ベラドンナはナス科の植物で強い毒性を持ちます。激しい痛みや炎症に即効性を持ち、昔から医薬品としてさまざまな用途で使用されてきました。ここではベラドンナの基礎知識や効能・効果をじっくり解説いたします。
ベラドンナとはナス科オオカミナスビ属の植物です。イタリア語で「bella donna」と綴り、「美しい女性(淑女)」という意味を持ちます。夏に赤紫色の花が咲き果実は緑から黒色に変化します。この果実や根茎、根に毒性の強いトロパンアルカロイドが含まれていて、古く西洋では魔女の毒薬として「魔女の草」の異名がありました。日本の特産種の「ハシリドコロ」は、体内に摂取すると中毒症状として幻覚が表れ、走り回るところから名付けられています。
ベラドンナの根茎や根にはトロパンアルカロイドが含まれます。その成分のヒヨスチアミンやアトロピン、スコポラミンなどには、副交感神経を麻痺させる作用があり、摂取すると吐き気、散瞳、幻覚、錯乱状態などの症状が出ます。しかしこの成分は少量使えば薬用になり、ベラドンナコン(ベラドンナ根)として日本薬局方でも認められています。鎮痛、鎮痙、汗どめ、散瞳、催眠などの効果がある他、激しい痛みを伴う皮膚炎や頭痛などに即効性があります。
ベラドンナは鎮痛作用や鎮痙作用を持つことから、胃腸薬、感冒薬に配合されています。ベラドンナの成分アトロピン、スコポラミンは医療用医薬品として使われています。具体的には、目の検査、治療などで瞳孔を開くときに硫酸アトロピンの点眼薬を使用します。さらにベラドンナにはサリンの解毒作用があり、地下鉄サリン事件のときにはこの注射によって多くの人の命が助けられました。