健康食品の王道ともいえる「青汁」を知らない人はまずいないはず。でもじつはまだあまり知られていないこともあるのです。じつは青汁は、戦時中の食糧難のなかで誕生したもの。いまでは野菜・穀類の摂取不足や減少を助ける食品のひとつです。青汁に豊富に含まれる食物繊維やビタミン、ミネラルなどの有効成分がどのように作用するのか、説明していきます。
青汁は、「生の緑黄色野菜をしぼった汁」であり、商品名の総称です。青汁の代表的な主原料は、大麦若葉・ケール・明日葉。共通して多く含まれている成分は、ビタミン、ミネラル、食物繊維です。
大麦若葉の代表的な成分は、SOD酵素(スーパーオキサイドディスムターゼ)で、活性酸素を除去する働きがあります。[※1]
ケールは、強い抗酸化作用保つ栄養素が豊富に含まれ、そのほか免疫力の強化、メラトニンによる不眠症の改善[※2]などがあります。明日葉は、ポリフェノールの一種であるクマリンが含まれ抗酸化作用・抗菌作用[※3]があります。
このように、青汁は活性酸素に対して効果のある成分を多く含んでいます。
青汁には次のような効果があるといわれています。
■生活習慣病の予防
青汁に多く使用されるケールや、明日葉には抗酸化成分を豊富に含み、活性酸素による動脈硬化や高血圧、糖尿病をSOD酵素によって防ぐ効果[※4]があります。また、明日葉のみに含まれるカルコンには血圧や血糖値を下げる効果、動脈硬化を防ぐ効果[※3]などがあります。
■免疫力アップの効果
大麦若葉に含まれるβ-カロテンは、皮膚や粘膜を保護する働きがあり、免疫力を上げることができます。ケールに含まれるビタミンCやビタミンE、β-カロテンの抗酸化作用により活性酸素を抑制し、免疫力を向上させる効果があります。
■老化防止効果
抗酸化物質を多く含む青汁にはアンチエイジング効果もあり、活性酸素から細胞を守ることで細胞を活性化し老化防止効果が期待できます。
■不眠症の改善
ケールには、メラトニンが多く含まれます。メラトニンは睡眠に必要な成分です。朝、目の視交叉上核(しこうさじょうかく)に光が当たることで、体内時計からの信号で、メラトニンの分泌を抑えます。
そして再び、12〜16時間後にメラトニンは分泌が高まり、睡眠を促します。不眠症の改善の一つとして、このメラトニンを意識的に摂取することも方法です。
■腸内環境を整える
青汁の主原料になっている大麦若葉、ケール、明日葉は食物繊維を含んでいます。食物繊維を摂ることで、腸管を刺激し、蠕動運動を促します。
また、食物繊維は、善玉菌の餌となり、腸内環境の改善効果も期待できます。腸内環境が整うことで、栄養素の消化吸収も向上します。
■貧血の予防
貧血とは、赤血球に含まれるヘモグロビンの量が減少している状態をいいます。女性は生理によるもの、子どもは急激な成長により不足がちになります。
大麦若葉にはヘモグロビンの材料になる鉄分が豊富に含まれているため、貧血予防には効果的です。
■骨や歯を丈夫にする効果
青汁には、カルシウムが豊富に含まれています。カルシウムには、硬組織である骨や歯を丈夫にするほか、骨粗鬆症の予防にも効果があります。
青汁は健康食品としての知名度も高く、だれもが手軽に入手できる商品です。主原料になっているケール、大麦若葉、明日葉にはどのような作用があるのか、説明していきましょう。
ケールには、ルテイン、カルシウム、β-カロテン、食物繊維、メラトニンが含まれています。カルシウムは、牛乳の2倍以上、ほうれん草の約4.5倍、β-カロテンはニンジンの2倍、トマトの5倍、含まれています。
ルテインは、眼の網膜保護作用により、「加齢性黄斑変性症」の予防効果があり、β-カロテンは夜盲症や眼精疲労を予防し、粘膜・皮膚を正常に保つ働きがあります。
大麦若葉に含まれる成分は、β-カロテンや、ビタミンC、葉酸などのビタミン類、カリウム、マグネシウムなどのミネラル、食物繊維です。また、大麦若葉ならではといえるSOD酵素の活性酸素抑制作用により、生活習慣病の予防やアンチエイジング効果を発揮します。
明日葉に含まれる成分は、ビタミンB群、βーカロテン、カルシウム、カリウム、食物繊維です。β-カロテンはトマトの約10倍、ビタミンEはニンジンの約5倍、カリウムはピーマンの約3倍です。
