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レシチンの効果とその作用

細胞膜を構成する成分であるレシチンは、脳神経や神経伝達物質の原料ともなっています。そのため、減少すると記憶力の低下や認知症の発症リスクを高めるといわれます。

また、脂質の代謝を高める効果も期待できるため、日頃から積極的に摂取しておきたい成分です。

レシチンとはどのような成分か

レシチンとは動物・植物から抽出された、リン脂質で、学名を「ホスファチジルコリン」といいます。

人の体の中に存在するリン脂質としては最も多く、細胞膜や神経組織を構成しています。健康食品としては、主にホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトールなど、リン脂質の混合体もまとめてレシチンと呼ばれます。レシチンは大豆や卵黄などの食品にも含まれており、私たちは通常の食品から摂取している成分です。

レシチンは細胞膜の主成分でもあり、脳神経や神経組織を作る成分です。そのため、レシチンが不足するとさまざまな不調が生じることがわかっています。[※8]

また、レシチンは天然の乳化剤として使用されることが多く、化粧品や医薬品、工業用品など日常生活の中で幅広く利用されている成分です。[※7]気づかないうちにレシチンの恩恵を受けていることが多くあります。

レシチンの効果・効能

細胞膜を構成する成分であるレシチンですので、その効果・効能は多岐にわたります。

■記憶力の向上・認知症の予防への期待

レシチンは体内で脳神経伝達物質のひとつであるアセチルコリンという物質に変換されます。アセチルコリンが体内で減少することと、アルツハイマー型認知症の関連性が以前から指摘されているため、アセチルコリンを減らさないことが認知症予防の鍵という考え方があります。

そのためレシチンの摂取が認知症予防に良いのでは、と期待されていますが、今の所十分な有効性が示されたデータはなく、これからの研究が待たれます。[※7]

■肝臓機能の向上効果

細胞膜を構成するレシチンは、肝臓の細胞を保護し、機能を高める効果があると言われています。特に、長期間、経管栄養を受けていた患者さんに対する肝脂肪に対する有効性が示唆されています。[※7]

■コレステロールへの作用

レシチンは水と脂の両方を混ぜ合わせる作用を持つため、血中の余分なコレステロールをレシチンが溶かし、血管壁に沈着させたりするのを防ぐと考えられています。

■肌への作用(保湿)

レシチンは、皮膚の保湿を目的としたクリームなどの商品に含まれていることがあります。乾燥肌に対する保湿効果があったという報告は幾つかありますが、レシチンの保湿効果に関する臨床実験のデータは不十分だとされていて、これからの研究が待たれます。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

レシチンの代表的な働きとして、乳化作用があります。血液中の水溶性の物質と脂溶性の物質を溶け合わせて、細胞内に栄養素を取り込む働きもあります。更に、不要な老廃物を体外にスムーズに排出する働きもあります。

また、レシチンの乳化作用は脂肪分の多い食品に利用されています。アイスクリームやケーキなどの乳化剤として使用されています。

レシチンは食品添加物としても良く使用されています。その使用目的は食品の乳化剤としてだけでなく、分散作用、湿潤作用、油はね防止作用などです。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

レシチンは細胞ひとつひとつを良好な状態に保つためにも不可欠な成分です。体重が50kgの人には約500gのレシチンが体内に存在しているとされ、特に脂肪がエネルギーに変わったり、細胞に蓄えられたりする時、たんぱく質と結合する際にレシチンが不可欠です。

そのため、レシチンが不足すると、疲労感、悪玉コレステロールの増加、動脈硬化、糖尿病、イライラなどの問題が起こりやすくなると考えられています。[※8]そのため、食生活が乱れていて、なんとなく疲れが取れない、イライラする、生活習慣病がきになる、といった方は食事からレシチンがしっかり摂れているかを確認し、足りていなければ積極的に補ってみるのも一つです。

レシチンの摂取目安量・上限摂取量

レシチンの摂取量に関しては、特に決まっていません。FAO/WHI合同食品添加物専門家会議においても添加物として使用する際の摂取量や制限もありません[※1]

ただし、大豆から摂取される大豆レシチンを摂取する際には、注意が必要です。大豆アレルギーのある人は摂取を控えるようにしましょう。大豆レシチンの摂取目安量としては健康維持のためであれば、5~10g/日、レシチンを構成しているコリンの供給源としてであれば2~10g/日[※2]とされています。

また、レシチンはマヨネーズやチョコレートなどにも含まれています。マヨネーズであれば約1%、チョコレートであれば約0.5%の含有量です[※2]。これらの食品は、脂肪分やコレステロールも多いので、食べ過ぎないようにしましょう。サプリメントから摂取する場合は、用量を守って、正しく服用することが必要です。

現在、日本人のレシチン摂取量は一人約3g/日と言われています[※2]。昔と比べるとその量は減っています。毎日の食事からレシチンを摂取することを心がけるといいでしょう。

レシチンのエビデンス(科学的根拠)

キューピーでは、卵の栄養素などに関する研究を数多く行っています。その中で、卵黄レシチンを乳化剤として配合した流動食は、下痢が起こりにくくなるという研究結果を出しています。

研究では、ラットを用いた試験において、卵黄レシチン、大豆レシチン、合成休暇材を配合し、脂質吸収性を確認しました。その結果、卵黄レシチンを配合した乳化剤は、胆汁分泌時でも、健常時と変わらない脂質吸収量を示しました。

この研究で、卵黄レシチンは脂質吸収力をサポートし、脂肪性の下痢を発生しにくくなる可能性があると判明したのです。[※3]

研究のきっかけ(歴史・背景)

