エクオールは、女性ホルモン「エストロゲン」に似た働き(エストロゲン様物質)があるといわれ、注目されている成分です。更年期症状やシワの改善など女性にうれしい効果あることから、今でも研究がすすめられています。ここでは、エクオールがどのような成分で、どのような作用や効果があるのかを説明していきます。
エクオールとは、大豆に含まれるポリフェノール(フラボノイド)イソソフラボンの一種であるダイゼインが、腸内細菌によって代謝されて産生した成分です。女性ホルモンに似た働きがあることから「女性ホルモン様物質」とも呼ばれます。
エクオールは大豆イソフラボンを代謝する工程で合成される成分であるため、一般の食品から直接摂取することはできません。乳酸菌で発酵させるなどしてつくった「エクオール含有食品」などから摂取します。
大豆イソフラボンは、大豆や大豆を原料とする食品(豆腐・納豆・おから・油揚げ・豆乳など)に含まれていますが、エクオールをつくるためには、ダイゼインと腸内細菌が必要です。
日本人でエクオールをつくる腸内細菌を持っている人の割合は約50%[※1]で、同じ日本人でも若い世代は20~30%しかいないことがわかっています。世代によってエクオール産生能には差異があります。
エクオールには次のような効果があるといわれています。
■更年期症状の改善
エクオール産生能が向上する(生成されたエクオールを摂取する)ことにより、更年期症状(特に肩こり、発汗やホットフラッシュなど)の改善効果があると期待されています。[※2]
女性の閉経年齢は約50.5歳前後です。閉経により卵巣の機能が低下し、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少します。
女性の閉経前後におこる女性ホルモンの減少によってホルモンバランスが崩れ、さまざまな症状が発現することを総称して更年期障害といいます。主な症状としては、月経異常のほかに倦怠感・動悸・顔のほてり・急な汗・精神的(イライラなど)症状などがあります。
■骨粗鬆症予防
エクオールは女性ホルモンの働きをサポートすると考えられており、エクオールの産生能が向上することにより、骨密度の減少を抑え骨粗しょう症を予防する可能性があるという結果がでています。[※3]
骨粗鬆症とは、骨密度が低下して骨の強度が弱くなり、骨折しやすくなる状態です。骨量は、20歳以降減少します。
特に女性ホルモンが影響しているため、閉経前後の女性ホルモン(エストロゲン)の急な減少によりカルシウムの吸収が悪くなり、骨粗鬆症になるといわれています。
■しわやたるみの改善
エクオールの産生能が向上すると、しわ面積の縮小効果が、期待されています。[※4]
しわの主な原因として考えられるのは、老化現象のひとつである加齢による筋肉の衰えとコラーゲンやエラスチンの減少が挙げられます。
女性ホルモン(エストロゲン)は肌のコラーゲン生産に関与しているため、閉経前後で女性ホルモンが減少すると、しわやたるみなどが出やすくなります。
エクオールは、エストロゲンが不足しているときにエストロゲン受容体に入ります。エストロゲンに似た働きあるため、閉経前後のエストロゲン減少によりおこる更年期症状の改善や、骨粗鬆症の予防、しみ、たるみの改善の効果が期待できると考えられています。
またエクオールには抗酸化作用もあるため、さまざまな効果が期待できると指摘されており、その可能性を究明するためにの研究が進んでいます。
体内でエクオールをつくる腸内環境が整っていない方、更年期症状を改善したい人、閉経前後の女性、ホルモンが減少する世代の人、しみ・たるみが気になる人、骨粗鬆症を予防したい人などは大豆イソフラボンを摂取して、エクオール産生能を向上させるようにしましょう。
エクオールには上限摂取量や目安量の設定はありませんが、以下の研究により効果があるとされる摂取量があります。
大塚製薬の研究で、エクオール(乳酸菌により大豆イソフラボンを発酵させたもの)を1日10mg摂取するグループと、プラセボ(偽薬)のグループとで比較しました。
その結果、更年期症状の緩和、骨密度の減少抑制、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の減少、目尻のしわ抑制効果の確認といった臨床データを発表しています。[※3]