ケールや大麦若葉と明日葉の違いは、明日葉のみに含まれるポリフェノールの一種「カルコン」。カルコンには抗菌・抗酸化作用、血栓生成抑制、内臓脂肪減少作用などがあります。
また、血中のブトウ糖を細胞内取り込むインスリンと似た働きをすることから、糖尿病予防の効果も期待されています[※5]
そのほか、ケール、大麦若葉、明日葉には、食物繊維が豊富に含まれます。食物繊維は、動物性食品に含まれず、植物性食品(豆類、野菜類、果実類、きのこ類、藻類)に多く含まれています。
摂取不足により、腸の蠕動運動が低下し、排便回数や量が減り、腸内環境を悪くする可能性があります。
食物繊維には、繊維状のものあれば、ネバネバするもの、水に溶けサラサラした状態のものまであり、「ヒトの消化酵素では分解できない」といわれ、小腸を通過して大腸まで達する成分です。
便の体積を増やす材料、大腸内の腸内細菌の栄養分となり、便秘予防や腸の蠕動運動を促進し、腸内環境を整えます。[※6]
ビタミン類では、抗酸化作用のあるビタミンA、ビタミンE、ビタミンCが含まれています。前項でも述べているように、体内に発生する活性酸素を抑制する働きがあり、免疫力アップ、アンチエイジング等の効果が期待できます。
ミネラルは、骨や歯を強くする、脳からの指令を伝達する神経伝達物質であるカルシウムや細胞内の水分量を調節するカリウム、赤血球のヘモグロビンの材料になる鉄が含まれています。
カリウムは、細胞内の水分量を調節することで人体の恒常性を保つ働き、ナトリウムを過剰に摂取した場合の排泄を促進する働きがあります。[※7]
栄養バランスに自信がない、腸内環境を整えたい、生活習慣病が気になる、貧血気味である、美容に興味がある、睡眠を改善したい人などにおすすめしたい食品です。
体内に取り入れた栄養成分をしっかりと消化吸収するためには、腸内環境を改善する必要があります。青汁には、その腸内環境を整えるための栄養素や、食生活で不足しがちな栄養素が豊富に含まれています。
野菜などの摂取が足りないと自覚している人は、代替食として青汁を飲むことで、腸内環境を改善していくようにしましょう。
青汁に関しての摂取目安量や上限摂取量は見当たりません。含まれている栄養成分によっては目安量・目標量などが設定されています。
食物繊維の目標量は、成人男性(18~69歳)20g/日以上、成人女性(18~69歳)18g/日以上です。厚生労働省の平成28年「国民健康・栄養調査」広告では、男女の平均摂取量は13.9~14.5gです。[※8]
ビタミンAの推奨量は、成人男性で850~900μgRAE/日、成人女性で650~700μgRAE/日です。
耐容上限量は、成人男性女性ともに2700μgRAE/日です。[※9]
豚や鶏のレバー、あんこうのきもなどは、1回で耐容上限量を超えてしまいます。ビタミンAは過剰症があるため摂取量には注意しましょう。
カリウムの目安量は、成人男性で2500mg/日、成人女性で2000mg/日です。目標量は、成人男性で3000mg/日、成人女性で2600mg/日です。[※9]
腎機能が正常でサプリメントを使用していない場合は、普段の食事で過剰摂取するリスクが低いと考えられるため、耐容上限量は設定されていません。
株式会社ファンケル総合研究所によれば、ケール由来のカルシウムは牛乳と同等以上の吸収率を有することがレポートされました。
カルシウムを多く含む食品として、牛乳・小魚・緑黄色野菜がありますが、その吸収率は食品によって異なります。健康な成人男性の協力のもと、青汁の原料であるケールを用いて牛乳や炭酸カルシウムとの吸収性の違いを比較しました。
健康な成人男性20名、それぞれカルシウム300mgを含む、炭酸カルシウム配合飲料、ケール由来のカルシウム配合飲料、牛乳を飲んでもらい、カルシウム吸収性の指標となる尿中カルシウム量を一定時間測定し、各時間の合計量を炭酸カルシウムと比較しました。
その結果、経時的な吸収性・尿中カルシウム量ともにケール由来のカルシウム配合飲料がいちばんでした。このことから、ケールが優れたカルシウムの供給源になることが実証[※10]されました。
ケール由来のカルシウムは吸収阻害物質の影響を受けないため食事の影響を考える必要がありません。よって、青汁は骨粗鬆症予防、カルシウム摂取不足を補うためにおすすめできる食品です。
