アントシアニンは昔から眼に良い成分として、さまざまな研究がされてきていますが、最近では肝機能向上や動脈硬化予防など生活習慣病にも役立つ成分として注目されています。
食品だけでなく、サプリメントなどからも手軽に摂り入れられるようになってきています。
アントシアニンとは、フラボノイド系のポリフェノールの一種で、酸性では赤~桃色・中性では紫~青色・アルカリ性では黄緑~黄色を呈する天然の色素です。
野菜や果物などの植物は太陽からの紫外線による強いダメージを日々浴びているため、それを防ぐために自ら色素を生成し、身を守っています。
ポリフェノールは植物の色素、苦味、辛味、アクなどの成分のことで、2つのベンゼン環が炭素3つで結合された基本構造をもつフラボノイド系と、それ以外の非フラボノイド系に分類されます。体のサビを防ぐ強い抗酸化力をもっています。
ポリフェノールは水溶性のため体内に残りにくいので、毎日こまめに摂取します。
アントシアニンには次のような効果があるといわれています。
■眼精疲労
視作業(眼を使う仕事)を続けることにより、眼痛・眼のかすみ・まぶしさ・充血などの目の症状や、頭痛・肩こり・吐き気などの全身症状が出現し、休息や睡眠をとっても十分に回復しえない状態をいいます。[※1]
目の焦点を合わせやすくすることで、目の疲労感を緩和する機能があります。[※2]
ロドプシンの再合成を活性化することで、疲れ目などの症状を改善できると期待されています。
■網膜の保護作用
人も強い紫外線を浴びると体や皮膚に影響を及びますが、目も当てはまります。目の場合、直接眼球に光があたるため、影響を受けやすいのです。
強い光は網膜に達すると活性酸素を生み、網膜の細胞にダメージを与えます。パソコンやスマートフォンが発するブルーライトも同じように目にダメージを与えます。
アントシアニンには強い活性酸素があるため、紫外線を浴びて発生してしまった活性酸素を除去し、網膜を保護します。[※3]
■血小板凝集抑制作用
「血小板の凝集を抑制する」とは血液が固まりにくくなることです。血液をさらさらにする働きがあるため、動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞などの生活習慣病の予防に役立ちます。血液のドロドロは健康の大敵です。[※3]
■肝機能向上
γ-GTP・AST・ALTなど肝機能の数値が要注意(軽度)のかたが、紫いものジュースを飲み続けたところ、正常レベルまで回復するかたもいたという研究データがあります。[※4]アントシアニンには肝臓の脂質の蓄積を減少させ、抗酸化、肝臓の炎症を抑えるなどの報告があります。
また過剰な肝臓への脂質の蓄積による、非アルコール性脂肪性疾患(NAFLD)という病気があるのですが、アントシアニンが豊富な食品は、非アルコール性脂肪性疾患とその合併症を防止する、有望な食品といわれています。[※5]
眼の網膜にあるロドプシン(視紅)という物質は、光の情報を神経の電気信号に変えて脳に送りますが、このときロドプシンは分解されます。
そのためロドプシンの再合成されることで、新たな光の情報を受け取ることができます。再合成が遅れると目がしょぼついたり、ぼやたりするなど目の疲れが現れてきます。
アントシアニンはロドプシンの再合成には欠かせない成分です。また夜間視力を向上させると考えられています。
ポリフェノールの一種であるアントシアニンには毒性のある活性酸素を無毒化する作用もあります。紫外線やストレスによって発生した活性酸素によって、私たちの体はサビついていきます。サビとは「酸化」のことで、体内が酸化すると老化や病気の原因にもなります。活性酸素から体を守る働きを抗酸化作用といいます。[※3]
アントシアニンによる抗酸化作用、ホスホジエステラーゼ阻害作用、プロスタサイクリン合成作用、抗血小板凝集作用、血管平滑筋弛緩作用、網膜への直接的作用などが考えられます。
動脈硬化の原因のひとつが血中コレステロールの増加です。悪玉(LDL)コレステロールが酸化されると、これを異物と判断した白血球(マクロファージ)による貪食が始まります。
酸化LDLを食べ終えたマクロファージは死骸となって動脈壁に溜まり、その結果、動脈硬化が起こります。すなわちアントシアニンの強い抗酸化力で動脈硬化も予防することができるのです。[※6]
テレビやパソコン、スマートフォンなどの利用が多きなり、日々目を酷使している人が増加しています。目を使いすぎると、近くのものが見えにくかったりもします。さらに眼精疲労から仕事や勉強がはかどらなくなる、頭痛や肩こりなど体のあちこちに悪影響をもたらします。
眼精疲労が多い人、目の健康を維持し、働きをサポートしたい人におすすめの成分です。また動脈硬化などの生活習慣病が気になるかたも取り入れていきたい成分です。[※7]
