アガリクス茸はキノコの一種で、健康で長寿の住民が多かったブラジルサンパウロ州、ピエダーテ地方が原産地です。特にアレルギー予防、抗がん作用があると言われるβ―グルカンが、最も多く含まれていると考えられています。
アガリクス(学名アガリクス・ブラゼイ・ムリル)は、和名でヒメマツタケあるいはカワリハラタケとも呼ばれる、担子菌類ハラタケ科に属するブラジル原産のキノコ類ですが北米(南カロライナ~フロリダ州)の海岸草地にも自生しています。昭和40年にブラジルより移入されて以来、人工栽培されるようになりました。
アガリクスは、β―グルカンという多糖類である糖関連物質で不溶性食物繊維の1つです。また、きのこの細胞壁を構成する主成分であり、ナチュラル・キラー細胞・貪食細胞・樹状細胞の活性化を高めます。[※1]そのため、古来から「神のきのこ」とも呼ばれていました。
アガリクスには次のような効果・効能があるといわれています。
■ガン細胞の増殖抑制作用
免疫力を高め抗腫瘍効果を発揮する多糖類「β―D-グルカンタンパク複合体」をマウスに与えた結果、肺腫瘍の成長と転移を阻害すること、腫瘍細胞の血管形成因子の作用を阻害していることが認められました。[※2]
■アレルギー予防
免疫システムが、過剰に反応することで、食物や花粉など無害なものにまで排除しようとすることをアレルギー反応といいます。
腸内の免疫細胞に直接働きかけるβ―グルカンは、体を守るインターフェロンというたんぱく質の生成の促進や、免疫機能を司る器官をサポートする働きがあるため、免疫調整機能を高めてくれます。
■コレステロールを下げる
アガリクスに含まれるβ―グルカンは不溶性食物繊維です。不溶性食物繊維にはコレステロールの吸収を抑制する働きがあります。
そのほか、ガンの発生予防、抗ガン治療との併用により抗ガン作用を増強する効果、糖尿病の予防や改善、脂質異常症や高血圧の予防や改善効果が期待できます。
基本的に宿主の免疫機能を賦活することで外敵を排除すると考えられています。
つまり、生体の恒常性維持機能を調節し、抗腫瘍作用を発揮するほか、肝障害改善作用、抗アレルギー作用、消化管運動亢進作用、脱コレステロール作用、血糖降下作用などさまざまなBRM(生物的応答調整剤)様作用をもつ食用キノコであることが証明されています。
今までに、T細胞、NK細胞など免疫細胞の活性化、胆がんマウスの抗腫瘍作用、そのほか、腫瘍細胞に抑制作用を示す成分も報告されています。[※5]
主に抗腫瘍有効成分とされている種類は、β―グルカン、α―グルカン、ペプチドグルカンなどで、生体の自己免疫力を活性化し、間接的にがん細胞への攻撃をおこないます。腫瘍抑制効果を示すものは脂溶性成分ですが、どの成分も含有量にも優位性がなく、有効成分は明確には定まっていないのが現状です。[※5]
現代人の2人に1人が患うといわれているガンは日本では死因のトップであり、全ての人にとって身近な病気です。
体のもつ自己免疫力を高めることで、がんの発生予防や花粉症などのアレルギーを予防したいかたが摂るべき成分です。
こうした成分の摂取とあわせて、禁煙や食生活の見直し、運動不足の解消など生活習慣の改善も合わせて行うことが効果的であると考えられます。
また食べ過ぎや運動不足から体重や内臓脂肪の増加にともない引き起こされる糖尿病や脂質異常症、高血圧など生活習慣病が気になるかた、予防したいかたにもおすすめです。
乾燥キノコ換算で5g/日前後が一般的[※5]と言われていますが、食品ですので、明確な数値は決められていません。
サプリメントとしてのアガリクスは粉末、錠剤、顆粒液状の製品、キノコ自体の乾燥品などがあります。品質の差が大きいので、かかりつけの医師や薬剤師に相談し使用しましょう。1回の量や1日の摂取回数も商品によって異なりますので、確認して摂取します。
アガリクスは一般に食品として販売されているものなので、医薬品と異なり、厚生労働省では個々の製品名は把握していません。
アガリクスは、免疫担当細胞の働きを活発にすることで、体が本来もっている抵抗力を高め、抗がん作用を発揮します。白血球の中のマクロファージという細胞を活性化し、サイトカインという生理活性物質の産生を促します。
さらにTNF-α(腫瘍壊死因子α)サイトカインが産生され、TNF-αは腫瘍を壊死に導いたり、リンパ球を刺激して免疫力を高めると言われています。