ただしエクオールが体内にとどまるのは1~2日といわれるため、毎日の摂取が必要です。エクオールが産生されなかった余剰分は、尿で排泄されてしまうため、一度に大量摂取しても意味がありません。
また、大豆イソフラボンは、内閣府 食品安全委員会から発表された上限摂取量があるため、大豆食品の大量摂取は避けましょう[※5](大豆食品目安量は、以下の「エクオールを産生するには」を参照)。
また、サプリメント等で摂取の場合は、摂取目安量を守りましよう。
女性ホルモンが閉経後の健康維持だけでなく、多くの現代女性が悩んでいる月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)などにも関与していることがわかっています。[※6]
大塚製薬(株)・佐賀栄養製品研究所と近畿大学東洋医学研究所の共同研究により、「大豆イソフラボン活性代謝物エクオール産生能と月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)の関係について」新たな研究成果が、発表されました。
研究成果は、2016年11月5日の第31回 日本女性医学学会学術集会で発され、産婦人科領域の専門誌「The Journal of Obstetrics and Gynaecology Research」に掲載されました。
PMS/PMDD治療中患者46名(P群)と非治療者98名(C群)を対象にエクオール非生産者と生産者の割合」を比較。
その結果、エクオール非生産者は、生産者に比べ月経前症候群(PMS)・月経前症候群(PMS)リスクが2.4倍高いとの結果が報告されています。
エクオールの産生と月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)に関連があることがわかり、今後エクオールの治療貢献度の高まりが期待できると示唆されました。[※6]
東京ミッドタウンクリニックグループ・浜松町ハマサイトクリニック婦人科、吉形玲美医師の研究による研究成果が、2017年11月4日「第32回日本女性医学学会学術集会」にて、発表されました。
105名の女性 年齢40~47歳 エクオールを1日10mgの摂取を12か月以上摂取した方と健康グループ、生活習慣病リスクの高いグループに分け検証されました。
その結果、血管の硬さ(血管年齢の指標とされる)数値が改善、さらに生活習慣病リスクの高いグループ、血管年齢が高いグループほどエクオール長期摂取で改善がみられ、骨粗鬆症のリスクが軽減したことがわかりました。
このことから、長期摂取により、動脈硬化・骨粗鬆症リスク軽減に効果が期待できると考えられます。[※7]
2017年5月に発表されたプレスリリースによれば、滋賀医科大学アジア疫学研究センターによる研究で滋賀県草津住民の男性272名の健康な男性を無作為抽出し、血中大豆イソフラボンおよびその代謝物であるエクオールの血中濃度を測定。CT検査により心疾患と動脈硬化リスクの関連性を検討しました。
その結果、全体の16%にあたる43名がエクオール産生者。残りの非産生者と比較したところ、血中イソフラボン濃度と動脈硬化(冠動脈石灰化)の危険度の関連性は認められませんでした。
ただしエクオール産生者は、非生産者と比較すると動脈硬化リスクが約10分の1と有意に低い結果となりました。
このことから、男性がエクオールを摂取することにより、が動脈硬化の予防に期待できることがわかりました。[※8]
以前から大豆イソフラボンと女性ホルモンは関連性が高いと発表されてきましたが、2002年に米国のセッチュル教授らが、大豆イソフラボンの代謝物である、エクオールが関与しているのではないかと仮説を立て、その後エクオールが着目されるようになりました。
大塚製薬(株)の研究により、エクオール生産乳酸菌】の一種「乳酸菌ラクトコッカス20-92」を発見しました。この乳酸菌が、大豆イソフラボンに含まれるダイゼインをエクオールに変換させることが発見されました。それに伴い、エクオールが含有する「大豆胚芽乳酸菌発酵食品」が、開発されました[※9]。
東京ミッドタウンクリニックグループ・浜松町ハマサイトクリニック婦人科、吉形玲美医師の研究による研究成果が、2016年11月5、6日「第31回日本女性医学学会学術総会」にて発表されました。
