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難消化性デキストリンの効果とその作用

最近、食物繊維はさまざまな生理機能をもつことが解明され、「第六の栄養素」としてその重要性が見直されています。でも現代の食習慣では、食物繊維の摂取量が不足しているというのが実情です。

難消化性デキストリンとはどのような成分か

デキストリンは、α-グルコースがグリコシド結合してできた低分子量の総称であり、デンプンの仲間です。難消化性デキストリンとは、文字とおり「消化され難いデキストリン」です。

製造工程としては、トウモロコシのデンプンに、微量の塩酸を加えて加熱し、焙焼デキストリンを調整します。これを消化酵素(アミラーゼ)で分解させ、分解されなかった難消化性成分を取り出し、脱塩・脱色し精製したもので、水溶性の食物繊維です。[※1]

難消化性デキストリンは、多くの食品・飲料に使用されていますが、難消化性デキストリンの性質として、水に溶けやすく、無臭で甘みもわずか。保存中も水溶液として安定し、耐熱性・耐酸性・低粘性があり、いろいろな生理機能をもっていることで知られています。[※2]

難消化性デキストリンの効果・効能

難消化性デキストリンには次のような効果・効能があるといわれています。

■お腹の調子を整える効果

便秘の原因として、偏った食事や運動不足などの生活習慣の乱れやストレスにより、腸の機能が低下することがあります。下痢は、ストレスや緊張、暴飲暴食、食あたり、ウイルスや細菌によるもの、生理周期、冷えなどです。

こういった症状に対し、難消化性デキストリンは、乱れた腸の機能を整える効果があります。

■メタボリックシンドロームの予防効果

メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満が原因の疾病です。肥満に関しては近年、生活習慣病の予備軍の低年齢化が問題視されています。

難消化性デキストリンを摂取し続けたことで、メタボリックシンドロームの原因である内臓脂肪の面積値が減少したという報告[※3]があります。

■食後の血糖値上昇抑制効果

現在、小麦粉や白砂糖など精製された糖質の摂取により、急激に血糖値の乱高下が起こることを「血糖値スパイク」といいますが、これが糖尿病などの生活習慣病の原因となっています。

血糖値の急上昇は、体への負担や自律神経の働きを乱す恐れがあるため、炭水化物(糖質)の摂取量を控える以外であれば、食後の血糖値上昇を少しでも緩やかにする工夫が必要です。
食事と一緒に難消化性デキストリンを摂取することにより、炭水化物の吸収は緩やかになり食後の血糖値上昇を抑制します。

■食後の血中中性脂肪上昇抑制効果

日本人の食生活は、動物性脂質などの摂取量が多くなっています。脂質の大量摂取は、生活習慣病を引き起こす原因にもなります。

難消化性デキストリンを一緒に摂ることで脂質の吸収を抑え、中性脂肪の上昇、コレステロール上昇などの抑制効果が期待できます。

■ミネラルの吸収促進効果

ミネラルは、体の調子を整える役割をしているため、不足することでさまざまな不調の原因にもなります。

動物実験で難消化性デキストリンを多く摂取するほど、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛の吸収率が増加したという報告があります。

■貧血改善効果

血液中の赤血球や、赤血球に含まれるヘモグロビンが減少した状態を貧血といいますが、毎月の月経などにより血液を失いやすい女性に多い疾患であり、症状によっては生活上支障をきたす場合もあります。

女子大生を対象にした試験で、難消化性デキストリンを摂取することで血液中のヘモグロビン濃度が増加した報告があります。
実験では、難消化性デキストリン5gを1日3回4週間摂取し続けると、摂取前よりもヘモグロビン値が増加し摂取を停止すると低下しました。[※4]試験結果からも、今後の貧血改善への期待が高まります。

どのような作用があるのか

難消化性デキストリンは胃内では、ほとんど分解されず、小腸で5~10%消化吸収され、90~95%が大腸に到達し、40%が糞便中に排泄されます。消化吸収過程でどのような作用があるかを説明していきます。

■整腸作用

便秘は、食物繊維不足、運動不足、水分不足、過度なダイエット等が原因でおこります。

難消化性デキストリンは、ヒトの唾液アミラーゼ、膵臓アミラーゼの消化酵素で消化されませんが、一部は腸内細菌の栄養源になり、盲腸内の酢酸、プロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸が増加し、内容物のpHが低下、腸の蠕動運動を刺激し排便[※5]を促します。