またNK(ナチュラル・キラー)細胞の作用を介して免疫力を高めるというデータもあります。基礎研究分野では、アガリクスの免疫賦活作用や抗がん作用など多彩な効果を示すデータが、多数報告されています。
また、臨床研究として、アガリクスの抗腫瘍効果を示した症例報告がされていますが、人を対象にした厳密な臨床試験はまだ行われていません。[※5]
1960年、アメリカ・ペンシルバニア州立大学教授のシンデン博士と、ランバート研究所のランバート博士が、アガリクス茸が自生していたブラジルサンパウロ州ピエダーテ地方周辺の住民が健康で長寿を誇っていたことに注目したのが最初です。
原因を調査したところ、住民がアガリクス茸を常食していたことがわかり、それが影響していると突き止めました。[※6]
1980年に三重大学医学部の伊藤均らがヒメマツタケ(アガリクス)の抗腫瘍活性を報告し、その後、日本において精力的に研究が進められるようになりました。
1980年日本癌学会総会において三重大学医学部よリ、アガリクスの抗腫瘍活性が報告されてから、抗ガン効果に期待が寄せられ、各方面で精神的研究が進められ、販売も行われています。
2001年には厚生労働省がん研究助成金による研究班が組織され、「我が国におけるがんの代替療法に関する研究」が行われています。その調査結果は、平成17年(2005年)に学術論文として発表されていました。
それによると、
がん患者の44.6%(1382名/3100名)が何らかの補完代替医療を一種類以上行い、そのうち健康食品・サプリメントを使用するとの答えは96.2%、気功は3.8%、灸は3.8%、鍼3.6%(複数回答可)であった。
この健康食品・サプリメントのうち60.6%はアガリクスを使用するという回答であり、がんの代替療法として広く受け入れられています。[※7](露地栽培アガリクスの機能性に関する研究 大野尚仁教授 引用)
「日本の医療の現状」 からこれからの機能性食品・アガリクスの役割を発表しています。
β―グルカンとは、多糖類の一群をさすもので、グルコース同士が化学的に結合して長く連なった多糖、すなわちグルコースの高分子重合体をグルカンとよんでいます。
グルコースの結合のしかたでα型、β型の2種類があり、αグルカンの代表的なものがデンプンやグリコーゲンで、消化酵素の作用でブドウ糖やマルトースにまで分解できます。しかし、β―グルカンは消化酵素では分解されないセルロースで、グルコースの供給源としては利用できません。
アガリクスと同様に、β―グルカンを含むきのこ類は干ししいたけ、まいたけ、えのきなどがあります。そのほかの食材では、大麦、黒酵母、パン酵母があります。β―グルカンは構造の違いにより不溶性β―グルカン(アガリクス、酵母)と水溶性β―グルカン(大麦)とに分かれ、体の中での働きも異なります。[※8]
アガリクスと糖尿病治療薬との併用により、2型糖尿病のインスリン抵抗性が改善、血漿アディポネクチン値増加したと報告されています。[※5]
まれに下痢、胃部不快感、発疹などの症状が現れることがあります。[※5]
アガリクスは通常の食品に近い成分のため、問題となる健康被害や副作用は知られていません。しかし肝障害の疑いなどの事例が報道されたことや、肺炎や肝障害などの複数の疑い事例が学会誌に掲載されています。
またほかのサプリメントや医薬品との相互作用は報告されていないので、併用は問題ないと考えられています。ただし、治療と併用する場合には、医師に相談しましょう。
国立医薬品食品衛生研究所で実施された毒性試験において、「細胞壁破砕アガリクス顆粒」製品に発ガンプロモーション作用が認められたため、該当製品が回収されました。
なお2006年、アガリクス含有食品の一製品において発ガンプロモーション作用が認められたという厚生労働省の発表があり、該当製品が自主回収されました。その後、食品安全委員会が審議を実施し、厚生労働省は2009年7月3日付で通知を行いました。
厚生労働省においては引き続き、食品衛生上の危害の発生を防止するために必要な情報を収集すべきであるとされています。
現時点では、伝統医療で用いられてきた抽出法による製品であれば問題は生じにくいと推察されていますが、特殊な製造法による製品には留意が必要です。
健康食品やサプリメントの安全性に関しての情報は厚生労働省や食費安全委員会のサイトで確認しながら利用しましょう。[※9]