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ユーグレナ(ミドリムシ)の効果とその作用

ユーグレナは、動物と植物の性質をもち合わせている単細胞真核藻類です。独自の成分であるパラミロンをはじめ豊富な栄養素が含まれており、さまざまな効果が確認されています。
ここではユーグレナの効果・効能や作用のメカニズムについてご紹介しています。ユーグレナの研究の歴史やエビデンスについてもまとめました。

ユーグレナとはどのような生物か

ユーグレナとは、池や水田などの淡水域に生息している単細胞真核藻類です。和名で「ミドリムシ」とも呼ばれており、およそ5億年前に地球に誕生したといわれています。体長はわずか0.05mmと小さいため肉眼では確認できず、顕微鏡でやっと見える大きさです。

ミドリムシの正式な学名は「ユーグレナ」。東大のベンチャー企業が、ミドリムシを屋外で大量培養することに成功したことで、いまでは「ユーグレナ=ミドリムシ」という認知が進んでいます。

顕微鏡でユーグレナをみてみると、円柱状で真ん中だけが太い形をしており、細胞内には葉緑体や細胞核などが確認できます。2本の鞭毛(べんもう)をもっており、片方の鞭毛を進む方向に伸ばして移動します。[※1]

ユーグレナの小さい体には、ビタミンやミネラル、アミノ酸、DHAやEPAといった不飽和脂肪酸など、59種類もの栄養素が豊富に含まれていることから、サプリメントとして販売されると、大変人気を集めました。

ユーグレナは、葉緑体をもち光合成をする植物でありながら、動物のように移動する性質をあわせもつ大変珍しい生物です。

ユーグレナが光合成を行う際には油脂が生成されるのですが、ユーグレナが生成した油脂はほかの微細藻類が生成する油脂よりも軽いことから、バイオ燃料やジェット燃料に向いているといわれています。[※2]

ユーグレナの効果・効能

ユーグレナには、以下のような効果・効能があるといわれています。[※3][※4][※5][※6][※7]

■便秘の改善

ユーグレナを摂取することで、便秘の改善が期待できます。

■デトックス効果

ユーグレナに含まれるクロロフィル、パラミロン、含硫アミノ酸などのはたらきによって、体内の有害物質が排出されます。

■コレステロール値を下げる

ユーグレナに含まれるパラミロンによって、余分なコレステロールの排出が促進されるため、コレステロール値が低下します。メタボリックシンドロームの予防にも有効です。

■免疫バランスを整える

ユーグレナに含まれるパラミロンに免疫バランスを整えるはたらきがあることから、免疫バランスの乱れで生じる疾患の予防につながると考えられています。

■抗アレルギー効果

ユーグレナに含まれるパラミロンが免疫機能に作用することによって、抗アレルギー効果が期待できます。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

ユーグレナには59種類の栄養素が含まれていますが、そのなかでもとくに注目したいのがパラミロンと呼ばれる成分です。

パラミロンとは、おもにキノコ類などの有効成分として知られる多糖体、β-グルカンの一種です。無数の穴があいている多孔質の物質で、コレステロールや中性脂肪を吸着するはたらきがあります。また食物繊維同様、体内で消化吸収されにくいという性質をもっています。[※1][※8]

体内の余分な脂肪が吸着したまま腸で吸収されずに体外に排出されるため、メタボリックシンドロームを予防する効果やデトックス効果が期待されています。[※2]

また、パラミロンには免疫バランスを整えるはたらきがあるため、疾病予防や改善効果、美容効果などがある万能成分として注目されています。[※6]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ユーグレナは、以下のような人におすすめです。

  • 便秘を解消したい人
  • コレステロール値が気になる人
  • メタボリックシンドロームを予防したい人
  • 免疫力を高めたい人
  • 免疫バランスを整えたい人

ユーグレナの摂取目安量・上限摂取量

ユーグレナの明確な摂取目安量や上限摂取量は定められていません。極端に大量摂取しない限り、問題はないはずです。

販売されている商品によって、ユーグレナの含有量が異なります。商品パッケージに記載されている1日の摂取目安量を参考に摂取しましょう。

ユーグレナのエビデンス(科学的根拠)

