エキナセアはキク科の多年草で、風邪やインフルエンザなどが流行する季節にとくに注目されるハーブです。エキナセアのハーブやサプリメントは、免疫機能を強化することで、ウイルスの感染を防いだり、自然治癒力を高めてくれる効果が期待できます。
エキナセアは北米に分布するキク科の多年草です。高さは1.2mほどに成長し、7〜10月頃に美しい花を咲かせます。花の中央部分は盛り上がっていて、そのまわりを紫色や白、黄色の舌状花(花びらに見える部分)がやや下向きに咲くのが特徴です。
エキナセアの名前は花の中心部がトゲトゲしいことから、ハリネズミを意味するギリシャ語「echinos」に由来しているという説があります。花言葉は「優しさ」「深い愛」です。
エキナセアのなかでも、薬効があるとされているのは3種類です。3種類のうちでいちばん栽培が盛んなのは、エキナセアプルプレア(Echinacea purpurea)という舌状花が紫色の品種です。[※1]
エキナセアは根も含めて全草がハーブとして利用されています。ハーブティーにはおもに葉の部分が使用されますが、サプリメントに使用されている部位は、商品によって異なります。[※2]
エキナセアは欧米ではポピュラーなサプリメントの成分です。ドイツでは医薬品として認められていますし、アメリカでは人気サプリメントの上位に位置する成分です。[※1]
風邪の予防効果が知られているため、冬に需要が高まる傾向のあるハーブです。
日本でもインフルエンザの予防対策としてメディアなどで紹介されることもあり、ハーブ療法のへの関心とともに少しずつ注目度を高まっています。
エキナセアは、風邪の予防や症状の緩和に効果があるといわれています。
季節の変わり目や肉体的・精神的なストレスなどで一時的に弱くなった免疫力を強化することで、風邪などのウイルスの感染を予防する効果が期待されています。
風邪に感染したあとでも、症状の緩和や進行を防ぐため、完治するまでのスピードを早める効果も期待されます。
また、免疫機能を強化することから、自然治癒力を高め、疲労の回復や肌の調子を整える効果なども示唆されています。
エキナセアを摂取することで、白血球数やT細胞の数が増加するという実験データが報告されています。[※3]
白血球は血液を構成する成分のひとつで、わたしたちのからだを悪い異物から守る生体防御システムの主役といえる存在です。
風邪などのウイルス、食品添加物、農薬汚染などの外部から侵入する異物や、乱れた食事や生活習慣・強いストレスなどがもたらす害から、からだを守るために働いています。
白血球のなかにはリンパ球があり、T細胞はそのうちのひとつです。
T細胞はリンパ球の大半を占めます。胸腺(英語でThymus)でつくられるので、頭文字のTをとってその名前がつけられました。
T細胞の表面にあるT 細胞抗原受容体により異物が認識されると、T細胞は活性化してからだを守る免疫応答が行われます。
T細胞は、自ら異物を攻撃するほかにも、マクロファージなどのほかの免疫細胞に指示を出す、司令塔のような役割も担っています。[※4]
白血球やT細胞が減ると免疫不全となり、さまざまな病気に感染しやすくなってしまいます。
エキナセアのどの成分が有効に働いているかは今のところわかっていませんが、エキナセアはT細胞を含む白血球の数を増やし、免疫機能を活性化することで、健康の維持に効果を発揮すると考えられています。
エキナセアは、気温の変化で体調を崩しやすいときや、環境の変化によるストレスで免疫力が落ちてきたときなどにおすすめといえる成分です。
また、すでに風邪などの病気になってしまった場合でも、病気の回復をサポートしてくれる効果が期待できます。
近年、抗生物質が効かない耐性菌が増加傾向にあり、抗生物質自体の副作用を気にする人も増えています。ハーブが持つ自然治癒力が見直されてきていることも、エキナセアが注目される大きな理由だといえます。
ただし、ドイツなどで厳格に管理されている医薬品のエキナセアとは違い、日本で販売されているエキナセアはあくまでも食品です。
商品によって使用されているエキナセアの品種や部位、成分の含有量などは異なります。
病気の治療に安易に使用することはせず、体調に変化が現れた場合は、医療機関を受診しましょう。
エキナセアに摂取量の目安や上限などは定められていません。
エキナセアは風邪などで一時的に弱った免疫力を回復させる目的で用いられることが多い成分です。
そのため、常日頃から摂取するのはなく、8週間継続して摂取したら1~2週間休むなど、免疫力を高めたいときに期限を決めて飲むことが一般的な利用法とされています。
ただし、8週間を超えた長期的な服用による副作用などは今のところ報告されていません。[※5]飲む期間についてはそれほど神経質になる必要はないといえそうです。
エキナセアの有効性については、アスク薬品(株)と(株)オルトメディコの共同研究の成果が報告されています。
疲労を感じている22人の男女を、エキナセア抽出物500mgを含む製剤を摂取する11人と、プラセボの製剤を摂取する11人に分けて、それぞれ3週間、1日1回寝る前に摂取させました。
