サイプレスは、鎮静作用や抗菌作用などの効果がある成分です。
ここでは、香料としてのサイプレスの効果・効能や作用に関して解説しています。研究報告や論文などのエビデンス、専門家の見解も合わせて掲載しました。
サイプレスは地中海地方に分布する針葉樹で、木材や精油に加工して使われる植物です。[※1]スッキリとした香りが特徴で、アロマテラピーや男性用香水に利用されています。
サイプレスの香りには鎮静作用や強壮作用があるとされており、高まった神経をしずめたり高揚感を得たりなどの効果が期待できます。とくに精油は抗菌効果が高く、皮膚接触以外にも香りをかぐだけで殺菌効果を得られる[※2]ことが実験によって証明されました。
サイプレスには以下の効果があると考えられています。
■鎮静作用
呼吸や心拍を落ち着かせる鎮静作用があり、高まった神経を元に戻してくれます。怒りをやわらげる効果が期待できるため、イライラしやすい、怒りやすい人に適しています。[※1][※3]
■抗菌作用
サイプレスの精油には、細菌に対する抗菌・殺菌効果があります。精油を使った実験では、直接肌に触れるだけでなく、香りをかぐだけでも抗菌効果を得られるという結果もわかりました。[※1][※2][※3]
■利尿作用
サイプレスは、利尿作用によって体内の有害物質や老廃物を外に排出してくれます。[※1][※4]
■抗炎症作用
サイプレスに含まれるセスキテルペン炭化水素類には、抗炎症作用が確認されています。また、エステルおよびエーテルには抗けいれん作用、ケトンには粘液溶解作用があることから、気管支炎に有効とされています。[※4]
■肥満の抑制
岐阜大学の研究により、肥満因子をつくりにくくする作用がわかっています。そのため、サイプレスには肥満の抑制効果があることが示唆されました。[※5][※6]
また、サイプレスに含まれるα-ピネンやδ-3カレンには以下の効果が認められています。[※3][※7]
サイプレスを摂取すると細菌に対して抗菌効果を示し、胃炎や消化性潰瘍などの原因となっている菌の増殖を抑制します。除菌することで胃炎や照会性潰瘍などの症状が改善することが報告されており、除菌療法として期待できるでしょう。[※2]
サイプレスの香りをかぐことで、主要成分のguaiolやβ-eudesmolが中心となり、視床下部の神経活動を促進。脂肪燃焼を引き起こし、肥満の抑制効果が得られると考えられています。[※6] [※8]
香りによる脂肪分解は、視床下部の腹内側核から交感神経に働きかけ、ノルアドレナリンがβ受容体に作用することで発生。褐色脂肪細胞のミトコンドリアに含まれる脱共役たんぱく質UCP1が活性化[※6]することで、脂肪の分解が進むことが示唆されています。
サイプレスには鎮静作用があるため、落ち着きたいときやリラックスしたいときに摂るのが最適です。
サイプレスのスッキリとした香りは興奮した気分を落ち着かせ、冷静さを取り戻させてくれます。怒りをやわらげる作用も期待できるため、イライラや不安がつのっている人は使ってみましょう。
また、サイプレスは消臭効果・抗菌効果を持つ成分が含まれているため、デオドラントとしても利用できます。体臭や汗のにおいが気になるのであれば、タオルにしみこませて使ってみるのもひとつの手です。
サイプレスの摂取目安量について、くわしいことはわかっていません。ただしサイプレスには刺激性があるリモネンが含まれているため、高濃度で使うと皮膚が反応して炎症を起こす可能性があります。
敏感肌の人は注意して使い、肌に合わない場合は使用を止めましょう。
サイプレスは香料として使用されることが多く、香りの効果についての研究報告が複数あります。以下に、香りの効果について示したエビデンスをまとめました。
京都府立医科大学大学院医学研究科では、各種エッセンシャルオイルの抗菌作用について、院内感染しやすいメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を使った実験を実施。直接エッセンシャルオイルと細菌を接触させて抗菌活性を確認しています。
この実験からサイプレスにはMRSAの増殖を抑える効果があることがわかりました。
エッセンシャルオイルの塗布ではなく、香気成分を使った芳香拡散でも抗菌効果が得られるとの研究もあります。このことから、 香気成分だけでも抗菌作用があると示されました。[※2]
岐阜大学では、サイプレス材の精油を使った実験が行われています。高脂肪食で飼育したマウスを対象に、成分ごとに分けたサイプレス材精油の香りをかがせ、刺激を与えた後の交感神経活動を調査。実験結果から、guaiolとα, β-, γ-eudesmolを混合した精油では交感神経活動が促進していることが明らかになりました。
交感神経活動が活発化することにより、脂肪の分解が促進されて肥満抑制効果が得られることが示唆されています。[※6]
また、サイプレスに含まれるα-ピネンの研究も進んでいます。
森林総合研究所の池井晴美らは、α-ピネンがもたらすリラックス効果について研究しています。20代の女性を対象に、自律神経活動の指標となる心拍数のゆらぎを観察。人工気候を再現した室内で心拍間隔と心拍数を測りました。
