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ハトムギの効果とその作用

中国南部やインドシナ半島付近が原産地とされる、イネ科ジュズダマ属の一年草・ハトムギ。栄養成分を豊富に含んでおり、「穀物の王様」と称されています。古くから中国で薬膳として利用されてきたほか、日本ではイボをとるための民間薬として用いられてきました。現在では健康食品や化粧品などの原料としても使われています。ここでは、そんなハトムギの効果・効能や作用のメカニズムをわかりやすく解説していきます。ハトムギを使ったレシピや副作用などもまとめています。

ハトムギとはどのような植物か

ハトムギとは、イネ科ジュズダマ属の一年草です。中国南部やインドシナ半島あたりが原産地とされています。

別名「穀物の王様」ともいわれるハトムギは、白米と比較して約2倍の食物繊維、約5.3倍のたんぱく質を含んでおり、新陳代謝を促進させるはたらきがあります。[※1]

そのため、美容や健康によい植物として料理やお茶、基礎化粧品などに利用されています。

また、皮を除いた白い実(子実)を乾燥させたものはヨクイニン(薏苡仁)という生薬として用いられています。ヨクイニンには利尿作用や消炎作用、鎮痛作用、排膿作用などがあることが知られており、古くからリウマチや神経痛、むくみなどを改善する目的で利用されてきました。[※2]

近年では、ヨクイニンをつくる際に取り除いてしまう外皮にも有効成分が含まれていることがわかり、さらなるハトムギの研究が進められています。[※3]

ハトムギの効果・効能

ハトムギには、以下のような効果・効能があるといわれています。[※3] [※4]

■肌の調子を整える

ハトムギには、肌あれやにきび、シミ、そばかすといった肌トラブルを改善するはたらきがあります。

■デトックス効果

体内の老廃物や毒素の排出を促すデトックス効果があります。

■むくみの予防・改善

ハトムギを乾燥させた生薬・ヨクイニンには、体内の余分な水分を排出するはたらきがあるため、むくみ改善効果が期待できます。

■生活習慣病の予防

ハトムギは、生活習慣の乱れによって起こるメタボリックシンドロームや2型糖尿病の予防に役立ちます。

■冷え症の改善

ハトムギの外皮には血流の改善を促す成分が含まれていると考えられており、冷え症改善効果が期待されています。

■肩こりの改善

ハトムギだけに含まれる成分・コイキソールには、筋肉の緊張を緩和するはたらき(筋弛緩作用)があるため、肩こりの症状が改善します。

■抗炎症・抗アレルギー・抗酸化作用

ハトムギの摂取によって、炎症やアレルギー反応が抑えられるという研究結果が報告されています。

■月経困難症

ハトムギの外殻には子宮の収縮を抑えるはたらきがあり、月経時の不調(月経困難症)に有効だとされています。

■不妊症

ハトムギには、卵胞の成熟(袋の中で卵子を育てること)をサポートしたり、排卵を促したりする成分が含まれているため、不妊症の要因となる卵子異常や排卵障害の改善に役立ちます。

■抗腫瘍・がん予防

ハトムギは、抗腫瘍作用や抗がん作用が確認された研究結果が報告されています。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

ハトムギには、ハトムギ特有の成分「コイクセノライド」のほか、アミノ酸やビタミン類、食物繊維やミネラルなどの栄養素が豊富に含まれています。[※5]

ハトムギだけに含まれる成分「コイクセノライド」には、肌角質の代謝を促すはたらきがあります。また、ハトムギに含まれる良質なアミノ酸には、新陳代謝を高めるはたらきがあります。そのため、ハトムギを摂取すると肌の新陳代謝が高まり、ターンオーバーが促進されると考えられています。[※1][※4]

