コーヒーは世界でも愛飲者が多い飲み物。豆の種類や淹れ方、アレンジ方法などによって幅広く楽しめるのが特徴です。嗜好品としてだけでなく、健康効果も高いことが近年明らかになっています。しかし、コーヒーに含まれるカフェインには注意が必要です。
このページでは、コーヒーの持つ効果・効能や副作用、カフェインの懸念点などについてまとめています。
コーヒーは、嗜好品だけでなく、健康維持やダイエット目的でも飲まれている飲料です。
コーヒーに含まれる主な成分は2種類。カフェインとクロロゲン酸類(コーヒーポリフェノール)です。
カフェインはアルカロイド類の1種。アルカロイド類は植物に多く含まれ、薬理作用を持つものが多いといわれています。
そのため、カフェインにもさまざまな効果効能があるとされています。
クロロゲン酸類は主にコーヒーに含まれるポリフェノールの1種。研究が始まったのはここ十数年のことですが、抗酸化作用や血糖値の改善効果、糖新生抑制効果などがあるという研究データが公表されています。
その他、コーヒーにはタンニンやナイアシンなどが含まれています。
コーヒーには下記のような効果・効能があるとされています。[※1]
■覚醒効果
カフェインより、寝不足時の眠気を取って覚醒させてくれます。
■体脂肪低減
コーヒーには、体脂肪を減らす効果があります。メタボリック症候群の改善やダイエット効果が期待できます。
■がんリスクの低下
コーヒーには、食道がん・胃がん・結腸がん・乳がん・肺がんのリスクを低下させる効果があるといわれていますが、データは 不十分です。
■むくみ解消
カフェインには利尿作用があるため、体内の老廃物を排出する働きがあり、むくみ解消に繋がります。
■血糖値の低下
コーヒーに含まれるクロロゲン酸は、糖の吸収を抑える働きがあるため、血糖値を低下させたり、ゆるやか にしてくれます。
■糖尿病の予防や改善
コーヒーには、2型糖尿病の予防や症状の改善に 効果があるとされています。
■血流の改善
コーヒーには血中の悪玉コレステロールが酸化するのを防ぐ効果があるため、血流が改善し循環器系の疾病リスクが低減します。
■抗炎症効果
脂肪細胞の炎症を抑える働きがあるといわれています。[※2]
■胆石予防
コーヒーにはコレステロールが原因である胆石の予防効果があるとされています。[※1]
■リラックス効果
コーヒーの香りには、リラックス効果があるため緊張が続くときや、一息つきたいときに効果的です。[※3]
■脱臭効果
コーヒーを抽出した後のカスには脱臭効果があります。トイレや冷蔵庫など臭いが気になる場所に置いておくと効果的です。[※5]
■パーキンソン病の抑制
コーヒーに含まれるポリフェノールには、パーキンソン病の抑制作用があるのではないかと示唆されています。[※1]
■アルツハイマー病の予防
カフェインの働きにより、アルツハイマー病の原因とされるたんぱく質の合成が阻害されるといわれています。[※4]
カフェインには中枢神経を興奮させる作用があり、これが覚醒や利尿、脂肪燃焼を促します。[※1]
利尿作用について見てみましょう。
カフェインが体内に入ると、副交感神経を刺激し腎臓の血管を拡張させ血流を増やします。腎臓は血液をろ過して老廃物を取り除く働きがあるため、血流が増えると老廃物のろ過も進むことになります。
老廃物は尿となり、体外へ排出されるため、カフェインを摂取すると、尿の量や回数が増えるとされているのです。
しかし、コーヒーを良く摂取している人は、カフェインに対して耐性ができてしまうため、利尿作用が出にくくなっています。[※6]
クロロゲン酸にはLDLと呼ばれる悪玉コレステロール を抑制する作用があります。[※7]
LDL を溜めこんだマクロファージから、コレステロールを排出する働きを活性化させます。[※8] 結果としてコレステロールの抑制や血流の改善に繋がります。
コーヒーの香りにはリラックス効果があります。脳波を調べると、リラックスしている人が出すα波の値が増えたという研究があり、コーヒーは飲用しなくても香りだけで心を落ち着ける作用があることがわかりました。[※3]
コーヒーは下記のような人におすすめです。しかし、摂りすぎは良くないといわれているため1日1~5杯程度にとどめておきましょう。
コーヒーの摂取量目安は1日1~3杯ほど。多くても5杯程度までとするのがいいようです。
