名前から探す

アロエの効果とその作用

アロエはサボテンによく似た多肉植物です。肉厚でトゲトゲしい葉が特徴的。葉の内部にあるゲルとワックスは、古くから塗り薬として使用されてきた歴史があります。ここでは、アロエの種類や効果効能、作用のメカニズムや研究データなどを紹介。経口摂取による副作用や医薬品との相互作用までまとめています。

渋谷DSクリニック 井上和恵先生監修

アロエとはどのような植物か

アロエは熱帯に生えるユリ科の多肉植物の総称です。主にアフリカや地中海に多く分布しています。600種以上の品種があり、小型~大型まで幅広く存在。中には茎の無いものや硬いトゲを持つものも存在するようです。

日本で一般的に知られているのは「キダチアロエ」と「アロエベラ」。2つとも薬として使われている品種です。[※1][※2][※3]

キダチアロエは観賞用・薬用・食用として古くから使われてきたもので、葉が細く苦みの強い味が特徴。[※4]

アロエベラは葉が大きく厚い種類で、ヨーグルトやジュースなどに加工されることが多いアロエです。葉肉部分にはアロエステロールという成分が含まれており、コレステロールの吸収を抑える効果があります。[※4][※5]

また、医薬品の原料には、ケープアロエというアフリカ原産のアロエを用いることもあります。

アロエはビタミンやミネラル、アミノ酸、多糖類などさまざまな成分を含んでいる、栄養豊富な植物です。アロエを食べることで足りない栄養を補い、健康を保つことができるでしょう。

アロエは紀元前から薬として利用されており、軽いやけどや擦り傷・切り傷、便秘などさまざまな不調に効くことがわかっています。

最近ではアロエの葉を切って食べたり傷に貼ったりすることで、多くのケガ・病気を改善できるとして、皮膚や消化器系、循環器系などさまざまな分野で利用されています。[※6]

ただし、医薬品として使う場合は痛みや充血などを引き起こしやすくなるので、過剰摂取しないように気を付けてください。[※1]

アロエの効果・効能

アロエには以下の効果・効能があるといわれています。[※5] [※6][※7][※8]

■便通を良くする

アロエは食物繊維や多糖類を多く含んでおり、腸内環境を整える効果があります。

■胃を健康に保つ

アロエを摂取することで胃液の分泌が促され、消化活動が活発に。これにより、胃もたれや消化不良が起こりにくくなります。

■炎症を抑える

アロエには抗炎症成分が含まれており、打ち身や虫刺されなどの改善に役立つといわれています。殺菌作用もあるため、傷が雑菌により悪化することもありません。

■傷の治りを早める

アロエを外用薬として貼ったり塗ったりすることで、傷の治りが早まることが報告されています。

■ダイエットのサポート

研究から、アロエを継続的に摂取することで血中コレステロールの値が下がることがわかっています。

■高血糖の改善

アロエベラを摂取することで食事後の血糖値上昇を抑える効果が期待できます。

■美肌をつくる

アロエにはコラーゲンの生成や保湿、シワの軽減など美肌をつくるために欠かせない効果が多く報告されています。

■抗がん効果

アロエの成分であるアロミチンとアロエマンナンは抗腫瘍効果を持っており、がんや胃潰瘍に対して効果があるとされています。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

アロエは品種によって含まれている成分が異なり、さまざまな有効成分が身体に良い作用をもたらします。

古くから薬用として利用されてきたアロエには、胃腸を健康にするアロイン(バルバロイン)が含まれています。

アロインは皮に多く含まれており、独特な苦みのもとになっている成分。胃で分解されずに腸までたどりつき、体内の水分を保持したまま排出されます。そのため、腸の運動が活発になり、便通が良くなるのです。[※6][※9]

ただしアロエベラのアロインは緩下(便通を良くする)作用が強いため、アロエベラを使う場合は皮を取り除いてください。

ほかにも抗炎症作用があり、腫れや虫刺されなどの炎症にアロエを貼ることで炎症を鎮められることが確認されています。[※6]

