

キムチにはギャバを効率的に増やす乳酸菌が含まれていることが発見されました。[※13]この研究から、ある種の乳酸菌にはギャバを増やす作用があると考えらえれ、現在ではチョコレートや醤油、乳製品などにギャバを添加した商品が増えています。

ギャバに副作用はあるのか

通常の食事からギャバを摂取することは安全だとされており、過剰摂取による副作用なども現在のところ報告されていません。

しかしサプリメントからの摂取の場合は定められた用法を守って過剰摂取にならないようにすべきです。

また医薬品との併用については注意が必要です。降圧剤だけでなく、降圧作用を有するハーブや食品成分と併用することで、低血圧を起こす可能性が指摘されています。

医薬品を処方されている人や、食品で血圧対策をしている人は医師や薬剤師に確認しましょう。

医薬品との相互作用について、日本では、活性型ビタミンD3製剤とカルシウム拮抗薬、抗血小板薬をしようしていた男性が、ギャバ10mgを含む乳酸菌飲料を1日1本2か月摂取したところ、肝機能検査値に異常が認められ「薬物性肝臓障害」と診断された事例もあります。[※7]