美容や尿路感染症(膀胱炎)の予防に良いとされるクランベリー。ポリフェノール類やビタミン・ミネラルなどを含んでいる赤い実は、ジュースやソースとして親しまれています。最近ではドライフルーツの美容効果に注目が集まっていますが、クランベリーのドライフルーツはグラノーラやヨーグルトと一緒に食べるとよいと紹介されるなど、人気が高まっています。
ここではクランベリーにどのような効果・効能があるのか、副作用はないのか、どのように使えばいいのかなどについて説明していきます。
クランベリーとはツツジ科スノキ属の常緑低木の総称です。主な種類は「ツルコケモモ」と呼ばれるもの。ほかにも、ヒメツルコケモモ、ベアベリー、アクシバといった種類があります。
白やピンクの花をつけ、ツヤのある赤い実がなります。クランベリーは北米3大フルーツのひとつとされていますが、果実はとても酸っぱいため砂糖を加えたジュースやお菓子、ジャム、ソースといった加工品が流通しています。最近ではドライフルーツとしてもポピュラーになっています。
クランベリーには以下の成分が含まれています。
・ポリフェノール類(プロアントシアニジン)
・フラボノール類(ケルセチン)
・フラボノール配糖体
・カテキン
・トリテルペン類
・ビタミン類(ビタミンC、E)
・ミネラル(マンガン、カルシウム)
・食物繊維
・キナ酸
・シュウ酸
・サリチル酸
クランベリーにはプロアントシアニジンというポリフェノールが含まれています。抗酸化力が高く、その効果はビタミンCの20倍にもなるそうです。また、キナ酸は尿路感染症の予防に良いとされる成分です。
いろいろな有効成分が含まれていますが、カルシウムと結合しやすいシュウ酸やアスピリンと似た構造を持つサリチル酸は人によっては避けたい成分。
シュウ酸は腎結石の原因になる可能性があり、サリチル酸はアスピリンアレルギーの人が摂取するとアレルギー症状をまねくおそれがあります。[※1]
クランベリーには以下のような効果効能が期待できます。[※1][※2]
■尿路感染症の予防
クランベリーには尿路感染症の予防に効果があるという研究結果が多数あります。しかし、症状が出てしまった場合の改善はできないようです。
■尿のニオイを抑える
クランベリーを摂取すると、尿のニオイが抑えられます。
■むくみ改善
クランベリーが腎臓の働きをサポートしてくれるため、余分な水分や老廃物を体外へ排出してくれます。
■歯周病の予防
クランベリーの抗酸化作用により、口腔内を健康に保つ効果や歯周病菌の増加を抑制すると効果があるといわれています。
■美肌
クランベリーには抗酸化作用があるため、肌細胞のダメージを軽減しシミやたるみの改善効果が期待できます。
■生活習慣病の予防
クランベリーにはコレステロールの酸化を防ぐ効果があるため、生活習慣病の予防に役立ちます。
■抗腫瘍効果
クランベリーにはがん細胞の成長を抑制する働きがあるのではとされ、研究がすすめられています。
クランベリーには、さまざまな効果・効能があるとされていますが、科学的な臨床データは不十分な状態です。[※1]しかし、長期にわたり人々に利用されてきた歴史を持っているため、効果がないわけではありません。
現在、有効性が高いといわれているのが尿路感染症の予防効果です。クランベリーに含まれるポリフェノールやビタミンといった抗酸化物質の働きにより、感染症の原因となる菌の繁殖を抑えます。
また、キナ酸には尿のpH値を弱酸性に保つ働きがあり、尿中に菌が増殖しにくい環境にしてくれています。こうした作用から、尿路感染症の予防ができるとされています。
ただし、殺菌効果は持っていないため菌が繁殖してしまったあとにクランベリーを摂取しても、あまり症状が改善することはありません。[※1]
クランベリーに含まれているプロアントシアニジンなどのポリフェノール類は、高い抗酸化作用があります。体内に発生した活性酸素の働きを抑制してくれるため、細胞やコレステロールの酸化を抑制します。美肌効果や血管を健康に保ってくれる効果が得られるとされています。
クランベリーは以下のような人におすすめです。