人によっては肌に合わないこともあるため、まずは炎症を起こしていない部分に当てて異常が出ないかどうか確かめるのが良いでしょう。

また、アロエベラに含まれるアロエステロールは体脂肪燃焼や血糖値の上昇抑制、美肌効果など、多くの薬効を持つ成分です。

森永乳業が行った体脂肪燃焼効果の実験では、高脂肪食を食べている動物にアロエステロールを摂取させたところ、内臓脂肪・皮下脂肪がともに減りやすくなったことがわかっています。

加えて糖尿病を発症させた動物にアロエステロールを35日間与えると、血糖値が上昇しにくくなったという結果が得られました。

このことから、体脂肪の燃焼と血糖値の上昇抑制の作用が示唆されています。[※10]

アロエには皮脂の量を正常に戻すはたらきがあり、細胞の増殖を促してくれます。[※7]そのため肌のターンオーバーがもとに戻り、肌の再生・修復が行われるのです。

この作用によってシワやニキビ跡などもキレイにしてくれることがわかっています。

保湿効果・毛穴の引き締めなどの効果もあるため、肌荒れのトータルケアにも役立つでしょう。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

アロエは胃腸の健康維持から美肌効果まで幅広いはたらきを持つため、さまざまな人に適している植物です。

お通じや胃の健康を目的にしている人は食事としての摂取、怪我の改善や美肌効果を得たい人は外用薬として使うのが良いでしょう。

特におすすめなのは、ダイエット中の人。体脂肪の燃焼や血糖値の上昇抑制など、痩せるためのサポートをしてくれる成分が多く入っているので、ダイエットの効果を上げたいと考えているなら一度試してみてください。

アロエの摂取目安量・上限摂取量

アロエは食品として摂取する場合、あまり問題が無いと考えられています。品種によって含まれる成分が違うため、摂取量には気を付けましょう。

飲食で利用するなら、生葉だと成人で15gが上限量だとされています。乾燥や粉末の場合は重さが生葉の4~5%ほどになっているため、0.6gを目安に摂ってください。[※11]ただし、初めて使うときは少ない量から徐々に増やす必要があります。

医薬品として使う際は、アロエ液やエキスが一般的です。

潰瘍性大腸炎の場合は50%溶液(アロエエキスを1/2の濃度に薄めたもの)100mLを1日2回、便秘の改善では50mLのアロエエキス(または100~200mgのアロエ)を摂取します。[※1]

アロエのエビデンス(科学的根拠)

森永乳業株式会社の食品基盤研究所では、アロエベラに含まれる希少な植物ステロール(アロエステロール)の美肌効果を調べる実験が行われました。

実験では、乾燥肌の女性56名を2つのグループにわけ、片方にはアロエステロール入りの食事(40μg)を、もう片方にはアロエステロールを含まない食事を毎日とってもらいました。検証期間は8週間です。

検証期間中の皮膚水分量の変化を調べたところ、アロエステロール®入りの食事をとっていたグループの皮膚水分量は大きく増加。さらに、しわの変化を調べたところ、実験前よりもしわが浅くなっていることが明らかになりました。

実験の結果から、アロエベラに含まれるアロエステロール®には美肌効果が期待できます。[※7]

研究のきっかけ(歴史・背景)

アロエについて書かれている最も古い文献は、紀元前1550年ごろミイラの棺の中から発見された古代エジプトの医学書『エーベルス・パピルス』です。

そこには数百年前からアロエが使われていると書かれており[※12]、約4000年前からアロエが民間薬として用いられたことがうかがえます。

紀元前300年代、マケドニア帝国のアレキサンダー大王はアリストテレスのすすめで、病気予防のためにアロエを栽培させたといわれています。クレオパトラも、アロエのゼリー質を肌に塗り、日焼けを防いで美肌を保ったそうです。

中世以降になると、アロエの効用がヨーロッパで広く認められるようになり、12世紀には、ドイツでその薬効が法令で認められました。

アロエはシルクロードを通って中国に渡り、江戸時代ごろに日本へ伝わったといわれています。

第二次世界大戦後、世界中の学者によってアロエの薬効について研究されました。特に、昭和44年に日本人医学者がアロエにがんの抑制効果があることを発表してからは、アロエの人気が一気に高まりました。

専門家の見解(監修者のコメント)