その結果、排便回数・排便量の増加、便性の改善がみられ、便秘では、排便回数・排便量が増加し、下痢では水状便の回数が減少します。

■体脂肪減少作用

ヒト試験で1日3回毎食時に難消化性デキストリン10gを3ヵ月間摂取させる実験があります。内蔵脂肪型肥満者(100㎡以上)については、内臓脂肪面積が投与前より約25%減少するという結果がでました。

難消化デキストリンは、食後の血糖コントロール、脂肪蓄積に作用するインスリンの追加分泌のコントロール、インスリンの過剰分泌によって引き起こされる肝臓からの脂肪放出、脂肪細胞での脂肪の合成分解を抑制することで、体脂肪を減少させます。[※3]

■食後の血糖値上昇抑制作用

健常人に対する耐糖能を試験した研究があります。ショ糖負荷試験では血糖およびインスリン分泌応答を抑制し、グルコースおよびマルトデキストリン負荷試験はインスリン分泌応答のみ抑制したとの報告です。

また、難消化性デキストリンを単独摂取した場合は、血糖およびインスリン分泌の有意な変化はみられませんでした。よって、難消化性デキストリンが、消化管において同時に摂取した糖質に対し、吸収抑制効果が働くこと[※6]がわかりました。

また、「うどん定食」「菓子パン」を試験食とし、一緒に摂取する飲み物として緑茶またはコーヒーに難消化性デキストリンを添加した結果、血糖値上昇抑制効果をあらわしました。

■食後の中性脂肪上昇抑制作用

難消化性デキストリンを配合した飲料と脂肪を多く含む食事をしたところ、食後の中性脂肪の上昇は緩やかになりました。これは、難消化性デキストリンが腸内に存在することで、ミセルへの脂質の摂り込み抑制とミセルからの脂肪酸、グリセロールの放出が抑制された[※7]と考えられるからです。

■ミネラルの吸収促進作用

難消化性デキストリンがほかの水溶性食物繊維とは異なり、サラサラした性質もち、腸内細菌の栄養源として利用され[※8]腸内環境が整えられるためミネラルの吸収を促進すると考えられます。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

食物繊維の摂取量が足りないと感じる人、内臓脂肪が気になる人、血糖値・中性脂肪の数値が基準値を超えている人、体調をしっかりと自己管理した人などに摂ってもらいたい食品です。

難消化性デキストリンは、生活習慣が原因で発症する疾病などに対しての予防や改善効果に期待がもて、機能性の高い食品といえるでしょう。

手軽に持ち運べるスティックで販売されているので、気軽に取り入れてみることをおすすめします。

難消化性デキストリンの摂取目安量・上限摂取量

日本人の食物繊維摂取量は、1960年代後半頃から減少しています。食物繊維摂取不足が生活習慣病の発症に関連するという報告が多いことから、目標量が設定されています。目標量とは、生活習慣病の予防を目的にしている数値になります。

日本人の食事摂取基準2015年版では、成人男性で20g/日以上、成人女性で18g/日以上[※9]です。

現状の摂取量は、成人男女で約12~16g/日。実際の摂取量の数値は目標数値より低く、穀類の摂取量減少が食物繊維摂取量減少につながっています。

食事に含まれている食物繊維は以下のとおり。

  • そば1人前(茹で240g) 4.8g
  • おから1人前(40g) 2.5g
  • 納豆1パック(50g) 3.4g
  • ひじき(10g) 4.3g
  • 玄米飯(100g) 1.4g
  • 干し柿(1個 30g) 4.2g
  • アボガド(1個 230g) 12.2g
  • リンゴ(1個 300g) 4.5g

目標量は、1日1回だけ食べれば満たされる量ではありません。主食を週1回玄米に変える、副菜として卯の花やひじき煮を摂る、朝食に果物を添えるなどの工夫をしてみましょう。

特定保健用食品(トクホ)の規格基準型制度として、難消化性デキストリンの保健用途表示として1日の摂取目安量があります。

お腹の調子を整えるでは3~8g、糖の吸収をおだやかにするので血糖値の気になる人では4~6gの表示になっています。また、血糖値異常を指摘されたかたや糖尿病の治療を受けているかたは、事前に医師などの専門家にご相談の上で摂るようにと、注意項目に記されています。[※10]

難消化性デキストリンのエビデンス(科学的根拠)