レシチンが発見されたのは約160年前、フランスの学者であるGobleyによって、卵と脳から発見されました。レシチンはギリシャ語で卵黄という意味です。

乳化剤としてさまざまな食品、化粧品、医療品の分野で使用されているレシチン。DHAやアラキドン酸などの供給源や、薬剤成分の皮膚への透過性を高めるなどの働きをしています。

専門家の見解(監修者のコメント)

レシチンの脳への効果について、神津健一博士は次のように述べています。

「PS(ホスフェチジルセリン)は脳細胞の代謝機能の低下を防ぎ、脳内ホルモンのバランスをとることが既に認められています。精神的機能に限らず、自律的(臓器・器官)機能も脳によってコントロールされ、支配されていますので大変有効です。老化現象とは「脳の機能低下」そのものだと言えます。

しかし、脳の機能低下はPSを摂取することによって大幅に改善されることが、過去30年以上にわたる欧米での臨床試験によって判明してきました。

もともとPSというのは、レシチン成分の一部をなしているものですが、同じレシチンの成分の中には、PC(ホスファチジルコリン)やPE(ホスファチジルエタノールアミン)も含まれており、これらも認知機能の維持に効果があると言われてきました。

それを2001年にマサチューセッツツ工科大学やプリンストン大学の研究報告、並びに私の研究グループが30年以上にわたってデータをとったところ、PC・PEを摂取した子供たちのほとんどに、IQ・EQのレベルが大幅に改善されたことを確認したのです。

しかも最近、レシチン(PC・PE)をリゾ化し、特殊栄養素を加えた新しいタイプのK・リゾレシチンが開発され、これを投与してみたところ、その効果は数十倍にも達することが判明しました。

さらに、これにPSを10%加えることによって、PS・PC・PEの複合的相乗効果が認められたわけです。」(レシチン博士【神津健一】情報館「第六章 PSとKリゾレシチン」)[※4]

レシチンはさまざまな研究グループによって調査・研究されています。中でも脳の機能向上に関する研究は多いです。その結果、脳への効果が広く認証されているということが分かります。

レシチンを多く含む食べ物

レシチンには大豆レシチンと卵黄レシチンがあります。大豆レシチンは大豆や豆腐、納豆などの大豆製品に多く含まれ、卵黄レシチンは卵黄に含まれています。

大豆レシチンはコレステロールを多く含まないという特徴があり、卵黄レシチンは、ホスファチジルコリンが多く、神経伝達物資にかかえるコリンを多く含むという特徴があります。

そのほか、鶏レバーや牛肉赤身、豚肉ベーコン、枝豆、ホウレンソウ、アスパラガス、パセリ、ブロッコリー、イチゴなどにも含まれています。

相乗効果を発揮する成分

レシチンと一緒に摂取することで、脳の活性化をより高めることができる栄養素として、次のような栄養素があります。

■必須アミノ酸
アミノ酸は神経伝達物質の材料となる成分です。必須アミノ酸の一つであるトリプトファンはセロトニンの材料でもあります。トリプトファンが不足し、セロトニンが減少すると、うつ病などを発症しやすくなるのです。

■ミネラル
アセチルコリン、セロトニン、ドーパミンなどの神経伝達物質の生成には、ミネラルが必要です。

■ビタミンB群
ビタミンB6やビタミンB12、ビタミンB1、ビタミンB2は、脳の機能を活性化するために必要な栄養素です。これらが不足すると思考力が低下したり、集中力がなくなったりします。

■パントテン酸
エネルギー代謝をサポートするパントテン酸が不足すると、脳の機能が低下します。

■脂質
必須脂肪酸の一つであるアラキドン酸は、神経細胞を増やし脳の機能を向上させる働きがあります。

■DHA・EPA
DHA・EPAは脳神経の細胞の柔軟性を高め、神経伝達物質がスムーズに機能するようになります。血行を良くする作用もあり、脳への血流が促進されます。

また、レシチンには脂溶性ビタミンであるビタミンEの吸収を促す作用があり、ビタミンEはレシチンの酸化を防ぐ働きがあります。一緒に摂取すると、血管や細胞のアンチエイジングになります。[※5]

レシチンに副作用はあるのか

レシチンの摂取による副作用の報告はありません。動脈硬化症や甲状腺疾患にヨードレシチンを使用しても、副作用がない[※6]という報告があります。

また、連続して摂取をしても、悪影響が出るなどの副作用はないとされています。ただし、過剰に摂取すると、体質や体調次第では下痢や腹痛、吐き気などの副作用のリスクも考えられるので、適量を摂るのが望ましいでしょう。

注意したいのは、レシチンそのものではなく、レシチンを多く含む大豆や卵の摂取です。これらの過剰摂取は副作用を起こすリスクがあります。また、大豆や卵にアレルギー反応を起こすケースもありますので、注意が必要です。

大豆アレルギーの症状は、じんましんや湿疹、嘔吐、下痢、腹痛、咳、くしゃみなどのほか、呼吸困難や意識低下などを引き起こすこともあります。

大豆は豆腐や豆乳、味噌やしょうゆ、油揚げなど、さまざまな種類があり、大豆アレルギーだからといって、すべてにおいてアレルギー症状が出るわけではありません。

大豆にはレシチンをはじめ、有効な栄養素も豊富なので、注意しながら摂取したいところです。

卵アレルギーは、じんましんやかゆみ、腹痛、嘔吐、下痢、血便、咳、ぜんそく、呼吸困難、くしゃみ、鼻水などといった症状が出ます。

赤ちゃんだけではなく、大人でも起こることがあるので注意しましょう。大人になってからのアレルギーは、食生活の改善やストレスの軽減などが重要になります。