かすかな酸味と上品な甘さのあるいちじくは、生の果実をそのまま食べるほか、ドライフルーツ、ジュースや菓子類の原料としても広く使用されています。
また未熟果実や茎、葉から白い乳液が出ますが、この中にはベンズアルデヒドやその誘導体が含まれており、制癌作用があると報告されています。
いちじくは、「無花果」と書きますが、花は咲いていないのではなく、実の内側に無数のつぼみをつけており、先が細くなった卵形で、赤紫色の縞模様が入った果皮で実よりも花のつぼみの部分を食べています。
いちじくの果実には、果糖やブドウ糖などの糖分、クエン酸などの有機酸、ベンズアルデヒド、食物繊維などが含まれ、緩下作用や去痰作用などが知られています。
またいちじくにはペクチンという食物繊維が豊富に含まれ、よく熟した実を1日に2~3個食べれば、腸の動きが活発になり、自然の便秘薬として便秘解消に効果があると言われています。
そのほか、いちじくは、果実のみだけでなく、葉にはクマリン類のベルガプテンやプソラレンが含まれ、血圧降下作用があるといわれ、さまざまな薬効も期待されています。
■便秘解消
果実のペクチンは、未熟なうちは不溶性ですが、熟してくると水溶性に変化します。ペクチンは、主として植物の細胞壁の中層を構成する物質で細胞同士を接着する糊のような役目をはたしています。摂取することで、腸内善玉菌である乳酸菌を増殖させ、腸の調子を整える働きがあります。
また便秘を解消し、有害物質を吸着して体外に排出することにより、大腸がんの予防にも効果があります。[※1]
■胃の健康を維持
いちじくには、たんぱく質分解酵素であるフィシンが含まれており、たんぱく質を分解して消化させやすくする働きがあります。そのため、胃の負担が緩和され、二日酔いの予防や胃もたれを防いでくれます。
さらに、いちじくは、糖質の消化にかかわるアミラーゼや脂質の消化を助けるリパーゼを含み、消化全体を助けてくれます。
■視力改善の効果
いちじくの赤色は、アントシアニンというポリフェノールの一種です。目の疾患である夜盲症の予防など、視力改善に対する作用が期待できます。[※2]
■血糖値のコントロール
食物繊維は血糖の上昇を緩やかにする働きもあるため、糖尿病の予防にもなります。
■むくみの緩和
むくみの原因の1つに塩分の摂り過ぎが挙げられます。外食や味の濃いものが多くなると体内に入ってナトリウム量が増えます。その結果、血管の中の水分量が増え、むくみを引き起こします。
カリウムには、ナトリウムを尿と一緒に排泄する働きがあるため、この働きによって血管の水分量も調節されます。
また同時に血圧が上昇するのを防ぐので、高血圧予防にも効果が期待できます。
■痔の治療
いちじくの葉を煎じた液で洗浄する方法が良く知られており、葉や枝を入浴の際に湯に加えることで、痔のほかにも神経痛や婦人病にも効果があるといわれています。入浴剤として利用されることもあります。[※2]
また白い液には皮膚を柔らかくし、なめらかにする作用もあるため、外用薬として、いぼとりや痔の治療に用いられます。ただし生の汁はかぶれやすいので注意が必要です。民間療法ですので、ひどいときには病院で治療しましょう。[※3]
現時点では、いずれの適応症に対しても、いちじくの有効性を支持する質の高いヒト試験はなされていません。
ただし抗酸化活性および、さまざまながん細胞株に対する細胞毒性などが多数報告されており、将来的に治療目的で用いられることが有望視されています。[※3]
食物繊維
生のいちじくには、可食部100gあたり食物繊維が1.9gと豊富に含まれています。食物繊維を食事と摂取することで、胃の中に食べ物が留まる時間を長くし、満腹感が得られます。
また、食物繊維には不溶性と水溶性がありますが、いちじくには水溶性食物繊維のペクチンが多く、腸の中で水分を蓄え、固くなった便を柔らかく粘度のある状態にしてくれるので、排便をよりスムーズに改善する働きが期待できます。[※4] [※5]
そのほか、コレステロールの排出を助ける働きもあるので、動脈硬化や脂質異常症などの生活習慣病予防にも効果的です。
カリウム
私たちのカラダの細胞を活動させるのに必要な水分の量を調節する働きがあります。他にも筋肉や神経伝達を正常に保つために働きます。カリウムを積極的に摂取すると、高血圧やむくみの予防に役立ちます。
日本人の食事摂取基準2015では高血圧の予防を目的としたカリウムの摂取の目標量を成人男性3000mg/日以上、成人女性2600mg/日以上としています。[※5]
消化酵素