また、ビタミンB1が豊富に含まれているハトムギを摂取することで、脚気(ビタミンB1不足によって起こる末梢神経障害)の予防にもつながります。

ハトムギに含まれている食物繊維は、腸に溜まった便の排出を促してくれるため、腸内環境を整えられます。

ハトムギを乾燥させた生薬・ヨクイニンには、体内の余分な水分を排出するはたらきがあるため、水分が溜まると起こる「むくみ」の改善に有効です。

ハトムギの外皮には血管を拡げるはたらきがあるため、末梢神経の血のめぐりが良くなり、冷えが改善します。
血管拡張作用によって血流が改善すると、体に滞留していた老廃物や毒素が血液とともに運ばれ、利尿作用によって体外に排出されるようになります。

そのほか、ハトムギにはアレルギーの原因物質であるヒスタミンや炎症物質のはたらきを抑制する作用があることから、花粉症やアレルギーの予防に効果があるとされています。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

以下の条件に該当する人は、ハトムギの摂取をおすすめします。

  • 肌の調子が悪い
  • 生活習慣病を予防したい
  • 花粉症やアレルギーをもっている
  • むくみやすい
  • 体が冷えやすい
  • 肩がこりやすい
  • 炎症やアレルギー症状が起こりやすい

ハトムギの摂取目安量・上限摂取量

ハトムギの摂取目安量や上限摂取量は、明確に定められていません。

一般社団法人日本サプリメント協会は、ハトムギの摂取方法について、ハトムギ茶(約15~30mgのハトムギの実を煎じたもの)を1日3回にわけて飲むことを推奨しています。[※6]

ハトムギのエビデンス(科学的根拠)

株式会社コーセーは、ハトムギエキスの継続摂取による美肌効果を調べるために、ヒトを対象とした3つの試験を行いました。[※7]

試験では、ハトムギ(殻、薄皮、渋皮を含む)から抽出したエキス1,000mgを配合した顆粒タイプの食品を使用しています。摂取回数は1日1回、摂取継続期間は8週間です。

1.肌のキメを改善する作用

摂取前と摂取期間中の肌の違いを調べるために、マイクロスコープの観察画像を使って肌のキメを比較しました。その結果、試験開始から4週間ごろに肌のキメが改善したと報告されています。

2.肌のターンオーバー・サイクルを改善する作用

摂取前と摂取期間中のターンオーバー・サイクルの変化は、肌にテープを貼りつけて角質層を採取し、細胞を染める液をテープに垂らして顕微鏡で観察する方法で調べました。(※テープが染まる=角質層が厚く、ターンオーバーが滞っていることを意味します)。

その結果、ハトムギエキスを摂取する前はテープが色濃く染まった(角質層が厚かった)のに対して、ハトムギエキスを摂取してから4週間後のテープはほとんど染まりませんでした(角質層が薄くなっていた)。

摂取前と摂取期間中の変化から、ハトムギエキスの継続摂取することで、肌のターンオーバー・サイクルが改善することが示唆されています。

3.肌の透明度を改善する作用

ハトムギエキス摂取前から摂取期間中にかけて、肌に一定の光を肌にあてたときの反射光量を解析し、肌の透明度を評価しました。

解析の結果、ハトムギエキスの摂取を開始してから4週間で反射光量が増えはじめ、摂取開始から8週間後には反射光量が明らかに増加しているのが確認されました。

このことから、ハトムギエキスを継続して摂取することで、肌の透明感が高まる可能性が示唆されています。

研究のきっかけ(歴史・背景)

ハトムギの栽培が開始されたのは、インド北東部・アッサム地方からミャンマーあたりだとされています。

インダス文明期に記述された『リグ・ヴェーダ』と呼ばれる歴史的な詩節にハトムギが登場していることから、ハトムギの歴史は古く、紀元前1500年ごろから栽培が行われていたと考えられています。

中国では、紀元前91年頃に司馬遷によって書かれた『史記』に、ヨクイニン(ハトムギ)の記録が残っています。古くから中国では、ハトムギは薬膳料理の食材として食べられてきました。

