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- 神奈川県立保健福祉大学 鈴木 志保子 先生
実践女子大学/同大学院修了後、国立健康・栄養研究所研修生を経て東海大学大学院医学研究科を修了し博士号を取得。全日本女子ソフトボール代表チーム(2008年9月まで)、J2ファジアーノ岡山、京都産業大学陸上競技部中・長距離ブロックなどのトップアスリートからジュニアアスリートまで多数のスポーツ現場で栄養サポートや指導を行うほか、健康増進やメタボリックシンドロームの予防・改善、子どもの発育・発達についても研究や指導を行っている。医学博士/管理栄養士/公認スポーツ栄養士。
現在ではスポーツ選手を食事や栄養の面からサポートする専門家の存在は決して珍しくはないが、20年数年ほど前の日本には「スポーツ栄養(※1)」という言葉すら存在しなかったという。日本のスポーツ栄養マネジメント(※2)の先駆者であり、スポーツ栄養士という世界を切り拓いた第一人者に話を聞いてみた。
※1「スポーツ栄養」・・・運動やスポーツを行うために必要な物質をその身体活動の状況に応じてタイミングや量を考えて摂取し、これを体内で利用すること。
※2「スポーツ栄養マネジメント」・・・運動やスポーツによって身体活動量の多い人に対しスポーツ栄養学を活用し、栄養補給や食生活など食にかかわるすべてについてマネジメントすること。
先生の専門はスポーツ栄養学(※3)になりますが、
その道に進まれたきっかけはあったのでしょうか。
高校生の時に陸上の世界選手権でカール・ルイス選手が栄養士を帯同していることを知り、栄養とスポーツの関係に何となく興味を持ったのがきっかけです。ただ、私が学生の頃には「スポーツ栄養」という言葉自体が存在しておらず、高校の先生からは栄養関係の勉強をしたいなら管理栄養士の資格が取れる大学に進んだ方がよいとアドバイスを受け大学に進学しました。
しかし、大学で学ぶことは病気と調理のことばかりで、私が学びたいと考えていたこととは大きくかけ離れていました。その為、私が進学した大学では自分の学びたいテーマを決められず、そんなにスポーツと栄養について学びたいならと、東京学芸大学の運動生理学の先生が卒論を引き受けてくれたのです。なので、私は自分の通っていた大学とは関係ない東京学芸大学のゼミに2年間通って大学を卒業しました(笑)
※3「スポーツ栄養学」・・・運動やスポーツによって身体活動量の多い人に対して必要な栄養学的理論・知識・スキルを体系化したもの。
当時は「スポーツ栄養」という言葉さえも存在していなかったとのことですが、
その後、どういった形でスポーツの現場に入られたのでしょうか。
大学を卒業した時は日本のスポーツの現場で栄養サポート(※4)の仕事をしている人がおらず、当然就職先もありませんでした。その為、普通の会社員として就職をしたのですが、栄養に関わる仕事の夢があきらめられず再び学びの場に戻り大学院(修士)に進みました。その後、国立健康・栄養研究所の研修生をしながらドクターコースの勉強をしていた折り、ある学会で私の修士論文を目に留めてくださった東海大学の生化学の山村教授からお誘いを頂き大学院(博士)に進みました。そこで、大学院に通いながら京都産業大学の中・長距離陸上チームをサポートしたのが初めての現場でのサポートとなりました。
初めての現場ではやはり失敗もしましたが、京産大の伊東監督(当時)や選手たちは一生懸命私を育ててくれました。栄養サポートを始めて2年目の大学女子駅伝で初出場初優勝を果たし、その後、チームが4連覇したことで自分のやっていることが間違っていないんだと少し自信がつきました。この経験をベースに、その後、教員として赴任した鹿屋体育大学でウインタースポーツを除くあらゆるスポーツの栄養サポートをすることができる環境に身を置かせていただき、様々なスポーツへの対応ができるようになりました。
※4「栄養サポート」・・・とくに、選手に対してスポーツ栄養マネジメントを実施すること。
公認スポーツ栄養士について教えていただけますでしょうか
(公社)日本栄養士会と(公財)日本体育協会の両方の認定資格として、公認スポーツ栄養士という資格ができました。この資格は2008年からはじまり、現在168人の資格保持者がいます。栄養と運動の両方の団体の認定を受けているスポーツ栄養士の資格は世界でも日本だけです。この資格は管理栄養士でなければ資格が取れず、2年間の研修会とインターンシップを行い、検定試験に合格することで、現場でスポーツ栄養マネジメントがきちんとできる人になっていただきます。
ただし、スポーツの現場だけが活躍の場かというとそうではなく、例えばサプリメントメーカーの社員の方でこの資格を取っている方もいます。スポーツ栄養士の知見からきちんとした製品を供給することにも役立っていると思います。また学校教育の現場の方でも取得される方がおりますので、そういった方は児童・生徒に対して栄養教育をすることもできるでしょう。
2020年に東京でオリンピックが開催されることが決まって
スポーツに関する環境も変化しそうですね。
スポーツ栄養士という資格ができて数年ですが、世界のスポーツ栄養士とのネットワークも構築されておりますので、2020年の東京オリンピックに向けて、選手村の食堂などでスポーツ栄養の知識をふんだんに取り入れて運営をしたいという夢があります。 また、自国開催のオリンピックに向けて各競技でジュニア世代の指導にも力が入っていますが、その中でスポーツ栄養士が食事や栄養の教育をすることで、例えオリンピックに出場できなかったとしてもその教育を受けた個々の選手の食事や栄養に関する意識が高まり、健康に生きていく為のきっかけになるのではと考えております。
教授がこれから取り組んでいこうとしていることはありますか。
ひとつは、前述の2020年開催の東京オリンピックに向けてのこと。もうひとつがパーソナル管理栄養士という形で一般の方を管理栄養士がサポートできる仕組みを作りたいということです。元気なときから健康状態を維持する為のサポートをすることで、病気にならない期間を延ばすことができると考えています。管理栄養士は食のプロです。しかし、一般の方が普通に生活していると、なかなか管理栄養士と話す機会がありません。そもそもどこに行ったら会えるのかも分からないのでしょうがないですよね。一般の方が気軽に管理栄養士に相談できる仕組みを作ることで、管理栄養士の知識がより多くの方に活かされれば日本がもっと元気になるのではと考えています。せっかく人として生きるなら好きなものを食べて元気に暮らせることが一番ですよね。
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