フィーバーフューは、マーガレットに似た花を咲かせるキク科のハーブで、さわやかな香りとかすかな苦みが特徴です。古くから頭痛や片頭痛に効くハーブとして利用されてきました。
そんなフィーバーフューの効果効能、作用のメカニズムや歴史、上手な使い方や相性のいいハーブ、副作用や注意すべき相互作用などの情報をまとめています。
フィーバーフューは、高さ50~60cmに育つキク科のハーブで、マーガレットに似た花を咲かせます。夏に花が咲くことから別名ナツシロギクとも呼ばれています。[※1]
原産はアジア西部やバルカン半島のあたりで、古くから庭に植えて利用されていましたが、現在は世界中で栽培されていて、北米やチリなどでも見られます。
葉や茎、花がハーブとして利用され、さわやかな香りとかすかな苦みがあります。
フィーバーフューの名は、解熱剤を意味するラテン語のFebrifugaからきており、古代から発熱や頭痛・リウマチ性の痛みの緩和に利用されてきました。[※1]
フィーバーフューには、次のような効果・効能があるとされています。[※1] [※2][※8]
■片頭痛を和らげる
フィーバーフューには、鎮痛・鎮静効果や血流をよくするはたらきがあり、片頭痛の改善に用いられます。また、片頭痛や頭痛に伴う吐き気や光過敏症を和らげます。
■発熱・炎症を抑える
抗炎症効果により、関節リウマチの痛みを和らげ、発熱を抑えます。
■アレルギー症状の緩和
アレルギーを引き起こすヒスタミンを抑えるはたらきがあり、アレルギー症状の緩和に役立ちます。
その他にも次のような効果があるといわれています。
片頭痛は、脳の血管が急に拡がり、周囲の神経を刺激して起こるとされています。
セロトニンには、血管を収縮させるはたらきがあるのですが、セロトニンが大量に分泌されると、一気に脳の血管が収縮します。その血管が元に戻るときの反動で、片頭痛が起こるといわれています。
フィーバーフューのもつパルテノライドという成分は、セロトニンの分泌を抑制するはたらきがあるといわれています。これによって、片頭痛や吐き気などの症状を緩和します。
また、パルテノリドには、関節痛や生理痛などのもとになりホルモンのようなはたらきをする、プロスタグランジンの生成を抑える効果もあり、生理痛や関節リウマチの痛みの緩和に効果があるといわれています。[※8]
フィーバーフューは、片頭痛や頭痛、関節炎で悩む人におすすめのハーブです。疲れや緊張が原因の頭痛にも使われ、安眠効果もあるので、リラックスしてよい睡眠をとりたい人にもおすすめです。
また、生理痛やアレルギー症状を和らげたい人も利用してみてください。体を温めるハーブティーや、浴槽にハーブを入れたハーブバスがおすすめです。
フィーバーフューには、決められた摂取目安量や上限は特に定められていませんが、一度に大量に飲んだり、長期にわたって摂らないように注意しましょう。
ハーブティーで摂る場合は、1日3回1杯ずつ食後にゆっくり飲みます。[※3]
フィーバーフューは、古くから頭痛や片頭痛に効くハーブとして利用されてきましたが、研究は進んでおらず、1988年に初めて片頭痛への効果を裏付ける研究結果が発表されました。
しかし、結論はさまざまで、さらなる研究が必要とされているようです。
これまでに報告されているフィーバーフューのエビデンスをご紹介します。
アメリカ合衆国ミズーリ州スプリングフィールドにある頭痛ケアセンターのロジャーKキャディー医師らは、片頭痛の治療に対するフィーバーフューの効果を検証しました。
片頭痛の患者60人を対象に、1ヶ月間フィーバービューとショウガを舌下に入れ、片頭痛が改善されるかどうかの実験を行ったところ、何も摂らなかった患者と比べると、38%~50%頭痛が減少したことがわかりました。また、片頭痛が重症化する前の軽度の頭痛がある患者への効果があることも示されました。[※4]
フィレンツェ大学のロレンツォ・ディ・チェザレ・マルネッリ博士ほかは、フィーバーフュー花と葉の抽出物の鎮痛効果について研究しました。
フィーバーフューの花の抽出物と葉の抽出物を、それぞれ30~1000mg/kgをマウスに与えたところ、花の抽出物を与えたマウスの、痛みや筋肉の収縮に減少が見られました。
この結果、フィーバーフューの花抽出物には、急性炎症性関節炎や神経性の痛みを抑えるはらたきがあることが示されました。[※5]
また、武庫川女子大学薬学部の中瀬朋夏博士と高橋幸一博士は、乳がんに対する抗がん活性に関する研究結果を紹介しました。
フィーバーフューに含まれるパルテノライドは、がん細胞をコピーし増殖させる転写因子のはたらきを抑え、がん細胞を死滅させる作用があり、乳がんに対しても効果があることがわかってきています。
そこで、乳がんへの抗がん作用について次のような実験結果があると紹介しました。
乳がんのがん細胞を移植した担がんのマウスに、50mg/kgのパルテノライドに似た物質(DMAPT)を毎日与え、腫瘍の大きさや生存率・肺への転移を調べました。その結果、すべての項目に対して抑制効果があり、パルテノライドは高い抗がん作用をもっていると示されました。
