跡見学園女子大学 石渡 尚子先生

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機能性成分を効かせる 身体づくりが鍵

跡見学園女子大学 マネジメント学部 教授 石渡 尚子

経歴

昭和女子大学大学院生活機構研究科博士課程修了、博士(学術)。独立行政法人 国立健康・栄養研究所 客員研究員(2012年まで)。Soy Nutrition Institute Japan幹事(2014年まで)。公益社団法人 生命科学振興会 理事。日本疫学会会員。日本食品衛生学会会員。日本食生活学会会員。大豆をテーマにさまざまな角度から健康に与える影響を研究し、現代の食生活にあった大豆の上手な取り入れ方を提案している。

インタビュー

世界でも大きく注目されている大豆は、タンパク質に食物繊維、イソフラボン、サポニン、レシチンなど20種類以上の機能性成分が含まれていて、まさに天然のマルチサプリメント。特に大豆イソフラボンは女性の強い味方になってくれる成分の1つであるが、イソフラボンを摂取してもそのパワーを感じやすい人とそうでない人がいる。その違いはどこにあるのか、最新情報を教えてくれた。

先生が大豆や大豆イソフラボンに出会い研究をはじめたのには
何かきっかけがあったのでしょうか。

きっかけは母の更年期でした。ホットフラッシュや頭痛などの症状があまりにも酷く、見ていられないほどでした。その当時ホルモン補充療法(HRT)は臨床試験が始まったばかりで一般的ではありませんでした。しかし母の症状を良くしたい一心で、あるクリニックでHRTを受けさせたところ、これまでの症状がまるでうそのように改善されました。その時に女性ホルモンの持つ力や重要性に驚かされたのです。女性ホルモンは文字通り頭の先から足の先まで女性の全身の健康に関わっています。肌の張りから内臓脂肪のコントロール、骨の健康などすべてです。

HRTの効果の実感から
大豆イソフラボンの研究へどのように移っていたのでしょう。

HRTにより母の症状は改善されましたが、数年後に、アメリカで「HRTによって乳がんや心血管系疾患のリスクが高まる」というデータが公表されました。母の症状を安定させたいので、HRTはやめたくない、しかし発がんのリスクは高めたくない、というジレンマからいろいろ調べたところ大豆にいきついたのです。98年のことでした。現在、HRTは適切に使用すれば、発がんリスクを高めることなく更年期障害を軽減できることが明らかになっています。

大豆イソフラボンは食品中の成分ですから、HRTほどの効果はないと思っていました。しかし母の体調に合わせ、調子が悪い時はHRTそして良いときは大豆イソフラボン、と少しずつ移行させていくことで症状は改善し、大豆のパワーに期待を持ちました。同時に、数百人の女性を対象とした研究でも、効果を感じやすい人とそうでもない人の違いがあることがわかり、その要因についても研究するようになりました。

大豆イソフラボンの効果が感じられない人とはどんな人なのでしょう?

もちろん、ただ大豆製品を摂取するだけでもそれなりの健康効果は得られます。しかし腸のなかでエクオールという成分を作れる人はもっと効果を実感できます。大豆イソフラボンの一種であるダイゼインが腸内細菌により代謝されエクオールという物質が作れる人をエクオールプロデューサーといいます。日本人の場合、エクオールプロデューサーは高齢者で約50%、若い人では20~30%です。たとえ、エクオール産生菌が腸内に存在しても、食生活や生活習慣が乱れたり、ストレスで腸内環境が悪化したりするとエクオールの産生力は低下します。穀類や大豆製品を多く食べている人にエクオールプロデューサーが多いことはわかっていますが、これを食べればエクオールが作れるようになるという食品は今のところありません。エクオール産生菌が安定して定着できるよう、まずは、その人にとってベストな腸内細菌のバランスを保つことが大切なのです。

他にも大豆の効果を実感するために心がけることはありますか?

できるだけ毎日こまめに摂取することですね。大豆が良いからといって、一度に大量に食べてもイソフラボンについては約6〜8時間で血中濃度が半減します。イソフラボンの女性ホルモン様効果を期待するのであれば、体内で一定の濃度を保たせることも大事です。

私が実施したヒト試験でも1度に1日量を摂取する人と1日3回にわけて摂取する人では後者のほうが良い結果を得られました。例えばPMSや更年期障害はホルモンバランスが激しく上下する、とくに一気に低下すると不調になります。健康に良いと言われる成分でも一度にたくさん摂取すると血中濃度が急激に上がり、急激に下がります。これはヒトの体にとって好ましい状態ではありません。機能性成分を効かせるための摂り方というのもあるのです。

先生の実践する大豆生活について教えてください。

オススメは一日2食大豆製品を食べること、そしてベジファースト(野菜から食べよう)ならぬソイファースト(大豆から食べよう)です。1日1食大豆製品を加えるだけなら簡単ですが、変化は起こりにくいです。でも1日2食にすると3食のうち1食はおそらく和食よりになります。そのため食事のバランスが自然に改善され、腸内環境も整うのです。しかも大豆製品はコンビニでも売っていますから、誰もが続けられます。ベジファーストもいいですが、1食分の食物繊維の量は大豆のほうが多い(丸まま食べた場合)ので血糖値のコントロールにより役立ちます。また、大豆は女性だけでなく、男性の前立腺がん予防や血中脂質の改善にも有効です。一時期、大豆イソフラボンの1日摂取量が話題になりましたが、食品で摂る限り1日3食大豆製品を食べてもなんの問題もありません。もちろん健康に役立つ成分でも摂り過ぎはよくありません。いろいろなものを食べることは腸内環境を整えるだけでなく、食品によるリスクを低減することにもなるのです。そのことを頭にいれて、大豆製品を日々の食生活に取り入れてください。

基本情報


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  • 所属跡見学園女子大学 マネジメント学部 生活環境マネジメント学科
  • 所在地東京都文京区大塚1-5-2
  • 最寄り駅茗荷谷駅
  • TEL03-3941-7420
  • ホームページhttp://www2.mmc.atomi.ac.jp/~life-environment/