クランベリーは果実をそのまま食べることはほとんどなく、ジュースやソース、ドライフルーツとして食すのが一般的です。クランベリーには、明確な摂取量目安や上限は定められていません。
沖縄県薬剤師会では、クランベリージュースの摂取目安量は濃度50%~100%のものを1日90~160mlとしています。[※3]
ドライフルーツは大さじ2~3杯程度(20g~30g)が目安となっていますが、砂糖が添加されていることがあります。糖分を控えたい人は成分表示のチェックを忘れないようにしましょう。
クランベリーは食用としてだけでなくクスリとして使われてきた歴史を持っていますが、その効果・効能は科学的なデータがまだ揃っていない状態です。
尿路感染症にクランベリージュースが有効とされる試験をみてみましょう。
アメリカのブリガム&ウィメンズ病院でAvorn Jらによって行われた高齢女性153人を対象にした試験では、クランベリージュース300mlを1か月間毎日飲むグループとそうでないグループに分けて比較しました。
その結果、クランベリージュースを飲んでいたグループにおいて、放尿頻度が減り尿路感染症の発症率が下がりました。[※4]
反対に、効果がなかったとするエビデンスをみてみましょう。
アラバマ大学のWaites KBらは脊髄損傷の患者48名に対して、一方のグループにはクランベリー抽出物入りのカプセルを、もう一方には偽薬(プラセボ)を与えました。結果として、両グループの放尿頻度や尿路感染症の発症率に差異はみられませんでした。[※5]
このように、クランベリーの尿路感染症の予防については研究ごとに結果が分かれているというのが実情です。
イランにあるテヘラン大学医学部のShidfar Fらは、2型糖尿病患者にクランベリージュースを与え、血清中グルコース(糖)量やコレステロールについて調べる実験を行いました。
クランベリージュース240mlを12週間摂取させたところ、血中のグルコース量の低下や体内の抗酸化酵素が活性化したことがわかりました。しかし、悪玉コレステロールといわれるLDLコレステロールに影響は与えなかったようです。 [※6]
血清グルコース量の低下がみられましたが、クランベリーは空腹時の血糖値には影響を与えないといわれています。糖尿病には効果が無いと考えるのが、一般的な見解のようです。
クランベリーは、アメリカの先住民であるオブジワ族が狩りで動物をおびき寄せるエサとして使い、別の部族は食用や薬として使っていました。イヌイットはクランベリーの葉をタバコ代わりに使用していたという歴史があります。
当時、クランベリーの使い方として一般的だったのは保存食「ペミカン」です。干した肉に動物性の脂肪とクランベリーを混ぜた保存食は、持ち運びがしやすかったため旅人や商人に重宝されました。
17世紀に入ると、砂糖やハチミツなどの流通がされるようになり酸っぱさが特徴だったクランベリーに甘さが加わります。
栄養価が高く保存しやすいクランベリーは、18世紀から19世紀にかけて航海の必需品となります。ビタミンC不足で発症する壊血病や病気の予防のために食べられていました。
現代ではクランベリーの持つポリフェノールの働きや栄養価の高さに注目があつまり、さまざまな研究がすすめられています。
豊橋創造大学に所属する土屋紀子教授は、クランベリージュースについて次のようにコメントしています。
「日常の飲用水であるクランベリージュースは豊富なポリフェノール系の含有量による抗酸化作用の発見によって、尿路感染症予防の他に生活習慣病予防などへと代替医療の求める優れた飲み物として効力がますます期待されている。
性生活活動期の女性や更年期の女性、そして高齢者や在宅ケアの弱者などにクランベリージュースを1日に、200ml から 300ml 程度の常用飲用を奨めている」
(総説「クランベリージュースの効用 ―日常飲用水で尿路感染症予防を期待できるか―」より引用)[※7]
土屋教授の見解では、尿路感染症や生活習慣病の予防にクランベリージュースが応用できる可能性が高いとのことです。毎日200~300mlの飲用なら、無理せずに続けられるでしょう。ただし、クランベリージュースの摂取が禁忌となる人も一部存在するため、摂取する前に確認が必要です。土屋教授は、クランベリーの禁忌についても解説しています。