これらの実験結果から中瀬博士らは、乳がんの薬による治療には、強い副作用や薬が効かなくなることがよくあり、副作用の少ない安全に使える乳がんの治療法として、フィーバーフューに含まれるパルテノライドを使った薬が開発されることが期待されるとしています。[※6]
フィーバーフューは、古代ギリシア時代からハーブとして利用され、頭痛や発熱、片頭痛の緩和などに用いられてきました。
フィーバーフューについて書かれている記録については、古代ローマ時代の軍医・ディオスコリデスが『薬物誌』の中で抗炎症剤として記したのが最も古いといわれています。
1600年ごろのイギリスの医師の間では、あらゆる頭の痛みを緩和するのに非常に効果があるといわれていました。
そのほかにも、イギリスの理髪外科医のジェラードや薬剤師のカルペパーなども、その著書の中で、フィーバーフューは風邪や頭痛、うつ症状の改善に効果があることを記しました。
イギリスでは今でも、解熱剤や痛み止めとしてだけでなく、咳止めや防虫剤、殺菌剤などにも利用されています。[※1]
1978年に、イギリスの新聞に載ったフィーバーフューの葉で片頭痛が治ったという記事が注目され、本格的な研究が始まりました。
その後、片頭痛に悩む人を対象にした試験を経て、1988年にフィーバーフューの成分が片頭痛の原因となる物質を抑制することが発見されました。
また、最近では、乳がんをはじめとする抗がん効果が研究され、がんの治療薬としての開発も期待されています。
慶応義塾大学病院神経内科の鈴木則宏教授が代表理事を務める、一般社団法人日本頭痛学会の慢性頭痛治療ガイドライン市民版によると、フィーバーフューの頭痛への効果について、次のように紹介されています。
「ハーブの一種で、古くから片頭痛予防に用いられてきました。無作為化比較実験が3報あり有効性が認められております。副作用はほとんどありません。ただし子宮収縮作用があるので、妊婦は避けてください」(一般社団法人日本頭痛学会「慢性頭痛治療ガイドライン市民版/第4章 片頭痛の予防療法」より引用)[※7]
※無作為化比較実験とは、研究の対象となる人をランダムに2つのグループに分け実験・検証する方法のこと
また、一般社団法人日本アロマ環境協会認定アロマテラピープロフェッショナルの佐々木薫氏は、フィーバーフューについて次のように紹介しています。
「頭痛を和らげるハーブとして広く知られています。頭痛に悩む人にとっては必需品といえ、長く飲み続けることで症状の改善が期待できます」(佐々木薫著「心と体に効くハーブ読本」(2010年11月 株式会社PHP研究所発行 p126より引用)[※2]
頭痛に効くハーブとして、古くから利用されてきたフィーバーフュー。頭痛に悩む人は、程度や体調をみながら、フィーバーフューを積極的に摂るとよいようです。
フィーバーフューは、ハーブティーで飲むと手軽に摂ることができます。
イギリスでは、フィーバーフューの葉をはさんでサンドイッチにしたり、ウォッカにハーブを漬け込んでつくるチンキ剤にしたりして利用されています。
■ハーブティー(ティーカップ3~4杯分)
【用意するもの】
【つくり方】
フィーバーフューには苦みがあるので、飲みにくい場合ははちみつを加えてもよいでしょう。
■フィーバーフューのチンキ剤
【用意するもの】
【つくり方】
【チンキ剤の利用方法】
お湯やお水にフィーバーフューのチンキ剤を1~3滴入れていただきます。
できあがったチンキ剤は、直射日光が当たらない場所で保管し、約1年保存できます。
チンキ剤は、飲用のほかにもホホバオイルやオリーブオイルなどの植物油に混ぜマッサージに使ったり、手作り石鹸の材料にしたりしても利用できます。必ず水や植物油などで薄めてから使うようにします。[※1]
フィーバーフューは、かすかな苦みがあるので、ハーブティーで飲む場合は、甘みを感じるハーブとブレンドするか、若干量を少なめにすると、まろやかな味になり飲みやすくなります。[※1]
【甘みを感じるハーブ】
【しっかり甘みをプラスするハーブ】
また、リラックス効果があるハーブをいっしょに摂るのもよいでしょう。
フィーバーフューの副作用について、これまでに重篤な副作用は報告されていませんが、妊娠中や授乳中の人、子どもは使用を避けたほうがよいでしょう。
キク科の植物にアレルギーのある人はアレルギー反応が出る可能性があるので注意しましょう。[※3]
また、生の葉をそのまま食べると、口内炎の原因となることもあるので注意しましょう。
長期にわたって使用していた場合、急に摂るのをやめると体調が悪くなることがあります。[※8]
フィーバーフューには、血小板のはたらきを抑える作用があるため、次のような医薬品と同時に摂ると、出血傾向が強くなることがあります。[※8]
このような薬を飲んでいる人は、必ず医師または薬剤師に相談してから摂るようにしてください。