食品からの摂取目安量、上限摂取量は決められていません。最近では機能性表示食品やサプリメントとしてアントシアニンが含まれている商品が販売されています。
製品の25%がアントシアニンとして調整されたサプリメントを利用します。ヨーロッパの医療品では、アントシアニの配合比率36%が品質基準とされています。[※8]
推奨量以上の摂取あるいは出血性疾患、抗凝固薬(血小板凝集抑制)治療をしている場合は、担当医に確認のうえ、注意して使用するようにしましょう。[※8]
ブルーベリーの血管保護作用に関して、25%のアントシアニン類として調整されたサプリメントを投与することによって、糖尿病性網膜症や高血圧性網膜症が改善され、ブルーベリーによる網膜保護作用を認めたというデータが、いくつかの臨床試験によって報告されました。
たとえば、14名の糖尿病性網膜症患者にブルーベリーサプリメントを1ヶ月間投与したところ、網膜の状態が改善し、特に副作用は認められませんでした。
加齢性白内障に対する効果も報告されています。たとえば、50名の高齢者を対象にした臨床試験では、ブルーベリー(25%アントシアニンを360mg)とビタミンEサプリメントを4ヶ月間投与したところ、白内障の進行が抑えられたといわれています。
また学童期の受験生を対象にしてブルーベリーを長期間投与した研究では、調節性近視・仮性近視の改善効果が示されました。
そのほか、緑内障や網膜色素変性症といった目の病気、動脈硬化性疾患の予防にも効果があると期待されています。[※8]
ブルーベリー(ビルベリー)は北欧でハーブとして用いられていましたが、ポリフェノールの1種であるアントシアニンを豊富に含むことがわかりました。
英国空軍パイロットが第二次世界大戦中に、ビルベリーによって薄明かりの中でもものがはっきり見えたと証言したことがきっかけで、視力の改善効果の研究が盛んに行われるようになりました。[※8]
ワインを大量に消費するフランスでは、「フレンチ・パラドックス(フランスの逆説)」という事実が知られています。
フランス人は欧米型の食事に加えて喫煙率も非常に高いため、心臓病になりやすいはずである。しかし実際には、心臓病による死亡率は、欧米の中ではフランスは非常に低い。この矛盾をフレンチ・パラドックスといいます。
ただしフレンチ・パラドックスは赤ワインの効果だけでなく、オリーブオイルや野菜の豊富な地中海式料理にあると考えられる。
また2003年に、ドイツから報告された研究では、フランスの赤ワインが、「NO(一酸化窒素)」という血管を拡張させる分子を、血管内皮細胞から放出させることが示された。これも赤ワインが血管を詰まりにくくするメカニズムの1つです。[※7]
ブルーベリーは効かないとする専門家もいますが、
山名眼科医院の院長である山名泰生医師は、定期刊行物の『眼科だより』で以下のように解説しています。
「アントシアニンはブルーベリーの他にも、ぶどう、赤じそ、さつまいもの皮などに含まれる青紫色の色素です。抗酸化作用があり、疲れ目を予防・改善させたり、網膜に栄養を運ぶ毛細血管の血行を良くしたりする働きを持っていることでも注目されています」(山名眼科医院 こやのせ眼科医院 「眼科だよりVol.93より引用」[※10]
特に「カシスアントシアニン」には毛様筋のコリをほぐす作用があると説明、目の疲れを軽減する効果が期待できるとのことです。
ブドウの果皮、赤ワイン、ブルーベリー、ビルベリー、カシス、クランベリー、ラズベリー、紫さつま芋、りんご、いちご、黒豆、ナス、黒米、紫キャベツ、赤たまねぎ、赤しそ、黒ごま、小豆など紫色や黒色、赤色の食べ物に多く含まれています。[※3]
ナスやブドウなどは皮の部分に多く含まれているので、皮を捨ててしまうとアントシアニンが補えなくなるので、一緒に摂り入れます。
特にビルベリーはアントシアニンの含有量が多いため、機能性表示食品やサプリメントに使用されています。
アントシアニンは抗酸化作用が強いので、抗酸化作用をもつ、β―カロテン・ビタミンE・ビタミンCを含む食愛と組み合わせると、より抗酸化作用が発揮されます。[※9]
通常の食材に由来する成分であり、問題となる健康被害や副作用は知られていません。また他のサプリメントと医薬品との相互作用は報告されておらず、併用は問題ない成分です。[※8]
機能性関与成分の相互作用を起こす可能性も低いと判断されています。[※8]
また妊婦を対象とした試験において、副作用は確認されていません。[※8]
長期間にわたる安全性・副作用に特化した研究は行われておらず、食生活や医薬品としてのデータから安全性が判断されています。[※8]