世界三大美女の1人として有名な楊貴妃もヨクイニン(ハトムギ)を愛用していたといわれています。

日本には、江戸時代頃に渡ってきたといわれています。和名であるハトムギの名前の由来は、「鳩の食する麦」という説が濃厚です。

医師で本草学者でもある貝原益軒の『大和本草』にハトムギについての記述が残されています。

また、江戸末期の書物『経験千万』には、「イボをとるにはハトムギのお茶を飲むとよい」と記述されており、抗炎症作用や肌への効果などからハトムギは江戸時代から民間薬として利用されてきました。

そんなハトムギが本格的に全国で栽培されるようになったのは昭和56年以降。現在では研究によってさまざまな美容効果や健康効果が報告されており、化粧品や入浴剤、健康食品、医薬品などに使用されています。[※3][※8][※9]

専門家の見解(監修者のコメント)

ライフカウンセラーや自然食研究家として活動されている松田有利子氏は、自身の著書でハトムギについて以下のように記しています。

「『ハトムギ』は昔からイボとりに効くとして知られていました。イボだけではありません、肌のトラブル全般に効きます。イボに効くということは、腫瘍にも効くということです。これは『ハトムギ』の『コイクセノライド』という成分が働くためです。こうしたことから近年、『ハトムギ』の腫瘍抑制作用の研究が進んでいます」

「自然療法では『ハトムギ』は、美肌づくりと婦人科系の疾病に効果があるとされています」

「その他、利尿作用もあり、体内の老廃物を排出し、血液浄化作用もあります。ですから、腎臓病などのむくみを直す働きもします」

(松田有利子『ガン保険に入らない生き方がある: 幸運を引きよせたいなら、食事をかえなさい』より引用)[※10]

ハトムギの美容・健康効果は、ハトムギに含まれるたくさんの栄養成分が作用し合って生まれています。

近年ではハトムギの美容・健康効果についてさまざまな調査・研究が行われ、化粧品や健康食品、医薬品の原料としても利用されています。

ほかにも、ハトムギ茶やハトムギご飯など、食事の材料としても使用できます。毎日の食事に栄養価の高いハトムギをプラスして、摂取してみてはいかがでしょうか。

ハトムギを使ったレシピ

ハトムギを使ったレシピを2つご紹介します。

■ハトムギ茶の淹れ方

やかんでハトムギ茶をつくる場合、水1Lに対してハトムギの茶葉を大さじ1~2杯を煮出し用のパックに入れ、やかんに入れます。火をかけて沸騰したらとろ火にして7~8分ほど煮出したら完成です。

ハトムギには体を冷やすはたらきがあるので、妊娠中の人や生理中の人は過剰摂取しないよう注意しましょう。[※11]

■ハトムギと黒豆のご飯(2人分)

【用意するもの】

  • 米…2合
  • ハトムギ…大さじ2
  • 黒豆…約30g

【つくり方】

  1. ハトムギを一晩水に浸します
  2. 洗った米を約1時間水に浸します
  3. すすぎ洗いした黒豆を、皮がはじけて香ばしい香りがするまでフライパンで炒ります
  4. 炊飯器に米・ハトムギ・黒豆を合わせたら、米の約1.2倍の水を入れて炊きあげます

黒豆をしっかり炒めることでご飯がふっくら炊きあがり、よりおいしくいただけます。

相乗効果を発揮する成分

ハトムギと一緒に摂ることで相乗効果を発揮するのはビタミンCです。

ビタミンCには抗酸化作用やコラーゲンの生成を助けるはたらきがあります。ハトムギの作用にビタミンCの抗酸化作用が加わることで、より肌の調子が整えられ、肌荒れやニキビの改善につながるとされています。

ハトムギの副作用

食品としてハトムギを摂取する場合、適切な量であれば安全だといわれています。ただし、ハトムギの種子や根の抽出物を摂取する場合の安全性については、十分な情報が確認されていません。副作用が起こる可能性もあるため、摂り過ぎないように注意しましょう。

また、ハトムギには子宮の収縮を促す作用が確認されているため、妊娠中の摂取は危険です。授乳中の人に関しても安全性が確認されていないため、過剰摂取は避けてください。