ユーグレナに関する研究では、便秘改善やアレルギーの改善など、さまざまな効果があることがわかっています。

(株)ユーグレナは、20歳以上60歳未満の便秘ぎみの女性を対象に、ユーグレナを摂取することによる便秘の改善効果に関する調査を行いました。

調査では偽薬(プラセボ)食とユーグレナの含有量を変えた試験食3種類をそれぞれ摂ってもらい、摂取期間中の排便の量・回数・日数を計測しました。

その結果、ユーグレナの含有量を変えた試験食すべてにおいて、プラセボ食を摂ったときよりも排便回数・量・日数の増加が確認されています。

このことから、ユーグレナには便秘改善の効果が示唆されました。[※4]

また、兵庫県立大学環境人間学研究科 食環境解析学教室の小泉未希氏は、スギ花粉症に対するユーグレナの効果を調べる実験を行いました。

実験ではアレルギーの原因となるスギ花粉をマウスに与え、4グループに分けてそれぞれ以下のエサを食べさせました。

  • Aユーグレナを添加したエサ
  • Bユーグレナから抽出したパラミロン(有効成分)
  • C免疫に作用するアモルファスパラミロン
  • D普通のエサ

実験の結果、A・B・Cグループではスギ花粉アレルギーで起こる症状が抑制されたことから、ユーグレナの抗アレルギー効果が示されています。[※7]

ほかにも、近畿大学食品化学研究所の村上哲夫教授(現:近畿大学名誉教授)が、ユーグレナを使った脳卒中の改善実験を行いました。

対象として用いた高血圧のラットは、脳卒中の症状が起こりやすく、通常のラットより短命だと考えられています。

研究では高血圧にしたラットを寿命の長さと血圧の上がりやすさから2グループに分け、それぞれに高脂質のエサと25%のユーグレナを含むエサを投与。1週間ごとに血圧と体重の測定、生存日数の観察を行いました。

実験はすべてのラットが自然死するまでの15~25週間で実施しています。

実験の結果、ユーグレナを含むエサを摂取したラットは高脂質のエサを食べたラットよりも、生存日数が平均100日以上伸びていることがわかりました。

このことから、ユーグレナを摂ることで脳卒中での死亡率が下がるのではないかと考えられています。[※9]

研究のきっかけ(歴史・背景)

ユーグレナは、1660年代にオランダの科学者アントニ・ファン・レーウェンフックによって発見されました。ユーグレナの名前の由来は、鞭毛(べんもう)のつけ根部分に赤い眼点(がんてん)です。美しいを意味する「eu」と眼を意味する「glena」というラテン語を組み合わせて、euglena(ユーグレナ)と名付けられました。

1950年代には、アメリカの科学者メルヴィン・カルヴィンらがユーグレナをはじめとする植物の光合成について研究を実施。植物の光合成反応における回路(カルビン・ベンソン回路)を明らかにして、1961年にノーベル化学賞を受賞しました。

1970年代にはNASA(アメリカ航空宇宙局)が宇宙開発の一環として、研究素材のひとつにユーグレナを選びました。研究では、ユーグレナが乗務員の呼吸(二酸化炭素)で成長することや、日光を当てると光合成を行うため酸素が得られることなどがわかっています。

1990年代になると、ユーグレナの特性が医療や医療品開発などに利用されるようになりました。

2005年には、ユーグレナの研究開発や商品販売を行っている(株)ユーグレナが、世界ではじめて屋外でのユーグレナの大量培養に成功しました。同社はこの成功によって、日本における大学ベンチャーから初めて、東証一部上場を達成したことで話題となりました。

専門家の見解(監修者のコメント)

ユーグレナの利用法について、(株)ユーグレナ取締役(研究開発部長兼任)の鈴木健吾氏は次のようにコメントしています。

「このパラミロンの機能性は従来から世界中で広く研究をされてきており、現在、当社では抗腫瘍効果や抗アレルギー効果などを見いだして、食品素材としての活用の幅を広める研究を進めている」

(産学官連携ジャーナル「東大発ベンチャー 「ユーグレナ」の技術とビジネス展開」より引用)[※10]

鈴木氏が述べているように、ユーグレナに含まれるパラミロンという成分は、現在世界中で研究されていて、抗腫瘍効果や抗アレルギー効果などの作用がわかってきています。

「ユーグレナは培養方法次第で、ジェット燃料への加工が可能なワックスエステルという脂質を多く含有させることができる」

(産学官連携ジャーナル「東大発ベンチャー 「ユーグレナ」の技術とビジネス展開」より引用) [※10]

ユーグレナの育てかたによってはジェット燃料のもととなるワックスエステルを豊富に生み出せることから、ユーグレナをバイオ燃料として活用し、ジェット機を飛ばす計画なども練られているようです。