いちじくに含まれる消化酵素は胃腸の働きを活発にしてくれます。いちじくの乳汁にはタンパク質分解酵素のフィシン、果肉にも脂肪分解酵素のリパーゼやでんぷん分解酵素のアミラーゼを含み、胃腸の働きを助けて消化吸収をよくするので、食後に食べると消化が助けられます。
また消化酵素の働きにより、体に必要な栄養素が小腸から吸収され、エネルギー源となっていきます。栄養素がきちんと吸収されることにより、疲労回復、体力の増強にもつながります。
暴飲暴食やストレスによる自律神経の乱れ、刺激の強い食べ物、アルコールなどにより胃腸の調子を整えたいかたや、消化を助けたいかたに向いています。
また便秘や便秘による肌荒れなど、腸の中をすっきりしたいかたも利用してみましょう。
長時間の立ち仕事、またはデスクワークによる足のむくみでお悩みの人や血圧が高い人は、カリウムの摂取が向いています。
よく熟した実を1日に2~3個食べれば、腸の動きが活発になるといわれています。[※6]
「健康日本21」では、健康増進の観点から1日200g以上の果実を食べることを目標としています。中くらいのいちじくであれば(1個あたり約70g)2~3個になりますが、他の果物も食べるときは、果糖の摂り過ぎになるので、食べる量に気をつけましょう。[※7]
安全性について
短期間の使用であれば、いちじくの葉はほとんどの人に対して安全のようです。[※8]
食物の量で使用されるときは乾燥させた新鮮な実は、ほとんどの人に対して安全ですが、果物などによるアレルギーなどがある場合には、注意しましょう。
いちじくの葉に含まれる機能性成分についての研究と、いちじくの葉の抗酸化能及びその関与成分について調査しました。
新梢の中ほどの成葉を8月中旬~下旬に採取し、水抽出液を調節して分析試料としました。
抗酸化能はESRスピントラップ法により、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)様活性を測定した。
イチジク葉水抽出液のSOD様活性は521~1182U/gFWで、40品種間で2.3倍の差があった。国内主要品種である桝井ドーフィンの活性は低く、反対に上位11位品種は桝井ドーフィンの二倍以上の活性を示した。
ビタミンCは水抽出液では検出されなかったが、メタリン酸溶液で抽出すると検出され、葉に含まれる事が確認された。
一方、総ポリフェノール量はSOD様活性と正の相関がみられた。LC-MS分析の結果、ポリフェノールの一つをルチンと同定した。
HPLCピーク画分を採取して調べた結果、ルチン以外にもSOD様活性を示すものがあった。
イチジク葉には、抗酸化成分としてビタミンCおよびルチンを含む複数のポリフェノールが含まれる事がわかった。(引用 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書 イジチク葉の抗酸化能とその関与成分について)[※9]
いちじくは昔から食品や医薬品として幅広く利用されてきました。しかし、含まれている成分や健康への影響については研究段階です。
東洋食品研究所によると、いちじくに含まれている機能性成分や期待できる健康増進機能を探索していくために、日々研究を行っているとのことです。[※9]
果実に含まれる機能性成分を研究したところ、カルシウムを中心としたミネラルや食物繊維、ポリフェノールの一種アントシアニンを含んでいることが知られています。
他の成分を探索した結果、ピペコリン酸やトリゴネリンといった成分を含むことがわかりました。
トリゴネリンはコーヒーなどにも含まれており、糖尿病や肥満の緩和作用の可能性が示唆されています。[※9]
東洋食品研究所などでは、現在、両物質が単独または複合でどのような機能を示すのかを調査しています。(引用 東洋食品工業短大・東洋食品研究所)[※9]
今後、いちじくから発見された機能性成分による、糖尿病や肥満などに役立つことが期待されます。
材料(2人分)
作り方
材料
作り方
いちじくのカリウムとたんぱく質と一緒に摂ることで、高血圧予防に期待できます。
またいちじくに含まれているフィシンにより、肉や魚などのたんぱく質の消化もサポートしてくれます。[※10]
生の果実やドライフルーツは食品なので、副作用はありませんが、食物繊維が含まれているので1度に沢山食べると、お腹が張るなど、消化に負担がかかる場合があります。
またドライフルーツは果実よりも100gあたり291kcalとカロリーも高く、食べ過ぎはカロリーや糖分の摂り過ぎにつながります。[※5]