これは、コーヒーに含まれるカフェインの量により変わります。厚生労働省では、カフェインの摂りすぎに注意を促していますが、明確な摂取上限は定めていません。
イギリスやカナダ、世界保健機構(WHO)では、それぞれカフェインの摂取量をまとめています。[※9]
■世界のカフェイン摂取量の目安
イタリアの国立栄養研究所で行われた介入研究では、成人の男女10名にコーヒー200mlを飲ませ、LDLコレステロールの酸化を測定。コーヒーがLDLコレステロールの酸化を抑制したと結果が出ています。[※10] 酸化したLDLコレステロールは血管壁を傷つけることから、酸化を抑えるコーヒーには血流を良くしたり血管を健康に保ったりする効果があるのではなかいかと考えられています。
カフェインがアルツハイマー病の予防に役立つとする研究があります。アメリカのフロリダアルツハイマー病研究センターは、マウスを使った実験で、カフェインがアルツハイマー病の原因の1つであるアミロイドβというたんぱく質の蓄積を抑制したと発表しました。[※11]
さらに、コーヒー はパーキンソン病の治療や予防に役立つとする研究もあります。
岡山大学大学院で脳神経期工学分野教授である浅沼幹人氏が行った実験で、パーキンソン病モデルのマウスにコーヒーに含まれているカフェ酸やクロロゲン酸を与えたところ、パーキンソン病の原因とされる脳の黒質でのドーパミン神経系の欠損が抑制されていたのです。[※12]
詳しいメカニズムはまだ解明されていませんが、コーヒーにはパーキンソン病予防に効果があるとされています。
コーヒーの効果について書かれた記述は、西暦900年代にまでさかのぼります。アラビア人医師ラーゼスによる記述が文献に残されていました。
日本には18世紀ごろ、長崎の出島を通してオランダ人よりコーヒーが持ち込まれたといいます。しかし、味が日本人好みでなかったことに加え鎖国政策もあって、なかなか日本にはコーヒー文化が広まりませんでした。
幕末や明治の初期を経て、外国人居留地にコーヒーハウスができたことで、上流階級の日本人もコーヒーを飲み始めます。それから、第二次世界大戦後の1960年に、日本で初めてのインスタントコーヒーが発売され、一般家庭でもコーヒーを飲む習慣が生まれました。
缶コーヒーが定着したのは、大阪万博があった1970年。それまでは瓶入りのものが主流でした。缶コーヒーが流行したのは現UCCが販売したコーヒーがヒットしたのがきっかけです。
2000年代に入ると、チルドカップに入ったコーヒーが店頭に並ぶようになります。スターバックスを始めとする、海外のコーヒーショップが人気を競う時代となりました。
それから、豆を厳選し1杯1杯ドリップして提供するカフェやコンビニエンスストアでもマシンを使って淹れたてのコーヒーを提供するなど、コーヒーの楽しみ方は今もなお広がっています。
コーヒーの香りについて実験を行った杏林大学医学部精神神経科学室の教授である古賀良彦氏は、香りを楽しむだけでなく、さらにコーヒーを淹れるメリットについて、ストレス解消の観点から下記のように答えています。
「まず自分でコーヒーを淹れるために、短時間でも作業から離れるので休憩できます。香りの効果でリラックスもできる。しかも、コーヒーを淹れるという作業には、お湯を沸かしたり、コーヒー豆を挽いたり、豆の量とお湯の量を考えあわせたりといったレクリエーションとしての楽しみがある。『3R』をすべて満たしているコーヒーは、ストレスを逃がすにはとてもよい手段なのです」
[全日本コーヒー協会 コーヒーと健康「香りから生まれる、 「癒し」と「集中力」。より引用」][※3]
※3Rとは「レスト(離れる)」「リラックス」「レクレーション」のこと
ストレスフルなときは、気持ちを入れ替えるためにコーヒーを入れてみてはいかがでしょうか。香りの効果でよりリフレッシュできるでしょう。
コーヒーと脳卒中リスク低減について、学校法人聖路加国際大学聖路加国際病院で脳神経外科部長を務める篠田樹医師は、下記のように述べています。
「コーヒーを飲む習慣のある人では、飲む頻度にかかわらず、またお酒やタバコ、年齢を加味しても微小脳出血が少ないという結果が得られました」
[全日本コーヒー協会 コーヒーと健康「隠れた脳出血を、コーヒーが予防。」より引用][※12]
篠田医師は、コーヒーを摂取することで、脳出血のリスクが低下するとしています。