福山大学名誉教授であり、日本のアロエベラ研究の第一人者でもある八木晟氏は、自身がアドバイザーをつとめるサイト「アロエベラ健康研究室」にて、次のようにコメントしています。

「アロエベラに含まれる多糖体は、NK細胞(抗原感作なしに感染細胞を障害する生体防御の第一線で働く細胞)の活力を発揮させて自然免疫能を高めます」(アロエベラ健康研究会「アロエベラ健康研究室の設立にあたり」より引用)[※13]

「アロエベラのゲル部には、多くのアミノ酸やビタミン・ミネラル類が含まれていますが、なかでもVitamin E、C、B12は、アロエベラのゲル部と併用して摂取することで、体内での貯留が増加するという報告があり、アジュバント(補助剤)効果が期待されます」(アロエベラ健康研究会「アロエベラ健康研究室の設立にあたり」より引用)[※13]

アロエベラはビタミンやミネラル、アミノ酸などを多く含んでいるほか、一部のビタミンは併用することで体内の貯蔵量を増やせるとのこと。八木氏は、今後高齢者や生活習慣病患者が増えるであろう日本において、アロエベラの効果が予防医学的に役立つと考えているそうです。

今後、健康を維持する成分として、アロエベラの研究がますます進められるでしょう。

アロエを使ったレシピ

キダチアロエの根元近くは苦みが強いので、初めてキダチアロエを食べる場合は、葉先を食べるのがおすすめ。それでも苦みを感じる場合は、食べやすいアロエベラから挑戦しましょう。

料理に使うときは、包丁でトゲをそぎ落とし1~2cmにカットします。食べにくい場合は、厚めに皮をむいて1~2分茹でて苦みとアクを抜くと食べやすくなります。

自宅で簡単にできるデザートとして、アロエヨーグルトのレシピを紹介します。

■アロエのデザート(5人分)

<材料>

  • 下処理したアロエ 150g
  • フルーツの缶詰(黄桃、パイナップル) 各50g
  • ヨーグルト 250g
  • はちみつ 10g

<作り方>

  1. アロエとフルーツの缶詰は食べやすい大きさに切る。
  2. 1.の材料とヨーグルトを混ぜる。
  3. はちみつをかける。

そのほか、スムージーやブルスケッタなどにも活用できるので、アロエが手に入ったときは試してみてください。

■アロエとパインのスムージー

アロエとパイナップル、ヨーグルトをミキサーにかけるだけ。苦みが気になるときは、はちみつを加えるとおいしくいただけます。

■アロエのブルスケッタ

アロエ、アボカド、マグロをそれぞれ食べやすいサイズにカットし、オリーブオイルにバジル、すりおろしにんにくを混ぜたものと和え、バケットにのせます。

相乗効果を発揮する成分

アロエは保湿効果に優れていることから、肌のダメージを保護する化粧品に用いられています。

ほかの保湿成分と組み合わせることで相乗的な効果が得られるため、ヒアルロン酸やコラーゲンなどの保湿成分と組み合わせるとより高い効果を実感できるでしょう。[※14]

アロエの副作用

アロエは外用薬として使う場合、ほとんどの人に安全だとされています。また、成人であれば食品・医薬品として摂取しても問題ないようです。[※1][※15]まれにアロエゲル(葉肉)によってかゆみや熱さを感じる人もいるので、パッチテストをしてから使ってください。[※2]

また、食用や内服薬として口にする場合、アロエに対して敏感な人は胃痛や胃けいれんなどを引き起こすおそれがあります。

長期間の多量摂取で腎疾患や血尿、低カリウム血症(血中のカリウム濃度が低くなる症状)、心臓障害などになり、最悪の場合命を落とす可能性があります。体調に異常があったときは、すぐに病院を受診しましょう。

クローン病や潰瘍性大腸炎、腸閉塞、痔核、腎臓障害の人は症状の悪化をまねくため、アロエを摂取しないでください。[※1]

小児の摂取についてはくわしいデータがありませんが、腹痛や腹部けいれんを起こしたケースがあるため、生のアロエを食べるのは控えましょう。

妊娠中・授乳期にアロエを摂取すると、子宮に充血が起こる可能性があります。特に妊娠中は流産や先天性異常のリスクが高くなる[※1]ため、摂取しないように気を付けてください。