その結果、エキナセアを摂取したグループで、免疫機能の重要な役割を担う白血球数とT細胞数の増加が認められ、精神的ストレスや疲労回復、目や肩の疲れの改善や便通の改善、肌の状態など、主観的な健康度などの改善も認められたということです。[※3]
ただし、風邪やインフルエンザを予防する効果や症状を改善させる効果については、今のところ明確なエビデンスは示されていません。[※2]
ハーブなどの植物を用いる補完代替医療では、栽培環境やエキスの抽出方法、ほかの成分との組み合わせによって品質や効果が変化する可能性があり、決定的なエビデンスが得られにくいという側面があります。
エキナセアも、風邪などへの効果が示唆されているものの、実証できる段階には至っていません。
アメリカ国立補完統合衛生センター(NCCIH)ではエキナセアの機能性についての検証が進められており[※6]、今後のさらなる研究によって、効果が明らかになることが期待されます。
エキナセアは北アメリカの先住民であるインディアンのあいだで、古くから薬草として感染症や傷の治療、化膿止めなど、万能薬としてさまざまな用途で使用されてきました。
1870年代に先住民からエキナセアの効果を学んだ医師が、エキナセアを血液の浄化剤に用いたことから、アメリカでエキナセアが広まっていきます。
19世紀末にはヨーロッパにもエキナセアは伝わり、戦後ドイツでは感染症の治療薬として医薬品に認められました。
現在も、エキナセアはドイツをはじめヨーロッパの国々では医薬品として扱われ、アメリカではサプリメントの成分として支持されています。[※1]
エキナセアの効果については、科学的根拠がじゅうぶんではなく、専門家のあいだいでも一致した結論が見出せていないというのが現状です。[※2][※6]
早稲田大学のスポーツ科学学術院の研究指導員である赤間高雄教授は、大学もしくは大学院に在籍する12人の男性にエキナセアのサプリメントを4週間摂取させるというヒト試験を行いました。しかし、
「エキナセアは免疫力を高めると報告されている。しかし、今回の結果からは、エキナセアが免疫機能に影響している可能性を考えることは難しい」
(早稲田大学 スポーツ科学研究科「エキナセア摂取が運動時のコンディションに与える影響」より引用)[※7]
という見解を示しています。
効果について否定的なデータがある一方で、国内のヒト試験により、エキナセアの摂取により白血球やT細胞が増えたという結果も報告されています。
この試験を行ったアスク薬品(株)の論文では、
「エキナセアを3週間継続的に摂取することによって、免疫力(特に獲得免疫系)が総合的に賦活される可能性が示唆されました」
(アスク薬品「エキナセアプルプレア製剤摂取による免疫機能賦活効果」より引用)[※3]
と、エキナセアを評価しています。
エキナセアはサプリメントやハーブティーなどで摂るのが一般的です。
エキナセアのハーブティは、口に入れるとほのかに草木の香りが広がり、味はあっさりと飲みやすいのが特徴です。ほとんどクセがないといわれ、ブレンドティーにも向いています。
市販されている風邪対策用のサプリメントに含まれている場合も、エキナセアを主成分としていくつかの成分を組み合わせているものが多くあります。
エキナセアはドイツで医薬品として認められているため、栽培から製造までがしっかりと管理されています。[※5]そのため、原産国がドイツのエキナセアは高品質だといえます。
また、エキナセアの種類のなかでも薬理効果が高いのがエキナセアプルプレアという品種です。サプリメントを利用する際には、エキナセアプルプレアが使われ、品質管理がしっかりと行われている商品を選ぶようにしましょう。
エキナセアは風邪薬との併用について問題がないとされています。風邪薬は症状に対して作用しますが、エキナセアは自分自身の免疫力を高め、抵抗力を強くする作用があるといわれます。
すでに風邪を引いているときに摂取するエキナセアは、風邪が治癒するまでの期間を短くし、再発を予防する効果が期待されています。[※5]
エキナセアティーほかのハーブとブレンドすることで、相乗効果が期待できます。
風邪などの感染予防を強化するためには、ビタミンCが豊富に含まれるローズヒップと、すでに風邪を引いて熱が出ているときには鎮痛効果のあるエルダーフラワーなどとのブレンドがおすすめです。
エキナセアの副作用はとくに報告されていませんが、キク科アレルギーのある人は、アレルギー症状が現れる恐れがあるため注意が必要です。
妊娠中、授乳期については、安全性に関して信頼できるじゅうぶんな情報が見当たらないため、念のため使用は控えたほうがよいでしょう。
EMEA(欧州医薬品審査庁)では、自己免疫性疾患、結核、白血病、膠原病、多発性硬化症、エイズなどの免疫に関係する病気のある場合や、1歳未満の幼児の使用は禁忌としています。
また、ドイツでは6歳未満の子どもの使用は認められていません。[※5]
エキナセアは免疫機能を高める作用があるとされているので、免疫を抑制する薬の作用を弱めてしまう恐れがあります。以下のような免疫抑制薬との併用には注意が必要です。
サプリメントや健康食品と医薬品の相互作用については、まだわかっていない部分も多くあります。
薬を服用中の人がエキナセアを摂取する場合は、まずはかかりつけ医や薬剤師に相談するようにしてください。