現在同社は東京大学や近畿大学、大阪府立大学などと産学共同研究を行っています。大企業との連携も視野に入れながら、ユーグレナの効果・作用の解明を進めているとのことです。

ユーグレナの利用方法

ユーグレナは食品や化粧品、バイオジェット燃料など多くの分野で利用されています。ユーグレナは栄養価が高いことから、特に食品分野での利用が注目を集めています。

■食品

粉末のユーグレナを使った健康食品やサプリメント製品が多数あります。コンビニやスーパーでも野菜や乳酸菌とブレンドしたドリンク、レトルト食品、クッキーやアメといったお菓子など、ユーグレナを配合した製品は手軽に入手できるようになりました。最近ではペット用の食品も販売されているようです。

■化粧品

ユーグレナから抽出したエキスやオイルを化粧品に配合しています。スキンケアシリーズとしてオールインワンゲルや美容液など、さまざまな化粧品が開発されています。

■燃料

ユーグレナから採れたワックスエステルをバイオジェット燃料として利用する試みが進んでいます。最近では、次世代バイオディーゼル燃料「DeuSEL」のプロジェクトも開始され、より燃料としての利用が広がっています。

相乗効果を発揮する成分

ユーグレナには、乳酸菌のはたらきを活発にする作用があります。乳酸菌とユーグレナを一緒に摂取することで、乳酸菌の整腸作用を高められるでしょう。

ユーグレナの副作用

現在のところ、副作用に関する十分な情報が見つかっていません。

注意すべき相互作用

ユーグレナは以下の医薬品との相互作用が懸念されています。

■ワルファリンカリウム(抗血栓剤・抗血液凝固剤)

ユーグレナには、血液凝固に関与するビタミンKが含まれているため、併用するとワルファリンカリウムの効果を弱めるおそれがあります。服用には注意しましょう。

ワルファリンカリウムのほかにも、服用する医薬品との飲み合わせによっては、医薬品の効果を弱めてしまう可能性があります。服用中の医薬品がある人は、ユーグレナを摂取する前に医師へ相談することをおすすめします。

スピルリナやクロレラとの違い

ユーグレナ、スピルリナ、クロレラは同じ藻類ですが、消化・吸収のしやすさと含有成分が異なります。

■消化・吸収の違い

スピルリナとユーグレナは細胞膜が薄いため、消化・吸収しやすいのが特徴です。しかし、クロレラは細胞膜のほかに細胞壁があるため、消化しづらく、有効成分を吸収しにくいといわれています。

■含有成分の違い

ミネラルやアミノ酸、ビタミンB・C・D・Eなどの成分は共通して含まれています。加えて、ユーグレナには、スピルリナとクロレラにはないパラミロンや不飽和脂肪酸(DHAやEPA)が含まれているのが特徴です。

参照・引用サイトおよび文献

  1. 鈴木洋 著『カラー版 健康食品・サプリメントの事典』(医歯薬出版株式会社 2011年2月発行 p191-p192)
  2. 株式会社ユーグレナ「ユーグレナの研究開発」
  3. 則岡孝子 著『知らないと危ない 栄養学 最新の話』(河出書房新社 2014年4月発行)
  4. 株式会社ユーグレナ「ユーグレナのニュース ニュースリリース|微細藻類ユーグレナ含有食品の摂取による 便秘改善効果を示唆する研究結果を確認しました」
  5. 一般社団法人 日本生活習慣病予防協会「「ミドリムシ」からメタボを改善する成分 「痩せるホルモン」を促進」
  6. 株式会社ユーグレナ「ユーグレナのニュース ニュースリリース|パラミロンの継続摂取による免疫バランス調整機能に関する特許出願のお知らせ」
  7. 【PDF】小泉未希 ほか「スギ花粉症モデルマウスにおけるユーグレナの効果についての検討」(日本食生活学会誌 Vol.24 No.3(2013))
  8. ユーグレナ ヘルスケア・ラボ「ユーグレナについて」
  9. 【PDF】村上哲男 ほか「脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP)の血圧,脳ならびに末梢血管病変および寿命に及ぼすユーグレナ(Euglena gvacilis z)の影響」(日本栄養・食糧学会誌Vol.41 No.2 115~125 1988)
  10. 産学官連携ジャーナル「東大発ベンチャー 「ユーグレナ」の技術とビジネス展開」