注意すべき相互作用

アロエは次の医薬品と併用すると、相互作用を引き起こす可能性があります。[※1]

■利尿薬

どちらも体内のカリウムを減らすため、併用するとカリウム量が減りすぎる可能性があります。

■糖尿病治療薬

血糖値を下げる効果があることから、糖尿病治療薬と一緒に使うと血糖値が低下しすぎることがあります。

■刺激性下剤

アロエは腸の動きを活発化させるため、刺激性の下剤と併用すると脱水やミネラル量の低下を引き起こします。

■経口薬

下剤としてはたらくことから、経口摂取する薬が吸収されにくくなるおそれがあります。

■ワルファリンカリウム(抗血栓薬)

アロエを下剤として使うと、まれに下痢を引き起こす人も。下痢はワルファリンカリウムの作用を強めるため、併用時の出血リスクが高まります。

■セボフルラン(麻酔薬)

アロエには血液が固まるのを防ぐ作用があるため、セボフルランと併用すると手術中の出血がひどくなるおそれがあります。

■ジゴキシン(心不全治療薬)

アロエは刺激性下剤として、体内のカリウム量を減少させるケースも。カリウムが減ることでジゴキシンの副作用が強まるとされています。

アロエの育て方

アロエは生命力が強い植物ですので、比較的簡単に育てることができます。

■置き場所

日当たりと風通しのよい戸外で育てるのがおすすめ。暑さに強いので夏場でもしっかり育ちます。冬は育成が鈍るので、最低気温が10℃以下になったら屋内か霜のあたらない軒下などに移動します。

■水やり

春~秋は、土の表面が乾いたらたっぷり与えます。11月~3月の冬場は休眠するので、水やりはしなくてよいです。暖房の効いた室内の置いている場合は、10日に一度くらい水やりします。

■用土・肥料

水はけのよい土を好むので、砂と土を半々に混ぜるとよいでしょう。肥料は基本は必要ありませんが、早く生育させたい場合は、春から秋に、緩効性化成肥料が液体肥料を少し与えます。

■アロエの増やしかた(植え替え)

用土が古くなり、株の育ちが悪くなったら、3月~9月に植え替えします。株分けで増やすことができるので、植え替えしたときに株分けすると良いでしょう。

茎が伸びすぎたときは、株をせん定し、切った茎を使って挿し木すると増やせます。

参照・引用サイトおよび文献

  1. 田中平三ほか『健康食品・サプリメント[成分]のすべて 2017 ナチュラルメディシン・データベース』(株式会社同文書院 2017年1月発行 p78-80)
  2. 鈴木洋著『カラー版 健康食品・サプリメントの事典』(医歯薬出版株式会社 2011年2月発行 p14-16)
  3. 指田豊、木原浩著『身近な薬用植物-あの薬はこの植物から採れる-』(平凡社 2013年5月発行 p220-221)
  4. アロエ製薬「アロエの種類|アロエ図書館」
  5. 森永乳業「アロエステロール®の効果とは|まいにち乳life」
  6. 森永乳業「成分の原材料 | アロエステロール研究所」
  7. 森永乳業「アロエステロールの美肌効果|アロエステロール研究所」
  8. 長屋憲監修『病気と不調を自分で治す!家庭おくすり大事典』(主婦の友社 2017年1月発行 p177)
  9. 『読むだけで便秘解消おなかスッキリ100のコツ 決定版』(主婦の友社 2015年8月発行 別府秀彦氏監修部分)
  10. 森永乳業「アロエステロールの驚きの効果|アロエステロール研究所」
  11. アロエ製薬「アロエの効き目|アロエ図書館」
  12. 株式会社平田農園「アロエについて:アロエ専科 | アロエ物語」
  13. アロエベラ研究所「アロエベラ健康研究室の設立に関するご案内」
  14. 宇山光男、岡部美代治、久光一誠『化粧品成分ガイド 第6版』(フレグランスジャーナル社 2015年3月発行)
  15. 株式会社平田農園「アロエQ&A:アロエについての質問 | アロエ物語」