そして、飲む量については下記のように答えています。
「1日3杯以上飲むと健康効果が認められるといわれていますが、飲めば飲むほど効果が増すわけではありません。飲み過ぎには注意が必要ですね」
[全日本コーヒー協会 コーヒーと健康「隠れた脳出血を、コーヒーが予防。」より引用][※12]
コーヒーに限らず、なにごとも適量を心掛けるのが良いということでしょう。コーヒーの種類も1つに絞らず、いろいろな種類の豆を試すのも良いとされています。
コーヒーの作用をうまく活用するには、摂取のタイミングが大事です。得たい効果に合わせて、飲む時間を調整してみてください。
■眠気を取りたいとき
眠気覚ましとしてコーヒーを飲むときは、仕事の直前ではなく、30分から60分前にコーヒーを飲むようにしましょう。これは、コーヒーを飲んでからカフェインが体内に吸収されるまでに、そのぐらいの時間がかかるためです。
体内に入ったカフェインの効果は3~5時間ほど続きます。
■ダイエットしたいとき
コーヒーのダイエット効果はまだ研究段階にありますが、カフェインが脂質分解酵素のリパーゼを活性化させエネルギーに替えやすくしてくれるといわれています。運動前に飲むと良いでしょう。
■血糖値を穏やかにしたいとき
コーヒーに入っているクロロゲン酸は、脂質や糖質の分解を阻害し、体内に吸収させない働きがあるため、食事と一緒にコーヒーを飲むと効果的とされています。
コーヒーと一緒に摂ると相乗効果が得られる成分や食べ物を紹介します。
■抗炎症作用
コーヒーと乳酸菌を一緒に摂ると、炎症を抑える効果が増します。肌荒れが気になるときなど、コーヒーと乳酸菌を一緒に摂取すると良いでしょう。
■脂肪燃焼効果
コーヒーと豆乳の組み合わせは、コーヒーの脂肪燃焼効果と大豆イソフラボンのホルモン様作用により、ダイエットに良いといわれています。
■覚醒作用
カフェインとマカを組み合わせると、とても強い興奮・覚醒作用が得られます。コーヒーとマカをそれぞれ別に摂るか、一緒になっているサプリメントで摂取できます。
コーヒーを摂取することによる副作用は確認されていませんが、過剰摂取やカフェインに耐性がない人は注意が必要です。
2015年に、カフェインの過剰摂取により20代の男性が死亡した事例があります。カフェイン入りのエナジードリンクを常用し、カフェイン錠剤も使用していたとされ、カフェイン中毒が死因と判明しました。日本では2011年から17年までの間に3名がカフェイン中毒で死亡しています。[※13]
コーヒーに含まれるカフェインは一度に多量に摂取すると副作用が現れるとされています。
また、カフェイン耐性は個人差が大きいため、製品の目安量の範囲内でもなにかしらの不調が出る人もいます。
カフェインの摂りすぎによる症状には、不眠・吐き気・震え・動機・落ち着きがなくなる、といったものがあります。また、カフェインの利尿作用により、体内のカリウム濃度が低下してしまうと脈拍が早くなったり不規則になったり、筋肉の細胞が死んでしまうといったリスクも。カフェインを摂取して不調が出た場合は、摂るのを中止しましょう。
コーヒーや、カフェイン・タンニンとの相互作用を見てみましょう。[※1]
コーヒーには以下の医薬品や成分との相互作用があります。
・薬の効果が弱まってしまうもの
骨粗しょう症薬/粘液水腫、甲状腺機能低下症薬/糖尿病治療薬
・効果が強くなり副作用が出やすくなってしまうもの
筋萎縮性側索硬化症薬/抗凝固薬/抗血小板薬
カフェインには以下の医薬品や成分と相互作用があります。
・薬の効果が弱まってしまうもの
アデノシン/血栓形成阻害薬
・カフェインの分解が阻害され、血中濃度が上がるおそれがあるもの
エストロゲン製剤/アルコール/抗酒薬/胃酸抑制薬/テ抗真菌薬/合成抗菌薬/抗うつ剤/不整脈・虚血性疾患薬/頻脈性不整・糖尿病性神経障害/経口避妊薬
・カフェインが薬や成分の分解を阻害するおそれがあるもの
非定型抗精神病薬/気管支喘息薬など/鎮静催眠薬
・薬やハーブの作用が強まるおそれがあるもの
アドレナリンβ受容体作動薬/興奮薬/ダイダイ/クレアチン/麻黄
・カフェインが排出を促進し、炭酸リチウムの副作用が出る恐れがあります。
・利尿作用により排出されるおそれがあるもの
カルシウム/マグネシウム
・薬効成分の吸収を阻害するおそれがあるもの
フェノチアジン系抗精神病薬/三環系抗うつ薬