「ワーファリン服薬者や腎結石既往者にとってクランベリージュースやその産物は禁忌であることを知った。健常者と病弱者・病状差および年齢差など対象によるクランベリー効用には自ずと違いがあって当然と思われる。
免疫力も違い、その人の PH も食事内容などによって格差もあることから期待度も違って当然と思われる。しかし、未だ人体への影響について異なる条件に関する実験研究では課題を残している」
(総説「クランベリージュースの効用 ―日常飲用水で尿路感染症予防を期待できるか―」より引用)[※7]
クランベリーによる作用・副作用はまだ研究段階のものが多く、詳細は明らかになっていません。たしかな安全性が確認できるまでは、少量の摂取にとどめておくべきでしょう。
クランベリーのほとんどが北欧やアメリカ、カナダ産。日本産のクランベリーはほぼ流通していないようです。海外からの輸入ものが多いため、生クランベリーもあまり販売されていません。冷凍されたものやドライフルーツとして販売されています。ただ一部のスーパーマーケットやネット通販で購入が可能です。
ポリフェノールやフラボノイド類、ビタミンCなどが豊富に含まれているため抗酸化作用に優れており、カルシウムやミネラル、食物繊維なども摂れるのがクランベリーの特徴です。
ドライフルーツのクランベリーは実をそのまま食べるか、ヨーグルトなどに混ぜて食べます。砂糖が使われていないタイプなら、料理に添えてもいいでしょう。酸味がアクセントになります。
クランベリージュースはカクテルの材料としてお酒を提供する店やバーなどでも重宝されています。
アメリカなどでは感謝祭の七面鳥にクランベリーソースは定番。あっさりした味の鶏肉などと相性が良いといわれています。以下に鶏肉を使ったレシピを紹介します。
■鶏肉のクランベリーソース[※8]
【クランベリーソース】
【とろみ用】
【鶏肉】
クランベリーと一緒に摂取することで、相乗効果が期待できる食材をまとめました。
ダイエット/カカオ(チョコレート)[※9]
カカオに含まれるポリフェノールには、脂肪燃焼を促進させる作用があります。ドライクランベリーは食べやすいように砂糖を加えているものがあるため、ダイエットする時はカカオのように脂肪燃焼を促す食べ物と一緒に摂るといいでしょう。高カカオのチョコレートがおすすめです。
薄毛改善/青リンゴ
リンゴに含まれるポリフェノールのプロシアニジンには、育毛効果があるとされています。クランベリーのプロアントシアニジンが持つ高い抗酸化力と合わさることで、頭皮の環境を整えて薄毛の改善ができるとされています。
クランベリーは過度に摂取しない限り、安全性の高い食品です。しかし、過剰摂取を続けてしまうと胃の不快感や下痢、腎結石を生じるおそれがあります。たとえば、クランベリージュース1Lを毎日飲み続けたような場合です。
子どもや妊娠中の人は、ジュースのような食品であれば摂取しても安全でしょう。医療目的での使用は十分な臨床データがないため、使用は控えてください。
■禁忌
ワルファリンカリウム(血液凝固抑制剤)を服用している人がクランベリーを摂取するのは禁忌とされています。クランベリージュースに含まれる成分が薬の効果を増強させ、消化管出血が起こり死亡した例があるためです。[※10]
クランベリーの摂取に注意が必要な人
クランベリーには以下の薬との相互作用が確認されています。[※1]
■ワルファリンカリウム(血液凝固抑制剤)
クランベリーの成分の作用で薬が体内で留まる時間を長くしてしまい、出血や紫斑の可能性を高めてしまうおそれがあります。
■肝臓で代謝される薬
肝臓で代謝される薬とクランベリーを併用すると、薬の作用や副作用が増強されるおそれがあります。対象となる薬には、アミトリプチリン塩酸塩・ジアゼパム・ジロイトン・ロバスタチン・ケトコナゾールなどがあります。
■ニフェジピン、アトルバスタチンカルシウム水和物、ジクロフェナクナトリウム
クランベリーやクランベリージュースとこれらの薬剤を併用すると、薬の分解を抑制し作用・副作用が増強されるおそれがあります。
ハーブやサプリメント・健康食品との相互作用は確認されていません。