その結果、副交感神経の活動を示す心拍のゆらぎの高周波成分は空気より46.8%上昇。心拍数も2.8%低下しました。実験後のアンケートでも「快適」と答える人が多く、α-ピネンの吸入に生理的なリラックス効果が証明されました。[※9]
サイプレスは古代エジプトやギリシャ、ローマなどで神聖な木とされており、ミイラの棺や彫像の材料として用いられていました。サイプレスの木材は堅く耐久性に優れていることから、建築材や家具材として使われることも多かったとされています。
アロマとしての利用は古代ギリシャの時代からあり、呼吸器系の症状をやわらげるために利用されてきたことがわかっています。
現在は研究が進み、効能や成分について分析されています。鎮静作用や鎮咳(せき止め)効果も報告されており、さまざまな分野で使われるようになりました。
収れん作用を持つことから、最近では髭剃り用ローションや男性用化粧品にも用いられています。
研究によって効果が実証されていることから、アロマとして利用されているサイプレスをおすすめする専門家もいます。
アロマテラピー&メンタルハーブティー「ル・クール」の中野智美氏は、サイプレスの効果について次のように語っています。
「サイプレスは引き締め効果があるといわれ、たるんだ皮膚やお腹に有効です!」(AllAboutBeauty「たるみはサイプレスできゅっと引き締め![アロマテラピー] 」より引用)[※11]
「循環を良くするだけでなく、呼吸器系にもおすすめ。咳を鎮めるともいわれますので、風邪の季節には用意しておきたいものです。」(AllAboutBeauty「たるみはサイプレスできゅっと引き締め![アロマテラピー] 」より引用)[※11]
サイプレスには体内の滞ったものを取り除くうっ滞除去作用がある[※3]ことから、循環系の改善に効果があるといわれています。
体の循環が良くなるとリンパや静脈の流れを良くする効果も期待できるため、冷え性やむくみなどの改善につながります。
また、サイプレスは呼吸器の症状を緩和する目的でも使用されます。せきを止める効果があるため、乾燥しやすい季節はサイプレスの芳香浴やトリートメントなどが使われます。
ただし、アロマオイルは使用法を間違うと炎症や体調不良の原因になってしまうため注意が必要。JAA日本アロマコーディネーター協会認定アロマコーディネーターの川上千香子氏は、サイプレスを含むエッセンシャルオイルのリスクについて以下のように述べています。
「アロマオイルも体質や状況によっては避けたほうがいい、禁忌の香りもあるんですよ」 (マイナビニュース「実は間違いだらけのアロマテラピー」より引用)[※12]
「妊婦さんはとくに禁忌の香りに気を付けないといけません。」(マイナビニュース「実は間違いだらけのアロマテラピー」より引用)[※12]
アロマオイルは強い香りのものを吸入すればいいというわけではなく、体質や状況によっては避けるべき香りがあります。
とくに赤ちゃんがお腹の中にいる妊婦は、通経作用や刺激性のある香りは厳禁です。出産までは、日常的に使っているアロマオイルを控えるべきでしょう。サイプレスは刺激性のある成分を含むため、使用法を確認したうえで利用してください。
サイプレスは香りを吸入することで作用するため、香りを全身で感じられる芳香浴やトリートメントで使うと効率良く効果を得られるでしょう。[※3]アロマポットや加湿器などを使って、部屋全体に香りが広がるようにすると効果的です。
また、入浴時にスイートオレンジやラベンダーとブレンドした精油を湯船に使ってみるのもおすすめ。どちらもリラックスに作用するアロマなので、サイプレスのリラックス効果を高めてくれます。数滴使うだけで癒し効果やデトックス効果が期待できるでしょう。
サイプレスとブレンドすると良いといわれている香りや精油には以下のようなものがあります。[※1][※3]
■ジュニパーベリー
サイプレスと同じヒノキ科の植物。サイプレス同様に利尿作用があるため、効果が高まります。
■オレンジスイート、クラリセージ、ラベンダー
リラックス効果がある香りです。サイプレスで興奮を鎮め、これらでゆっくりとリラックスできます。
■・サンダルウッド
ブレンドしてコスメとして使うと、サンダルウッドが肌を柔らかくし、サイプレスが潤いを与えてくれます。
■ベルガモット、レモン
ベルガモットにも、サイプレスのように興奮を抑える効果があるので、効果が高まるでしょう。抗菌作用にも優れているといいます。
■カモミール・ローマン
カモミール・ローマンには婦人科系の症状緩和作用があります。サイプレスにも同様の作用があるため、相性が良い香りです。
サイプレスは生理を促す通経作用があるため、妊娠中は避けたほうが良いとされています。[※3][※12]
相性が良いとされる、ジュニパーベリーやクラリセージ、ラベンダー、カモミール・ローマンなどにも同様の作用があるため、妊娠中は使用を控えましょう。
また、肌への刺激があるため、[※3]コスメを手づくりする際の濃度や精油を扱うときは注意しましょう。コスメやマッサージオイルとして使う場合は必ずパッチテストをしてください。肌が荒れてしまったときは、すぐに使用を中止して医療機関を受診するようにしてください。