成人男性12名を対象に難消化性デキストリン10gを1日3回、毎食ごとに3ヵ月間投与する試験を行なった結果、体脂肪が有意に低下、血清総コレステロール値および中性脂肪値の有意差が認められました。

血糖値においては、平均血糖頂値が200mg/dlを超える耐糖能異常が認められていましたが、投与後有意な耐糖能の改善が認められました。

3か月間の試験期間中、下痢などの消化器症状を含めた難消化デキストリンに起因する随伴症状は認められなかったとの報告もあります。[※3]

ヒト試験からも、難消化性デキストリンは安全で有意な効果をだすことができると食品といえるでしょう。

研究のきっかけ(歴史・背景)

食物繊維の歴史は古代ギリシャにまでさかのぼります。その時代、小麦ふすまには便秘予防にいいと知られていましたが、エネルギーにならない、消化・吸収されにくい食べ物だと考えられていました。

1930年代になってケロッグ氏(アメリカ合衆国の医学博士)は、小麦ふすまに関心をもち、便秘患者・大腸炎患者への影響を確認しました。

その後も食物繊維に関心が高まり、イギリスのマッカリソン博士、ウォーカー博士、ヒップスレー医師、バーキット博士らによる研究が進められてきました。

それ以降、食物繊維は体に必要不可欠な栄養素として第六の栄養素と位置づけされるようになりました。[※11]

世界共通の定義は定まっていませんがが、日本での食物繊維の定義は「(植物性食品だけではなく、動物性食品起源も含めて)人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」[※11]という考え方が一般的に受け入れられています。

専門家の見解(監修者のコメント)

日本食物繊維研究会誌で岸本由香・若林茂(松谷化学工業株式会社 研究所)、徳永勝人(市立伊丹病院 内科)3人による研究では、生活習慣病の原因になる肥満が難消化性デキストリンを用いて改善効果があるかを検証するものです。

「難消化性デキストリンは溶解性が非常に高く、溶液は透明であり、しかも味が殆どないという特性があるため、様々な食品に添加しやすいという利点がある。利点を最大に利用して被検者が自由に摂取方法を選択することができたため、3ヵ月間飽きることなく継続摂取することができた。」

「食事と共に確実に難消化性デキストリンを摂取することができれば有効性は確保できることを示唆するもの。難消化性デキストリンは効果と安全性を勘案したとき、生活習慣病の予防を目的とした食事療法の補助手段として極めて有用であると考えられた」(『J-STAGE 日本食物繊維研究誌/4巻(2000)2号 内臓脂肪蓄積に及ぼす難消化性デキストリン長期投与の影響』より引用[※3]

上記記述のように気軽に食生活に取り入れられることから、ストレスなく生活習慣を見直し習慣化しやすいと考えられます。

難消化性デキストリンを摂取するには

難消化性デキストリンは健康食品として販売されています。低粘性・低甘味で溶解性が高く、いろいろな料理に混ぜて摂取することができます。

スティックの小分けになっている製品もあるので、出先でも気軽に摂ることができます。

特定保健用食品の関与成分として認められ、脂肪の吸収を抑えるといった表示が可能なため、飲料などに難消化性デキストリンを配合した飲料なども多数あります。

食事をするときにトクホや機能性表示食品の飲料を一緒に飲むことで、一定の効果が期待できます。

一緒に摂るべき成分

乳酸菌と一緒に摂ることで腸内環境の改善に役立ちます。乳酸菌は栄養源になる水溶性食物繊維(難消化性デキストリン)を好んで分解することがわかっているからです。

食物繊維の優れているところは、消化されずに乳酸菌の存在する大腸まで届き、乳酸菌の栄養源となり、善玉菌を増やすことができる点。

腸内環境が改善されることで生活習慣病の予防や改善にもつながります。[※12]

難消化性デキストリンに副作用はあるのか

難消化性デキストリンには現在、副作用の報告はありません。

消費者庁長官が許可する特定保健用食品(トクホ)の関与成分であり、消費者庁が定めた一定の条件をクリアした機能性表示食品でもあります。

1990年に米国FDA(食品医薬品局)が、1日の摂取量の上限値を明確に設定する必要がないほど安全性のある食品として認めています。[※13]

しかし、過剰に摂取した場合はお腹がゆるむ場合もあるため、サプリメントなどでの摂取量には気をつけましょう。特定保健用食品(トクホ)には、1日の摂取量目安量が表示されていますので、必ずチェックするようにしましょう。