人間は太古の昔から植物のもつチカラに注目してきました。インドの古典医学アーユルヴェータや中国の漢方医学でも、病気の治療や健康維持に効果があると、さまざまな薬草の活用法が取りあげられています。
平安時代に書かれた日本最古の医学書「医心方」や、16世紀に編集された漢方医学の集大成「本草網目」にも、「野菜ジュース」の健康効果が紹介されています。
昭和18年の第二次世界大戦中に健康ドリンクとして見直しがされました。食糧難に苦しんでいた家族の健康を考えて、医学博士の遠藤仁郎氏が畑に捨てられていた大根の葉をすりつぶし飲ませたのが最初であるといわれています。
仁郎氏の息子が肺炎になると、青汁を飲ませて治癒することに成功しました。その後、仁郎氏の研究によって青汁の健康効果が実証され、あらゆるタイプの青汁製品が作られるようになりました。[※11]
大麦若葉末を摂取した健常成人女性の糞便湿重量および糞便内細菌叢への影響を試験したグループ(池口主弥、有浦由紀、高垣欣也、石橋千和、稲永亜紀子、片山(須川)洋子)は、次のように述べています。
「1日あたり10.0gの大麦若葉末摂取において糞便湿重量が有意に増加し、対象者全員で顕著な増加および増加傾向が認められた。大麦若葉粉末の摂取によりバナナ状および半練り状の割合が増加し、便性状が改善する傾向があった。
大麦若葉末を摂取することで腹痛が散見されたが、いずれも軽度~中度であり1~2日程度で回復した。その他胃腸症状の変化は認められなかった。以上より、大麦若葉末便通改善効果が高く、消化管に負担の少ない安全性の高い素材であると推測される。」(『J-STAGE/日本食物繊維学会誌/8巻(2004)2号/大麦若葉末を摂取した健常成人女性の糞便湿重量および糞便内細菌叢への影響』)より引用[※12]
腹痛が散見されたとありますが、とくに問題がないと説明されているため、青汁を大量摂取することがなければ、トラブルにはならないはずです。
青汁は冷凍のものや、粉になったものなどさまざまな形態で販売されています。冷凍のものは、そのまま解凍することで飲めるようになっていますが、独特の青臭さが気になる場合には、ほかの飲み物などと混ぜて飲むのも良い方法でしょう。
ポピュラーな飲み方は、フルーツジュース、野菜ジュースや牛乳、豆乳、ヨーグルトに混ぜて飲む方法です。
牛乳で混ぜて摂る場合は、脂肪分を摂り過ぎないように低脂肪タイプの牛乳を選ぶと良いでしょう。
青汁に含まれる亜鉛の吸収率は10~30.%であり、同時に摂取した鉄や銅により吸収率は変化します。亜鉛の吸収率をアップするのはビタミンCなので、グレープフルーツジュースやオレンジジュースで飲むことをおすすめします。
ほかに亜鉛はビタミンCとともにコラーゲンの生成にも関与し活性酸素の除去の働きもあるので免疫力向上や美肌効果も期待できます。
そのほかには、豆乳もおすすめです。豆乳には大豆由来のオリゴ糖が含まれ、腸内の善玉菌の栄養分になります。腸内細菌の働きをよくし、青汁の食物繊維と一緒に便秘予防・改善の効果があります。[※13]
青汁を飲む際に気をつける点は、腎機能の障害がある場合です。腎機能に障害があることで、摂取したカリウムがうまく排泄できなくなり、高カリウム血症を招いてしまう可能性があります。
高カリウム血症の症状として、吐き気、不整脈、手足の痺れなどが考えらえます。腎機能に障害がある場合には飲み始める前に医師に相談しましょう。
ほかには、稀にアレルギー反応がでる人もいます。アレルギーの原因であるアレルゲンは、人それぞれに異なります。青汁に含まれる栄養成分が何らかのアレルギー反応を出すこともあるので、その際は摂取することを控えましょう。[※14]
青汁は緑黄色野菜を絞って作ります。多くの栄養分を簡単に摂取することができる代表的な健康食品です。青汁に使用されている緑黄色野菜に、ビタミンKが豊富に含まれています。
含まれている量が製品により異なりますが、ワーファリンの服用中には、基本青汁は摂取禁止と覚えておきましょう。
ワーファリンは、ビタミンK拮抗薬とよばれており、ビタミンKの血液を固める働きを抑制し血栓(血液の塊)ができないようにする薬です。ビタミンKを1度に大量に摂取してしまうとワーファリンの作用を弱めてしまいます。[※15]