吉形医師の研究では、エクオールが内臓脂肪軽減や抗動脈硬化などに影響することが確認され、更年期障害や動脈硬化においては、具体的な数値での改善度を確認しています。[※10]
また同時に吉形医師は、
「(従来の研究等より)更年期障害や各種生活習慣病のリスクの軽減を確認。ただし、直近の研究データから体内で作ることができる女性は全世代を通じて約30%です」(アドバンスト・メディカル・ケア掲載「更年期女性の強い味方 エクオール」より引用)
と述べ、エクオールの長期継続摂取の必要性を説いています。
また農研機構・食品総合研究所の定石研究員、田村基さんによれば、
「エクオールの産生者では、青魚や大豆油などに含まれる多加不飽和脂肪酸を多く含む食品を摂取している傾向があることが、海外の疫学研究で報告されています」(日経ウーマン・オンライン「6つの“女性ホルモンUP”ルール もっと大豆が効く!!」より引用)[※11]
とのこと。青魚や大豆油といった健康に貢献する商材を毎日の食に取り入れることが大切であるといえそうです。
エクオールを産生するには、材料となる大豆イソフラボンの摂取と、「エクオール生産菌」と呼ばれる腸内細菌が必要です。
大豆イソフラボンは、大豆や納豆・豆腐・豆乳を含む大豆製品に含まれています。体内でエクオールを産生するためには約50mgの大豆イソフラボンが必要です。食品に換算すると、摂取目安は、納豆1パック(50g)/豆腐2/3丁(200g)/豆乳コップ一杯(200g)程度となります。
エクオールの「生産菌をもっている人」と「生産菌をもっていない人」がいます。それを調べる方法としては、「エクオール検査キット」などがあり、薬局や通販などで購入でき、郵送で手軽に検査が行えます。
エクオールを産生できる人の差は、国や年齢によって異なりますが、これは、大豆摂取量などの食生活、腸内環境の違いが関与しているのではないかと考えられています。
厚生労働省 国民健康・栄養調査によると、大豆・食物繊維ともに、年齢が若いほど摂取量が少ない傾向があり[※12][※13]それらが、関与しているのではないかといわれています。
エクオールが産生でできない人は食事改善やエクオール含有食品であるのサプリを利用する方法があります。
エクオールの歴史は浅く、まだ発見されてから長い時間が経過していない有効成分。したがってサプリメント製品を選ぶ際は、「エクオールに関して科学的根拠にもとづいた研究結果を発表しているメーカー」を選び、適正量を守りながら利用しましょう。[※14]
エクオール生産を高めるには、大豆イソフラボンが含まれる「大豆製品」を摂取し、腸内環境を整えることが大切です。
食物繊維や乳酸菌、納豆菌の有効成分であるナットウキナーゼなどを同時に摂取すると効果的です。ナットウキナーゼには腸内菌を活性化する働きがあるため、エクオール産生を促がす可能性があります。
また腸内バランスは、「ストレス・睡眠不足・偏った食事」など普段の生活からの影響を受けやすいため、不規則な生活などを改善していくことも大切です。
食物繊維のひとつである水溶性食物繊維は腸内細菌の発酵などにより腸内が酸性になり乳酸菌やビフィズス菌を増やす作用、不溶性食物繊維は、体外への排出物を増やし、排出回数を増やします。
それぞれ作用は違いますが、腸内環境を整える働きがあるため、エクオールの産生を促がすためには食物繊維も一緒に摂取してほしい成分です。[※15]
ちなみに食物繊維の目標量は18~69歳 女性1日18g以上[※15]とされています。
水溶性食物繊維を多く含む食品としては、こんにゃく・大麦・昆布など、不溶性食物繊維を多く含む食品はごぼう・きのこ・納豆などがあります。
乳酸菌とは糖類を分解して乳酸をつくる細菌で、種類は200種類以上あります。ビフィズス菌やブルガリア菌なども乳酸菌の一種でヨーグルトなどの発酵食品に利用されています。
乳酸菌は腸内細菌の栄養源となり、腸内環境を整え免疫力を高めるなどさまざまな働きがあります。
乳酸菌が含まれるヨーグルトや乳酸菌飲料、チーズ、味噌、麹、キムチ、漬物などの発酵食品にも多く含まれています。
エクオールと妊娠中、授乳期の人にどのような作用をおよぼすか、副作用が出るのか十分なデータはありません。
ただ、エクオールには女性ホルモン様物質でもあるため、妊娠中や授乳期は医師に相談して安全性を確かめるか、使用を避けましょう。エクオールを配合したコスメなども同様に医師に確認のうえ、使用してください。[※17]